先に結論:ギラン・バレー症候群(GBS)とCIDPのMRI

  • ギラン・バレー症候群は、下痢(カンピロバクター)やかぜの1〜3週間後に、足から上に向かって力が入らなくなる急性の末梢神経の病気で、呼吸筋のまひを起こすことがあるため入院での管理が必要です。CIDPは2か月以上かけてゆっくり進む、または再発をくり返す慢性のタイプです
  • 診断は症状・神経伝導検査・髄液検査(蛋白細胞解離)が中心で、MRIでは馬尾・神経根の造影効果(GBSでは前根に強い)が見られることがあります。CIDPでは腕神経叢・腰仙骨神経叢の太さの増大(STIR冠状断で確認)が特徴です
  • MRIは、脊髄の圧迫や脊髄炎など、似た症状の病気を除外するためにも重要です

※手足の力が急に入らなくなってきたとき、息苦しさや飲み込みにくさがあるときは、すぐに受診してください。

GBSとCIDPとは?

  • Guillain-Barré症候群(GBS)
  • 慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy;CIDP)

は、ともに脊柱管内の炎症・脱髄疾患であるが、病変の主座は脊髄ではなく、その末梢の神経根である。

GBS

  • GBSは急性・単相性に経過する。
  • 炎症性脱髄性根神経炎である。
  • 先行感染(カンピロバクター腸炎や上気道感染などの1〜3週間後に発症)を認めることが多く、自己免疫の関与が考えられている。
  • 上行する麻痺が特徴であり、感覚神経よりも運動神経が優位に障害される。

CIDP

  • CIDPはGBSとは対照的に慢性(通常2ヶ月以上)・再発性の経過をとる炎症性脱髄性根神経炎。
  • 成因は原因不明(idiopathic)で、他の病気に合併することもある。
  • 通常、先行感染は認めない。
  • 有病率は10万人あたり2.81人(複数研究の統合解析)とまれな疾患である(Broers 2019)。
  • GBS、CIDPともに運動優位の末梢神経障害をきたす。呼吸筋や脳神経を侵す頻度はGBSの方が高い。

画像所見

  • 画像所見はともに、神経根、馬尾の腫大と造影効果を認める。GBSではこの所見は高頻度に認め、さらに前根優位の分布を取ることが多い。
    ※GBSでは馬尾神経根の造影効果を約8割に認め(典型例では95%)、前根優位のことが多い。同じ前向き研究では、造影効果が目立つ例ほど強い腰背部痛・下肢痛を伴い、発症2か月時点で独歩できない例が多かった。一方、造影効果の有無はMRIの撮像時期や髄液蛋白とは関連しなかった。
  • CIDPは脊柱管外の神経叢に腫大を認めることがあり、特徴的な所見である(STIR冠状断像の撮影が必要)。EAN/PNSガイドライン第2版(2021)では、MRIでの神経根・神経叢の腫大や造影効果は、電気生理学的基準を満たさない場合に診断を補う支持基準として扱われる。また診断確実度は「CIDP」と「possible CIDP」の2段階に簡略化され、「非典型CIDP」は「CIDP variants」と呼ばれるようになった。
  • CIDP 31例のMRニューログラフィーでは、神経叢の腫大は腕神経叢で61.3%、腰仙骨神経叢で80.6%にみられ、腰仙骨神経叢のほうが検出しやすかった。腫大の有無と罹病期間には差がなかった(Su 2020)。
  • 一方、STIRでの腫大・高信号の目視評価は健常者にもみられ、読影者間の一致も低いため、それだけで判断するのは難しいとする報告もある(Oudeman 2020)。

症例 60歳代男性 CIDPと診断されている。今回急性増悪あり。

引用:Radiopaedia

腰神経の神経根の腫大およびびまん性の増強あり。

増強は脊柱管を超えて大腿神経、腰仙骨神経叢、坐骨神経にまで及んでおり、CIDPに特徴的な所見。

参考)神経根の造影効果はGBSに特有ではない
  • 神経根の造影効果は、GBSで感度は高いが特異的な所見ではない。小児の急性弛緩性脊髄炎の一部でもみられるため、髄液検査・神経伝導検査と合わせて判断する(Leonhard 2019)。

小児のGBSでMRIの造影効果はなぜ役に立つ?

  • 幼い子どもは、痛みやぐずり、歩きたがらないといった非特異的な症状で始まることがあり、診察や神経伝導検査での評価が難しくなります(Leonhard 2019)。そのため、造影MRIでの神経根の造影効果は、特に年少児でGBSの診断を支える所見とされています(Leonhard 2019)。
  • GBSと診断された小児40人(平均5.7歳)の脊髄MRIでは、40人中38人で神経根と馬尾の肥厚・造影効果があり、最も多かったのは前根・後根の両方の造影効果で、前根に目立つパターンでした(Yikilmaz 2010)。ただしMRIの程度は臨床的な重症度とは相関しませんでした(Yikilmaz 2010)。
  • GBSとその亜型であるMiller Fisher症候群の小児17人では、14人で馬尾神経根の造影効果があり、前根が優位でした。脳MRIを撮った6人のうち5人で脳神経にも造影効果があり、脳神経の評価のため脳MRIも検討されます(Zuccoli 2011)。
  • 似た症状の急性弛緩性脊髄炎との区別:幼児の急性弛緩性脊髄炎はGBSと似た症状で現れることがあり、MRIで区別する意義が注目されています。ただし急性弛緩性脊髄炎の一部の人でも神経根の造影効果が見られるため、造影効果だけで決めてはいけません(Leonhard 2019)。

GBSの亜型(AIDPとAMAN)でMRIの見え方は違う?

