静脈内平滑筋腫症 子宮筋腫が静脈を伝って心臓へ伸びる

CTのレポートに「子宮の腫瘤が静脈の中に進展している」と書いてありました。血栓とは違うのですか?静脈内平滑筋腫症という病名も出てきたのですが、がんなのでしょうか?
静脈内平滑筋腫症は、子宮筋腫と同じ性質の良性の腫瘍が、静脈の中を虫のように伸びていく、まれな病気です。骨盤の静脈から下大静脈、さらに心臓まで届くことがあります。血栓との違いや、肉腫と間違えやすい点を、CTとMRIの見方から整理します。

先に結論:良性の腫瘍だが血管の中を伸びる。「子宮の腫瘤とつながる静脈内の腫瘤」を見たら、この病気を考える

項目 ポイント
何か 子宮の平滑筋由来の良性腫瘍が、骨盤の静脈から下大静脈・右心房へ伸びるまれな病気
誰に多いか 主に閉経前の女性。診断時の年齢の中央値は46歳で、多くは子宮筋腫や筋腫手術の既往がある
画像の特徴 造影CTで静脈内の低吸収な腫瘤が連続して伸びる。MRIでは蛇行した静脈内に紐状の欠損
血栓との違い 血栓は内部に血管がなく造影されない。この病気は内部に造影効果があり、子宮の腫瘤につながる
注意点 子宮肉腫や子宮内膜間質肉腫の血管内進展が似た像になる。画像だけで確定できない場合がある

静脈内平滑筋腫症とは

静脈内平滑筋腫症(intravenous leiomyomatosis:IVL)は、子宮筋腫から連続して、良性の平滑筋の腫瘍が静脈の中へ虫のように伸びていく病気です(Lim 2022)。まれな良性疾患で、骨盤の静脈から下大静脈、さらに右心房にまで伸びることがあります(Zhou 2024)。

診断時の年齢は21〜81歳、中央値は46歳で、主に閉経前の女性にみられます。大多数が子宮筋腫の既往や、筋腫の摘出手術・子宮摘出術を受けた経験を持ち、腫瘍の根元は子宮の壁とつながっていることが、病理と画像で示されています(Zhou 2024)。子宮筋腫そのものの画像は子宮筋腫のMRI画像診断のポイントを参照してください。

症状:骨盤内では目立たない

症状は非特異的で、腫瘍の大きさと伸びた先で決まります(Zhou 2024)。

伸びた範囲 症状
骨盤内にとどまる 無症状のことが多い。骨盤の腫瘤による腹部膨満、骨盤痛、不正出血など
下大静脈・腹腔へ伸びる 腹水など、静脈の流れの障害による症状
右心房・肺動脈まで 息切れ、失神、右心不全などの重い症状。突然死の報告もある

(Zhou 2024を参考に整理)

骨盤内にとどまる段階では見つけにくく、子宮の超音波だけでは骨盤内のIVLの85.7%が診断できなかったという報告があります(Wang Q 2023)。症状が乏しいまま心臓近くまで進むことがあり、画像診断で気づくことが大切です。

進展の経路と段階

手術を受けた27人の検討では、骨盤内にとどまるものが7人、骨盤の外へ伸びたものが20人でした。心臓への進展は59.26%にみられ、骨盤外へ伸びた例の90%は片側だけの進展で、最も多い経路は「右の子宮静脈→内腸骨静脈→下大静脈」でした(Wang Q 2023)。

進展の範囲による4段階の分類が提案されています(Zhou 2024で紹介された分類)。

段階 範囲
I 子宮の静脈壁を越えるが、骨盤内にとどまる
II 腹腔内へ伸びるが、腎静脈には達していない
III 腎静脈・下大静脈、さらに右心房まで(肺動脈には達していない)
IV 肺動脈への進展、または肺の病変を伴う

レポートでは「どの高さまで伸びているか」を書くことが、手術の計画に直結します。

画像診断:CT・MRI・超音波

検査 見え方
造影CT 血管内の低吸収な腫瘤で、内部が不均一に造影される。下大静脈内では連続して伸び、右心房では蛇の頭や杖の頭のような形になる
MRI T1強調像は等信号〜やや低信号、T2強調像は等〜やや高信号。蛇行した静脈の中に紐状の欠損が見える
心エコー 右心房に、下大静脈から伸びる可動性のある腫瘤

