Joubert症候群 臼歯徴候(MTS)の見つけ方

お子さんの脳MRIで「臼歯徴候」と言われました。Joubert症候群とはどんな病気で、画像では何を確認すればよいですか?
Joubert症候群は、小脳虫部と脳幹の発生の異常による、まれな病気です。MRIの臼歯徴候(molar tooth sign)が必須の特徴です。画像で見る順番、似た病気との違い、腎臓・肝臓・眼など全身の評価までを、文献の数字を交えて整理します。

先に結論:Joubert症候群の画像の決め手は「臼歯徴候」。見つけたら全身の合併も調べる

項目 ポイント
何か 小脳虫部と中脳・橋の発生の異常。MRIの臼歯徴候(MTS)が必須(Brancati 2010)
頻度 推定で出生8万〜10万人に1人。実際は多いかもしれない(Brancati 2010)
臼歯徴候 深い脚間窩+太く長く水平に走る上小脳脚(Poretti 2016)
合併 網膜・腎臓・肝臓・指などに異常を伴うことがある。MTSの次は全身の評価(Brancati 2010)
区別 虫部が主に障害されるのはJoubertとDandy-Walker。PCHでは半球が主に障害(van Dijk 2018)

Joubert症候群とは

Joubert症候群は、小脳虫部と中脳・橋(脳幹)の発生の異常によって起こるまれな病気です。脳MRIの臼歯徴候(molar tooth sign、MTS)が必須の特徴で、MTSをもつ一群をJoubert症候群関連疾患(JSRD)と呼びます(Brancati 2010)。推定される頻度は出生8万〜10万人に1人ですが、実際はもっと多いかもしれないとされています(Brancati 2010)。

多くは常染色体潜性(劣性)遺伝で、原因の遺伝子はどれも一次繊毛(primary cilium)のはたらきに関わります。そのため「繊毛病(ciliopathy)」の仲間として扱われます(Brancati 2010)。原因遺伝子は2010年の総説で10個、2013年の総説では16個と、年々増えています(Brancati 2010、Valente 2013)。ほとんどの家系で再発の確率は25%と説明されています(Brancati 2010)。

症状と合併する臓器

神経の症状は、赤ちゃんのころの筋緊張の低下、のちの運動失調(ふらつき)、発達の遅れ、眼球運動の異常、新生児期の呼吸の乱れなどです(Brancati 2010)。さらに、網膜・腎臓・肝臓・手足の指などに異常を伴うことがあり、臓器の組み合わせによって6つの群に分けられます(Brancati 2010)。

群(Brancati 2010) 主な合併
純粋型(pure JS) 神経症状と臼歯徴候が中心
眼の異常を伴う 眼の異常(網膜ジストロフィーなど)
腎の異常を伴う ネフロン癆(nephronophthisis)
眼と腎の両方 網膜と腎の異常
肝の異常を伴う 肝線維症
口・顔・指の異常を伴う 口腔・顔面・指の奇形(多指など)

画像でMTSを見つけたら、それで終わりではなく、腎・肝・眼などの全身の評価に進むことが勧められています(Brancati 2010)。見通しは、臓器の障害の範囲と程度によって群ごとに大きく異なります(Brancati 2010)。

臼歯徴候とは

MTSは、中脳と橋のつなぎ目(橋の上端)の高さの横断像で、臼歯(奥歯)の断面のように見える形です。次の2つが組み合わさって見えます(Poretti 2016)。

  • 上小脳脚が太く、長く、水平に近い向きで走る(歯の根のように見える)
  • 脚間窩(左右の大脳脚のあいだのくぼみ)が深い(歯の中央のへこみ)

Joubert症候群の診断にはMTSが必要とされています(Poretti 2016)。小脳脚の位置は小脳脚のMRI解剖、中脳・橋の区分は中脳被蓋・橋被蓋・橋底部とはを先に見ておくと、形の異常に気づきやすくなります。

