
先に結論:CTで見逃されやすい肺がんは「気管支の中」「血管に重なる淡い影」「線維化した肺の中」「嚢胞の壁」「肺のてっぺん(肺尖)」
| 場所・形 | なぜ気づきにくいか | 研究での特徴 |
|---|---|---|
| 気管支の中(中枢側を含む) | 気管支の内側の小さな病変は目に入りにくい | 見逃された15病変のうち10が気管支内病変(White 1996) |
| 血管に重なる小さな淡い結節 | すりガラス状で、血管などの正常構造と紛らわしい | 検出の見落としの83%が正常構造と重なる・似る(Li 2002) |
| 線維化した肺(間質性肺炎)の中 | 肺炎のような境界のはっきりしない影になる | 特発性肺線維症の13.1%に肺癌(Lee 1996) |
| 嚢胞(肺の袋)の壁 | 壁が少し厚くなるだけ、結節が小さいだけ | 非小細胞肺癌の1%(Fintelmann 2017) |
| 肺尖(肺のてっぺん) | 肩や腕の痛みで、首や肩の病気と間違えられる | 誤診の多くは頸椎の神経根症・肩の関節症(Wilkinson 2026) |
多くは「写っていない」のではなく、ほかの影や持病の変化にまぎれて気づきにくいのが特徴です。過去のCTとの比較が大きな助けになります。
実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの胸部CTの正常解剖ツールで、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。全体の見方は胸部CTの縦隔の解剖にまとめています。
CTで肺がんが「見逃される」とは
見逃しには大きく2種類あります。ひとつはそもそも気づかない(検出の見落とし)、もうひとつは気づいたが良性と判断する(解釈の誤り)です。
日本の低線量CT検診で見つかった肺癌83病変のうち32病変は、以前のCTで見逃されていました(Li 2002)。
- 検出の見落としはすべて腺癌で、91%がすりガラス影を含み、平均9.8mmと小さいものでした。83%は血管などの正常構造に重なるか似ていました。
- 解釈の誤りでは、16回中14回で所見が良性の病気に似ており、結核・肺気腫・肺線維症などの持病が背景にありました。
造影剤を使わない低線量CTでは、気管支の中や中枢側の病変が分かりにくいことも指摘されています(Rampinelli 2016)。肺がんのCTでの典型的な見え方は肺がんのCT画像|初期の見え方で解説しています。
見逃されやすい場所1:気管支の中・中枢側
3施設で見逃された肺癌15病変では、10病変が気管支内病変で、73%が下葉にありました。43%の患者では、胸の別の場所に目立つ異常があり、そちらに注意が向いていました(White 1996)。
気管支の中の病変と、その先に起こる肺炎・無気肺については閉塞性肺炎とは?で解説しています。
見逃されやすい場所2:線維化した肺(間質性肺炎)の中
特発性肺線維症(IPF)244例のうち32例(13.1%)に肺癌がありました。半数以上(17例)は肺炎のような境界不明瞭な影で、下葉(21例)と肺の外側(21例)に多く、組織型は扁平上皮癌が最多でした。典型像は「線維化が最も進んだ外側の部分にできる、浸潤影のような腫瘤」です(Lee 1996)。
もともと網状影や蜂巣肺がある場所に新しい影が加わるため、「線維化が少し増えただけ」に見えやすいのが落とし穴です。IPFのCTについてはUIPとIPFのHRCT画像診断を参照してください。
症例 70歳代男性 特発性肺線維症に合併した肺がん疑い

引用:Radiopaedia(Idiopathic pulmonary fibrosis and lung cancer)
両肺の胸膜の下に網状影と蜂巣肺が広がり、右上葉の背側(画像の左下)に胸膜に接する約3cmのかたまりがあります。線維化した肺の中にできたかたまりで、周りの影にまぎれやすい場所です(症例ページでは肺がんを強く疑う所見とされ、生検は行われていません)。
見逃されやすい形:嚢胞(肺の袋)に伴う肺がん
肺の嚢胞やブラに接して、または嚢胞の壁から肺癌が育つことがあります。24例の検討では4つの形に分けられました(Mascalchi 2015)。
| 型 | 形 |
|---|---|
| Ⅰ型 | 嚢胞の外側に突き出る結節 |
| Ⅱ型 | 嚢胞の内側に突き出る結節 |
| Ⅲ型 | 嚢胞の壁がぐるりと厚くなる |
| Ⅳ型 | 小さな嚢胞の集まりの間に組織が混ざる |
2954例の非小細胞肺癌を見直した研究では1%がこの形で、腺癌が多く(30例中24例)、経過で壁の肥厚・壁在結節の増大・充実部分の増加がみられました。上葉の外側、肺気腫、ほかの嚢胞やすりガラス結節があるときは疑いを強めるべきとされています(Fintelmann 2017)。嚢胞性の肺病変の鑑別は肺の多発嚢胞性病変の鑑別、肺尖のブラは肺尖部ブラとは?にまとめています。
見逃されやすい場所3:肺尖(Pancoast腫瘍)
肺のてっぺんにできる肺癌(上肺溝腫瘍、Pancoast腫瘍)は、肺の症状より先に肩や腕の痛み・しびれで始まることがあります。31研究・1328例の文献レビューでは、最も多い症状は肩の痛み(60.0%)で、111例が誤診で診断が遅れていました。誤診の多くは頸椎の神経根症・頸椎の変形性関節症・肩関節の関節症で、遅れの原因として最初に診た医師による画像の読み落としが多く挙げられています(Wilkinson 2026)。
