
先に結論:SSTR画像は「見つける検査」であると同時に「治療の的があるかを確かめる検査」。PETはSPECTより感度が高く、FDGとの併用で腫瘍の性格まで見える
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何を見ているか | 腫瘍の細胞表面のソマトスタチン受容体。分化の良いNETで多く、高悪性度になると膜の発現が失われやすい |
| SPECTとPET | 111In標識薬のSPECTより、68Ga・64Cu標識のDOTATATE PETのほうが感度・病変検出数で優れる |
| FDG-PETとの関係 | SSTR画像は分化の良いNET、FDGは増殖の速い病変に強い。両方を撮ると腫瘍の性格と治療の選択に役立つ |
| PRRTとの関係 | PRRTの対象は「SSTR陽性」のNET。治療前のSSTR画像が適応判断の土台になる |
| 注意点 | 生理的集積や、NET以外の病変への集積による偽陽性がある。治療の副作用は主に骨髄抑制 |
ソマトスタチン受容体イメージングとは
ソマトスタチンは、体内でホルモンの分泌を抑える働きをもつペプチドです。神経内分泌腫瘍(NET)の細胞は、このソマトスタチンが結合する受容体(SSTR、特にSSTR2)を表面に多く出していることが知られています。そこで、ソマトスタチンに似た薬(オクトレオチドやDOTATATEなどのアナログ)に放射性同位元素を付けて注射すると、受容体の多い場所に薬が集まり、核医学の画像として腫瘍が光って見えます。
CTやMRIが「形」を見る検査であるのに対して、SSTR画像は「受容体があるか」という分子の性質を見る検査です。形が小さくても、受容体があれば光ります。NETの形態診断は膵神経内分泌腫瘍(膵NET)のCT・MRI画像診断で解説しています。
受容体の発現と腫瘍の分化度
SSTRの発現は腫瘍の分化度と関係します。神経内分泌腫瘍・癌99例を調べた研究では、SSTR2Aの発現は臓器による差がなく、グレードと関連しており、高グレードでは細胞膜のSSTR2A発現が失われやすいと報告されています(Wada 2016)。分化の良い(G1・G2)NETで検査が光りやすく、増殖の速い腫瘍ほど暗くなりやすい、というのが基本の考え方です。ここで次の点を押さえると、検査の使い分けが分かりやすくなります。
| 腫瘍の性格 | SSTR画像 | FDG-PET |
|---|---|---|
| 分化の良いNET(G1・G2) | 集積が高いことが多い | 集積は低いことが多い |
| 増殖の速いNET(G2の一部・G3) | 集積が不均一・低下することがある | 集積が高くなりやすい |
| 低分化の神経内分泌癌(NEC) | 低いことが多い | 集積が高い傾向 |
この表は、SSTR発現がグレードと逆相関しやすいこと(Wada 2016)と、高グレード例ではFDGとSSTR画像を組み合わせて評価する考え方(Sorbye 2020、Metser 2024)から整理したものです。同じ患者さんの中でも、病変ごとに性格が違うことがあります。
SPECT(111In)とPET(68Ga・64Cu)の違い
SSTR画像には、大きく2世代あります。従来は、111In(インジウム)で標識したペンテトレオチド(111In-DTPA-オクトレオチド)を用いたシンチグラフィ(平面像やSPECT/CT)が標準でした。その後、DOTA(ドータ)という分子をつないだ68Ga(ガリウム)標識のDOTATATE・DOTATOCや、64Cu(銅)標識のDOTATATEを使うPET/CTが広まりました。
| 項目 | 111In-ペンテトレオチド(SPECT/CT) | 68Ga-DOTA製剤・64Cu-DOTATATE(PET/CT) |
|---|---|---|
| 画像の方式 | ガンマ線を撮るシンチグラフィ・SPECT | 陽電子を撮るPET/CT |
| 解像度・小病変 | 小さな病変は見落としやすい | 解像度が高く、小さな病変も見つけやすい |
| 検査にかかる時間 | 日をまたいで撮像することがある(別の日の追加撮像) | 薬剤の投与後に比較的短い待ち時間で撮像する |
| 感度(文献) | 64Cu-DOTATATEとの比較で87%(Pfeifer 2015) | 68Ga-DOTATATEの感度は90.9%(Deppen 2016)、64Cu-DOTATATEは97%(Pfeifer 2015) |
68Ga-DOTATATEの文献値
