先に結論:緊張性気胸の救急対応
- 緊張性気胸はショック・頸静脈怒張・片側の呼吸音消失・気管の偏位などで臨床的に診断し、ショックがあれば胸部X線を待たずにすぐ脱気します
- 緊急脱気は太い留置針で胸腔を穿刺し(第2肋間鎖骨中線、または第4〜5肋間の中腋窩線より前)、続けて胸腔ドレーンを入れます
- 画像では縦隔・気管の健側偏位、患側横隔膜の平低化・反転が手がかりで、仰臥位X線ではdeep sulcus signにも注意します
- 長く虚脱していた肺を急に広げると再膨張性肺水腫が起こることがあるため、ドレーンはまず水封で管理します
緊張性気胸の存在の有無はどうやって確認する?
- 病歴:失神のエピソード、進行する呼吸困難感
- 身体所見:ショック、頸静脈怒張、気管の偏位、皮下気腫、片側呼吸音消失、打診鼓音
- X線検査:胸部X線で心臓、縦隔の偏位
※緊張性気胸は臨床診断。ショックを伴えば胸部X線を待たずに緊急脱気する(緊張性でない気胸の確認には胸部X線)。緊張性気胸の現れ方は呼吸状態で異なり、系統的レビューでは低酸素は自発呼吸例の50.0%に対し人工呼吸中の例では91.8%にみられ、低血圧・心停止のオッズは人工呼吸中の例で12.6倍・17.7倍でした。人工呼吸中の患者では数分で循環が破綻することが多いため、急な酸素飽和度低下と血圧低下があれば真っ先に疑います。
症例 20歳代男性 人工呼吸管理中のICU患者で急な酸素飽和度低下と頻脈

引用:Radiopaedia(Tension pneumothorax)
ポータブル胸部X線の正面像です。右胸腔に大きな気胸があり、右胸郭が黒く(透過性が高く)見えます。縦隔は大きく左へ押され、気管内チューブ・気管・心陰影がいずれも左へ偏位しています。
緊張性気胸の画像所見(胸部X線・CT)
- 胸部X線:患側の肺の虚脱と透過性亢進に加え、縦隔・気管の健側偏位、患側横隔膜の平低化・反転、肋間の開大が見られます。
- 仰臥位(ポータブル):空気が前方・下方にたまるため胸膜線が見えにくく、肋骨横隔膜角が深く黒く切れ込むdeep sulcus signが手がかりになります。
- CT:大量の胸腔内ガスに加え、縦隔の健側偏位、患側横隔膜の反転、心臓・大静脈の圧排があれば胸腔内圧の上昇を示唆します。
外傷の多施設研究では、緊張性気胸133例中59例は循環が保たれていたためCTやX線で診断され、生存率は画像で診断された群83%、臨床で診断された群80%で差はありませんでした(Naumann 2024)。ただし、ショックがあれば画像を待たずに脱気する原則は変わりません。
(緊張性)気胸への対処は?治療は?
・臨床所見から緊急脱気の必要性を判断する(緊張性気胸が疑われショックを伴えば胸部X線を待たない)。
・緊急ドレナージは
- 胸腔穿刺…鎖骨中線上第2肋間(第3肋骨上縁)を太めの留置針で穿刺する。成人ではATLS第10版で第4〜5肋間の中腋窩線より前も推奨されている(胸壁が厚いと鎖骨中線では届かないことがある)。屍体研究では、5cm針が胸腔に達したのは第5肋間中腋窩線で100%、第2肋間鎖骨中線で58%であった。
- 胸腔チューブ…穿刺で減圧したあとも、続けて胸腔ドレーンを留置する。
緊急ドレナージの方法は?
- 肋骨上縁の切開予定部位にマーキング
- 皮下麻酔
- 深く胸膜下に麻酔(シリンジをひいたときに空気が引ける少し手前を麻酔)
- メスで脂肪が見えるまで横切開
- 鉗子で広げていく
- 空気が返ってきたところでトロッカーを入れる
- 透視下で肺尖部に持っていく
- 刺入部を固定する(絹糸でマットレス縫合→遊びを作って固定)
- テープでドレーンを固定する
- ドレーンバックを調節する
緊張性気胸、完全虚脱の場合は?
→水封(陰圧をかけない)虚脱が少ない場合
→弱い陰圧(吸引)をかける
医師国家試験ではこう出た
第120回医師国家試験 E26(問題文は要点を抜粋)
40歳の女性。突然の胸痛と呼吸困難で搬入された。血圧80/60 mmHg、頸静脈怒張あり。左前胸部の呼吸音が消失し、左胸部は打診で鼓音。まず行うのはどれか。
a 胸腔ドレナージ/b 昇圧薬投与/c 赤血球輸血/d 用手的陽圧換気/e β刺激薬投与

別冊No.2:胸部X線写真
出典:厚生労働省「第120回医師国家試験問題および正答」を加工して作成(図の切り抜き)
▶ 正答と読み方を見る(タップで開く)
正答:a 胸腔ドレナージ
左胸腔の透過性が亢進し、左肺は内側へ虚脱しています。緊張性かどうかは、画像の気胸だけでなく低血圧・頸静脈怒張と合わせて判断します。循環が不安定なら、追加の画像検査のために減圧を遅らせません。
他の部位の問題を見る(医師国家試験の画像問題 部位別まとめ)
あわせて読みたい:画像の重要所見(緊急で伝えるべき所見)とは
参考文献
- Inaba K, Branco BC, Eckstein M, et al. Optimal positioning for emergent needle thoracostomy: a cadaver-based study. J Trauma. 2011;71(5):1099-103. PubMed
- Roberts ME, Rahman NM, Maskell NA, et al. British Thoracic Society Guideline for pleural disease. Thorax. 2023;78(Suppl 3):s1-s42. PubMed
- Laan DV, Vu TD, Thiels CA, et al. Chest wall thickness and decompression failure: A systematic review and meta-analysis comparing anatomic locations in needle thoracostomy. Injury. 2016;47(4):797-804. PubMed
- Roberts DJ, Leigh-Smith S, Faris PD, et al. Clinical Presentation of Patients With Tension Pneumothorax: A Systematic Review. Ann Surg. 2015;261(6):1068-78. PubMed
- Naumann DN, Sellon E, Mitchinson S, et al. Occult tension pneumothorax discovered following imaging for adult trauma patients in the modern major trauma system: a multicentre observational study. BMJ Mil Health. 2024;170(2):123-129. PubMed
あわせて読みたい:ICUのポータブル胸部X線の読み方|気管チューブ・中心静脈カテーテル・胃管の位置と挿入後の合併症の確認
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →
