院内肺炎・NHCAP 画像の特徴とX線で見えないとき

入院中の患者さんが発熱して、胸のX線で「院内肺炎かも」と言われました。NHCAPという言葉も見かけますが、院内肺炎とは何が違うのですか?
院内肺炎(HAP)は入院して48時間以上たってから起こる肺炎、NHCAPは介護施設に入所している人や、介護が必要な高齢者などに起こる肺炎で、どちらも日本の高齢者では誤嚥が関わることが多いのが特徴です。画像では「小さな影が両側に散らばる」見え方が多く、X線では見えにくいこともあります。見え方と、肺炎に似た病気までまとめます。

先に結論:院内肺炎・NHCAPは誤嚥と気管支肺炎パターンを意識し、X線で陰性でも否定しない

項目 ポイント
院内肺炎(HAP) 入院時にはなく、入院して48時間以上たってから起こる肺炎。気管挿管後48〜72時間以降に起こるものは人工呼吸器関連肺炎(VAP)
NHCAP 介護施設入所者、最近退院した人、介護が必要な高齢者や障害のある人、外来で透析・化学療法などを受けている人の肺炎。日本独自の分類で、2024年の成人肺炎診療ガイドラインでも残されている
画像の特徴 小さな浸潤影が両側に散らばる気管支肺炎パターンが多い。誤嚥では重力のかかる部位に小葉中心性の小結節が出る
X線の限界 寝たきりの人では撮影条件が悪く、X線で陰性でも肺炎のことがある。CTのほうが見つけやすい
注意 心不全・肺塞栓・薬剤性肺障害・肺癌などが肺炎に似て見える。抗菌薬で良くならないときは診断を見直す

院内肺炎・NHCAP・市中肺炎の違い

肺炎は「どこで、どんな背景の人にかかったか」で分類します。分類は治療方針や耐性菌のリスクの考え方に関わりますが、画像で3つを見分けられるわけではありません。

分類 内容
市中肺炎(CAP) NHCAPと院内肺炎を除いた肺炎
NHCAP(医療・介護関連肺炎) ①介護施設・療養病床の入所者、②最近退院した人、③介護が必要な高齢者・障害のある人、④外来で透析・抗菌薬治療・化学療法・免疫抑制療法など血管内治療を定期的に受けている人
院内肺炎(HAP) 入院後48時間以降に発症した肺炎。気管挿管後48〜72時間以降に起こるものは人工呼吸器関連肺炎(VAP)(Candel 2023)

(Yatera 2025)

米国では、医療関連肺炎(HCAP)という似た分類が2019年のATS/IDSAガイドラインで使われなくなり、市中肺炎に統合されました。一方、日本呼吸器学会の成人肺炎診療ガイドライン2024では、高齢者の肺炎への対策を重視してNHCAPが残されています(Yatera 2025、Mukae 2025)。

NHCAPはどんな人に起こるか

NHCAPの596人を調べた日本の多施設前向き調査では、平均年齢が81.5歳で、94.1%に基礎疾患があり、68.6%が誤嚥性肺炎の可能性が高いと判断されていました。30日死亡率は11.9%でした(Imamura 2022)。

別の前向き研究では、NHCAP 192例と市中肺炎114例を比べ、NHCAPで30日死亡率が高く(10.9%と3.5%)、入院期間も長く(中央値12日と8日)、NHCAPの63.5%が誤嚥性肺炎でした(Fukuyama 2013)。誤嚥の背景や全身状態が、肺炎の画像そのものよりも予後に関わることがわかります。

画像の特徴:気管支肺炎パターンと誤嚥

院内肺炎では、小さな浸潤影が両側に散らばる気管支肺炎がよくみられます。病原体の毒性が強い、宿主の抵抗力が弱いなどの状況で起こりやすく、小さな影は後から癒合して大きな影になります(Ghasi 2017)。院内肺炎では斑状の気管支肺炎が最も多く、グラム陰性菌が原因のことが多いと整理されています(Candel 2023)。

