【胸部】TIPS症例52
【症例】80歳代女性
【主訴】なし
【現病歴】右上葉の陰影でフォローされている。
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右上葉のような状態を何と言う?
右上葉に嚢胞のように見えますが、よく見るといずれも気管と連続性があり、数珠状〜嚢胞状の気管支拡張を認めていることがわかります。
右肺は収縮しています。
肺尖部では数珠状というよりは嚢状状の拡張を示しています。
これらは気管支拡張症を疑う所見です。
気管支拡張症はその形態により、
- 円筒状(円柱状)
- 静脈瘤状(数珠状)
- 嚢胞状
の3つに分けられていますが、今回は静脈瘤状〜嚢胞状が混在しているように見えます。
気管支拡張症は先天性、後天性とさまざまな原因で起こることが知られています。
今回のケースでは過去に感染症があったのかもしれませんが、原因がよくわからないとしてフォローされています。
両下葉S6にすりガラス影〜一部浸潤影を認めていますが、こちらも経時的な変化を認めずフォローされています。
また中葉にも気管支拡張を疑う所見を認めていますね。
診断:気管支拡張症(静脈瘤様(数珠状)〜嚢胞状)
※症状もないため定期フォローされています。
家族への説明内容
右肺の上の部分だけが傷んでいる。
原因は分からない。
特に症状がなければ様子を見るのみ。
傷んでいる部分にばい菌がついたり、
そこから出血して喀血をすることがあるので、
時々レントゲンを撮ったり、菌の検査をしています。
非常にわかりやすいですね。
その他所見:胃部分切除後。
【胸部】TIPS症例52の動画解説
お疲れ様でした。
今日は以上です。
今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。
たまに見かける所見ですが、炎症後の瘢痕程度にしか感じていませんでした。肺胞が破壊されて気管支が拡張している状態だったのですね。勉強になりました。
アウトプットありがとうございます。
そうですね。割と見かけることがありますね。気管支との連続性に注意して見てみてください。わかりにくいこともありますが・・・。
下葉の蜂巣肺!などと診断されている症例もよくよく見ると単なる気管支拡張の場合もあります。
気管支拡張症でこのように派手な静脈瘤状、嚢胞状を初めて見ました。今回は原因不明とのことですが、先天性だけでなく後遺症からもこのような大きな気管支拡張になることもあるのですね。
アウトプットありがとうございます。
>気管支拡張症でこのように派手な静脈瘤状、嚢胞状を初めて見ました。
気管支拡張症は決してまれではなく非結核性抗酸菌症(NTM)などで程度の差はあれ、中葉舌区などにしばしば見られますよ。
>先天性だけでなく後遺症からもこのような大きな気管支拡張になることもあるのですね
肺炎後などに認めることが多いですね。
こんな派手な所見を呈することがあるのですね。
内科でフォローされてる軽度の気管支拡張症は経験しますが、このような方は感染をきたすと困ったことになりそうですね。
アウトプットありがとうございます。
>このような方は感染をきたすと困ったことになりそうですね。
そうですね。気管支拡張症や既存の嚢胞などに感染を来すことはありますね。
右上葉の容積減少、縦隔の右への偏位があり、右上葉に無気肺があるのかしら、と思いました。
今回は気管支拡張症でしたが、気管支拡張ですので無気肺はないのですね。
右上葉の容積減少はどうして起こっているのでしょうか。
アウトプットありがとうございます。
肺炎後で肺が収縮しているためだと考えられます。
そういう意味では無気肺のような状態も混在していると考えられます。
いつも勉強になります。
右中葉にも気管支拡張を疑うような嚢胞構造の集簇が認められたので、NTM疑いとしてしまったのですが、言い過ぎですかね?
気管支拡張がありますくらいでとどめる方がbetterでしょうか?
アウトプットありがとうございます。
おっしゃるようにNTM後の可能性もありますが、中葉に少し認め、舌区には認めず、右上葉のみに拡張が目立つ分布が非典型ですね。
疑いとまで書くのは微妙かも知れませんが、可能性があることは記載して良いと考えます。