胃のひだが太い CT・バリウムでの胃皺襞肥厚の鑑別

バリウム検査やCTで「胃のひだが太い」と言われました。胃がんの可能性があるのでしょうか?どんな病気が考えられますか?
ひだが太い原因で多いのはピロリ菌による胃炎ですが、スキルス胃癌やリンパ腫のこともあります。まず「胃が十分に膨らんでいたか」を確認し、そのうえで、ひだの硬さや壁の厚み、層の見え方を使って鑑別する流れを整理します。

先に結論:ひだの太さだけで病気は決まらない。膨らみ具合・硬さ・壁の層を順に見る

項目 ポイント
最初に確認 胃が十分に膨らんでいるか。縮んだ胃ではひだが寄り集まり、実際より太く見える
多い原因 ピロリ菌による慢性胃炎。バリウム検査で孤立性のひだ肥厚を指摘された182人では、胃生検の9割以上でピロリ菌の感染を示す所見があった(Tran 2002)
見逃したくない病気 スキルス胃癌(Borrmann 4型)、悪性リンパ腫。壁全体が厚く、伸びにくい場合は特に注意する
見分けの手がかり 厚くなっているのが粘膜側か壁全体か、伸展性が保たれているか、周囲のリンパ節や腹膜の変化があるか

「胃のひだが太い」とは

胃の内側には、皺襞(しゅうへき)と呼ばれるひだがあります。胃が空のときは縦方向に並んでいて、食べ物や空気で胃が膨らむと伸びて低くなります。バリウム検査(胃透視)や内視鏡では、このひだが太く、うねって見えるときに「ひだの肥厚・腫大」と表現されます。

内視鏡の分野では、2013年に日本消化器内視鏡学会が提唱した胃炎の京都分類で、ひだの腫大が評価項目の一つになっています。萎縮、腸上皮化生、ひだ腫大、鳥肌状の凹凸、びまん性の発赤の5項目を点数化し、このうち萎縮・腸上皮化生・ひだ腫大・鳥肌状の凹凸が胃癌のリスクに関係する所見とされています(Toyoshima 2020)。ひだが太いこと自体が胃癌と決まるわけではありませんが、胃の状態を知る手がかりにはなります。

バリウム検査の写真の読み方は胃のバリウム検査の写真の見方で、CTでの胃の正常な見え方は胃のCTの見方で説明しています。

最初に確認する:胃は膨らんでいるか

胃のひだや壁は、胃が縮んでいると、ひだも壁も太く厚く見えます。そのため、胃が十分に拡張しているかどうかが最初の確認事項です。CTでは、胃を水などで膨らませ、適切なタイミングで造影剤を使うと、胃壁の評価がしやすくなります(Ba-Ssalamah 2003)。バリウム検査でも、二重造影で空気が十分に入っているかを確認します。

状態 見え方 対応
胃が縮んでいる ひだが集まり壁も厚く見える(偽の肥厚) 体位を変えた画像や、胃を膨らませた撮影・検査で見直す
胃が十分に膨らんでいる それでもひだが太い、壁が厚い 本当の肥厚として鑑別を進める

ひだが太くなる主な病気

ひだが太くなる病気は、炎症・腫瘍・その他に分けて考えると整理しやすくなります。

病気 ひだ・壁の特徴 手がかり
ピロリ菌胃炎(肥厚性胃炎) ひだが太いが、粘膜側の変化が主体 全体に比較的均一。良性の病気では壁の層構造が保たれることが多い(Okanobu 2003)
スキルス胃癌 壁全体が厚く硬い。ひだが伸びない 全周性の壁肥厚、層状の造影、腹膜播種
悪性リンパ腫 ひだの腫大と壁の肥厚 超音波では非常に低エコー。癌と所見が重なる
メネトリエ病 脳回状と表現される巨大なひだ たんぱく質の漏出によるむくみを伴うことがある(Barros 2025)
急性胃粘膜病変・アニサキス症 急に起こる壁の浮腫性の肥厚 急な腹痛、壁の厚みは比較的軽い
胃静脈瘤・門脈圧亢進性胃症 蛇行した太いひだ状の構造 肝硬変など門脈圧亢進の背景。造影CTで血管として追える