(CTはZhou 2024、MRIはWang J 2024、心エコーはWang Q 2023とKang 2012による)

CTは腫瘍の進展経路を全体で把握できるため、術前評価の中心となる検査です。胸部・腹部・骨盤を一続きで撮影し、再構成やCT血管撮影で経路を示します(Zhou 2024)。骨盤外へ伸びた例では、術前にCTを行うことが推奨されています(Wang Q 2023)。

MRIの見方:紐状の欠損、ルーファのスポンジ

I期のIVL 19例のMRI検討では、全例が子宮筋層または子宮傍組織にあり、平均の直径は11.2cmでした。T1強調像では12例(63.2%)が等信号、5例(26.3%)がやや低信号、T2強調像では15例(78.9%)が等〜やや高信号でした。腫瘤の中や近くに蛇行した血管が17例(89.5%)にあり、T2強調像で蛇行した血管の中に紐状の複数の欠損が11例(57.9%)に見られました。73.6%は子宮筋腫を伴い、31.6%は広間膜に及んでいました(Wang J 2024)。

心臓へ進展した4例のMRIでは、病変がFIESTA冠状断像でヘチマのスポンジ(luffa sponge)のように、T2強調横断像でふるいの穴のようにみえたと報告されています(Kang 2012)。骨盤のMRIは、子宮の傍らの血管への進展を調べるのに役立ちます(Wang Q 2023)。

症例 20歳代女性 静脈内平滑筋腫症

静脈内平滑筋腫症 造影CT 冠状断像・矢状断像 骨盤の腫瘤から下大静脈、右心房へ進展
引用:Ayub M, et al. Cureus. 2025;17(8):e90390 (Figure 2) CC BY 4.0(加工なし)・PubMed

左は冠状断、右は矢状断の造影CT再構成像です。論文の図の説明では、骨盤の腫瘤が右の性腺静脈へ浸潤して、拡張した下大静脈の中を上へ伸び、右心房と右心室にまで達していて、矢印で示されています。この患者さんは、心臓に腫瘤があるのに、心臓や肺に関する症状がありませんでした。症状が乏しくても、画像では広い範囲に伸びていることがある好例です。

血栓・腫瘍との見分け方

静脈の中の腫瘤の鑑別には、次の病変があります(Zhou 2024)。

鑑別疾患 違うところ
静脈血栓 血栓の内部には血管がなく、造影CTで内部が造影されない。子宮筋腫の既往も通常ない
下大静脈の平滑筋肉腫 静脈の壁から発生して壁や周囲に浸潤しやすい。IVLは境界が明瞭で血管壁に癒着しない。男性の患者も多い
右心房粘液腫 心臓の中だけにあり茎がある。下大静脈には影響しない
腎癌・肝癌などの腫瘍栓 元の腫瘍とつながる。子宮筋腫の既往がない

注意したいのは、画像では子宮の肉腫との区別が難しい点です。CT静脈造影でIVLが疑われた2例が、手術の病理では低異型度子宮内膜間質肉腫(血管浸潤あり)と子宮平滑筋肉腫だった報告があります(Yang 2025)。子宮肉腫の画像は子宮肉腫(子宮平滑筋肉腫)のMRI画像診断と子宮内膜間質肉腫(ESS)のMRI所見、筋腫の変性は子宮筋腫の変性のMRI画像診断で確認できます。

似た名前の病気に、腹膜に多発する結節ができる播種性腹膜平滑筋腫症(LPD)があります。IVLと同じく子宮筋腫の特殊な発育型として挙げられますが、血管の中ではなく腹膜に結節を作る点が違います(Zhou 2024)。

病理の特徴

摘出した標本では、紐状・虫状・分葉状の構造が子宮の筋層や子宮傍組織にあり、子宮静脈や卵巣静脈に沿って伸びています。色は白〜灰色で、血管の中に栓のように詰まっているのが特徴です。腫瘍の細胞はエストロゲン受容体とプロゲステロン受容体が陽性と報告されています(Zhou 2024)。子宮筋腫と同じ平滑筋の腫瘍で、良性でありながら血管の中へ伸びる点が特殊です。

