急性胆嚢炎は、胆嚢に急性炎症を来す救急疾患です。多くは胆嚢頸部または胆嚢管に胆石が嵌頓し、胆嚢内圧上昇、胆汁うっ滞、胆嚢壁虚血、二次感染などを背景に発症します。

画像診断では、胆嚢壁肥厚や胆嚢腫大だけでなく、胆嚢周囲脂肪織濃度上昇、胆嚢周囲液体貯留、胆嚢床肝実質の早期濃染、胆嚢壁造影不良、壁内ガスなどを組み合わせて評価することが重要です。

本記事では、急性胆嚢炎の診断基準、重症度判定、エコー・CT・MRI/MRCPの画像所見、壊疽性胆嚢炎や気腫性胆嚢炎などの重症所見、治療方針について、Tokyo Guidelines 2018(TG18)や近年の論文を踏まえて整理します。

急性胆嚢炎とは?

急性胆嚢炎は、胆嚢の急性炎症です。典型的には胆石が胆嚢管を閉塞することで発症します。

  • 多くは胆石による胆嚢管閉塞が原因です。
  • 胆石を伴うものを急性結石性胆嚢炎と呼びます。
  • 胆石を伴わないものを急性無石胆嚢炎と呼びます。
  • 無石胆嚢炎は、重症感染症、外傷、熱傷、術後、長期絶食、ICU管理中、糖尿病、動脈硬化などを背景に発症することがあります。

急性胆嚢炎の多くは結石性ですが、無石胆嚢炎は診断が遅れやすく、壊疽性胆嚢炎や穿孔へ進行することがあるため注意が必要です。

急性胆嚢炎の症状

急性胆嚢炎では、右季肋部痛や心窩部痛が典型的です。痛みは食後、特に脂肪食後に出現することがあります。

  • 右季肋部痛、心窩部痛
  • 発熱
  • 悪心、嘔吐
  • 右季肋部圧痛
  • Murphy徴候
  • 炎症反応上昇:WBC上昇、CRP上昇
  • 肝胆道系酵素上昇:AST、ALT、ALP、γ-GTP、総ビリルビン上昇など

ただし、高齢者、糖尿病患者、免疫抑制状態の患者では、典型的な発熱や腹痛が目立たないことがあります。画像所見と臨床経過を合わせて判断することが大切です。

急性胆嚢炎の診断基準:TG18/TG13

急性胆嚢炎の診断には、Tokyo Guidelines 2018(TG18)で示されている診断基準が広く用いられています。TG18では、TG13の診断基準と重症度判定基準が引き続き採用されています。

A. 局所の臨床徴候

  • Murphy徴候
  • 右上腹部の腫瘤触知、疼痛、圧痛

B. 全身の炎症所見

  • 発熱
  • CRP上昇
  • 白血球数上昇

C. 急性胆嚢炎に特徴的な画像所見

  • 胆嚢壁肥厚
  • 胆嚢腫大
  • 胆石、胆泥、胆嚢管・胆嚢頸部結石
  • 胆嚢周囲液体貯留
  • 胆嚢周囲脂肪織濃度上昇
  • 胆嚢床肝実質の濃染
  • 胆嚢壁造影不良、壁内ガスなどの重症所見

診断の考え方

分類 診断基準
疑診 Aのいずれか + Bのいずれかを満たすもの
確診 疑診に加えて、Cの画像所見を認めるもの

つまり、急性胆嚢炎の確診には画像所見が重要です。一方で、胆嚢壁肥厚だけでは非特異的であり、肝炎、肝硬変、心不全、低アルブミン血症、腎不全、門脈圧亢進症などでも胆嚢壁肥厚を認めることがあります。

急性胆嚢炎の重症度判定:Grade I〜III

急性胆嚢炎はTG18/TG13に基づき、軽症、中等症、重症に分類されます。画像診断では、特に中等症以上を示唆する所見や、緊急対応が必要な合併症を拾い上げることが重要です。

Grade III:重症急性胆嚢炎

重症急性胆嚢炎は、急性胆嚢炎に臓器障害を伴うものです。以下のいずれかを認める場合にGrade IIIとされます。

  • 循環障害:昇圧薬を要する低血圧
  • 中枢神経障害:意識障害
  • 呼吸機能障害:PaO2/FiO2比 < 300
  • 腎機能障害:乏尿、血清Cr > 2.0mg/dL
  • 肝機能障害:PT-INR > 1.5
  • 血液凝固異常:血小板数 < 10万/mm3