ピロリ菌による胃炎

最も多いのはピロリ菌による慢性胃炎です。バリウム検査(上部消化管造影)で、ほかに重い異常がなく、ひだの肥厚だけを指摘された182人を調べた報告があります。内視鏡を受けた74人のうち、正常が18人(24.3%)、ひだの肥厚が12人(16.2%)、発赤・炎症が11人(14.9%)、びらんが8人(10.8%)で、胃生検を受けた48人のうち、慢性活動性胃炎が39人(81.3%)、慢性胃炎が5人(10.4%)でした。ピロリ菌の感染を示す所見は生検の91.7%にありました(Tran 2002)。平均28.5か月の経過で、重大な新たな上部消化管の問題は、内視鏡を受けた群にも受けなかった群にもありませんでした。ただし2002年の報告で、重い異常のある人は除かれています。年齢や症状、家族歴など、個々の状況で判断が変わります。

スキルス胃癌(Borrmann 4型)

スキルス胃癌は、胃癌が粘膜の下を広がり、壁全体が厚く硬くなるタイプです。粘膜の表面の変化が乏しいことがあり、胃カメラだけでは診断が難しい場合があります。Borrmann 4型の胃癌59人を調べた研究では、4型と正しく診断できた割合はCTで74.6%、胃カメラで44.1%で、CTのほうが高い結果でした(Kim 2013)。84人の検討では、病理で最も多かったのは低接着性癌(65.5%)で、全周性に広がり、CTで壁が層状に造影される傾向がありました(Ji 2024)。詳しい画像はスキルス胃癌のCT所見にまとめています。

次の症例は、胃の壁が厚くなったスキルス胃癌(linitis plastica)です。

症例 71歳男性 胃のlinitis plastica

胃のlinitis plastica 造影CT 胃壁の肥厚
引用:Marasini A, et al. J Community Hosp Intern Med Perspect 2024;14(6):124-127 (Figure 1) CC BY-NC 4.0・PMC

胃の壁が厚くなっている部分に矢印が付いています。報告では、先に行われた胃カメラで慢性胃炎と食道胃接合部のポリープ状の粘膜が指摘されていましたが、再検査で深い生検を行い、印環細胞を伴う低分化腺癌と診断されました。胃壁の肥厚が、粘膜の表面の変化より先にCTで見えていたことが、この症例の読み取りどころです。

悪性リンパ腫

胃のリンパ腫と腺癌は、CTの所見が重なることが多く、区別が難しいと報告されています(Arshad 2026)。胃の悪性腫瘍には、単発の病変、多発する病変、びまん性の壁肥厚という複数の形があり、リンパ腫や腺癌、まれには他の臓器の癌の転移でも似た像になります(Arshad 2026)。画像だけで決めようとせず、生検の結果とあわせて判断します。

メネトリエ病

メネトリエ病は、胃粘膜が厚くなって巨大なひだが生じ、粘液が多く出て、たんぱく質が胃から漏れ出る病気です。中年の男性に多く、胃底部と胃体部にできやすいと報告されています(Barros 2025)。症状は上腹部痛、吐き気、体重減少、むくみなどで、診断は臨床像、内視鏡所見、生検による病理(粘液を作る細胞の増殖と腺の萎縮)で行います(Barros 2025)。まれな病気で、画像では「巨大なひだ」という点が目立ちます。CTで見える胃の病気として、ほかの胃炎や胃静脈瘤とともにまとめた報告があります(Ba-Ssalamah 2003)。

急性胃粘膜病変・アニサキス症など

急性の腹痛で見つかるひだの腫大は、急性胃粘膜病変やアニサキス症のことがあります。超音波で巨大なひだを示した165人の比較では、急性胃粘膜病変の壁の厚みは、アニサキス症、リンパ腫、スキルス胃癌より有意に薄いという結果でした(Okanobu 2003)。急性期の壁肥厚の読み方はAGML(急性胃粘膜病変)のCT所見で確認できます。

胃静脈瘤・門脈圧亢進性胃症

肝硬変などで門脈の圧が高くなると、胃にも静脈瘤が生じ、ひだ状に見えることがあります。CTでは、胃静脈瘤を造影される血管として確認できます(Ba-Ssalamah 2003)。ひだ肥厚を指摘された人の胃カメラで、門脈圧亢進性胃症が4.1%(3人)に見つかったという報告もあります(Tran 2002)。静脈瘤の見え方と治療は胃静脈瘤とはで解説しています。

粘膜か壁全体か:層構造で考える

画像では、ひだが太いという情報に加えて、壁のどの層が厚いのかを考えると鑑別が絞れます。胃壁は内側から、粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜に分けられます。超音波の研究(巨大なひだ165人)では、良性の病気は、壁の第2層または第3層が規則的に厚くなり、壁の層構造が保たれていました。一方、第4層(固有筋層)が厚くなったのは悪性の病気だけでした。さらにスキルス胃癌は圧迫しても変形せず、良性の病気は全例で圧迫による変形が保たれていました(Okanobu 2003)。リンパ腫の内部は、ほかの病気より著しく低エコーでした(Okanobu 2003)。