肺と消化管膵のNETを対象とした68Ga-DOTATATEのシステマティックレビューとメタ解析(42研究が適格)では、68Ga-DOTATATEは111In-DTPA-オクトレオチドと同じ患者で比べた3研究のすべてで、より高い感度を示しました。通常の画像検査(CTなど)と比べた9研究をまとめると、感度90.9%(95%信頼区間81.4〜96.4%)、特異度90.6%(77.8〜96.1%)でした(Deppen 2016)。ただし、この論文でも、バイアスの少ない集団で両者を直接比較した報告はまだない、と注意されています。
64Cu-DOTATATEとの前向き比較
64Cu-DOTATATEのPET/CTと、111In-DTPA-オクトレオチドのSPECT/CTを、同じ患者112人で比べた前向き研究があります。SPECTが陽性でPETが陰性の例はなく、SPECTでは見逃されPETで見つかった例が10例ありました。診断の感度と精度はPETが97%で、SPECTの87%・88%より有意に高く(P=0.017)、PETでは病変数がSPECTの約2倍、36%では別の臓器にも病変が見つかっていました(Pfeifer 2015)。
このように、同じ「SSTRを狙う画像」でも、PETのほうが小さな病変を拾いやすくなっています。どの薬剤を使えるかは施設によって異なるため、検査の予約時に確認してください。
症例 40歳代女性 ACTH産生の転移性肝NET

引用:Alsheikhly MAS, Mansour SS, Telfah H, Elaffandi A. Ectopic Cushing’s syndrome. A metastatic hepatic neuroendocrine tumour: case report and literature review. J Surg Case Rep. 2026(Figure 1). PMC(CC BY 4.0)
ACTH産生の転移性肝神経内分泌腫瘍の症例で撮られたDOTATATE PET(横断像)です。症例ページでは、全身のPETで大きな腹部の病変が見つかり、図には「中等度から高度」の集積があると説明されています。MRIでは、肝の左葉から連続する、壁の厚い嚢胞状の病変(約14cm)でした。
生理的集積と偽陽性
SSTR画像には、病気でなくても集積する場所があります。脾臓・腎臓・肝臓・下垂体・副腎などが代表で、膵の鉤部が淡く光ったり、副脾が腫瘍と紛らわしく見えたりします。炎症(肉芽腫や術後の変化など)でも、活性化した炎症細胞に受容体があるため、光ることがあります。具体的な場所と見分け方は、既存記事のPET以外の核医学の生理的集積と偽陽性にまとめました。膵内の副脾とNETの見分け方は膵内副脾のCT・MRIで解説しています。
読み方のコツは、「SSTR画像の集積」を単独で判断せず、CTやMRIの形の情報と突き合わせることです。集積があっても、形が正常の副脾や生理的な集積のパターンなら腫瘍とは限りませんし、逆に、受容体が少ない腫瘍は光りません。
FDG-PETとの使い分け(高悪性度の評価)
FDG-PETは、ブドウ糖の取り込みが多い病変を示す検査です。分化の良いNETではFDGの集積が低いことが多く、従来は低分化な神経内分泌癌の評価に使われてきました。一方で、SSTR画像だけでは見えない高悪性度の病変を、FDGが拾うことがあります。
分化の良いグレード2・3のGEP-NET 40人に、68Ga-DOTATATE PETと18F-FDG PETを両方行った前向き研究があります。2つの画像を合わせて評価する「NETPETスコア」の分布は幅広く、FDG PETを追加したあとに、42.5%の患者さんで治療の種類が変わりました(例:全身治療からPRRTへ、減量手術から全身治療へ)。低いスコアの群では、FDGとDOTATATEのSUVmax比が低くなっていました(Metser 2024)。
高悪性度のGEP-NEN(WHO G3)でPRRTを検討するときも、FDG PET/CTとSSTR画像の併用は、患者選択に重要な情報になると整理されています(Sorbye 2020)。つまり、
- SSTRが高く、FDGが低い → 受容体を狙う治療(ソマトスタチンアナログ・PRRT)が向きやすい
- SSTRもFDGも高い → 受容体の標的はあるが、増殖が速い病変も混ざっている
- FDGが高く、SSTRが低い → 受容体を狙う治療は効きにくい。別の治療を検討
という見方になります。FDG-PETの一般的な読み方は核医学検査(シンチ・PET)の種類と読み方まとめで、PETの原理はPETの原理で整理しています。
PRRT(ルテチウム治療)の適応をSSTR画像で判断する
PRRT(ペプチド受容体放射性核種治療)は、SSTRに結合する薬に、治療用の放射性同位元素(177Lu:ルテチウム)を付けて注射し、腫瘍の中から放射線を当てる治療です。同じ「SSTRを狙う薬」で画像診断(検査)と治療の両方を行うため、「セラノスティクス」と呼ばれます。
