頭部CTを読影していると、「片側の水晶体が見えない」ことに遭遇することがあります。
そもそも頭部CTやMRIで水晶体はどのように見えるのが正常なのでしょうか?
本記事では、画像診断における水晶体のCT・MRI所見、白内障術後の変化、そして読影で注意すべきポイントについて解説します。
水晶体の正常解剖と画像所見
水晶体(lens)は、眼球内で虹彩と硝子体の間に位置する無血管の透明な構造体で、成人では直径約9〜10mm、厚さは約4〜5mm程度で、球状〜凸レンズ型の形状をとります。
CT所見:
水晶体は高濃度タンパク質を含むため、周囲の房水や硝子体よりやや高吸収で描出されます。高解像度の冠状断や矢状断では左右対称の楕円状構造として確認できることが多く、正常例では両側とも明瞭な描写が期待されます。
MRI所見:
T1WIで軽度高信号、T2WIでは著明な低信号を示す。
症例 70歳代女性
両側の水晶体は凸レンズ状で高吸収で描出されています。正常画像です。
症例 70歳代女性
水晶体はT1WIで軽度高信号、T2WIでは著明な低信号を示しています。こちらも正常画像です。
水晶体脱臼の画像所見と読影ポイント
水晶体脱臼(lens dislocation)は、チン小帯の断裂などにより水晶体が正常な位置から逸脱する病態です。原因としては、外傷、Marfan症候群、強度近視、手術歴などが挙げられます。
CTでは、通常の水晶体位置から逸脱した高吸収の構造物が前房や硝子体腔に認められることで診断が可能です。左右差のある水晶体描出や、明らかな偏位が見られた場合には脱臼を強く疑います。
MRIでは、硝子体内の高信号の中に低信号構造が偏位して描出されることがあります。後方脱臼では、水晶体が眼底方向に落ち込んでいる像として確認できる場合もあります。
症例 50歳代男性
引用:radiopedia
左側水晶体は完全に後方脱臼していることがわかります。
左水晶体脱臼の症例です。
白内障術後の画像所見|眼内レンズ(IOL)の特徴
白内障手術では、混濁した水晶体を摘出し、代わりに眼内レンズ(IOL:intraocular lens)を挿入します。IOLの材質にはアクリルやシリコンなどが用いられ、MRI対応か否かも含め多様なバリエーションがあります。
CT所見:
IOLは人工物であるため、水晶体よりも明瞭かつやや高吸収に描出されることが多く、通常は楕円形または円盤状の構造として観察されます。術後眼では、水晶体が完全に消失しているように見える一方で、IOLがしっかりと確認できます。
MRI所見:
MRIではIOLは信号欠損または低信号として描写されます。材質によっては微小なアーチファクトが生じることがありますが、近年使用されているIOLの多くはMRI対応であり、大きな問題になることは少なくなっています。
症例 60歳代女性 白内障術前・術後
術前認めていた凸レンズ状の高吸収の水晶体は消失し、線状の高吸収に変わっています。
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