
先に結論:CTは食道静脈瘤の「有無」と「流れの道筋」を見る検査、内視鏡は「出血しそうな見た目」を見る検査。役割が違う
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| CTでの見え方 | 食道壁の内側や周囲に、門脈相で造影される結節状・蛇行状の血管。左胃静脈や傍食道静脈の拡張を伴う |
| CTの精度 | 28研究のメタ解析で、食道・胃静脈瘤の検出は感度0.91・特異度0.81。小さな静脈瘤は見逃されやすい |
| 内視鏡との関係 | 内視鏡は粘膜面の形・色(赤色栓など)を見る。CTは壁の外の血管や肝・脾・門脈の状態を見る |
| 注意 | CTで見えない小さな静脈瘤がある。治療の要否は内視鏡や臨床の情報と合わせて専門医が判断する |
食道静脈瘤とは
肝硬変などで肝臓の中の血液が流れにくくなると、腸や脾臓から肝臓へ向かう門脈の圧が上がります(門脈圧亢進)。行き場のなくなった血液は、肝臓を通らずに心臓へ戻る別の道(側副血行路)に流れ込みます。その代表的な道の1つが、胃の小弯側から食道へ向かう道で、食道の壁の静脈が太く蛇行したものが食道静脈瘤です。
食道静脈瘤が破れると大量の出血につながるため、肝硬変の患者さんでは内視鏡で静脈瘤の有無や大きさを確認することが重要です。門脈圧亢進の全体像は門脈圧亢進の原因、臨床症候、画像診断、側副血行路の流入と流出は門脈圧亢進の側副血行路とは?で解説しています。この記事では、食道静脈瘤に絞ってCTの見方を整理します。
CTで見える食道静脈瘤の所見
食道静脈瘤の評価には、造影CTの門脈相(造影剤が門脈や静脈に十分に入った時期)の画像を、軸位断と冠状断で見るのが基本です。
| 見る場所 | CTでの見え方 | 意味 |
|---|---|---|
| 食道壁(粘膜下) | 食道の内腔に突出する、造影される結節状・蛇行状の血管 | 食道静脈瘤そのもの |
| 食道の周囲 | 食道の外側に沿う、拡張した血管の集まり | 傍食道静脈(側副血行路) |
| 胃の小弯・噴門部 | 噴門周囲から小弯に沿って走る太い血管 | 左胃静脈(胃冠状静脈)の拡張 |
| 胃壁・胃噴門部 | 胃壁の内側の結節状の血管 | 胃静脈瘤(併存することがある) |
| 肝臓・脾臓・門脈 | 肝の変形、脾腫、腹水、門脈の血栓 | 門脈圧亢進の原因・合併の評価 |
肝硬変の形態の見方は肝硬変のCT・MRI画像所見のポイントで解説しています。
大きさの目安と見逃しやすさ
通常の肝臓CT(単純・動脈相・門脈相)で、内視鏡を基準に調べた67人の研究では、食道静脈瘤の検出率は、大きな静脈瘤(臨床的に意義のあるもの)で92%、小さな静脈瘤では53〜60%、全体では64〜69%でした。CT上の静脈瘤の径が3mm以上を目安にすると、大きな食道静脈瘤を感度92%、特異度84%で拾い出せました(Kim YJ 2007)。小さな静脈瘤はCTで見えにくいことがわかります。
特別に薄い断面の再構成は必要でしょうか。内視鏡と64列CTの両方を受けた肝硬変の219人で、門脈相を1mm、3mm、5mmの厚さで再構成して比べた研究では、静脈瘤の検出能(ROC曲線下面積)は0.936、0.946、0.935とほぼ同じで、通常の肝臓CTの条件で十分と結論されています(Park 2015)。
食道を膨らませて撮影する「CT食道造影」を用いた90人の研究では、内視鏡での分類とCTの分類に強い相関があり、出血のリスクが低い静脈瘤と高い静脈瘤を区別する精度(ROC曲線下面積)は0.931〜0.958でした。患者さんの受け入れやすさは、CTのほうが内視鏡より良好でした(Kim SH 2007)。
症例 30歳男性 肝硬変に伴う食道・胃の側副血行路

引用:Radiopaedia(Portosystemic shunt syndrome in liver cirrhosis)
造影CT(門脈相)の軸位断で、食道の周囲に造影された小さな血管が集まっています。症例ページでは、肝臓は結節状で萎縮し、脾腫があり、食道の側副血管が噴門部に沿って胃の小弯側の側副血管へ続き、門脈本幹の肝門部近くへ流れ込むと記載されています。肝硬変の経過が10年あり、肝性脳症もある患者さんです。
血液の流れ:流入路と流出路
食道静脈瘤をCTで見るとき、どこから血液が流れ込み、どこへ流れ出ているかを意識すると、周辺の血管が理解しやすくなります。
| 方向 | 血管 | CTで探すところ |
|---|---|---|
| 流入(門脈側から) | 左胃静脈、短胃静脈 | 胃の小弯〜噴門周囲の拡張した血管。門脈や脾静脈から立ち上がる |
