
先に結論:PETは「陽電子が消えるときの2本の511 keVの放射線を同時に捉える」検査。TOFで位置の精度が上がり、CTで体内での吸収を補正する
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 信号の正体 | 陽電子が電子と出会って消滅し、約180度反対向きに2本のγ線(各511 keV)が出る。これを消滅放射線という |
| 同時計数 | 反対側の検出器2つにほぼ同時に入った2本を1組の信号とみなす。真の同時計数のほか、散乱・偶発の同時計数が雑音になる |
| TOF | 2本の到達時間の差から、消滅が起きた位置を線上でしぼりこむ。画質・病変の見つけやすさ・撮像時間に利点があり、体が大きい人ほど利点が大きい |
| 減弱補正 | 体内で吸収される分を、CTの情報で補う。位置ずれ(呼吸など)・金属・造影剤はアーチファクトの原因になる |
| SUV | 集積の程度を体格で規格化した指標。測定条件で変わるため、単独の閾値で良悪性を決めない |
PETの原理:陽電子から画像ができるまで
陽電子放出核種と消滅放射線
PETで使う放射性薬剤は、陽電子(ポジトロン)を出す核種で標識されています。身近な例がFDG(フルオロデオキシグルコース)に使われるフッ素18で、炭素・窒素・酸素やガリウム68などの核種も使われます。陽電子は電子の反粒子で、体の中をごく短い距離だけ進んだあと、近くの電子と出会って消滅します。
このとき、陽電子と電子の質量がエネルギーに変わり、ほぼ正反対(約180度)の向きに、1本ずつ、511 keVのγ線が飛び出します。これが消滅放射線で、PETの信号の正体です。2本が反対向きに出るという性質が、のちの「同時計数」で位置を決める手がかりになります。
同時計数:2本を同時に捉える
PET装置は、患者さんを囲むリング状に並んだ多数の検出器でできています。反対側の2つの検出器に、決められた短い時間の枠の中でそれぞれγ線が入ると、「同時に来た1組」と数えます。これが同時計数です。2つの検出器を結ぶ線(LOR:line of response)の上のどこかで消滅が起きたとわかるため、普通のシンチグラフィのようにコリメータで方向を絞らなくても、位置の情報が得られます。
ただし、同時に入った2本が、すべて「同じ消滅から来た本物の組」とは限りません。PETの設計では、真の同時計数を最大にし、散乱や偶発といった雑音の同時計数を相対的に減らすことが重要な目標とされています(Townsend 2004)。
| 同時計数の種類 | 何が起きているか | 画像への影響 |
|---|---|---|
| 真の同時計数(true) | 1回の消滅から出た2本が、体の中で向きを変えずに2つの検出器へ届く | 正しいLORの信号。画像の元になる |
| 散乱の同時計数(scatter) | 2本のうち1本が体の中で散乱して向きが変わったまま検出される | 本来と違う線上に数えられ、コントラストの低下・バックグラウンドの上昇につながる |
| 偶発の同時計数(random) | 別々の消滅から来た2本が、たまたま時間の枠の中に重なって検出される | 位置の情報を持たない雑音。投与量が多いと増えやすく、背景のむらにつながる |
散乱と偶発は、装置側で推定して補正する仕組みがありますが、雑音の同時計数をもともと減らす設計と、撮像条件の工夫が基本になります。
画像再構成:線の集まりを断面像にする
検出された多数のLORの情報は、コンピュータで画像再構成され、体の断面像になります。現在の装置では、3次元の繰り返し(逐次近似)再構成が使われ、従来より短い時間で、画質の高い画像が得られるようになりました。より速い検出器・電子回路と、逐次近似による再構成の進歩で、撮像時間が短くなり画質も向上しました(Townsend 2004)。
TOF(飛行時間情報)とは
通常のPETは、「LORのどこかで消滅した」ことしかわからないため、再構成では、線のどの位置にも等しい確からしさで信号を割り当てます。TOF(time-of-flight)PETは、2本のγ線が検出器に届く時間の差を測り、消滅が起きた位置を線上で「このあたり」と確率的にしぼり込みます。2本の到達時間の差をΔt、光の速さをcとすると、線の中心からのずれはc×Δt÷2で表されます(Vandenberghe 2016)。
引用図 TOF-PETの原理

引用:Vandenberghe S, Mikhaylova E, D’Hoe E, et al. EJNMMI Phys 2016;3:3(Figure 1). CC BY 4.0(無加工)。PMC
左下が従来のPET、右下がTOF-PETです。従来のPETでは線上のどこで消滅したかを均等に扱いますが、TOF-PETでは時間差から消滅の位置の確率が山形に絞られます。右上の囲みは、到達時間の差Δtと位置のずれΔxの関係を示しています。
TOFの利点
TOFの画質改善の度合いは、体の大きさと、TOFで位置を絞れる幅の比に関係します。そのため、体格が大きい患者さんで、吸収と散乱によって画質が落ちやすい場面ほど、利点が大きくなります(Vandenberghe 2016)。実際の使い方としては、病変のSUV(集積)をより高く正確に測る、あるいは撮像時間を短くする、といった形で活かされます。