見え方 考えること
両側に散らばる小さな浸潤影、後から癒合 気管支肺炎パターン。院内肺炎・誤嚥性肺炎で多い(Ghasi 2017)
気管支壁肥厚・小葉中心性の小結節(CT) 感染性の細気管支炎。初期にみられることがある(Ghasi 2017)
重力のかかる部位の小結節・浸潤影 誤嚥。気管支内に吸引物があるため、エアブロンコグラムが目立たないことが多い(Ghasi 2017)
すりガラス影主体 ウイルス性肺炎を含め、ほかの原因も考える(Candel 2023)
空洞・結節 アスペルギルスなどの真菌感染症を考える。結節は細菌・抗酸菌・ノカルジアでも出る(Candel 2023)

誤嚥性肺炎の好発部位や小葉中心性分布の見方は誤嚥性肺炎のCT画像所見と好発部位、肺炎のCT画像診断のポイントにまとめています。ただし画像だけで原因菌を決めることはできず、画像は微生物検査の代わりにはなりません(Candel 2023)。

症例 誤嚥による右下葉の肺炎

誤嚥による右下葉の肺炎 胸部CT 肺野条件 右下葉浸潤影と左下葉の小葉中心性結節
引用:Ghasi RG, et al. Indian J Radiol Imaging. 2017;27(1):23-32(Figure 3)、CC BY-NC-SA 3.0(図は加工していません)

右下葉に葉全体に及ぶ浸潤影があり、気管支内に吸引物があるためエアブロンコグラムは見えません。左の下葉の背側には、小葉中心性の小結節が散らばっています。誤嚥の症例として示された画像です。

誤嚥のリスクを背景から拾う

日本呼吸器学会の成人肺炎診療ガイドライン2024では、誤嚥性肺炎が独立した項目として扱われています。誤嚥性肺炎は「誤嚥のリスクがある人に起こった肺炎」と定義され、2017年版では院内肺炎・NHCAPの章でのみ触れられていました(Yatera 2025)。画像を見る前に、次のような背景を確認しておくと、重力のかかる部位の陰影の意味づけがしやすくなります。

誤嚥の原因 具体例
嚥下機能の低下 意識障害、全身の衰弱、長期の臥床、脳血管障害、認知症・パーキンソン病などの神経疾患
医療行為に関連するもの 気管切開、経管栄養、頭頸部手術、鎮静、口の渇きを起こす薬
胃・食道の機能低下 胃食道逆流、食道の機能異常・狭窄、胃切除後

(Yatera 2025)

高齢者では、発熱や咳、白血球の上昇といった典型的な症状が出ないこともあり、食欲が落ちただけで始まる例があるとされます(Yatera 2025)。画像の影が唯一の手がかりになる場面もあるため、症状が乏しいことを理由に胸部X線やCTの確認を後回しにしないことが大切です。

誤嚥は一度だけでなく繰り返し起こることが多く、同じ部位に肺炎を繰り返す場合は、誤嚥だけでなく気道の閉塞や中枢型肺癌がないかも見直します(Yatera 2025)。前回の画像と並べて、影が同じ場所に出ているのか、別の部位に移っているのかを確かめてください。

X線で見えない院内肺炎:CTの役割

院内肺炎ではX線の感度が低いことがあります。理由は、寝たきりで撮影条件がそろわない、基礎疾患が重なっている、重症で免疫が弱っているなどで、症状が早く出ても影がまだX線に写らないことがあるためです。CTはX線より最大5日早く肺炎を示す所見を捉えることがあり、早期の診断に役立つとされます(Candel 2023)。

NHCAPが疑われた救急受診の162人を調べた研究では、CTで肺炎の浸潤影を認めた147人のうち、X線では15人(10.2%)で浸潤影を指摘できませんでした。死亡の危険因子は、酸素飽和度の低下、血中尿素窒素の上昇、CTでの両側の浸潤影でした(Haga 2017)。

ベッドサイドのX線で見えにくい場面は、息切れ・呼吸困難の胸部画像も参考にしてください。

肺炎に似た病気:抗菌薬で良くならないとき

高齢者や入院患者の肺炎では、浸潤影を作る別の病気が混ざっていることがあります。抗菌薬で良くならないときは診断を見直します(Yatera 2025)。

分類 主な病気 メモ
CTや心エコーで見分けやすい 心不全・尿毒症肺・肺塞栓 肺塞栓は、酸素化が良くならない・胸水・胸痛・Dダイマー高値があれば疑い、造影CTで診断する
気管支鏡や病理の確認が要る 急性間質性肺炎・ARDS・好酸球性肺炎・器質化肺炎・過敏性肺炎・薬剤性肺障害・放射線肺臓炎・肺胞出血・肺癌・リンパ増殖性疾患 浸潤性粘液性腺癌は細菌性肺炎に似た画像になる
気道のドレナージ障害 中枢型肺癌・気道異物・繰り返す誤嚥・気管支拡張症 閉塞部位より末梢に肺炎をつくる
肺炎の合併症 膿胸・肺膿瘍 抗菌薬が届きにくい病変