断面 所見 見るポイント
正中矢状断 中脳が細く、脚間窩が広くて深い。小脳虫部の上部が形成不全 虫部は矢状断で見る。頭部MRIの矢状断の解剖も参照
傍矢状断 上小脳脚が太く、向きが乱れる 左右どちらも確認する
横断(中脳〜橋の移行部) 深い脚間窩と、太い上小脳脚で「臼歯」の形 最も診断的な断面
冠状断(FLAIR) 正中に裂があり、下部の虫部が欠けて見える 虫部が欠けていないか見る

症例 Joubert症候群関連疾患のMRI

Joubert症候群関連疾患 MRI 臼歯徴候 正中矢状断・横断・冠状断FLAIR
引用:Brancati F, et al. Orphanet J Rare Dis 2010;5:20(Figure 1)。PMC、CC BY 2.0

引用元の図の説明では、A:正中矢状断(T1強調像)で中脳が細く、脚間窩が広がっています(白抜きの矢頭)。同時に小脳虫部の上部の形成不全があります(細い矢印)。B:傍矢状断で上小脳脚が太く、向きが乱れています(太い矢頭)。C:横断像で深い脚間窩と異常な上小脳脚があり、臼歯徴候を示します。D:冠状断FLAIRで正中の裂があり、小脳虫部の下部の欠損を示します(黒い矢印)。

初心者向け:見る順番

  1. 正中矢状断で、小脳虫部の大きさと形を見る(上部・下部のどちらが小さいか)。
  2. 同じ断面で、中脳が細いか、脚間窩が深いかを見る。
  3. 中脳〜橋の移行部の横断像で、臼歯の形(深い脚間窩+太い上小脳脚)があるかを見る。
  4. 冠状断で、虫部の正中の裂がないかを見る。
  5. 後頭蓋窩の大きさと第4脳室の形を見る。
  6. 後頭部の髄膜瘤(脳瘤)など、ほかの奇形がないかを見る。
  7. 見つかったら、腎臓・肝臓・眼・指など全身の評価につなげる(Brancati 2010)。

初心者がつまずきやすい点

  • 断面がずれると臼歯に見えない。頭が傾いて撮られていたり、スライスが中脳より上や橋より下に外れたりすると、脚間窩の深さや上小脳脚の向きが分かりにくくなります。中脳と橋の境目の高さまで、スライスをスクロールして探します。
  • 虫部の欠損は横断だけでは気づきにくい。正中矢状断と冠状断で虫部を確認します。
  • 臨床の情報が手がかりになる。乳児期の筋緊張低下、眼球の動きの異常、呼吸の乱れ、発達の遅れがあるお子さんでは、後頭蓋窩を意識して見ます。
  • 臼歯徴候は「虫部が小さい病気」の1つにすぎない。虫部が小さい所見だけでJoubert症候群と決めず、MTSがあるかを確かめます。
  • 画像だけで終わらせない。MTSの所見は、腎臓や眼の評価・遺伝子の検査につなげるための入り口です(Brancati 2010)。

似た所見との見分け方

小脳虫部が小さい病気は多く、どこが主に小さいかで整理します。橋小脳低形成(PCH)では、小脳半球に比べて虫部が相対的に保たれるのに対し、Joubert症候群とDandy-Walker奇形では虫部が主に障害されます(van Dijk 2018)。

病気 画像の特徴 区別のコツ
Joubert症候群 臼歯徴候(深い脚間窩+太く水平な上小脳脚)、虫部の低形成 MTSが必須(Poretti 2016)
Dandy-Walker奇形 虫部の低形成と回転、第4脳室の嚢胞状拡大、後頭蓋窩の拡大 診断の中心は虫部の低形成・上方回転と第4脳室の嚢胞状拡大(Poretti 2016)
橋小脳低形成(PCH) 橋と小脳半球が小さい。虫部は比較的保たれる 虫部が主に障害されるJoubertとは異なる(van Dijk 2018)

鑑別としては、ほかの繊毛病(ネフロン癆やSenior-Løken症候群など)、別の小脳・脳幹の先天異常、脳・眼・腎を侵す病気が挙がります(Brancati 2010)。Meckel症候群とは、7つの遺伝子で同じ遺伝子の別の変異という関係にあります(Valente 2013)。