現在の装置では、病変の検出しやすさの向上、撮像時間の短縮、病変の集積の測定の正確さの向上が報告されています。また、TOFの利点は体の大きい人ほど高いため、患者さんの体格が違っても、臨床での性能が揃いやすくなります(Surti 2015)。
| 項目 | 従来のPET | TOF-PET |
|---|---|---|
| 位置の情報 | LOR上のどこかまで | LOR上の範囲を絞り込める |
| 体格の影響 | 体が大きいと雑音が増え、画質が落ちやすい | 体が大きい人ほど利点が大きく、性能が揃いやすい(Surti 2015) |
| 臨床での活かし方 | — | 病変の見つけやすさ、撮像時間の短縮、集積測定の正確さ(Surti 2015) |
CTによる減弱補正とアーチファクト
なぜ減弱補正が必要か
消滅放射線は、体の中を通るあいだに吸収・散乱され、体の深い所から出た信号ほど検出器に届きにくくなります。これを減弱といい、補正をしないと、深部の集積が実際より低く見えてしまいます。補正のために、体の「どこがどれだけ吸収するか」の地図(減弱マップ)が必要です。
PET/CTでは、同じ寝台で撮ったCT画像からこの地図を作ります。以前は、PET単独装置で、外部線源を使った長い透過(トランスミッション)スキャンが必要でしたが、PET/CTではCTがそれを置き換え、検査時間が短縮されました。同時に、CTが解剖学的な位置の特定にも使われます(Townsend 2004)。
CTを使うことで生じるアーチファクト
CTを減弱補正に使うため、CT側の問題が、PETの画像と数値に影響します。主なものは次の通りです(Sureshbabu 2005)。
| 原因 | 何が起きるか |
|---|---|
| 金属(人工関節・ペースメーカーなど) | 見かけ上の局所的な集積が出ることがある(Sureshbabu 2005) |
| 造影剤(CTの静脈・経口) | 見かけ上の局所的な集積が出ることがある(Sureshbabu 2005) |
| 呼吸による位置ずれ | CTの減弱マップとPETの撮像中の呼吸の位置が合わず、補正がずれる。横隔膜のまわりに「バナナ」状の位置ずれ(アーチファクト)が出ることがある(Sureshbabu 2005、Pan 2025) |
| 視野の違い(truncation) | CTとPETの視野が違うと、視野の端で補正に誤差が出る(truncationアーチファクト) |
補正前のPET(非減弱補正像)も一緒に見ると、金属・造影剤による見かけの集積かどうかが判断しやすくなります。FDGの生理的集積や偽陽性はFDG-PETの生理的集積とアーチファクトで整理しています。
呼吸による位置ずれの影響
呼吸で動く横隔膜近くの病変は、CTとPETの位置が合わないと、減弱補正が正しく行われず、集積が低く見えたり、見かけの位置がずれたりします。位置ずれのある胸部の病変51個(30人)で、呼吸同期のCTを使って位置を合わせ直すと、SUVmaxが元の画像より平均34.4%高く測定されました(Pan 2025)。
引用図 呼吸による位置ずれ(胸部の肺結節)

引用:Pan T, Thomas MA, Lu Y, et al. EJNMMI Phys 2025;12:87(Figure 1). CC BY 4.0(無加工)。PMC
上段がCT、下段がPETとCTの融合像です。(a)は元の位置合わせ、(b)はAIを使った位置合わせ、(c)は呼吸同期のCTで位置を合わせた像です。論文の説明では、0.9 cmの肺結節は(c)でのみ位置が合い、SUVmaxは(a)1.87、(b)2.08、(c)4.21でした。
SUVの意味と、変わりやすい条件
SUV(standardized uptake value)は、組織の放射能濃度を、「投与した放射能を体重などで割った平均的な値」で割って、体格・投与量の違いを揃えた指標です。計算は、最大値(SUVmax)、平均値(SUVmean)、ピーク値(SUVpeak)などがあり、体重ではなく除脂肪体重で規格化する方法もあります(Ziai 2016)。
SUVは便利ですが、技術的・物理的・生物学的な多くの要因で変わるため、悪性か良性かを決める単独の閾値としては広く使われていません(Ziai 2016)。たとえば、血糖値が高いと、脳や筋のSUVは低く、肝や血液プールのSUVは高くなります。一方、腫瘍のSUVは、血糖値が200 mg/dLを超える群で有意に低かったものの、それ以下では血糖値との有意な関係はありませんでした(Eskian 2019)。検査前の食事や血糖の管理は、施設の指示に従ってください。
EANMの手順書(2015年のversion 2.0)は、PETを定量的な検査として扱い、装置の品質管理と手順の標準化によって、施設間でSUVを揃えること(harmonisation)を目標にしています(Boellaard 2015)。SUVの読み方や偽陽性・偽陰性は、PET検査(FDG-PET/CT)の基礎知識と読影手順、FDGが集まる正常の組織の例はPET検査による褐色脂肪細胞へのFDG集積とは?で取り上げています。
読者別の使いどころ
| 読者 | 知っておくとよいこと |
|---|---|
