
先に結論:大腿骨頭すべり症(SCFE)の画像診断
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 好発 | 思春期前後の小児。肥満が主要な危険因子 |
| X線 | 正面像と側面像(frog-leg)の両方。Klein線、修正Klein線、S-sign、lucency sign |
| 安定型/不安定型 | Loder分類。松葉杖でも荷重できないなら不安定型。不安定型は骨頭壊死のリスクが高い |
| 対側 | 対側にも発症しうる。予防的固定は施設・症例により議論がある |

SCFEとは:好発年齢と肥満
SCFEは、骨端線(成長軟骨)の部分で骨端が大腿骨頸部に対して後方・下方へ滑る思春期の股関節疾患です。安定型SCFEの298例(362股)を対象とした多施設研究では患者は18歳未満で、別の2施設の安定型91股の報告では診断時の年齢の中央値は12.3歳(四分位範囲11.4〜13.3)でした(White 2025、Dubina 2025)。
肥満はSCFEの主要な危険因子とされています。スイスの単施設21年間の研究(Meier 2026)では、130例中、体格指数(BMI)のデータがあった114例の62.3%が過体重または肥満で、BMIのz-scoreの中央値は1.43と基準より有意に高く、肥満の頻度は同国の小児全体の約10倍でした。男児が69.2%を占め、BMIが高い患者ほど手術時の年齢が若い傾向がありました。別の研究(Wu 2026)では、肥満児は骨成熟が約1年早く、SCFE患者でも肥満の患者は約1年若く発症していました。肥満児でSCFEのリスクが高いのは、近位大腿骨の形態の差ではなく、体重や肥満に関連する要因によると著者らは述べています。
診断の遅れも問題になります。安定型SCFEで、症状出現から診断までの平均は134日でした(White 2025)。
X線での見方:正面像と側面像、Klein線
SCFEの画像診断の中心は単純X線です。骨盤正面像に加えて側面像(frog-leg側面像)を撮影します。正面像だけでは軽度のすべりを見逃すことがあるため、側面像の重要性が症例報告でも強調されています(Cheok 2023)。後方傾斜角(posterior sloping angle:PSA)などの計測値もfrog-leg像で測定されます(Novais 2025)。
| 所見・計測 | 内容 |
|---|---|
| Klein線 | 正面像で大腿骨頸部の上縁(外側縁)に沿って引いた線。正常では骨端の一部がこの線の外側に出る。すべりがあると骨端が線に接しない、または線の内側に入る |
| 修正Klein線/S-sign | 通常のKlein線より診断精度を高める可能性がある。lucency signは早期診断に有用とされる(De Angelis 2024) |
| Southwick角 | すべりの程度(重症度)の評価に用いる(Dubina 2025) |
| 後方傾斜角(PSA) | 側面像で測定。対側すべりの予測因子として検討されている(Novais 2025) |
CTとMRIの位置づけについて、2000年以降の画像診断の文献を検討したレビュー(De Angelis 2024)では、術前CTはすべりの重症度や不安定性の予測と術式の検討に役立つ可能性があること、MRIは早期のSCFE診断で最も精度が高いことが示されています。ただし、MRIは対側すべりのリスク予測には使えません。
X線で明らかな異常がない場合の小児の股関節痛の鑑別は単純X線写真で異常のない股関節痛で考えるべき鑑別診断が参考になります。小児の股関節疾患として先天性股関節脱臼(CDH)の記事もあります。SCFEの後遺変形がcam型FAIの原因になりうることはherniation pit(大腿骨頸部ヘルニア窩)とFAIとの関係の記事も参照してください。
症例 12歳男児 数週間続く股関節・左大腿部痛と跛行

引用:Radiopaedia(Slipped capital femoral epiphysis (SCFE))
骨盤正面像にKlein線(緑=右、赤=左)を引いた画像です。右では線が骨端の一部と交わりますが、左では骨端にほとんど交わらず、左の骨頭がすべっています。左大腿骨頭の骨端線は右に比べて拡大し不整です。
安定型と不安定型:Loder分類
| 分類 | 定義(Loder 1993) | 骨頭壊死(AVN) |
|---|---|---|
| 安定型 | 松葉杖の有無にかかわらず荷重できる | 研究では0%(25股)。一般に安定型では少ない |
| 不安定型 | 強い痛みのため、松葉杖でも荷重できない | 研究では47%(14/30股)。不安定型の25〜50%に生じるとされる |
Loderらは、従来の急性・慢性・急性増悪の分類よりも、物理的に荷重できるかによる安定性の分類のほうが予後を反映すると報告しました(Loder 1993)。満足な結果は不安定型で47%、安定型で96%でした。多施設研究では、安定型でも転倒などをきっかけに不安定型へ進行した例がありました(298例中2例)。手術までに時間がかかる場合は、荷重や転倒を避けることが重要です(White 2025)。そのため、レポートではすべりの程度とあわせて、安定性についての臨床情報を確認するよう主治医に伝えることが役立ちます。
対側の評価と予防的固定
片側のSCFEで対側の股関節をどう扱うかは議論があります。片側SCFE 312例のfrog-leg像の研究(Novais 2025)では、70例(22%)が対側にすべりを生じました(中央値42か月の経過観察)。文献上のカットオフを用いた場合の成績は下表のとおりです。