観察項目 良性の病気(Okanobu 2003) 悪性の病気(Okanobu 2003)
厚くなる層 第2〜3層(粘膜・粘膜下層)が規則的に厚い。層構造は保たれる 第4層(固有筋層)が厚くなる
圧迫による変形 全例で保たれる スキルス胃癌では失われる

これは超音波での結果ですが、CTでも「壁が全周性か、層状に造影されるか」を見る考え方は共通しています。

ひだが太いと言われたときの確認リスト

  1. 胃は十分に膨らんでいるか(縮んだ胃は偽の肥厚になる)。
  2. ひだの形(滑らか・結節状・脳回状)と範囲(胃全体・体部・前庭部・限局)を見る。
  3. 厚いのは粘膜側か、壁全体か。固有筋層まで厚いかを考える。
  4. 伸展性を見る(バリウムで形が変わるか、CTで拡張しない部分があるか)。
  5. 胃の外を見る(リンパ節、腹水、腹膜の肥厚、肝臓などの転移)。
  6. 背景を確認する(ピロリ菌の感染歴、体重減少、むくみ、肝硬変)。
  7. 画像で決められない場合は、胃カメラと深い生検で調べる。

よくある疑問(Q&A)

Q. ひだが太いと言われたら、胃がんですか?
A. 多くはピロリ菌による胃炎などの良性の原因ですが、スキルス胃癌やリンパ腫の場合もあります(Tran 2002、Okanobu 2003)。画像だけでは分けられないことがあるため、症状や所見に応じて胃カメラなどの追加検査を主治医と相談してください。

Q. 胃カメラで異常がなければ安心ですか?
A. 粘膜の表面に変化が少ないスキルス胃癌では、胃カメラの診断が難しいことがあります(Kim 2013)。症状が続く場合や、CTで壁の肥厚が残る場合は、再検査や深い生検が検討されます。気になる症状があれば医療機関に相談してください。

Q. CTで胃の壁が厚いと言われましたが、胃が縮んでいたからでしょうか?
A. 胃が十分に膨らんでいない状態では、正常でも壁が厚く見えます。胃を水などで膨らませると、胃壁の評価がしやすくなります(Ba-Ssalamah 2003)。膨らませた状態でも厚い場合に、病気を考えます。

Q. メネトリエ病とはどんな病気ですか?
A. 胃の粘膜が厚くなって巨大なひだができ、粘液が増えてたんぱく質が漏れ出す、まれな病気です。腹痛やむくみ、体重減少が出ることがあります(Barros 2025)。治療は症状に応じて内科的な治療から手術まで幅があり、専門の医師と相談して決めます。

あわせて読みたい:内視鏡治療後の腹痛とCT

参考文献

  1. Tran T, Hung P, Laucirica R, et al. The clinical significance of thickened gastric folds found on upper gastrointestinal series. J Clin Gastroenterol. 2002;35(2):138-43. PubMed
  2. Okanobu H, Hata J, Haruma K, et al. Giant gastric folds: differential diagnosis at US. Radiology. 2003;226(3):686-90. PubMed
  3. Ba-Ssalamah A, Prokop M, Uffmann M, et al. Dedicated multidetector CT of the stomach: spectrum of diseases. Radiographics. 2003;23(3):625-44. PubMed
  4. Barros AR, Monteiro S, Silva J. Ménétrier disease: A clinical review. World J Gastroenterol. 2025;31(32):108401. PubMed
  5. Kim JI, Kim YH, Lee KH, et al. Type-specific diagnosis and evaluation of longitudinal tumor extent of borrmann type IV gastric cancer: CT versus gastroscopy. Korean J Radiol. 2013;14(4):597-606. PubMed
  6. Ji C, Ma Y, Zheng Z, et al. Borrmann Type IV Gastric Cancer: Computed Tomography Features and Corresponding Pathological Findings. J Comput Assist Tomogr. 2024;48(2):200-205. PubMed
  7. Toyoshima O, Nishizawa T, Koike K. Endoscopic Kyoto classification of Helicobacter pylori infection and gastric cancer risk diagnosis. World J Gastroenterol. 2020;26(5):466-477. PubMed
  8. Arshad H, Chu LC, Fishman EK. From common to rare: imaging spectrum of gastric malignancies. Abdom Radiol (NY). 2026;51(11):5415-5427. PubMed

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