この治療が効くには、腫瘍に受容体があることが前提です。治療前に、SSTR画像で「治療薬が集まるか」を確かめます。PRRTの対象は、ソマトスタチン受容体陽性のNETです。
NETTER-1試験の結果
進行した中腸(小腸など)のNETで、SSTR陽性、かつ標準量のオクトレオチドLARで進行した229人を、177Lu-DOTATATE群と高用量のオクトレオチドLAR群に分けた第3相試験(NETTER-1)があります。
- 20か月時点の無増悪生存率は、177Lu-DOTATATE群65.2%、対照群10.8%。
- 奏効率は18%対3%(P<0.001)でした(Strosberg 2017)。
- 最終解析(中央値の追跡約76か月)の全生存期間の中央値は、177Lu-DOTATATE群48.0か月、対照群36.3か月で、差は統計学的に有意ではありませんでした(HR 0.84、P=0.30)。ただし、11.7か月の差は臨床的に意味があるかもしれないと考察されています(Strosberg 2021)。
つまり、病気の進行を抑える効果は明確でしたが、全生存期間での優越は確認できなかった、というのが長期の結果です。
高悪性度(G3)への応用
PRRTは、グレード1・2のGEP-NETでSSTR画像で集積が高いものに確立した治療です。高悪性度(WHO G3)の症例では、集積の高い例で効く可能性が報告されています。4つの研究(10例以上)を集めたレビューでは、3つの研究で奏効率31〜41%、病勢制御率69〜78%でした。無増悪生存は、NET G3で19か月、Ki-67が55%以下のNECで11か月、55%を超えるNECで4か月でした(Sorbye 2020)。Ki-67が高い例ほど不利で、集積が高い例に限って検討すべきとまとめられています。
症例 60歳代男性 SSTR陰性の病変が混ざる小腸NET

引用:Resch K, Hung R, Abele J. Gastrointestinal neuroendocrine tumor with discordant metastatic disease on 111In-pentetreotide SPECT/CT, 18F-DOPA PET/CT and 68Ga-HA-DOTATATE PET/CT. Eur J Hybrid Imaging. 2022(Figure 3). PMC(CC BY 4.0)
60歳代男性の小腸NETの症例で、同じ時期に3種類の画像で撮ったときの骨盤の横断像です。(a)は18F-DOPA PET/CT、(b)は68Ga-DOTATATE PET/CT、(c)は111In-ペンテトレオチド SPECT/CTです。右下腹部の腸間膜の0.3cmのリンパ節は、(a)では強い集積を示しますが、(b)(c)では集積がありません。
この症例では、111In-ペンテトレオチド SPECT/CTでは転移が指摘できず、68Ga-DOTATATE PETでは肝と腹膜の転移が見つかりました。PETで見つかった病変の数は、18F-DOPA PETのほうがさらに多く、SSTR画像だけでは病変の一部しか見えない場合もあることがわかります。DOTATATE PETは、PRRTの適応を調べる目的で行われました(Resch 2022)。SSTR画像で光らない病変が多いと、PRRTだけで全体をカバーできない可能性があると考えられます。
PRRTの副作用(概略)
NETTER-1では、177Lu-DOTATATE群のグレード3または4の好中球減少・血小板減少・リンパ球減少は、それぞれ1%・2%・9%で、腎毒性の所見は観察期間内にありませんでした(Strosberg 2017)。長期の安全性では、治療に関連する重篤なグレード3以上の有害事象は111人中3人(3%)、骨髄異形成症候群は2人(2%)でした(Strosberg 2021)。
このように、主な副作用は骨髄抑制(血球の減少)で、まれに骨髄異形成症候群が報告されています。治療の前後は血液検査での経過観察が前提です。放射線の安全管理や、治療後の生活上の注意は、治療を行う施設の説明に従ってください。
画像診断のまとめ(どれを選ぶか)
| 目的 | 画像の選び方 |
|---|---|
| NETの局在・転移の探索 | CT・MRIと、SSTR PET(68Ga・64Cu)。SPECTは見落としが増える |
| PRRTの適応判断 | SSTR画像で、治療の標的になる病変に集積があるかを確認 |
| 悪性度の高い病変の評価 | FDG-PETを併用し、SSTRとFDGの組み合わせで性格を見る |
| 偽陽性の整理 | 生理的集積・副脾・炎症を、CT・MRIの形の情報と合わせて判断 |
治療の選択は、画像だけでなく、病理(グレード・Ki-67)、症状、他の治療歴をあわせて、主治医と専門のチームで決めます。
よくある疑問(Q&A)