頸椎や肩のレントゲン・MRIにも肺尖は写るため、そこを確認することが勧められています(Wilkinson 2026)。レントゲンで言われやすい「肺尖部の胸膜肥厚」については肺尖部胸膜肥厚とは?で解説しています。
医療者向け:読影のチェックポイント
- 気管支の内腔を末梢まで追って確認する。見逃し例は下葉に多い(White 1996)。
- 目立つ所見があっても、ほかの部位を見直す(満足による見落としを避ける)(White 1996)。
- 線維化肺では、外側・下葉の新たな浸潤影様の影を過去画像と比べる(Lee 1996)。
- 嚢胞は壁の厚み・壁在結節の変化を経時的に見る(Fintelmann 2017)。
- 頸椎・肩の画像でも肺尖を確認する(Wilkinson 2026)。
心配なとき、次にすること
- 以前のCTがあれば比較してもらうと、新しく出た影か、大きくなっているかが分かります。
- 間質性肺炎や肺気腫・嚢胞がある人は、主治医が定めた間隔で経過をみることが大切です。
- 続く咳や血痰、治りにくい肩や腕の痛みなど、気になる症状があれば医療機関を受診してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. CTで「異常なし」なら肺がんの心配はないですか?
A. CTは肺がんを見つける力の高い検査ですが、小さく淡い影や持病の影にまぎれた肺癌は気づきにくいことがあります(Li 2002)。新しい症状が出たときは、前回が異常なしでも改めて相談してください。
Q. 肩の痛みで肺がんが見つかることはありますか?
A. まれですが、肺尖の肺癌は肩や腕の痛みで始まることがあります(Wilkinson 2026)。治りにくい痛みが続く場合は、主治医に相談してください。
Q. 肺に袋(嚢胞・ブラ)があると言われました。がんになりますか?
A. 嚢胞に伴う肺癌は、非小細胞肺癌の約1%とまれな形です(Fintelmann 2017)。ただ、嚢胞の壁から肺癌が育つことがあるため、壁が厚くなる・結節が出るといった変化に注意します(Mascalchi 2015、Fintelmann 2017)。経過観察の要否は主治医と相談してください。
参考文献
- White CS, Romney BM, Mason AC, et al. Primary carcinoma of the lung overlooked at CT: analysis of findings in 14 patients. Radiology. 1996;199(1):109-15. PubMed
- Li F, Sone S, Abe H, et al. Lung cancers missed at low-dose helical CT screening in a general population: comparison of clinical, histopathologic, and imaging findings. Radiology. 2002;225(3):673-83. PubMed
- Rampinelli C, Calloni SF, Minotti M, et al. Spectrum of early lung cancer presentation in low-dose screening CT: a pictorial review. Insights Imaging. 2016;7(3):449-59. PubMed
- Lee HJ, Im JG, Ahn JM, et al. Lung cancer in patients with idiopathic pulmonary fibrosis: CT findings. J Comput Assist Tomogr. 1996;20(6):979-82. PubMed
- Mascalchi M, Attinà D, Bertelli E, et al. Lung cancer associated with cystic airspaces. J Comput Assist Tomogr. 2015;39(1):102-8. PubMed
- Fintelmann FJ, Brinkmann JK, Jeck WR, et al. Lung Cancers Associated With Cystic Airspaces: Natural History, Pathologic Correlation, and Mutational Analysis. J Thorac Imaging. 2017;32(3):176-188. PubMed
- Wilkinson M, Obst S, Palmer T, et al. Misdiagnosis of superior sulcus tumours: a scoping review. J Thorac Dis. 2026;18(2):161. PubMed
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