先に結論:herniation pit(大腿骨頸部ヘルニア窩)

  • herniation pitは、大腿骨頸部の前上方にできる1cm未満の丸い骨の抜け(透亮像)で、縁が硬化している小さな良性病変で、多くはCTやレントゲンで偶然見つかり、治療は不要です
  • 股関節のFAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント、特にcam型)との関連が知られ、股関節の痛みがある人では形態異常がないかも確認します
  • 骨透亮像とは、レントゲンやCTで骨の一部が黒く抜けて見える所見のことで、herniation pitはその代表的な良性の例です。大腿骨頭のくぼみである大腿骨頭窩(正常構造)とは場所が違います
  • 典型的な場所・形であれば転移などと区別できますが、大きい・縁が不整・骨破壊や骨膜反応・MRIで周りの強いむくみがあれば他の病変を考えます

Herniation pitとは?

  • Herniation pit(大腿骨頸部ヘルニア窩)は、大腿骨頸部の前上方〜前外側にみられる小さな骨皮質下の透亮像である。
  • 典型的には大腿骨頸部の近位部、特に大腿骨頭頸部移行部の前上方〜前外側にみられる。
  • 単発のことが多いが、片側性または両側性に認められることがある。
  • 大きさは通常1cm未満で、数mm程度の小病変として描出されることが多い。
  • 古典的には、股関節包や周囲軟部組織の機械的刺激により、大腿骨頸部皮質の小欠損部から滑膜や軟部組織が骨内へ陥入することで形成されると考えられてきた。このため「herniation pit」という名称が用いられている。
  • 一方で、近年では大腿骨寛骨臼インピンジメント、すなわちFAI(femoroacetabular impingement)との関連が注目されている。
  • 特にcam type FAIでは、大腿骨頭頸部移行部の形態異常により、股関節屈曲・内旋時に寛骨臼縁と大腿骨頸部が衝突しやすくなる。その結果、前上方の大腿骨頸部に線維嚢胞性変化が生じる可能性がある。

骨透亮像とは

  • 骨透亮像とは、単純X線写真やCTで、周りの骨よりも黒く(透けて)見える部分のことです。骨が薄くなったり、骨が溶けたり、骨の中が液体や軟部組織に置き換わったりすると、このように見えます。
  • 骨透亮像には、herniation pitのような正常変異・良性病変から、骨嚢腫、膿瘍、腫瘍、転移まで含まれるため、場所・大きさ・縁の硬化・骨膜反応をあわせて判断します。

herniation pitと大腿骨頭窩の違い

herniation pit 大腿骨頭窩(fovea capitis)
場所 大腿骨頸部の前上方(骨皮質の下) 大腿骨頭の内側の関節面
正体 軟部組織が入り込んだ小さなくぼみ・嚢胞状変化 大腿骨頭靱帯(円靱帯)が付着する正常のくぼみ
画像 硬化縁を伴う小さな円形の透亮像 骨頭の関節面の浅いくぼみ
意義 多くは偶然見つかる。FAIとの関連あり 正常構造で病気ではない

臨床的意義

Herniation pitの多くは無症状であり、CTや単純X線写真で偶然発見される。
典型的な部位・形態であれば、原則として良性の骨病変として扱ってよい。

ただし、すべてを「放置してよい正常変異」と考えるのではなく、以下の点を確認することが重要である。

  • 病変が典型的な部位にあるか
  • 境界明瞭で骨硬化縁を伴うか
  • 周囲に骨破壊性変化や骨膜反応がないか
  • 疼痛部位と一致するか
  • MRIで周囲骨髄浮腫を伴うか
  • FAIを示唆する大腿骨頭頸部移行部の形態異常がないか

特にMRIで病変周囲に骨髄浮腫を伴う場合には、まれに疼痛の原因となっている可能性がある。
また、FAIの評価中に前上方大腿骨頸部の嚢胞性病変として認められる場合には、単なる偶発所見ではなく、インピンジメントに伴う二次的変化として解釈する必要がある。

画像所見

単純X線写真

単純X線写真では、大腿骨頸部の前上方〜前外側に、境界明瞭な円形〜卵円形の透亮像として認められる。
周囲に薄い骨硬化縁を伴うことが多い。
ただし、小さい病変や前方に位置する病変では、単純X線写真では目立たないこともある。

CT

CTでは、herniation pitの評価が最もわかりやすい。
大腿骨頸部前方の骨皮質下に、骨硬化縁を伴う境界明瞭な小嚢胞状透亮像として描出される。
病変の位置、大きさ、骨皮質との連続性、周囲骨硬化の有無を評価しやすい。

典型的には以下のような所見を示す。

  • 大腿骨頸部前上方〜前外側の骨皮質下病変
  • 円形〜卵円形の透亮像
  • 薄い骨硬化縁を伴う
  • 大きさは多くが1cm未満
  • 周囲の骨破壊や軟部腫瘤を伴わない

CTで典型的な部位にこのような病変を認めた場合、herniation pitを第一に考える。

 

症例 70歳代男性

右大腿骨頸部前外側の骨皮質下に、薄い骨硬化縁を伴う小嚢胞状透亮像を認めます。

部位および形態からherniation pitが疑われます。明らかな骨破壊性変化や軟部腫瘤は認めません。

症例 60歳代男性

Herniation pit

大腿骨頚部近位1/4 の外側前面に骨硬化縁を有する嚢胞性病変あり。

herniation pitを疑う所見です。

MRI

MRIでは、病変は一般にT1強調像で低信号、T2強調像や脂肪抑制T2強調像で高信号を示す。
周囲に低信号の硬化縁を伴うことがある。

無症状のherniation pitでは、周囲骨髄浮腫を伴わないことが多い。
一方、症候性の場合や機械的ストレスが加わっている場合には、病変周囲に骨髄浮腫を伴うことがある。
この場合は、股関節痛との関連を考慮する必要がある。

