
先に結論:つかえ感の精査で行い、「穿孔・閉塞が疑われるときは水溶性を先に」が最大のルール
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| どんなときに行うか | 飲み込みにくさ・つかえ感・違和感の精査。咽頭と食道の形の異常、狭窄、拡張、粘膜の凹凸、壁の伸びの悪さを見る |
| 撮り方の基本 | 充盈像(造影剤で管腔を満たす)と二重造影像(造影剤と空気・発泡剤の併用)。複数の方向で撮る |
| 水溶性造影剤の出番 | 穿孔や閉塞が疑われるとき。水溶性で異常がなくても、続けてバリウムで調べると穿孔が見つかることがある(Buecker 1997) |
| 注意 | 誤嚥のある人は禁忌とされ、行う場合も飲み込みの状態に注意する。誤嚥したときの像も知っておく |
| 他の検査との関係 | 粘膜の外の広がりはCTで確認。内視鏡は診断率が高く、造影は内視鏡で説明のつかないときに活きる |
どんなときに行う検査か
のどのつかえ感や違和感、飲み込みにくさ(嚥下困難)で受診する人は日常診療で少なくありません。精神的な原因でも起こりますが、下咽頭や食道の器質的な病気でも起こるため、適切な検査が必要です。食道造影(バリウム食道造影)は、嚥下困難、逆流、運動障害、穿孔が疑われるときの最初の画像検査として有用とされています(Marini 2017)。
造影検査の目的は、消化管の変位・狭窄・拡張といった大きな変化と、粘膜の凹凸、壁の伸びの悪さ、壁の厚さを見ることです。見つけたい病気は多岐にわたります。
| 分類 | 例 |
|---|---|
| 正常変異・先天異常 | 憩室、ウェブ(膜状の狭い部分)、先天性の瘻孔(梨状窩瘻) |
| 炎症 | 食道炎、薬による食道の傷害 |
| 腫瘍 | 上皮性・非上皮性腫瘍(食道癌、下咽頭癌など) |
| 全身の病気 | 全身性強皮症、皮膚筋炎など |
| 後天性の狭窄・閉塞 | 腐食性の食道炎のあとの狭窄、食道静脈瘤 |
| 食道・咽頭の外の病変 | 変形性脊椎症、心・血管、肺癌、縦隔の腫瘤・リンパ節による圧排や浸潤 |
食道には、輪状軟骨の高さと横隔膜の高さに生理的な狭い部分があり、異物がつまりやすい場所でもあります(Marini 2017)。読影のときはこの2か所を意識しておくと、狭窄と生理的な狭さを区別しやすくなります。
充盈像と二重造影像:撮り方による見え方の違い
消化管の造影には、充盈法、二重造影法、圧迫法があります。下咽頭と食道では、おもに充盈法と二重造影法を使います。
| 方法 | どんな像か | 得意なこと | 苦手なこと |
|---|---|---|---|
| 充盈像 | 陽性造影剤(バリウム・ガストログラフィン)で管腔を満たす | 走行、形、径の異常、変位、陰影欠損、バリウム突出像などの粗大な変化 | 造影剤に病変が埋まり、辺縁の細かい異常を見落としやすい |
| 二重造影像 | 陽性造影剤に、陰性造影剤(空気・発泡剤で出る炭酸ガス)を併用する | 粘膜面の微細な凹凸、病変の形、表面の性状 | 食道が十分に膨らまないと良い像が得られない(特に頸部食道) |
隆起性の病変では、大きさ、立ち上がり、形、表面の性状、辺縁の整・不整を見ます。陥凹性の病変では、大きさ、深さ、形、陥凹の底の性状、辺縁、周りの堤の性状を見ます。早期の癌を見つけるには、粘膜の細かい凹凸を探すことが重要です。
下咽頭造影:飲み込む一瞬を撮る
下咽頭は、造影剤が停滞する時間が短く、一瞬で通過します。そのため、のどぼとけ(甲状軟骨)の動きを体表から見て、飲み込みのタイミングを把握し、挙上した瞬間に撮影して充盈像を得ます。二重造影では、飲み込んだ直後に残る空気で自然に二重造影像になります。正面像、側面像、2方向の斜位像の4方向を撮るのが基本です。正面像では顎が下咽頭に重ならないよう、あごを挙げてもらいます。
下咽頭をふくらませて観察するために、発声法(口を横に開けて「イー」と言う)やバルサルバ法(息をこらえる)を使います。ただし、側方の下咽頭憩室(pouch)の診断では、擬似バルサルバ法は信頼できる方法ではないとされ、造影の動画(videofluorography)と比べた検討が報告されています(Lindbichler 2000)。