| 静脈瘤の部分 | 食道壁内の静脈(粘膜下)・食道周囲の静脈 | 食道の壁と周囲の結節状の血管 |
| 流出(心臓側へ) | 傍食道静脈から奇静脈・半奇静脈、横隔膜静脈の枝 | 食道の背側〜後縦隔の拡張した血管 |
ここに書いた血管の名前や流れは、肝硬変で一般にみられる側副血行路の考え方で、人によって太さや走行は異なります。CTでは、流入する血管と流出する血管の両方を、冠状断も使って追いかけます。
内視鏡との関係:何が見えて何が見えないか
| 検査 | 得意なこと | 苦手なこと |
|---|---|---|
| 内視鏡 | 粘膜面の形・色(赤色栓)・大きさの観察。出血リスクの評価 | 壁の外側の血管や、肝・脾・門脈の評価 |
| 造影CT | 傍食道静脈、左胃静脈、肝・脾・門脈の評価、他の側副血行路の把握 | 小さな静脈瘤、粘膜面の色の評価 |
CTの診断精度
肝硬変の患者さんで、CTによる食道・胃静脈瘤の診断を内視鏡と比べた28研究のメタ解析では、静脈瘤全体の検出で感度0.91、特異度0.81、高リスクの静脈瘤の検出で感度0.89、特異度0.90と報告されました。食道静脈瘤のほうが胃静脈瘤よりCTの診断能が高く(AUC 0.93と0.89)、64列CTは16列以下のCTより感度が高いという結果でした(Li 2024)。著者らはCTを有望な方法とする一方で、静脈瘤の大きさの最適な基準値は、さらに検証が必要としています(Li 2024)。CTで静脈瘤が疑われたかどうかにかかわらず、肝臓の状態に応じた内視鏡の確認は、主治医が計画します。
出血リスクとCT
内視鏡で「赤色栓(red color sign)」があると出血のリスクが高いとされます。29人40回のCTを調べた研究では、CTで測った静脈瘤の最大短径が4mmを超える例はすべて赤色栓が陽性で、静脈瘤のスコアやpalisade vein(食道下部の柵状に並ぶ血管)の拡張も赤色栓の有無・程度と相関しました(Mifune 2007)。ただし、対象は少数で、CTだけで出血リスクを確定できるわけではありません。
傍食道静脈(傍食道側副血行路)の意義
CTで見える食道の外側の血管が、治療後の再発や再出血の予測に役立つ可能性が報告されています。食道静脈瘤の患者さんにおける傍食道静脈(para-EV)、食道周囲静脈(peri-EV)、貫通静脈(PV)の頻度は、メタ解析でそれぞれ73%、88%、54%でした。内視鏡治療後の再発は貫通静脈があるとリスクが高く(オッズ比9.79)、再出血は傍食道静脈がある患者さんで高い(相対リスク13.00、コホート研究2件)という結果でした(Li QQ 2020)。ただし、研究間のばらつきが大きく、解釈には注意が必要です。治療の方法そのものは、消化器・肝臓の専門医やIVRの専門医が判断します。
食道静脈瘤のCTで一緒に確認したいこと
食道静脈瘤は、肝臓や門脈の病気の「結果」として見つかります。CTでは静脈瘤だけでなく、なぜ門脈圧が上がっているかとほかに問題がないかも合わせて確認します。
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| 門脈・脾静脈・上腸間膜静脈の血栓 | 血栓があると門脈圧が急に上がり、側副血行路の見え方も変わる |
| 肝細胞癌の有無 | 肝硬変では肝細胞癌の合併があり、門脈内への浸潤(腫瘍栓)も門脈圧亢進の原因になる |
| ほかの側副血行路 | 胃腎シャント、脾腎シャント、臍傍静脈の再開通など。血流の逃げ道が複数あることが多い |
| 脾腫・腹水 | 門脈圧亢進の程度や、肝硬変の進行度の手がかり |
画像診断のガイドラインでの位置づけ
門脈圧亢進のコンセンサス会議であるBaveno VII(2022年)では、急性の静脈瘤出血があった患者さんは、造影CTまたはMRIで腹部を評価し、内臓静脈(脾静脈・門脈など)の血栓、肝細胞癌の有無、側副血行路の分布を確認して治療方針に役立てることを推奨しています(de Franchis 2022)。なお、2026年にはBaveno VIIIが発表されており(Baveno VIII Faculty 2026)、この記事ではBaveno VIIIの個別の推奨の内容は確認できていません。実際の診療は、現行の版や、各施設・学会の指針に従って行われます。
CT検査を受けるときの注意
造影CTでは造影剤を静脈から注射します。腎機能やアレルギーの有無、服用中の薬は、検査前に確認されます。食事や薬の扱いは、検査を受ける施設の指示に従ってください。肝硬変の患者さんは、肝臓の状態の評価や肝細胞癌の経過観察のためにCTを繰り返し受けることがあり、その際に食道静脈瘤や側副血行路の変化も合わせて確認されます。