| 診療放射線技師 | 偶発・散乱の雑音を減らす撮像条件、CTとPETの位置ずれ(呼吸・体動)の確認、金属・造影剤がある場合の非減弱補正像の確認 |
| 研修医・読影医 | 「補正済みのPET」だけでなく、CTと非減弱補正像も見る。SUVは条件が違うと比べにくいため、同じ施設・同じ条件での変化を重視する |
| 患者さん・一般の方 | PETは体の中の薬の分布を見る検査で、CTと一緒に撮るため1回の検査で位置も確認できる。検査の流れはPET-CT検査とは?わかること・苦手ながん・食事制限と当日の流れで説明している |
PETの種類(FDG以外のPSMAやアミロイドなど)を含めた核医学検査の全体像は、核医学検査(シンチ・PET)の種類と読み方まとめが参考になります。
よくある疑問(Q&A)
Q. 511 keVとは何ですか?
A. 陽電子と電子が消滅するとき、それぞれの質量に相当するエネルギーが、反対向きに飛ぶ2本のγ線に分かれて出ます。1本あたりのエネルギーが511 keVです。この性質があるため、PETは「反対側の検出器2つに同時に入った」ことを手がかりに位置を決められます。
Q. 同時計数のうち、散乱と偶発は何が違いますか?
A. 散乱は、同じ消滅から出た2本のうち1本が体の中で向きを変えたもの、偶発は、別々の消滅から出た2本がたまたま同じ時間の枠に入ったものです。どちらも位置の情報として不正確で、雑音になります(Townsend 2004)。
Q. TOFがあると何がよくなりますか?
A. 病変の見つけやすさ、撮像時間、集積の測定の正確さなどに利点があり、体の大きい人ほど利点が大きいと報告されています(Surti 2015、Vandenberghe 2016)。
Q. PETの画像にCTの金属の影響が出ることはありますか?
A. あります。金属や造影剤があると、CTを使った減弱補正に影響し、見かけの集積が出ることがあります(Sureshbabu 2005)。補正前の画像と合わせて評価します。
検査の準備や結果で気になることがあれば、検査を受けた医療機関に相談してください。
あわせて読みたい:白血球シンチ(標識白血球シンチグラフィ)とは
参考文献
- Townsend DW. Physical principles and technology of clinical PET imaging. Ann Acad Med Singap. 2004;33(2):133-145. PubMed
- Vandenberghe S, Mikhaylova E, D’Hoe E, et al. Recent developments in time-of-flight PET. EJNMMI Phys. 2016;3(1):3. PubMed
- Surti S. Update on time-of-flight PET imaging. J Nucl Med. 2015;56(1):98-105. PubMed
- Sureshbabu W, Mawlawi O. PET/CT imaging artifacts. J Nucl Med Technol. 2005;33(3):156-161. PubMed
- Pan T, Thomas MA, Lu Y, et al. Improving data-driven gated (DDG) PET and CT registration in thoracic lesions: a comparison of AI registration and DDG CT. EJNMMI Phys. 2025;12(1):87. PubMed
- Ziai P, Hayeri MR, Salei A, et al. Role of Optimal Quantification of FDG PET Imaging in the Clinical Practice of Radiology. Radiographics. 2016;36(2):481-496. PubMed
- Eskian M, Alavi A, Khorasanizadeh M, et al. Effect of blood glucose level on standardized uptake value (SUV) in 18F-FDG PET-scan: a systematic review and meta-analysis of 20,807 individual SUV measurements. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2019;46(1):224-237. PubMed
- Boellaard R, Delgado-Bolton R, Oyen WJ, et al. FDG PET/CT: EANM procedure guidelines for tumour imaging: version 2.0. Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2015;42(2):328-354. PubMed
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