FAIとの関連

Herniation pitは古くから正常変異または偶発所見として扱われてきたが、近年ではFAIとの関連が報告されている。

Leunigらは、FAIを有する117股と発育性股関節形成不全を有する132股を比較し、前上方大腿骨頸部の線維嚢胞性変化を検討した。
その結果、FAI群では39股、すなわち33%に線維嚢胞性変化を認めた一方、発育性股関節形成不全群では認められなかったと報告している。病変の平均径は5mm(3〜15mm)で、小さいものが多かった。
また、動的MR関節造影や術中所見において、これらの嚢胞性変化はインピンジメント部位と近接していた。

このことから、前上方大腿骨頸部のherniation pitあるいは線維嚢胞性変化は、cam type FAIに伴う反復性の機械的衝突を反映している可能性がある。
そのため、若年〜中年者で股関節痛があり、同部位にherniation pitを認める場合には、FAIの有無をあわせて評価することが重要である。

鑑別診断

Herniation pitは典型例では診断に迷わないが、大腿骨頸部の骨透亮像として認められるため、以下の疾患との鑑別が問題となる。

  • 類骨骨腫
  • Brodie膿瘍
  • 骨内ガングリオン
  • 骨嚢腫
  • 骨転移
  • 骨髄炎
  • 疲労骨折に伴う嚢胞状変化
  • 大腿骨頭壊死(MRIでherniation pitと紛らわしいことがある。Nokes 1989)

herniation pitはMRIのT1強調像で内部が均一な低信号、T2強調像で辺縁に無信号の縁を伴い、典型的な場所と見え方から他の病変と区別できるとされます(Nokes 1989)。

herniation pitでよくある疑問(Q&A)

Q. herniation pitは治療が必要ですか?
A. ほとんどは症状がなく、偶然見つかった典型例では治療は不要です。股関節の痛みがある場合は、FAIなど股関節の形の異常がないかを確認します。股関節の痛みが続くときは整形外科で相談してください。

Q. どのくらいの人に見つかりますか?
A. 骨盤CT200例の検討では85例に見られ、まれなものではありません。herniation pitのある人では、cam型FAIの指標であるα角が約10%大きい結果でした(Panzer 2008)。

Q. 大きくなったり、がんになったりしますか?
A. 大きさは通常1cm未満で、増大はまれです。ただし大きい、縁が不整、骨破壊や骨膜反応がある場合は、他の病気を考えて精査します。

 

参考文献:

  1. Pitt MJ, Graham AR, Shipman JH, Birkby W.
    Herniation pit of the femoral neck.
    AJR American Journal of Roentgenology. 1982;138(6):1115-1121.
    DOI: 10.2214/ajr.138.6.1115.PubMed
  2. Nokes SR, Vogler JB, Spritzer CE, Martinez S, Herfkens RJ.
    Herniation pits of the femoral neck: appearance at MR imaging.
    Radiology. 1989;172(1):231-234.PubMed
  3. Leunig M, Beck M, Kalhor M, Kim YJ, Werlen S, Ganz R.
    Fibrocystic changes at anterosuperior femoral neck: prevalence in hips with femoroacetabular impingement.
    Radiology. 2005;236(1):237-246.
    DOI: 10.1148/radiol.2361040140.PubMed
  4. Panzer S, Augat P, Esch U.
    CT assessment of herniation pits: prevalence, characteristics, and potential association with morphological predictors of femoroacetabular impingement.
    European Radiology. 2008.PubMed
  5. Kavanagh L, Byrne C, Kavanagh E, Eustace S.
    Symptomatic synovial herniation pit—MRI appearances pre and post treatment.
    British Journal of Radiology Case Reports. 2017;3(2):20160103.Article
  6. Tannast M, Siebenrock KA, Anderson SE.
    Femoroacetabular impingement: radiographic diagnosis—what the radiologist should know.
    AJR American Journal of Roentgenology. 2007;188(6):1540-1552.AJR

herniation pitとは?

  • 大腿骨頚部前面の上外側にみられる類円形の骨皮質下透亮像で、両側性あるいは片側性に見られる。
  • サイズは通常1cm未満で、増大することはまれ。
  • 単純X線写真でもしばしば見られ(Pitt 1982)、CTでは200例中85例と高頻度に検出されたとの報告もある(Panzer 2008)。
  • 明らかな原因は不明だが、正常変異と認識される。ほとんどは無症状で放置してよい。
  • ただし、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI:femoroacetabular impingement)に有意に合併することからその臨床的な意義が変わりつつある。
  • 類骨骨腫や骨膿瘍(Brodie膿瘍)は類似した骨透亮像を示すが、周囲の骨硬化や骨膜反応の存在、臨床所見、骨シンチグラフィにおける高集積などから鑑別が可能。

画像所見

  • 単純X線写真や、CTで大腿骨前外側皮質下に骨硬化縁を伴う境界明瞭な小さな円形の透亮像として認められる。
  • MRIでは病変はT1強調画像で低信号、T2強調画像で中〜高信号を示す。

 

 

 

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