正常像を知らないと異常が拾えません。主なランドマークは次のとおりです。
| 構造 | 見るポイント |
|---|---|
| 喉頭蓋・喉頭蓋谷 | 舌の付け根と喉頭蓋の間のくぼみ。造影剤がたまる |
| 披裂喉頭蓋ひだ | 喉頭の入口の縁。肥厚があれば異常のサイン |
| 梨状陥凹(梨状窩) | 左右対称に描出される。片側だけ描出されないときは異常を疑う |
| 側壁・後壁 | 壁の伸び、辺縁の整・不整 |
下咽頭は通常、ほぼ左右対称に描出されます。左右差、位置のずれ、辺縁の不整、陰影欠損を拾うのが読影の出発点です。病変があっても辺縁に変化を起こさないものは、充盈像では造影剤に埋もれて指摘が難しくなります。下咽頭の領域別の構造は下咽頭癌の画像診断ににまとめています。
治療後の評価でも、咽頭造影は役立ちます。喉頭全摘や放射線治療のあとは正常の解剖が変わり、狭窄や瘻孔の評価に使われ、不整な狭窄や粘膜の結節があれば、直接の観察(内視鏡)で再発を確認することが勧められています(Tao 2013)。
食道造影:撮影の組み立てと読み方
食道は縦に長い臓器のため、撮影は頸部〜胸部上部食道と、胸部中部〜腹部食道の2つに分けて、正面像、側面像、2方向の斜位像を撮ります。斜位像では椎体と重ならない角度を選ぶことが大切です。食道が膨らまないとき、病変が疑われて精密に見たいときは、経鼻的に細いゾンデを入れて空気を送る方法もあります。
食道の部位は、食道癌取扱い規約の分類(頸部、胸部上部・中部・下部、腹部食道)で呼ぶのが一般的です。報告書を読むときに部位の名前で戸惑わないよう、気管分岐部と横隔膜を目印に頭に入れておきます。
| 所見 | まず考えること |
|---|---|
| 下部食道が鳥のくちばし状に細くなる、その上が拡張 | アカラシア。バリウムの滞留の程度はtimed barium esophagramで評価される |
| 頸部の食道から後方へのふくらみ | Zenker憩室(正中後方)、Killian-Jamieson憩室(側方) |
| 短い不整な狭窄、その口側が拡張 | 狭窄(炎症・腫瘍)。内視鏡で確認する |
| 蛇行する陰影欠損 | 食道静脈瘤 |
| 陰影欠損と辺縁不整、壁の伸展不良 | 腫瘍(癌など) |
| 壁の外からの圧排 | リンパ節、大動脈、心拡大、縦隔腫瘤など食道外の病変 |
アカラシアのくちばし状の狭窄は、最も典型的なパターンです。timed barium esophagram(決められた時間後にバリウムの残りを測る方法)は、バリウム柱の高さが5分で2 cmを超える、または錠剤が詰まる場合を陽性とする基準で、アカラシアなどの食道胃接合部の通過障害を予測する感度は77.8%、特異度は86.0%でした。複数の指標(食道の幅、胃との境目の径、バリウムの高さ、錠剤の通過)を組み合わせた判定では感度84.2%、特異度92.1%でした(Fass 2025)。アカラシアの画像は食道アカラシアの記事が詳しいです。
症例 頸部食道の憩室(正面像と斜位像)

引用:Marini T, Desai A, Kaproth-Joslin K, et al. Imaging of the oesophagus: beyond cancer. Insights Imaging. 2017;8(3):365-376 (Figure 12)。PMC CC BY 4.0(図は加工していません)
引用元の説明では、Aの正面像とBの斜位像で、頸部食道の正中・後方にふくらむ袋状の突出に造影剤が入っています。Zenker憩室と記載されています。複数の方向で撮ると、袋状の突出の位置がつかみやすくなる例です。Zenker憩室とKillian-Jamieson憩室の違いはZenker憩室の記事にまとめています。
水溶性造影剤(ガストログラフィン)を使う場面
消化管の穿孔や閉塞、またはそれらの疑いがあるときは、最初に水溶性造影剤(ガストログラフィンなど)を使います。穿孔が疑われる場合は、希釈した水溶性造影剤で調べ、異常が見えなければ続けて希釈したバリウムを使うのが一般的な手順です(Marini 2017)。