(Yatera 2025)

気管支の閉塞による肺炎は閉塞性肺炎を、肺水腫との見分けは肺水腫・心不全の胸部レントゲン・CTを参照してください。

読影のチェックリスト

順番 確認すること
1 入院後の日数、気管挿管の有無、誤嚥のリスク(意識障害・嚥下障害・寝たきり)
2 撮影条件(体位・吸気・回旋)。X線が陰性でも臨床で肺炎が疑わしければCTを考える
3 分布:重力のかかる背側・下葉か、両側に散らばるか、区域性か
4 気管支壁肥厚・小葉中心性の小結節、エアブロンコグラム、胸水の有無
5 肺炎に似た病気(心不全・肺塞栓・薬剤性・肺癌)を除外する材料はないか
6 抗菌薬で改善しないときは前回画像と比べ、診断を見直す

よくある疑問(Q&A)

Q. NHCAPは今も使われていますか?
A. 米国のHCAPは2019年に使われなくなりましたが、日本呼吸器学会の成人肺炎診療ガイドライン2024ではNHCAPが残されています(Yatera 2025、Mukae 2025)。

Q. 胸部X線が正常なら院内肺炎ではありませんか?
A. 否定はできません。寝たきりの人や免疫が弱い人では、X線に写らない肺炎があります。NHCAPの研究では、CTで確認できた肺炎のうち約1割がX線で指摘できませんでした(Haga 2017、Candel 2023)。

Q. 抗菌薬を使っても熱が下がらないときは?
A. 耐性菌だけでなく、肺塞栓・心不全・薬剤性肺障害・肺癌・膿胸など別の病気がないかを見直します(Yatera 2025)。気になる症状が続く場合は医療機関に相談してください。

Q. 誤嚥性肺炎とNHCAPは同じものですか?
A. 別の概念です。NHCAPは患者さんの背景による分類で、誤嚥性肺炎は誤嚥のリスクがある人に起こった肺炎を指します。誤嚥性肺炎は市中肺炎にもNHCAPにも多く、NHCAPの63.5%が誤嚥性肺炎だった研究があります(Yatera 2025、Fukuyama 2013)。

あわせて読みたい:ICUのポータブル胸部X線の読み方、EGFR・ALK肺癌の画像所見

参考文献

  1. Yatera K, Yamasaki K. Management of the Diagnosis and Treatment of Pneumonia in an Aging Society. Intern Med. 2025;64(4):503-517. PubMed
  2. Mukae H, Iwanaga N, Horita N, et al. The JRS guideline for the management of pneumonia in adults 2024. Respir Investig. 2025;63(5):811-828. PubMed
  3. Candel FJ, Salavert M, Estella A, et al. Ten Issues to Update in Nosocomial or Hospital-Acquired Pneumonia: An Expert Review. J Clin Med. 2023;12(20). PubMed
  4. Imamura Y, Miyazaki T, Watanabe A, et al. Prospective multicenter survey for Nursing and Healthcare-associated Pneumonia in Japan. J Infect Chemother. 2022;28(8):1125-1130. PubMed
  5. Fukuyama H, Yamashiro S, Tamaki H, et al. A prospective comparison of nursing- and healthcare-associated pneumonia (NHCAP) with community-acquired pneumonia (CAP). J Infect Chemother. 2013;19(4):719-26. PubMed
  6. Haga T, Fukuoka M, Morita M, et al. Radiographic evaluation of nursing- and healthcare-associated pneumonia. Geriatr Gerontol Int. 2017;17(1):41-47. PubMed
  7. Ghasi RG, Bajaj SK. Infectious pneumonia in the immunocompetent host: What the radiologist should know. Indian J Radiol Imaging. 2017;27(1):23-32. PubMed

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