膵頭十二指腸切除術(PD:pancreatoduodenectomy)後には、術前に脂肪肝がなくても新規(de novo)にびまん性脂肪肝が出現することがある。

典型的な「メタボ型脂肪肝」と異なり、膵外分泌不全(PEI/EPI)と低栄養が前景に立つ点が重要である。

なぜPD後に脂肪肝が生じるか

原因は「過食」ではなく「極度の吸収障害と栄養欠乏」である。

  • 膵外分泌不全 → 消化吸収不良(脂肪便・下痢・体重減少)(肝臓から脂肪を運び出す船(VLDL)を作るには、「アミノ酸」と「コリン」が必要である。膵外分泌不全(PEI)でこれらの栄養素が吸収できないと、肝臓で作った脂肪を血中に放出できず、肝内に溜め込んでしまう。)
  • タンパク/エネルギー不足(Alb/PreAlb低下、筋肉量低下)(原料不足: 脂肪を分解する膵酵素が出ないため、食べた脂肪やタンパク質が吸収されず、体は飢餓状態と判断し、末梢の脂肪を分解して肝臓へ送るが、肝臓からは出せないという悪循環に陥る。)
  • 残膵量・残膵機能の低下(術式や残膵容量が影響)

このタイプは「太っていないのに脂肪肝」という形で現れうるため、体重やBMIだけで安心しないことがコツである(膵切除後de novo NAFLDの系統的レビューで議論)。

リスクの目安

  • 術後に持続する体重減少、特に筋肉量低下が疑われる
  • 下痢・脂肪便など吸収不良症状
  • 低栄養所見(総蛋白/Alb/PreAlb低下など)
  • フォローCTで新規のびまん性肝低吸収

画像診断のポイント

  • 新規のびまん性低吸収が最重要所見である。
  • 定量は可能なら単純CTで行う。
  • 研究では肝/脾比(L/S比)などが脂肪肝の指標として用いられる(例:L/S比で定義しRCT評価に使用)。
  • びまん性脂肪化+局所脂肪温存(focal sparing)で腫瘤様に見えることがある。典型パターンを知って誤読を避ける(画像診断の総説で整理)。

症例 70歳代女性 PD後

術前には認めなかった著明な脂肪肝が出現している。

PD後のびまん性脂肪肝と診断された。

臨床対応

  • まずPEIを疑い、膵消化酵素補充(PERT)と栄養介入を最適化する。
  • 高用量の消化酵素マネジメントでNAFLD発症抑制を示したRCTが報告されている一方、製剤や条件により結果が一様でない研究もあるため、症状・栄養指標・便性状を見ながら個別に調整する。
  • 併せて鑑別としてアルコール、ウイルス性肝炎、薬剤(化学療法)、胆道感染などを除外する。

まとめ

  • PD後のびまん性脂肪肝は、メタボ型ではなく「吸収不良・低栄養型」として出会うことがある。
  • 画像は術前後比較+(可能なら)単純CTで定量が有用である。
  • PD後脂肪肝は、術後の低栄養(膵外分泌不全)のサインである。 漫然と経過観察せず、リパクレオンの増量とアミノ酸・MCTによる栄養介入を早期に行うことが、肝機能温存と予後改善への近道である。

関連記事:脂肪肝とは?CT,MRI画像診断のポイントは?

参考文献

  1. Shah P, Patel V, Ashkar M. De novo non-alcoholic fatty liver disease after pancreatectomy: A systematic review. World J Clin Cases. 2022.
  2. Nomura R, et al. Development of hepatic steatosis after pancreatoduodenectomy. AJR Am J Roentgenol. 2007.
  3. Ohgi K, et al. Perioperative CT assessments of the pancreas predict NAFLD after pancreaticoduodenectomy. Medicine (Baltimore). 2016.
  4. Yasukawa K, et al. Preventive effect of high-dose digestive enzyme management on NAFLD after pancreaticoduodenectomy: a randomized clinical trial. J Am Coll Surg. 2020.
  5. Hamer OW, et al. Fatty liver: imaging patterns and pitfalls. Radiographics. 2006.

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