よくある疑問(Q&A)
Q. CTで食道静脈瘤がないと言われたら、胃カメラは不要ですか?
A. 小さな静脈瘤はCTで見逃されることがあり(Kim YJ 2007)、CTだけで静脈瘤を否定するのは慎重にすべきです。胃カメラが必要かどうかは、肝臓の状態や症状、これまでの検査結果を踏まえて主治医が判断します。
Q. CTで食道静脈瘤が見つかりました。すぐ治療が必要ですか?
A. CTの所見だけで治療を決めるわけではなく、内視鏡での形や色(赤色栓など)や、肝臓の状態を合わせて判断します。放置せず、消化器内科や肝臓内科で確認してください。
Q. 胃静脈瘤も同じように見えますか?
A. 胃静脈瘤もCTで検出できますが、診断能は食道静脈瘤より少し低いと報告されています(Li 2024)。胃静脈瘤とその治療は胃静脈瘤とは?原因・分類と治療B-RTO、BRTOとは?で解説しています。
Q. 食道静脈瘤は肝硬変の人だけにできますか?
A. 最も多いのは肝硬変による門脈圧亢進ですが、門脈血栓など肝臓の外の原因でも側副血行路はできます。原因の評価にCTが役立ちます。
吐血や黒い便、強いふらつきなど出血が疑われる症状があるときは、すぐに医療機関を受診してください。
参考文献
- Li J, Zhu Y, Ni J, et al. Computed tomography for the diagnosis of gastroesophageal varices and risk assessment in patients with cirrhosis: a systematic review and meta-analysis. Diagn Interv Radiol. 2024;30(6):335-350. PubMed
- Kim SH, Kim YJ, Lee JM, et al. Esophageal varices in patients with cirrhosis: multidetector CT esophagography–comparison with endoscopy. Radiology. 2007;242(3):759-68. PubMed
- Kim YJ, Raman SS, Yu NC, et al. Esophageal varices in cirrhotic patients: evaluation with liver CT. AJR Am J Roentgenol. 2007;188(1):139-44. PubMed
- Mifune H, Akaki S, Ida K, et al. Evaluation of esophageal varices by multidetector-row CT: correlation with endoscopic ‘red color sign’. Acta Med Okayama. 2007;61(5):247-54. PubMed
- Li QQ, Li HY, Bai ZH, et al. Esophageal collateral veins in predicting esophageal variceal recurrence and rebleeding after endoscopic treatment: a systematic review and meta-analysis. Gastroenterol Rep (Oxf). 2020;8(5):355-361. PubMed
- Park HS, Kim YJ, Choe WH, et al. Diagnosis of esophageal varices on liver CT: is thin-section reconstruction necessary? Hepatogastroenterology. 2015;62(138):333-40. PubMed
- de Franchis R, Bosch J, Garcia-Tsao G, et al. Baveno VII – Renewing consensus in portal hypertension. J Hepatol. 2022;76(4):959-974. PubMed
- Baveno VIII Faculty. Baveno VIII – Advancing consensus in portal hypertension. J Hepatol. 2026;85(5):993-1018. PubMed
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