先に結論:頭部MRIの特殊な撮り方と使いどころ

撮像法 わかること
FLAIR 髄液を黒くしたT2系の画像。脳室・脳表など髄液に接した病変が見やすい
SWI(磁化率強調像) 微小出血・石灰化・鉄・静脈を黒く写す。T2*強調像より鋭敏
BPAS 椎骨動脈〜脳底動脈の外側の形(太さ)を1枚で見る。MRA(血流)と比べて解離の診断に役立つ
MR cisternography(高分解能heavily T2) 脳槽内の脳神経と血管の位置関係(顔面けいれん・三叉神経痛)、小さな腫瘍。CISS(シーメンス)・FIESTA(GE)はこの目的でよく使う撮像法の名前

目的に合わせてこれらを追加することで、通常のT1・T2強調像やDWIだけではわからない病変を見つけやすくなります。

FLAIR

  • 水を抑制したheavily T2ではなく、T1緩和の影響を受ける。
  • TRを短く設定しすぎるとT1値が長い病変は灰白質や白質と重なり見えにくくなる。なので、TRを短くしてはいけない。

FLAIRのメリット

  • 皮質や脳室壁周囲などCSFに接した病変がT2WIよりも見えやすい。

FLAIRのデメリット

  • CSFによるアーチファクトが病変のように見えることがある。
  • 大脳辺縁系は正常でも高信号になることがある(偽陽性)。
  • 脳幹や基底核病変を描出できないことがある(偽陰性)
症例 30歳代男性(正常例) 辺縁系が淡く高信号に見える。

FLAIR

SWI

  • susceptibility-weighted imagingの略。
  • 組織中の鉄や血液産物などの磁性体成分と周囲組織の磁化率差異を利用した撮像法。(単にT2*減衰を画像化したものではない。)
  • 従来のT2*強調像に比べ磁化率変化に鋭敏で、より微細な出血や静脈構造の描出も可能(酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの違い)。
  • 出血性病変、脳虚血急性期、新鮮塞栓子そのものの検出、脳灌流異常域の評価(急性期脳梗塞において、しばしば脳虚血領域に一致する髄質静脈や皮質静脈の増強像を認め、misery perfusionとの関連)、静脈洞血栓症に有用。

関連記事:

BPAS

  • Basi-parallel anatomical scanningの略。
  • 斜台に平行に撮像した20mm厚のheavily T2強調像で、数十秒で撮像できる簡便な撮像法。
  • 椎骨動脈〜脳底動脈の外観が1枚で観察できる。
  • 動脈瘤や動脈解離に見られる椎骨〜脳底動脈の拡大を簡便にスクリーニングできる。解離性狭窄の元の血管径がわかる。解離腔が血栓化した動脈瘤の全体像がわかる。
  • BPASで血管があるにもかかわらず、MRAで血流を認めなければ、椎骨動脈は解離/閉塞している。未破裂椎骨動脈解離の経過観察では、BPASでの紡錘状拡張の消失は治癒の徴候とされ、外径の拡張が持続・増大する場合は不安定な病変を示唆するため、MRAとBPASの両方で追うことが勧められている。

BPASの診断能

椎骨動脈解離15例・動脈硬化15例・低形成8例の検討では、通常のMRIにBPASを加えると解離の感度が53.3%から100%に上がりました(Fatima 2012)。TOF-MRAとBPASの組み合わせを高分解能MRIと比べた105例の研究では、解離・解離性動脈瘤に対する感度81.8%・特異度96.8%でした(Liu 2020)。MRAで細い椎骨動脈がBPASでも細ければ低形成、BPASで太さが保たれていれば解離や閉塞を考えます。

症例 40歳代男性 右椎骨動脈解離

dissection1 dissection2

関連記事:椎骨動脈解離とは?症状・原因は?CT、MRI画像診断まとめ!