Grade II:中等症急性胆嚢炎

中等症急性胆嚢炎は、臓器障害はないものの、局所炎症が強く、手術難度が高くなる可能性がある状態です。以下のいずれかを認める場合にGrade IIとされます。

  • 白血球数 > 18,000/mm3
  • 右上腹部の有痛性腫瘤触知
  • 症状持続時間 > 72時間
  • 顕著な局所炎症:壊疽性胆嚢炎、胆嚢周囲膿瘍、肝膿瘍、胆汁性腹膜炎、気腫性胆嚢炎など

Grade I:軽症急性胆嚢炎

Grade IIIまたはGrade IIを満たさない急性胆嚢炎です。臓器障害がなく、胆嚢の炎症が比較的軽度で、低リスクで胆嚢摘出術が可能と考えられる状態です。

画像診断の基本方針

急性胆嚢炎が疑われる場合、初期画像検査としては腹部エコーが第一選択です。エコーは非侵襲的で、胆石、胆泥、胆嚢壁肥厚、胆嚢腫大、sonographic Murphy signを評価できます。

ただし、エコーは体格、腸管ガス、胆嚢収縮、疼痛による観察困難、術者依存性の影響を受けます。エコーで所見が不明瞭な場合、または胆嚢炎以外の急性腹症や合併症を評価したい場合には、造影CTが非常に有用です。

MRI/MRCPは、総胆管結石や胆管炎合併が疑われる場合、造影CTが困難な場合、妊婦など被ばくを避けたい場合に有用です。胆道シンチグラフィ、いわゆるHIDA scanは診断能が高い検査ですが、日本の日常救急診療では実施可能性や時間的制約から第一選択になりにくいことが多いです。

急性胆嚢炎のエコー所見

エコーでは以下の所見を確認します。

  • 胆石、胆泥
  • 胆嚢頸部または胆嚢管への結石嵌頓
  • 胆嚢腫大
  • 胆嚢壁肥厚
  • 胆嚢壁の層構造、浮腫
  • 胆嚢周囲液体貯留
  • sonographic Murphy sign
  • 胆嚢壁血流増加

胆嚢壁肥厚の目安は3mm以上、施設や文献によっては4mm以上が用いられます。ただし、胆嚢壁肥厚は急性胆嚢炎に特異的ではありません。肝硬変、急性肝炎、右心不全、低アルブミン血症、腎不全などでもびまん性胆嚢壁肥厚を来すため、胆石嵌頓や胆嚢周囲炎症所見を合わせて評価します。

エコーで特に重要なポイント

  • 胆石があるかだけでなく、胆嚢頸部や胆嚢管に嵌頓していないかを確認します。
  • 胆嚢壁肥厚だけで急性胆嚢炎と決めつけないようにします。
  • sonographic Murphy signは有用ですが、鎮痛薬使用後や高齢者では目立たないことがあります。
  • 気腫性胆嚢炎では壁内ガスにより高エコーやdirty shadowを認めることがあります。

急性胆嚢炎のCT所見

CTでは、胆嚢そのものの所見と、胆嚢周囲の炎症波及を評価します。救急外来では、右季肋部痛の鑑別診断や合併症評価も同時に行えるため、造影CTが有用な場面が多くあります。

典型的なCT所見

  • 胆嚢腫大
  • 胆嚢壁肥厚
  • 胆嚢壁の浮腫性変化
  • 胆嚢周囲脂肪織濃度上昇
  • 胆嚢周囲液体貯留
  • 胆嚢内結石、胆泥
  • 胆嚢床肝実質の早期濃染
  • 胆嚢粘膜の造影増強

胆嚢床肝実質の早期濃染は、胆嚢炎に伴う周囲肝実質への炎症波及や血流変化を反映する所見です。胆嚢壁肥厚や胆嚢周囲脂肪織濃度上昇と組み合わせると、急性胆嚢炎を支持する所見になります。

CTで胆石が見えないことがある

CTでは胆石が必ず高吸収に見えるわけではありません。コレステロール結石などは胆汁と同程度の吸収値となり、CTで同定困難なことがあります。

したがって、CTで胆石が見えないからといって急性胆嚢炎を否定してはいけません。胆嚢頸部の小結石や胆泥はエコーの方が見つけやすい場合があります。

関連:胆石の種類とCTで見える胆石とその割合とは?

