前立腺とは

  • サイズは個人差が大きいが、通常は3cm×3cm大のクリの実の形態。
  • 体積(経直腸超音波検査による計測)は約20〜30ml以下が正常サイズで、それ以上は肥大。
  • 前立腺液は精液の成分の3割を占める。精液の液化と殺菌、精子の活動性の維持に関わる。
  • 前立腺液はpH6.5と弱酸性。量が2倍の精嚢液が弱アルカリであり、精液全体は弱アルカリ性

前立腺の血管

  • 動脈:内腸骨動脈→下膀胱動脈。
  • 静脈:Santorini静脈叢、前立腺膀胱静脈叢→内腸骨静脈。
  • リンパ系:内外腸骨リンパ節へ流入。

前立腺の解剖

※精嚢と前立腺は射精管により連続している。

前立腺の解剖をより理解するために

  1. 辺縁域、移行域、中心域を理解する。
  2. 高さを意識する。
  3. 膜を理解する。
  4. その他重要解剖を理解する。
      ・精嚢
      ・神経血管束(NVB)

①辺縁域、移行域、中心域を理解する。

  • 辺縁域(PZ:peripheral zone)腺(水の入った管)であり、放射状に分布する。だからT2WIで高信号である。癌はそれを無視して存在する。癌の75%はここから。前立腺炎も生じやすい部位。
  • 移行域(TZ:transition zone)は豊富な間質(肉)である。腺は少ない。だからT2WIで低信号である。前立腺肥大が生じる場所。肥大は腺と間質が様々な割合で肥大するため、腺組織優位型ならば多数の腺過形成結節が見られ、間質優位型の場合は均一な低信号になる。癌の25%程度発生。
  • 中心域(CZ:central zone)は射精管を取り囲む腺組織。腺の他、線維と平滑筋からなる。T2WIで低信号。底部(頭側)に存在し、射精管を通じて精嚢と連続する。これを辺縁域のPCと誤診しないように注意する。

prostate5

このように”前立腺は3つの区域から成ります。特に癌が生じやすい辺縁域が重要です。水の入った腺構造であり、放射状に広がる管構造を意識しましょう。

管に沿って分布する病変は炎症であることが多い一方、癌の場合は管の構造を無視して伸展するのがポイントです。

管に沿って分布する病変
  • 前立腺生検後の血液成分は導管に沿って広がる(楔形〜扇形)
    ∵前立腺液はクエン酸(抗凝固作用)を含有しているため、生検すると出血しても固まりにくく、導管に沿って広がる。
  • 前立腺炎症性変化の広がりも、導管に沿って広がる。管の壁があるから、外に広がれない。ダイナミックで徐々に造影される。PCのパターンとは異なる。

▶腺構造がわかりやすい症例

prostate1

prostate2

動画でチェックする

②高さを意識する。

  • 横断像で、どこの高さ(base=底部、midgland=中部、apex=尖部)なのか意識する。

prostate3

▶前立腺の横断像と矢状断像の解剖の関係

prostateanatomy

・病変があった場合レポートには高さ、領域(PZ/TZ/CZ)の他に、◯時方向と記載する。

例)下図のように病変を認めた場合…

prostate6

前立腺midglandの高さ、辺縁域(PZ)の4時方向に、T2WIにて○cm大の低信号腫瘤を認める。

などと記載する。

▶動画による前立腺の3つの領域の確認



③膜を理解する。

  • 前線維筋組織(AFS:anterior fibromusclar stroma)
  • 解剖学的被膜(anatomical capsule)
  • 外科的被膜(surgical capsule)
  • Denonvilliers筋膜

prostate4

  • 前線維筋組織(AFS:anteriorfibromusclarstroma):前立腺の前方腹側を占める三日月状の組織。腺組織はほとんどない。排尿などに関与するとされるが、その機能の詳細ははっきりしない。平滑筋や線維成分を反映しT2WIで低信号
  • 解剖学的被膜(anatomical capsule):前立腺被膜とも単に呼ばれる。前立腺自身を取り囲む被膜のこと。前方ではAFSと一体となり、明瞭ではない。
  • 外科的被膜(surgical capsule)移行域と辺縁域を境界する被膜BPHがないと明瞭でない。出血が少なく剥離可能。TUR-Pでは外科的被膜と肥大結節の間を剥離し切除される。そのためこの名称。

より細かく・・・

  • 外側骨盤筋膜(lateral pelvic fascia)
  • 内側骨盤筋膜(encopelvic fascia)
  • 肛門挙筋筋膜(levator fascia)

膜の理解は被膜外浸潤を診断する上でも非常に大事です。

実際のMR画像ではわかりにくいこともしばしばありますが、正常そうなところから囲みはじめるようにしましょう。

④その他重要解剖を理解する。

  • 精嚢(seminal vesicle)
  • 神経血管束(NVB)
精嚢
  • 前立腺上背側に存在。
  • 膀胱を覆う腹膜が精嚢も覆った後、Denonvilliers筋膜に移行、直腸前面を覆う。(ここでも膜を理解せよ)
精囊の評価
  • 前立腺の上背側に存在し、横断像ではハの字型を示す。
  • T1WIでは低信号。T2WIでは内腔の精囊液が高信号、隔壁部分が低信号。
  • 造影T1強調像では隔壁のみ増強効果を認める。
神経血管束(NVB)

いずれも前立腺癌の被膜外浸潤や精囊浸潤といった、ステージ決定に重要な構造物。

前立腺の両側の後外側(5,7時方向)に静脈とともに認められる。

nvb-neurovascular-bundle

ご案内

腹部画像診断を学べる無料コンテンツ

4日に1日朝6時に症例が配信され、画像を実際にスクロールして読影していただく講座です。現状無料公開しています。90症例以上あり、無料なのに1年以上続く講座です。10,000名以上の医師、医学生、放射線技師、看護師などが参加中。

胸部レントゲンの正常解剖を学べる無料コンテンツ

1日3分全31日でこそっと胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学んでいただく参加型無料講座です。全日程で簡単な動画解説付きです。

画像診断LINE公式アカウント

画像診断cafeのLINE公式アカウントで新しい企画やモニター募集などの告知を行っています。 登録していただくと特典として、脳の血管支配域のミニ講座の無料でご参加いただけます。