先に結論:じん肺(塵肺)

  • じん肺は粉じんを長く吸い込んで肺が線維化する職業性の病気で、吸入をやめても進行することがあり、元に戻す治療はありません
  • 珪肺は上肺優位の粒状影〜結節(進むと大陰影=PMF)、石綿肺は下肺の線状・網状影と胸膜プラークというように、粉じんの種類で分布と形が違います
  • じん肺は粉じんによる肺の病気の総称で、珪肺(シリカ)や石綿肺(アスベスト)はその一種です
  • 結核・非結核性抗酸菌症・肺癌の合併が多く、吸入をやめた後に結節が大きくなる・形が変わるときは合併を疑います

塵肺

  • 粉じんを長期間吸入することによって、肺に生じた線維性増殖性の変化を主体とする疾病。
  • 気管、気管支、細気管支、肺胞、肺血管系の炎症、線維化、破壊、気腫化などにより種々の程度の肺機能障害が起こる。
  • 乾性咳嗽、呼吸困難を呈し、聴診にて捻髪音(fine crackle)を聴取する。
  • 粉じん吸入を中止した後も、病状は進行して、遂には慢性呼吸不全を来す。
  • 呼吸機能検査にて拡散障害+拘束性換気障害(肺拡散能(DLCO↓)、%肺活量(%VC)↓)を示し、閉塞性換気障害を伴うこともある。
  • 現在のところ、破壊された肺を元に戻す有効な治療方法はない。
  • 診断は粉塵暴露歴と肺の線維増殖性変化の証明であり、線維増殖性変化の証明は胸部X線検査によってなされる。ただし胸部X線には早期病変の評価に限界があり、鉱山作業歴のある労働者の検討では、5人の読影者による胸部X線の粒状影の密度判定が全員一致したのは109例中5例(4.6%)にとどまりました。CTは胸部X線より早期じん肺の評価に鋭敏で、肺気腫を伴う例では胸部X線のほうが高く判定されやすいと報告されています。
  • 長期にわたる粉塵の吸入がある。職業歴などから、珪肺、石綿肺、ベリリウム肺などから鑑別を行う。
  • Tb(抗酸菌症)、肺癌の発生が多い。
  • 治療は① 対症療法→鎮咳薬、去痰薬など、②残存肺機能の保持→禁煙、呼吸リハビリ

じん肺と珪肺・石綿肺の違い

じん肺は、吸い込んだ粉じんによって起こる肺の病気の総称です。珪肺は結晶質シリカ、石綿肺は石綿(アスベスト)によるじん肺で、粉じんの種類によって陰影の分布や形が変わります。

項目 珪肺 石綿肺
原因の粉じん 結晶質シリカ(採石・トンネル工事・鋳物・人工石の加工など) 石綿(アスベスト)
分布 上肺優位 下肺・胸膜直下優位
胸部X線 小粒状影〜結節影、進むと大陰影(PMF) 線状・網状の不整形陰影
CT リンパ路に沿った小結節、リンパ節の卵殻状石灰化 特発性肺線維症に似た線維化、胸膜プラーク
関連する病気 結核・抗酸菌症、肺癌 石綿曝露による肺癌・中皮腫

表のCT所見は画像と病理の対比に基づきます(Chong 2006)。近年は人工石(エンジニアドストーン)を加工する作業者で、進行の速い珪肺や、下肺・空洞を伴う大陰影など典型から外れた像が多いと報告されています(Lateef 2026)。

胸部X線(レントゲン)での判定

国際的には国際労働機関(ILO)の分類が使われ、標準写真と見比べながら、小さな陰影の形(粒状か不整形か)・大きさ・密度と、大陰影の有無を記録します。読影者の間でばらつきが出やすいため、早期の評価にはCTが役立ちます(Hayashi 2022)。咳や息切れが続く、粉じん作業の経験があって気になる場合は医療機関に相談してください。