重症胆嚢炎を疑うCT所見

急性胆嚢炎の画像診断で特に重要なのは、壊疽性胆嚢炎、気腫性胆嚢炎、穿孔、膿瘍形成などを見逃さないことです。

壊疽性胆嚢炎を疑う所見

  • 胆嚢壁の造影不良
  • 胆嚢壁の不整
  • 胆嚢壁の断裂
  • 胆嚢内の膜様構造
  • 胆嚢周囲膿瘍
  • 胆嚢周囲の高度炎症

壊疽性胆嚢炎では胆嚢壁の虚血・壊死が起こるため、造影CTで胆嚢壁の造影不良が重要な所見になります。単なる壁肥厚よりも、壁の連続性や造影効果の低下に注目します。

気腫性胆嚢炎を疑う所見

  • 胆嚢壁内ガス
  • 胆嚢内ガス
  • 胆嚢周囲ガス
  • 胆嚢壁肥厚や胆嚢周囲炎症を伴うガス像

気腫性胆嚢炎はガス産生菌感染を背景に発症し、糖尿病や血管障害を持つ患者で見られることがあります。通常の急性胆嚢炎よりも重症化しやすく、緊急対応が必要です。

胆嚢穿孔・胆嚢周囲膿瘍を疑う所見

  • 胆嚢壁の限局的欠損
  • 胆嚢周囲液体貯留の増加
  • 胆嚢周囲膿瘍
  • 肝膿瘍
  • 腹水、胆汁性腹膜炎を疑う所見

胆嚢穿孔は、胆嚢底部で生じることがあります。胆嚢周囲に限局した膿瘍形成を来す場合もあれば、腹腔内へ炎症が波及する場合もあります。

MRI・MRCPの役割

MRI/MRCPは、胆管病変の評価に有用です。急性胆嚢炎そのものの診断だけでなく、総胆管結石、胆管炎、胆道狭窄、胆嚢癌との鑑別などを評価したい場合に役立ちます。

  • MRCPで胆嚢管、総胆管、肝内胆管の評価ができます。
  • T2強調像で胆嚢壁浮腫や胆嚢周囲液体貯留を評価できます。
  • DWIで炎症に伴う高信号を認めることがあります。
  • 造影MRIでは胆嚢壁の造影効果や胆嚢床肝実質の濃染を評価できます。

特に総胆管結石が疑われる場合、MRCPは有用です。胆嚢炎に胆管炎や胆石性膵炎を合併していないかを確認することが重要です。

急性胆嚢炎と鑑別すべき疾患

急性胆嚢炎の画像所見は、他の胆嚢・胆道疾患や全身性疾患と重なることがあります。

鑑別疾患

  • 胆石発作
  • 慢性胆嚢炎
  • 黄色肉芽腫性胆嚢炎
  • 胆嚢腺筋腫症
  • 胆嚢癌
  • 急性胆管炎
  • 胆石性膵炎
  • 急性肝炎
  • 肝硬変や門脈圧亢進症に伴う胆嚢壁肥厚
  • 右心不全、低アルブミン血症、腎不全に伴う胆嚢壁肥厚
  • 消化性潰瘍穿孔
  • 肝膿瘍
  • 右側結腸憩室炎

特に、胆嚢壁肥厚だけを根拠に急性胆嚢炎と診断すると誤診につながります。胆嚢壁肥厚がびまん性か限局性か、胆石嵌頓があるか、胆嚢周囲脂肪織濃度上昇があるか、胆嚢床肝実質濃染があるかを総合的に判断します。

治療方針の概要

急性胆嚢炎の治療は、初期治療、抗菌薬、胆嚢摘出術、胆嚢ドレナージを患者背景と重症度に応じて組み合わせます。

初期治療

  • 絶食
  • 輸液
  • 鎮痛
  • 抗菌薬投与
  • 血液検査・培養検査
  • 重症度判定
  • 外科または消化器内科への相談

抗菌薬は、重症度、市中感染か医療関連感染か、腎機能、胆道移行性、施設の感受性パターンを踏まえて選択します。

腹腔鏡下胆嚢摘出術

手術可能な患者では、腹腔鏡下胆嚢摘出術が基本治療です。近年のガイドラインでは、以前のように「発症後72時間を過ぎたら待機」という単純な考え方ではなく、全身状態、発症からの時間、施設の手術体制、術者経験を踏まえて、可能な限り早期の胆嚢摘出術を検討する流れになっています。

WSES 2020では、適切な外科的専門性がある場合、入院後7日以内かつ発症10日以内の早期腹腔鏡下胆嚢摘出術が推奨されています。

胆嚢ドレナージ

全身状態が悪く手術リスクが高い患者、敗血症を伴う患者、すぐに胆嚢摘出術が困難な患者では、胆嚢ドレナージが検討されます。

  • 経皮経肝胆嚢ドレナージ:PTGBD
  • 経皮経肝胆嚢穿刺吸引:PTGBA
  • 内視鏡的経乳頭胆嚢ドレナージ
  • EUS下胆嚢ドレナージ

ただし、ドレナージは「手術の代わりに常に優先される治療」ではありません。手術可能な患者では、早期腹腔鏡下胆嚢摘出術が標準治療です。ドレナージは、手術不適応または一時的に手術困難な患者に対する橋渡し治療として位置づけられます。

関連記事)胆石の分類とCT画像診断のポイントは?

出典

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