MR cisternography(脳槽撮影)、heavily T2WI

  • 水を強調する水強調画像(hydrography)であり、脳脊髄液に囲まれた微細な構造の描出に優れる。
  • 脳神経や脳神経と血管の位置関係を見たい時などに使われる(内耳道内の小さな聴神経腫瘍や、神経血管圧迫など)。
  • GEではFIESTA(読み方はフィエスタ)という撮像、SiemensではCISS(読み方はキス)という撮像。他、bFFEという撮像もある。

FIESTA・CISSとは?heavily T2との関係

  • FIESTAとCISSは、どちらもグラジエントエコー系の定常状態の撮像(balanced SSFP)です。髄液が非常に白く、脳神経や血管が黒く抜けて見えます。
  • この撮像法は磁場の不均一で帯状の黒い線(バンディングアーチファクト)が出やすく、CISSは2回の撮像を組み合わせてこれを減らす工夫をしています。GEではFIESTA-Cが同様の撮像です。
  • heavily T2(ヘビーT2)は、TEを長くして水(髄液・胆汁・尿など)だけを強く白く写す画像の総称です。頭部ではMR cisternography、ほかにMRCPやMRミエログラフィーも同じ考え方です。

3D CISSは分解能とコントラストが高く、脳神経・脳室・脳槽の病変のほか、脳梗塞や脳腫瘍などにも使われます(Cavallaro 2022)。

主な目的 見たいもの
三叉神経痛・顔面けいれん 脳神経の根元に血管が当たっていないか(神経血管圧迫)
難聴・めまい 内耳道内の小さな聴神経腫瘍、内耳の形
水頭症 中脳水道の狭窄、第三脳室底の膜
脳槽撮影とはどんなものかを動画で見る

拡散テンソル画像DTI

  • 6方向のMPG(motion probing gradient)を用いることにより、白質路を画像化することができ、中でも特定の白質路を抽出して神経線維の走行(tractography)を推定し、構成することができる。
  • これにより白質路と病変(脳梗塞や脳腫瘍など)の3次元的位置関係を同定することができる。
DTIとはどんなものかを動画で見る

プロトンMRスペクトロスコピーMRS

  • 基本的には3つを見る。
  • Cho:コリン→3.2ppmで、細胞膜代謝の指標となる。悪性度が高い腫瘍や代謝亢進状態で上昇する。
  • Cr:クレアチン→3.0ppmで、エネルギー状態の指標となる。3つの内最も安定しているのでこれを基準に左右の高さをみる。
  • NAA:N-acetylaspartate→2.0ppmで、神経細胞に特異的に含まれるアミノ酸であるため、神経細胞障害の指標となる。
  • 正常だと以下のように右肩上がりの分布を示すが、同じような高さになったり、右肩下がりの分布を示すと、腫瘍などが疑われる。

MRS

あわせて読みたい:頭部MRIの読み方

参考文献

  1. Haacke EM, Xu Y, Cheng YC, et al. Susceptibility weighted imaging (SWI). Magn Reson Med. 2004;52(3):612-8. PubMed
  2. Mittal S, Wu Z, Neelavalli J, et al. Susceptibility-weighted imaging: technical aspects and clinical applications, part 2. AJNR Am J Neuroradiol. 2009;30(2):232-52. PubMed
  3. Nagahata M, Hosoya T, Adachi M, et al. [Basi-parallel anatomical scanning (BPAS) MRI: a simple MRI technique for demonstrating the surface appearance of the intracranial vertebrobasilar artery]. Nihon Igaku Hoshasen Gakkai Zasshi. 2003;63(9):582-4. PubMed
  4. Nagahata M, Manabe H, Hasegawa S, et al. Morphological Change of Unruptured Vertebral Artery Dissection on Serial MR Examinations. Evaluation of the Arterial Outer Contour by Basi-parallel Anatomical Scanning (BPAS)-MRI. Interv Neuroradiol. 2006;12(Suppl 1):133-6. PubMed
  5. Mukherjee P, Berman JI, Chung SW, et al. Diffusion tensor MR imaging and fiber tractography: theoretic underpinnings. AJNR Am J Neuroradiol. 2008;29(4):632-41. PubMed
  6. Soares DP, Law M. Magnetic resonance spectroscopy of the brain: review of metabolites and clinical applications. Clin Radiol. 2009;64(1):12-21. PubMed
  7. Cavallaro M, Coglitore A, Tessitore A, et al. Three-Dimensional Constructive Interference in Steady State (3D CISS) Imaging and Clinical Applications in Brain Pathology. Biomedicines. 2022;10(11):2997. PubMed
  8. Fatima Z, Motosugi U, Okumura A, et al. Basi-parallel anatomical scanning (BPAS)-MRI can improve discrimination of vertebral artery dissection from atherosclerosis and hypoplasia. Acad Radiol. 2012;19(11):1362-7. PubMed
  9. Liu J, Zhao L, Yao L, et al. Basi-parallel anatomic scanning (BPAS-MRI) compared with high-resolution MRI for the diagnosis of vertebrobasilar artery abnormalities. Eur J Radiol. 2020;123:108791. PubMed

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