Q. SSTR画像で光らない場合、PRRTはできませんか?
A. PRRTの適応は、ソマトスタチン受容体陽性のNETです。治療の標的になる病変に集積が乏しいと、PRRTの効果は期待しにくく、別の治療を検討します。FDGが高い病変が混ざる場合の考え方は、Metser 2024・Sorbye 2020を参照してください。
Q. DOTATATE PETとFDG-PETは、どちらを受ければいいですか?
A. 目的が違います。分化の良いNETではSSTR画像、高悪性度や性格の評価が必要な場合はFDGを併用します。両方を撮ることで、42.5%の患者さんで治療の方針が変わったという報告があります(Metser 2024)。
Q. 検査で膵や脾臓に集積があると言われました。腫瘍ですか?
A. 正常な集積や副脾のこともあります。形の画像と合わせて判断するため、主治医・読影した医師に確認してください。
Q. 111InのSPECTで異常なしと言われました。PETも必要ですか?
A. PETは小さな病変の検出に優れ、SPECTで陰性だった病変がPETで見つかる例が報告されています(Pfeifer 2015、Resch 2022)。症状や腫瘍マーカーなどから疑いが強い場合は、主治医に相談してください。
あわせて読みたい:膵神経内分泌腫瘍(膵NET)のCT・MRI画像診断
あわせて読みたい:心筋血流PETとは
参考文献
- Deppen SA, Blume J, Bobbey AJ, et al. 68Ga-DOTATATE Compared with 111In-DTPA-Octreotide and Conventional Imaging for Pulmonary and Gastroenteropancreatic Neuroendocrine Tumors: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Nucl Med. 2016;57(6):872-8. PubMed
- Pfeifer A, Knigge U, Binderup T, et al. 64Cu-DOTATATE PET for Neuroendocrine Tumors: A Prospective Head-to-Head Comparison with 111In-DTPA-Octreotide in 112 Patients. J Nucl Med. 2015;56(6):847-54. PubMed
- Strosberg J, El-Haddad G, Wolin E, et al. Phase 3 Trial of (177)Lu-Dotatate for Midgut Neuroendocrine Tumors. N Engl J Med. 2017;376(2):125-135. PubMed
- Strosberg JR, Caplin ME, Kunz PL, et al. (177)Lu-Dotatate plus long-acting octreotide versus high‑dose long-acting octreotide in patients with midgut neuroendocrine tumours (NETTER-1): final overall survival and long-term safety results from an open-label, randomised, controlled, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2021;22(12):1752-1763. PubMed
- Metser U, Nunez JE, Chan D, et al. Dual Somatostatin Receptor/(18)F-FDG PET/CT Imaging in Patients with Well-Differentiated, Grade 2 and 3 Gastroenteropancreatic Neuroendocrine Tumors. J Nucl Med. 2024;65(10):1591-1596. PubMed
- Sorbye H, Kong G, Grozinsky-Glasberg S. PRRT in high-grade gastroenteropancreatic neuroendocrine neoplasms (WHO G3). Endocr Relat Cancer. 2020;27(3):R67-R77. PubMed
- Wada H, Matsuda K, Akazawa Y, et al. Expression of Somatostatin Receptor Type 2A and PTEN in Neuroendocrine Neoplasms Is Associated with Tumor Grade but Not with Site of Origin. Endocr Pathol. 2016;27(3):179-87. PubMed
- Resch K, Hung R, Abele J. Gastrointestinal neuroendocrine tumor with discordant metastatic disease on 111In-pentetreotide SPECT/CT, 18F-DOPA PET/CT and 68Ga-HA-DOTATATE PET/CT. Eur J Hybrid Imaging. 2022;6(1):13. PubMed
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