| 計測 | カットオフ | 特徴 |
|---|---|---|
| Billings角 | 12°超 | 最も感度が高い(83%) |
| 傾斜角(tilt angle) | 10°超 | 特異度93%、感度21%、全体の正確度77% |
| PSA | 14°超 | AUCは全体で0.61〜0.66 |
| Southwick角 | 12°超 | 同上 |
いずれの計測も読影者間・内の信頼性は良好でした(ICC 0.84〜0.99)が、予測能は十分ではなく、感度を重視すれば不要な固定が増え、特異度を重視すれば対側すべりを見逃す、というトレードオフがあります。対側の予防的固定は、これらのリスク評価と患者背景をあわせて整形外科医が判断します。
読影レポートに入れたい項目
- すべりの有無と方向(後下方)、Klein線との関係
- すべりの程度(Southwick角など)と、側面像での評価
- 骨端線の開大・不整、metaphysis側の変化(lucency)
- 骨頭壊死・軟骨融解(chondrolysis)を疑う所見
- 対側股関節の評価(後方傾斜角など)
よくある疑問(Q&A)
Q. 正面像でKlein線が正常なら、SCFEは否定できますか?
A. 否定できません。側面像でのみ分かる軽度のすべりがあり、修正Klein線・S-sign・lucency signなどを併用することが勧められています(De Angelis 2024)。疑う場合はMRIが早期診断に最も精度が高いとされています。
Q. 安定型なら急がなくてよいですか?
A. 安定型でも荷重や転倒により不安定型へ進行した例が報告されており、手術までの間は荷重を避けることが重要です(White 2025)。治療の時期は整形外科医が判断します。
Q. 対側も固定した方がよいですか?
A. 対側すべりは22%に生じた報告がある一方、予測する計測値の精度は限られます(Novais 2025)。リスク因子を踏まえて整形外科医が判断します。
個々の診断や治療方針は、症状や診察所見とあわせて主治医が判断します。お子さんの股関節や膝の痛み、歩き方の異常が続く場合は、整形外科の主治医にご相談ください。
参考文献
- Loder RT, Richards BS, Shapiro PS, et al. Acute slipped capital femoral epiphysis: the importance of physeal stability. J Bone Joint Surg Am. 1993;75(8):1134-40. PubMed
- White AB, Keil LG, Bardsley H, et al. How Urgent Are Stable SCFEs? A Multisite Retrospective Study of Surgical Timing and Complications Among Patients With Stable Slipped Capital Femoral Epiphysis. J Pediatr Orthop. 2025;45(8):485-491. PubMed
- Dubina AG, Dunham AM, Conroy JL, et al. Immediate Versus Semi-Elective Treatment of Stable Slipped Capital Femoral Epiphyses (SCFE). Children (Basel). 2025;12(7):923. PubMed
- Meier A, Krause T, Starvaggi CA, et al. Association Between Body Weight and Clinical Characteristics of Slipped Capital Femoral Epiphysis in Switzerland: A 21-Year Single-Centre Retrospective Analysis (2005-2025). J Clin Med. 2026;15(16):6138. PubMed
- Wu J, Zhang D, Canavese F, et al. Is Susceptibility to Slipped Capital Femoral Epiphysis Linked to Obesity-Associated Proximal Femoral Morphology? J Pediatr Orthop. 2026. PubMed
- De Angelis R, Aparisi Gomez MP, Negro G, et al. Novelties in slipped capital femoral epiphysis imaging: A narrative review. Heliyon. 2024;10(7):e28734. PubMed
- Novais EN, Borden T, Pauyo T, et al. Which Radiographic Measurements Best Predict Contralateral Slip in Patients Who Undergo Pinning for Unilateral Slipped Capital Femoral Epiphysis? J Pediatr Soc North Am. 2025;12:100204. PubMed
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