主にCT画像で「free air(腹腔内遊離ガス)を見つけた!」
と思ってもairのある場所は腹腔内ではない場合があります。
そんなときは腹腔内(腹膜腔)ではなくその外の腹膜外腔に存在していることがあります。
今回はそんな、腹膜外腔とはどんなスペースで、どのような病変の分布を示すのかについてまとめました。
腹膜外腔とは
- 腹膜外腔は前方は腹膜前腔、背側は後腹膜腔、下方は腹膜下腔と呼ばれる3つの領域からなる。中でも後腹膜腔はなじみが深い。
- 多くの血管、筋膜、靭帯、神経などが走行しており、通常は脂肪組織が間隙を埋めている。従って、この中に迷入した空気などは、これらの組織をかき分けて広がることになる。
ここまでわかる急性腹症のCT (荒木力先生 メディカル・サイエンス・インターナショナル)P191を参照に作図。
症例 80歳代 女性(腹水により腹膜外腔と腹膜腔の境界が明瞭化)
腹水により腹膜外腔と腹膜腔の境界が明瞭化しています。
症例 70歳代男性(腹膜外腔に沿って血腫の進展)
左の腹直筋から腹膜外腔沿いに尾側に向かって血腫の進展あり。
あくまで血腫は腹膜外腔に存在し、腹腔内には存在しない。
こちらもどうぞ→骨盤骨折に伴う後腹膜血腫の症例
腹膜腔内にfree airの出現しない消化管穿孔
- 後腹膜への穿孔
- 腸間膜内への穿孔
- 上・下結腸の背側への穿孔
- 十二指腸、下部直腸など後腹膜腸管の穿孔
参考)医原性大腸穿孔
- 内視鏡検査や注腸造影に伴う大腸穿孔。
- 内視鏡検査の0.1%、注腸造影の0.04%。
- 治療:
①腹膜腔への穿孔→手術による修復、洗浄
②腹膜外腔への穿孔→範囲によっては保存的
参考)ここまでわかる急性腹症のCT (荒木力先生 メディカル・サイエンス・インターナショナル)
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先日、単純CTにて腹膜腔内にfree air がなく、膵臓背側~腎臓周囲のfree airが出現した患者様が来院しました。
腹痛を訴えるものの歩行は行え、DMのコントロール不良などから、医師は「気腫性腎盂腎炎だ!急いでERに!」と転院先に電話していましたが、若手の放射線技師の私は「(気腫性腎盂腎炎て…腎臓のなかに気腫も液体貯留も一つもないのにこんなに大量のガスが出てたら、ショック状態になってるんじゃない?)」と思い、その旨を上司から伝えてもらいました。
私は単純に「場所的に十二指腸の穿孔かな…S状結腸の周りにはairないし」と予想していたのですが、後日転院先から帰ってきたオペの記録と造影CTから下行結腸背側の穿行だったと知りました。
そして、調べてこちらのページを読み、更に勉強になりました。
ありがとうございました。
またいろいろと勉強させていただきますね。
アザラシ様
コメント頂きありがとうございます。
腹膜がどれだけ覆っているかなどでfree airにならないことがあるので難しいところですよね。
http://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/4666
こちらも参考下さい。
またよろしくお願いします。