症例51 解答編

症例51

【症例】50歳代男性
【主訴】右季肋部痛
【身体所見】右季肋部に筋性防御あり。
【データ】WBC 13500、CRP 19.34
【既往】十二指腸潰瘍で幽門側胃切除後(B-Ⅱ再建)

画像はこちら。

ダイナミックCTの早期相で、胆嚢周囲の肝臓に造影効果(hyperemia)を認めています。

急性胆嚢炎を疑う所見です。症例5でも認めていましたね。

症例5と異なる点は、胆嚢の粘膜の高吸収が追えないということです。

これは、胆嚢壁が壊疽に陥っている状態であり、壊疽性胆嚢炎を示唆する所見です。

胆嚢周囲には脂肪織濃度上昇を認めています。
胆汁がしみ出して胆汁性腹膜炎を来している可能性はありますが、明らかな腹膜の肥厚などは認めません。

MRIも施行されました。

非提示のMRI画像

T2WI横断像では、CTでははっきりしなかった胆石をゴロゴロ認めていることがわかります。

このようにCTでははっきりしないのに、MRIでは胆石を認める場合、コレステロール結石が疑われます。
(※ですので、CTで胆石がないからといって、胆石がないとは限らないので注意が必要です。同じ結石でも尿路結石の場合は、ほとんど石灰化を伴いますので、CTでなければ、尿管結石なしといって問題ありません。)

また胆嚢頚部に結石が嵌頓している様子もMRIではわかりました。

胆嚢周囲の高信号が目立ちますが、これは炎症を示唆する所見です。

水を強調したT2強調像やMIP像でわかりやすいので覚えておきましょう。

そのMIP像です。
胆嚢周囲がモヤモヤしていて非常に見えにくいですよね。

これこそが炎症波及を示唆する所見です。

診断:壊疽性胆嚢炎

※壊疽性胆嚢炎は緊急手術の適応となります。今回も手術となりました。一般的な胆嚢炎の場合、炎症が強い場合やすぐに手術ができない場合は、一旦経皮経管胆嚢ドレナージ(PTGBD)を施行して、2期的に手術へと向かう場合もあります。

術後の標本です。

黒くなっているところはいずれも胆嚢壁の壊死の起こっている部分です。

術後の病理所見です。

高度の壁肥厚と膿瘍形成を認めます。壁は壊死を伴い、粘膜はほとんどで欠損しています。残存した上皮は異型を伴いますが、再生性変化に伴うものです。悪性を示唆する明らかな所見は認めません。

 

やはり粘膜はほとんどで欠損していたことが、病理からもわかりますね。

 

ちなみに、症例5 のように胆嚢壁が壊疽に陥っていない一般的な胆嚢炎は、浮腫性胆嚢炎に分類されます。

 

急性胆管炎・胆嚢炎診療ガイドライン2013の急性胆囊炎の診断基準と重症度判定基準の頁によると

重症度判定基準の中等症急性胆囊炎(GradeⅡ)以上の顕著な局所炎症所見として、

  • 壊疽性胆囊炎
  • 胆囊周囲膿瘍
  • 肝膿瘍
  • 胆汁性腹膜炎
  • 気腫性胆囊炎

などを示唆する所見が挙げられています。

胆嚢壁が壊疽に陥ると、胆嚢壁が破綻して、胆嚢周囲に膿瘍形成をしたり、肝膿瘍に発展したり、胆汁が漏れ出して胆汁性腹膜炎を起こすことがあります。

関連:急性胆嚢炎の画像診断、症状、治療、手術、ガイドライン

その他所見:

  • 胃術後、B-Ⅱ再建後
  • 左腎嚢胞あり。
症例51の解説動画

お疲れ様でした。

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