読むときの落とし穴

落とし穴 対策
右心房の腫瘤だけを見て粘液腫と考える 下大静脈から骨盤の静脈までさかのぼって追う。静脈の中に連続する腫瘤があるかを確認する
単純CTだけで血栓と判断する 血栓は内部が造影されない。造影CTで内部の造影効果を確認する
子宮摘出後だから子宮の病気ではないと考える 多くのIVLは子宮筋腫の既往や摘出手術の既往を持つ。既往歴をいつも確認する(Zhou 2024)
骨盤の超音波で異常なしと安心する 骨盤内IVLの85.7%が超音波で見逃されたという報告がある。傍子宮血管はMRIが有用(Wang Q 2023)

見逃さないためのチェックリスト

  • 子宮に大きな腫瘤や筋腫がある(筋腫の既往・手術歴も確認する)
  • 子宮の傍らの静脈、内腸骨静脈、卵巣(性腺)静脈が拡張し、内部に腫瘤がないか
  • 静脈内の腫瘤が連続して下大静脈へ伸びていないか。造影されるか
  • 右心房・右心室に腫瘤がないか(心エコーやCTで確認)
  • 胸部のCTで肺に病変がないか(IV期の評価)
  • レポートには「腫瘍の上端がどの高さか」を書く

治療と経過観察

治療の基本は手術で、腫瘍を残さず取り切ることが再発を防ぐ鍵とされています。心臓まで伸びた例では、心臓外科・婦人科・血管外科などの多職種で手術方法を検討します(Zhou 2024)。術後は、3〜6か月ごとに最初の2年間、その後は年1回の経過観察が行われると紹介されています。経過観察ではCTなどで胸部・腹部・骨盤を確認します(Zhou 2024)。ただし、手術の方法や経過観察の間隔は施設や病状で異なります。治療の方針は主治医と相談してください。

よくある疑問(Q&A)

Q. 静脈内平滑筋腫症はがんですか?
A. 病理学的には良性の腫瘍です。ただし血管の中を伸びて心臓にまで達すると、重い症状や突然死につながることがあるため、手術で取ることが基本とされています(Lim 2022、Zhou 2024)。

Q. 血栓とどう区別しますか?
A. 造影CTで腫瘤の内部が造影されるか、子宮の腫瘤とつながっているかが手がかりです。血栓の内部には血管がなく造影されません(Zhou 2024)。

Q. 若い人でもなりますか?
A. 診断時の年齢の範囲は21〜81歳と報告されています(Zhou 2024)。20歳の未経産の女性で、症状が少ないまま心臓まで進展していた報告もあります(Ayub 2025)。

Q. 子宮筋腫と診断されていますが、心配ですか?
A. 静脈内平滑筋腫症はまれな病気です(Zhou 2024)。ただし腹部の張り、息切れ、失神など気になる症状があれば、医療機関で相談してください。

参考文献

  1. Wang Q, Li Y, Gu X, et al. Imaging diagnosis of intravenous leiomyomatosis: an institutional experience. Clin Radiol. 2023;78(9):655-660. PubMed
  2. Wang J, Hu Q, Bi Z, et al. MR imaging findings of stage I intravenous leiomyomatosis: a retrospective single-center study in 19 cases. Abdom Radiol (NY). 2024;49(2):512-522. PubMed
  3. Zhou X, Qi X, Zhao X, et al. Update on clinical characteristics and molecular insights for uterine intravenous leiomyomatosis (Review). Oncol Lett. 2024;27(1):31. PubMed
  4. Kang LQ, Zhang B, Liu BG, et al. Diagnosis of intravenous leiomyomatosis extending to heart with emphasis on magnetic resonance imaging. Chin Med J (Engl). 2012;125(1):33-7. PubMed
  5. Lim WH, Lamaro VP, Sivagnanam V. Manifestation and management of intravenous leiomyomatosis: A systematic review of the literature. Surg Oncol. 2022;45:101879. PubMed
  6. Ayub M, Ahmed S, La QD, et al. Intravenous Leiomyomatosis in a 20-Year-Old Nulliparous Woman: Atypical Presentation and Radiological Investigation. Cureus. 2025;17(8):e90390. PubMed
  7. Yang Y, Ma G, Lai Z, et al. Two cases of uterine leiomyosarcoma misdiagnosed as intravenous leiomyomatosis before surgery: A case report. Medicine (Baltimore). 2025;104(38):e43961. PubMed

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