各種塵肺の特徴

  • 珪肺:上肺優位に粒状影~結節影を形成。進行すると大陰影を作る。
  • 石綿肺:下肺野の索状、線状影で不整形陰影を呈する。胸膜プラークを伴うことが多い。
  • アルミニウム肺:線状影とその間にある細結節影が混在し、不整形陰影を呈する。
  • 溶接工肺:非常に軽い肺野濃度上昇様所見で出現。辺縁が明瞭でなく、線維化が弱い粉じん巣。鉄(溶接工肺・鉄肺症)、スズ、バリウムによるじん肺は線維化を伴わない非線維性じん肺に分類され、CTでは境界不明瞭な小葉中心性粒状影やすりガラス影として見られます。

肺の部位による病変発生傾向の違い

  • 粒子状粉じんにおいては、肺の動きが相対的に弱くて淀みやすい両側上葉、右中葉後上方、下葉上方の部位に、じん肺の病変が現れる傾向あり→ 粒状影
  • 繊維状粉じんにおいては、直進して吸い込まれやすい両側下葉の下部に沈着し病変を引き起こす傾向あり。→不整形影

結核および非結核性抗酸菌症の合併について

  • かつては合併率高かったが、近年は低い。
  • MACの合併は診断率が高まったこともあり増えている。
  • 塵肺結節病巣と離れた部位に生じる分離型complicated typeと、結節に連続した結合型combined typeがある。後者は診断、治療が難しい。
  • PMFの空洞形成の一因として、NTMの感染があるので注意。

どうやって疑うか??
・Tbは変な形出てくる。典型的なTbではない。
・曝露が終わったのに粒がサイズ大きくなるときは怪しい。

肺癌の合併について

  • 1997年に結晶質シリカを発癌性Group1(ヒトに対する発癌性がある)に分類。
  • 結晶質シリカ曝露自体が発癌に関与するとされるが、線維化(珪肺)の存在が関与するかには議論がある。

症例 50歳代男性(珪肺・進行性塊状線維化)

珪肺 進行性塊状線維化 胸部X線
引用:Radiopaedia(Silicosis with progressive massive fibrosis)

進行した珪肺の既往がある症例の胸部X線です。両側の上肺野に塊状の大陰影があり、両肺に小さな粒状影が広がっています。

珪肺 進行性塊状線維化 CT
引用:Radiopaedia(Silicosis with progressive massive fibrosis)

同じ症例のCT(肺野条件)です。上葉優位の高度な線維化と塊状影があり、周囲にはリンパ路に沿った無数の小結節がみられます。肺門リンパ節には辺縁の石灰化(卵殻状石灰化)も指摘されています。

症例 80歳代男性(石綿肺)

石綿肺 CT
引用:Radiopaedia(Asbestosis)

慢性の咳と息切れで受診した症例のCT(肺野条件)です。両側の下葉の胸膜直下を中心に網状影と蜂巣肺がみられ、UIPパターンの線維化です。この症例では石灰化した胸膜プラークも伴っており、石綿肺を強く疑う組み合わせとされています。

参考文献

  1. Chong S, Lee KS, Chung MJ, et al. Pneumoconiosis: comparison of imaging and pathologic findings. Radiographics. 2006;26(1):59-77. PubMed
  2. Leung CC, Yu IT, Chen W. Silicosis. Lancet. 2012;379(9830):2008-18. PubMed
  3. Akira M, Suganuma N. Imaging diagnosis of pneumoconiosis with predominant nodular pattern: HRCT and pathologic findings. Clin Imaging. 2023;97:28-33. PubMed
  4. Hayashi H, Ashizawa K, Takahashi M, et al. The diagnosis of early pneumoconiosis in dust-exposed workers: comparison of chest radiography and computed tomography. Acta Radiol. 2022;63(7):909-913. PubMed
  5. Lateef S, Oh A, Chung JH, et al. Silicosis Epidemic among Engineered Stone Countertop Workers: Pictorial Review. Radiographics. 2026;46(3):e250079. PubMed

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