奇静脈(英語ではazygos vein)は、奇静脈系を構成する静脈です。
奇静脈はどこから始まり、どのように走行するのでしょうか?
今回は奇静脈について、
- 奇静脈の概要
- 奇静脈の走行
- 奇静脈系に流入する主な静脈
- CT画像で確認する奇静脈
を、図とCT画像を用いて解説します。
奇静脈とは?

奇静脈系は、胸壁や後縦隔の一部から静脈血を集め、上大静脈へ還流させる静脈網です。
脊柱の両側を縦方向に走る静脈群を奇静脈系(azygos venous system)と呼びます。
主な構成要素は、
- 奇静脈
- 副半奇静脈
- 半奇静脈
の3つです。右側を走る主な静脈は奇静脈で、左側には上部の副半奇静脈と、下部の半奇静脈があります。
奇静脈系には、起始、走行、半奇静脈系との連結などにさまざまな解剖学的変異があります。
奇静脈の走行は?

奇静脈は通常、右肋下静脈と右上行腰静脈の合流によって形成されますが、起始には解剖学的変異があります。
その後、横隔膜を通って胸腔へ入り、脊柱の右側を上行して、奇静脈弓(azygos arch)を形成し、右主気管支の上方を弓状に走って上大静脈へ流入します。
半奇静脈は脊柱の左側を上行し、大動脈と食道の後方を横切って奇静脈へ流入します。副半奇静脈も奇静脈系の左側上部を構成しますが、合流様式や高さには変異があります。
奇静脈系へ流入する主な静脈は?
奇静脈系が受ける主な静脈には、
- 右肋間静脈
- 食道周囲の静脈
- 半奇静脈
- 副半奇静脈
- 胸壁からの静脈
- 後縦隔からの静脈
などがあります。
奇静脈の役割は?
奇静脈系には、「上大静脈系と下大静脈系を結ぶ経路」としての役割があります。
通常は胸壁や上部腰部などからの静脈血を上大静脈へ還流させ、下大静脈が閉塞または中断した場合には側副路として機能し得ます。
そのため、下大静脈の閉塞時には、奇静脈系が血液を心臓へ戻す代替経路となり得ます。
下大静脈が中断して下半身からの静脈血が奇静脈系へ迂回する場合には、奇静脈系の拡張として描出されることがあります。
CT画像で奇静脈の走行を確認
次に、掲載したCT画像を順に見ながら、奇静脈の走行を確認しましょう。
CT画像による走行の確認

まず、胸部下方の横断像から確認します。
脊柱周囲に注目し、奇静脈系として示された構造の位置を確認してください。
反対側に示された半奇静脈系の構造とも見比べてみましょう。

続いて、少し頭側の横断像です。
大血管や気管支との位置関係に注目しながら、奇静脈として示された構造を追います。

さらに頭側の横断像では、奇静脈弓から上大静脈へ至る経路を確認します。
続く動画では、奇静脈弓から尾側へ向かって走行を追ってみましょう。
最後に
奇静脈の解剖、走行、役割を中心に解説しました。
奇静脈系には多様な解剖学的変異があり、画像上で病変と誤認されることがあるため、走行や合流様式を理解しておくことが重要です。
肝硬変などに伴う門脈圧亢進では、食道・傍食道静脈などを介する側副血行路が形成され、血液が奇静脈系を経て上大静脈へ還流することがあります。
また、下大静脈の閉塞や中断では、奇静脈系が代替経路となり、拡張して描出されることがあります。
図とCT画像を見直しながら、奇静脈の走行を確認してみてください。
参考になれば幸いです。
関連記事:CT画像で奇静脈弓に高吸収が目立つのは奇静脈弁に造影剤が残留するから
*記事内のイラストは解剖学講義改訂2版P316の図5-76を参考に作図。
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いつもお世話になっています。
図の「総頸静脈」→「左腕頭静脈」
30歳代男性 スクリーニングの「上大静脈」→「下大静脈」、「副半奇静脈」→「半奇静脈」
だと思います。
いつもお世話になっております。
昨日フォンタン手術後で下大静脈が直接肺動脈に繋がっていて、下大静脈から左右上行腰静脈への静脈や奇静脈が非常に発達している症例に出会いました。
このページで勉強して、下大静脈が鬱滞して奇静脈が連絡路として拡張•蛇行していたと理解できました。ありがとうございました。
わかりやすいイラストなので、看護学生への授業で使わせていただきます。