  • 早期のGBSの報告をまとめた総説では、脊髄MRIの大部分で馬尾の造影効果があり、AMAN(急性運動軸索型ニューロパチー)では前根が選択的に造影されると述べられています(Berciano 2017)。
  • GBSではMRIは通常の診断検査の必須項目ではありませんが、脳幹の感染、脳梗塞、脊髄や前角細胞の炎症、神経根の圧迫、髄膜癌腫症といった似た病気を除外するのに役立ちます(Leonhard 2019)。
  • 造影効果の程度は、MRIを撮った時期(発症2〜42日、平均13日)や髄液蛋白とは関連しませんでした(Gorson 1996)。発症早期で髄液蛋白がまだ上がっていない時期でも、造影効果がヒントになることがあります。

GBSとCIDPの違い(比較表)

GBS CIDP
経過 急性・単相性。多くは2週以内に症状がピークになる(Leonhard 2019) 慢性(通常2か月以上かけて進行)・再発性
先行感染 多い(下痢・かぜの1〜3週間後) 通常ない
MRIの特徴 馬尾・神経根の造影効果(前根優位が多い) 神経根・神経叢の腫大と造影効果

ギラン・バレー症候群の診断と検査

  • 診断は、症状の経過と診察(手足の筋力低下、腱反射の低下・消失)が基本で、神経伝導検査と髄液検査で裏付ける。
  • 髄液で蛋白が高く細胞数は正常(蛋白細胞解離)が典型だが、発症1週目では30〜50%、2週目でも10〜30%で蛋白が正常のため、正常でもGBSは否定できない(Leonhard 2019)。
  • MRIの神経根の造影効果は診断を支える所見で、診察や神経伝導検査が難しい小さな子どもで特に役立つ(Leonhard 2019)。

GBSのMRIでよくある疑問(Q&A)

Q. ギラン・バレー症候群の診断にMRIは欠かせませんか?
A. 必須ではありません。診断は症状の経過・診察・神経伝導検査・髄液検査が中心で、MRIは似た病気の除外や、検査が難しい小児などで補助的に使います(Leonhard 2019)。

Q. 造影MRIで神経根が造影されればGBSと診断できますか?
A. いいえ。神経根の造影効果は感度は高いものの特異的な所見ではなく、急性弛緩性脊髄炎の一部でも見られます(Leonhard 2019)。MRIで造影効果があっても、症状・髄液・神経伝導検査と合わせて判断します。

Q. 子どもの足が急に動かなくなったときは?
A. 歩かない、立てない、息苦しそう、飲み込みにくそうなどの症状があれば、すぐに小児科や救急を受診してください。

参考文献)

  1. Gorson KC, Ropper AH, Muriello MA, et al. Prospective evaluation of MRI lumbosacral nerve root enhancement in acute Guillain-Barré syndrome. Neurology. 1996;47(3):813-7. PubMed
  2. Van den Bergh PYK, van Doorn PA, Hadden RDM, et al. European Academy of Neurology/Peripheral Nerve Society guideline on diagnosis and treatment of chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy: Report of a joint Task Force-Second revision. J Peripher Nerv Syst. 2021;26(3):242-268. PubMed
  3. Leonhard SE, Mandarakas MR, Gondim FAA, et al. Diagnosis and management of Guillain-Barré syndrome in ten steps. Nat Rev Neurol. 2019;15(11):671-683. PubMed
  4. Broers MC, Bunschoten C, Nieboer D, et al. Incidence and Prevalence of Chronic Inflammatory Demyelinating Polyradiculoneuropathy: A Systematic Review and Meta-Analysis. Neuroepidemiology. 2019;52(3-4):161-172. PubMed
  5. Su X, Kong X, Lu Z, et al. Use of Magnetic Resonance Neurography for Evaluating the Distribution and Patterns of Chronic Inflammatory Demyelinating Polyneuropathy. Korean J Radiol. 2020;21(4):483-493. PubMed
  6. Oudeman J, Eftimov F, Strijkers GJ, et al. Diagnostic accuracy of MRI and ultrasound in chronic immune-mediated neuropathies. Neurology. 2020;94(1):e62-e74. PubMed
  7. Yikilmaz A, Doganay S, Gumus H, et al. Magnetic resonance imaging of childhood Guillain-Barre syndrome. Childs Nerv Syst. 2010;26(8):1103-8. PubMed
  8. Zuccoli G, Panigrahy A, Bailey A, et al. Redefining the Guillain-Barré spectrum in children: neuroimaging findings of cranial nerve involvement. AJNR Am J Neuroradiol. 2011;32(4):639-42. PubMed
  9. Berciano J, Sedano MJ, Pelayo-Negro AL, et al. Proximal nerve lesions in early Guillain-Barré syndrome: implications for pathogenesis and disease classification. J Neurol. 2017;264(2):221-236. PubMed

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