この二段構えに意味があります。穿孔が疑われた67人に水溶性造影剤で食道造影を行った前向きの研究では、造影剤の漏れがなかった18人のうち4人(22%)で、続けてバリウムを使うと穿孔が見つかりました。バリウムに関連する合併症は起こりませんでした(Buecker 1997)。デジタル透視装置を使っても、この二段目の検査は省けないという結論です。
| 状況 | 造影剤の考え方 |
|---|---|
| 通常の精査(つかえ感など) | バリウム(濃いものと薄いものを使い分け) |
| 穿孔・閉塞が疑われる | 水溶性造影剤を先に。異常がなくても、続けてバリウムを使うことがある |
| 誤嚥のリスクが高い | 水溶性造影剤で嚥下検査を行う施設もある(Hwang 2022)。CTでは水を使って管腔を広げる方法もある(Marini 2017) |
運用は施設ごとに決められているため、依頼するときは、疑う病態(穿孔・閉塞・誤嚥)を依頼票に書いておくと、検査する側が造影剤を選びやすくなります。
症例 食道穿孔(Boerhaave症候群)の食道造影とCT

引用:Marini T, Desai A, Kaproth-Joslin K, et al. Imaging of the oesophagus: beyond cancer. Insights Imaging. 2017;8(3):365-376 (Figure 16)。PMC CC BY 4.0(図は加工していません)
引用元の説明では、Aの胸部X線で縦隔気腫(矢印)があり、Bの食道造影の正面像で、下部食道から造影剤が管外へ漏れています。CT(C)でも管外の造影剤、縦隔気腫、両側の胸水が見えると記載されています。穿孔が疑われる状況で、造影検査とCTが補い合う例です。
誤嚥のある人と、誤嚥したときの像
誤嚥のある人は、造影検査の禁忌に挙げられます。飲み込みの状態に注意しながら行う場合もあります。バリウムの誤嚥は誤嚥性肺炎の原因になり得ます。下咽頭造影では、ごく少量の誤嚥があると喉頭や気管が造影剤で描出されます。喉頭が写っているときは、少量の誤嚥があったことを示します。
嚥下そのものを評価したいときは、動画で見る嚥下造影(VF)が向いています。嚥下造影検査(VF)の記事を参照してください。水溶性造影剤(iohexol)で行った365回とバリウムで行った390回の嚥下検査の比較では、誤嚥は水溶性群で40.3%、バリウム群で9.2%でしたが、2つの群は対象の背景が違い(水溶性は誤嚥のリスクが高い人)、誤嚥による合併症や薬の副作用は観察されませんでした(Hwang 2022)。群の背景が異なる比較なので、数字の優劣を単純に読まないようにします。
内視鏡・CTとの使い分け
つかえ感の原因を探すとき、最初に内視鏡を行う流れもあります。ある施設の12か月の調査では、嚥下困難で内視鏡を受けた患者の76.2%で、内視鏡の所見が症状を説明しました。内視鏡が正常だった143人のうちバリウム食道造影を受けた38人では、15人(39.5%)に異常が見つかりました(Bill 2018)。内視鏡で説明がつかないとき、造影検査が役立つことを示す数字です。
また、造影検査は粘膜の面の変化を描く検査で、粘膜の外の広がりは読み取れません。腫瘤が見つかったときは、CTで壁の厚さと周囲への広がりを確認します(Marini 2017)。胃の造影の見方は胃のバリウム検査の写真の見方に書いています。
検査を受ける方へ
食道造影の前は、絶飲食の指示があるのが一般的です。検査前に控える薬や、鎮痙剤(腸や食道の動きを抑える薬)を使うかどうかは、主治医・検査施設の指示に従ってください。妊娠中またはその可能性がある場合、意思疎通が難しい場合などは、事前に伝えます。検査後はバリウムによる便秘を防ぐために、水分をとり、下剤を使うよう指示されることがあります。のどのつかえ感が続く、食べ物が通らない、体重が減るといった症状があるときは、医療機関を受診してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 食道造影と胃のバリウム検査は同じものですか?