胎児期の画像

胎児では、超音波は後頭蓋窩の奇形に対する感度が低く、胎児MRIが後頭蓋窩の評価に適した方法とされます(Fluss 2006)。ただしMTSが胎児MRIで確認された報告は多くありません(Fluss 2006)。胎児期の画像は妊娠中期の終わりごろまで所見がはっきりしないことがあり(Brancati 2010、Valente 2013)、小脳は妊娠19〜20週ごろから胎児MRIで評価できるようになります(Poretti 2016)。家族に既往があるときは遺伝子の検査と組み合わせて診断します(Brancati 2010)。

症例 胎児MRI Joubert症候群(CSPP1関連・妊娠32週で紹介)

Joubert症候群 胎児MRI 臼歯徴候 小脳虫部欠損 後頭部髄膜瘤
引用:Annicchiarico W, et al. Case Rep Genet 2026;2026:7471200(Figure 2)。PMC、CC BY 4.0

引用元の図の説明では、A〜Cで臼歯徴候が見られ(青線で囲んだ部分)、Dで小脳虫部の欠損、E・Fで後頭部の髄膜瘤が記載されています。この例は、超音波で後頭部の髄膜瘤・小脳虫部の欠損・口唇口蓋裂があり、胎児MRIで臼歯徴候を確認し、エクソーム解析でCSPP1の病的変異が見つかってJoubert症候群21型と診断されました(Annicchiarico 2026)。

見つかったあとの考え方

MTSが見つかったときは、臓器の合併を調べる診断の手順に進みます(Brancati 2010)。原因の遺伝子の検査は限られた施設で行われ、リスクのある夫婦では出生前の遺伝学的検査が可能になります(Brancati 2010)。管理は多職種で行い、新生児期・乳児期は呼吸と哺乳の問題に注意し、認知や行動の評価で療育を支えることが勧められています(Brancati 2010)。気になる症状があるお子さんは、小児科・小児神経科に相談してください。

よくある疑問(Q&A)

Q. 臼歯徴候があればJoubert症候群ですか?
A. MTSはJoubert症候群の必須の特徴で、MTSをもつ病気をJSRDとまとめます(Brancati 2010)。臨床症状や全身の評価、遺伝子の結果と合わせて診断します。

Q. 遺伝しますか?
A. 多くは常染色体潜性遺伝で、ほとんどの家系で再発の確率は25%とされます。まれにX連鎖のこともあります(Brancati 2010)。

Q. 腎臓や目の検査も必要ですか?
A. 網膜・腎臓・肝臓の異常を伴うことがあるため、MTSが見つかった場合は全身の評価に進むことが勧められています(Brancati 2010)。

Q. 胎児のときにわかりますか?
A. 胎児MRIで臼歯徴候が確認された報告はありますが(Fluss 2006、Annicchiarico 2026)、妊娠中期の終わりごろまで画像で分かりにくいことがあります(Brancati 2010)。

あわせて読みたい:胎児脳室拡大とは

参考文献

  1. Brancati F, Dallapiccola B, Valente EM. Joubert Syndrome and related disorders. Orphanet J Rare Dis. 2010;5:20. PubMed
  2. Valente EM, Dallapiccola B, Bertini E. Joubert syndrome and related disorders. Handb Clin Neurol. 2013;113:1879-88. PubMed
  3. Poretti A, Boltshauser E, Huisman TAGM. Pre- and Postnatal Neuroimaging of Congenital Cerebellar Abnormalities. Cerebellum. 2016;15(1):5-9. PubMed
  4. Fluss J, Blaser S, Chitayat D, et al. Molar tooth sign in fetal brain magnetic resonance imaging leading to the prenatal diagnosis of Joubert syndrome and related disorders. J Child Neurol. 2006;21(4):320-4. PubMed
  5. Annicchiarico W, Peña-Pardo LX, Redondo AM, et al. Exome Sequencing and MRI in Prenatal Diagnosis: A Case Report of Joubert Syndrome in Colombia. Case Rep Genet. 2026;2026:7471200. PubMed
  6. van Dijk T, Baas F, Barth PG, et al. What’s new in pontocerebellar hypoplasia? An update on genes and subtypes. Orphanet J Rare Dis. 2018;13(1):92. PubMed

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