通常型間質性肺炎(UIP/IPF)

UIP?IPF?なぜ2つもあるのでしょうか?

少しややこしいですが、

  • UIP: usual interstitial pneumonia  通常型間質性肺炎
  • IPF: Idiopathic Pulmonary Fibrosis  特発性肺線維症

であり、

  • UIPは画像・病理診断
  • IPFは臨床診断 です。

つまり、画像診断医はレポートにUIP patternです、と書く事はあっても、IPFですとは書かないわけです。そして、UIPの画像・病理所見を呈するのは、なにもIPFだけではなく、膠原病やCHP(慢性過敏性肺炎)など多彩です。これらを除外してはじめて特発性つまり、IPFと診断されます。

特発性間質性肺炎(IPF)の診断:
呼吸器内科医、放射線科医、病理医の合議によって決定する(multidisciplinary discussion)

IPF(UIP)

  • 原因不明の線維性間質性肺炎。
  • 慢性経過か進行性。
  • 男性に多い。
  • 50〜70歳に好発。なので加齢もリスクファクターと言われる。(参考:NSIPの好発年齢は40〜50歳)
  • 主症状は乾性咳嗽、息切れ
  • 治療抵抗性で予後不良。10年生存率は15%。
  • IPFと他の間質性肺炎を鑑別する理由:IPFの治療薬(ピルフェニドン、ニンテダニブ)がある。IPFでは急性増悪時のみステロイド治療の対象となるが、他の間質性肺炎はステロイド治療の対象となる。

特発性間質性肺炎(IPF)の診断:

  • 呼吸器内科医、放射線科医、病理医の合議によって決定。
  • HTCT上典型的なUIPパターンを示す症例は、外科的生検を必要としない
  • あとは内科的に、続発性を除外→特発性と診断。

IPFのHRCT診断4パターン

(2018年ガイドライン※でこのように分類された)

  1. UIP パターン
  2. Probable UIP パターン
  3. Indeterminate for UIP パターン
  4. alternative diagnosis

このうち1のみ→画像・臨床所見からUIPと診断するが、他の2-3では、外科的肺生検などを考慮する。

※Am J Respir Crit Care Med 198:e44-e68,2018

IPFのHRCT診断4パターンと画像所見

  • UIPパターン:胸膜直下、下葉優位で蜂巣肺を伴う。
  • Probable UIPパターン:蜂巣肺は伴わず、網状影を認める。
  • Indeterminate for UIPパターン:微細な網状影。特定の病因を示唆しない線維化。
  • Alternative diagnosis:他疾患を示唆する陰影の分布。

IPFの診断手順

  • 他の間質性肺炎を呈する疾患を除外する。
  • HRCTでUIP patternの症例は外科的生検が不要。
  • 他の診断のときは合議にて決定する。

UIP:IPF1

実際の画像所見

蜂巣肺
  • UIPの代表的所見で、UIP patternの診断に必須
  • 予後と相関あり。蜂巣肺が多いほど予後が悪い。
  • 病理的には拡張した末梢気道と虚脱した肺胞腔。

▶CT所見:

  • 集簇する嚢胞性陰影。
  • 境界明瞭で薄い壁。
  • 数mm〜1cm大。
  • 胸膜直下。
  • 隣り合う嚢胞と壁を共有する。
  • 2列以上連なる。

※注意点として、牽引性気管支拡張と間違えてはいけない。上下のスライスを見る事で牽引性気管支拡張かどうかチェックする。

(時相の不均一性を認める蜂巣肺の画像所見。時相の不均一性とは正常と線維化部位が隣り合う所見。)

UIP1

小葉内網状影
  • Intralobular reticular opacity。
  • UIPの代表的所見。
  • 肺胞壁の線維化像。
  • 実際には規則正しい網目状の所見ではない。
  • 不整な線状影や点状影の集合。

UIP2

※すりガラス影と網状影の鑑別は?

  • 両者しばしば合併する。
  • 均一であればすりガラス影→NSIP
  • 不均一であれば網状影→IPF
牽引性気管支拡張
  • 伴走する動脈より拡張する気管支。
  • 壁が不整で、気管支周囲に線維化を疑うすりガラス状陰影や均等影がある。
  • UIPでは末梢の牽引性気管支拡張が主で、あまり目立たない事が多い。
  • UIPでは上葉から下葉まで広範に見られる。

UIP3

UIP1

肺底部のわずかな網状影、すりガラス影の鑑別は?

  • 初期のIPF
  • アーチファクト(吸気が不十分である。あるいは重力効果)
  • 初期の喫煙関連の間質性肺炎:喫煙に関連した線維化を伴う気腔拡大(AEF:airspace enlargement with fibrosis)
  • 初期の膠原病肺や慢性過敏性肺臓炎などの2次性の間質性肺炎

関連記事:軽微な間質性病変(肺間質の異常)であるILA(interstitial lung abnormality)とは?

参考:困ったときの胸部の画像診断 P202

ご案内

腹部画像診断を学べる無料コンテンツ

4日に1日朝6時に症例が配信され、画像を実際にスクロールして読影していただく講座です。現状無料公開しています。90症例以上あり、無料なのに1年以上続く講座です。10,000名以上の医師、医学生、放射線技師、看護師などが参加中。

胸部レントゲンの正常解剖を学べる無料コンテンツ

1日3分全31日でこそっと胸部レントゲンの正常解剖の基礎を学んでいただく参加型無料講座です。全日程で簡単な動画解説付きです。

画像診断LINE公式アカウント

画像診断cafeのLINE公式アカウントで新しい企画やモニター募集などの告知を行っています。 登録していただくと特典として、脳の血管支配域のミニ講座の無料でご参加いただけます。