A. 同じ造影剤を使いますが、目的と撮り方が違います。食道造影は食道の走行・狭窄・憩室・運動を複数の方向で調べ、胃の検査は胃壁の粘膜面を二重造影で撮ります。
Q. 内視鏡が正常でも、食道造影を受けることはありますか?
A. あります。内視鏡で説明がつかなかった患者の一部で、造影検査に異常が見つかった報告があります(Bill 2018)。
Q. 水溶性造影剤で異常がなければ、穿孔は否定できますか?
A. 否定できません。穿孔が疑われた患者のうち、水溶性で異常がなかった18人の22%(4人)で、続けてバリウムを使うと穿孔が見つかりました(Buecker 1997)。
Q. 下咽頭造影は、普通の食道造影と何が違いますか?
A. 下咽頭は造影剤が一瞬で通り過ぎるため、のどぼとけが上がるタイミングを狙って撮影します。4方向の撮影で、左右差や辺縁の変化を見ます。
参考文献
- Marini T, Desai A, Kaproth-Joslin K, et al. Imaging of the oesophagus: beyond cancer. Insights Imaging. 2017;8(3):365-376. PubMed
- Buecker A, Wein BB, Neuerburg JM, et al. Esophageal perforation: comparison of use of aqueous and barium-containing contrast media. Radiology. 1997;202(3):683-6. PubMed
- Tao TY, Menias CO, Herman TE, et al. Easier to swallow: pictorial review of structural findings of the pharynx at barium pharyngography. Radiographics. 2013;33(7):e189-208. PubMed
- Lindbichler F, Raith J. Diagnosis of lateral hypopharyngeal pouches: a comparative study of videofluorography and pseudovalsalva maneuver in double contrast pharyngography. Abdom Imaging. 2000;25(2):113-5. PubMed
- Fass OZ, Pandolfino JE, Schauer JM, et al. Diagnostic Accuracy of Timed Barium Esophagram for Achalasia. Gastroenterology. 2025;169(1):63-72. PubMed
- Hwang CH. Swallowing study using water-soluble contrast agents may increase aspiration sensitivity and antedate oral feeding without respiratory and drug complications: A STROBE-compliant prospective, observational, case-control trial. Medicine (Baltimore). 2022;101(27):e29422. PubMed
- Bill J, Rajagopal S, Kushnir V, et al. Diagnostic yield in the evaluation of dysphagia: experience at a single tertiary care center. Dis Esophagus. 2018;31(6). PubMed
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