尿瘤(urinoma)は、腎盂や尿管などの尿路が破綻し、尿が後腹膜腔や腹膜内に漏出して生じる液体貯留病変です。

CTは尿瘤の診断において最も重要なモダリティの一つであり、正確な画像診断により、原因や重症度、治療方針を決定するうえで極めて有用です。

尿瘤(urinoma)の主な原因と鑑別

尿瘤の原因としては、以下のような外傷性・非外傷性の要因があります。

  • 外傷性:交通外傷や医療処置(腎瘻・腎生検・尿管ステント挿入など)
  • 非外傷性:尿路結石や尿管閉塞、腫瘍、感染症(特に慢性腎盂腎炎)などにより、尿路閉塞→強度の水腎症が破綻することによる

尿瘤の鑑別には、腎周囲膿瘍やリンパ管腫、出血性病変との区別が求められる。

非外傷性の場合は、尿路圧が低下し疼痛が突然軽快することもがある。

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尿瘤(urinoma)のCT画像での典型的所見

尿瘤は主に後腹膜腔、特に腎周囲脂肪織内における低吸収域(fluid collection)として描出されます。以下が典型的なCT所見です。

  • 単純CT:腎周囲に境界明瞭な低吸収域が見られる
  • 造影CT:遅延相で尿の漏出像(extravasation)を認めることがある
  • air-fluid level:尿瘤内にガスを含む場合、感染を示唆

特に遅延相での撮影は、尿の経路や漏出部位の確認に有用であり、尿管損傷や腎盂破裂との鑑別に重要です。

症例 40歳代男性 鈍的外傷

引用:radiopedia

右水腎症を認め腎周囲に液貯留を認めており、尿瘤(urinoma)を疑う所見です。

1時間後の撮影で造影剤が腎周囲に増大しており、尿瘤(urinoma)およびその増大と診断することができます。

尿瘤(urinoma)の治療方針とフォローアップ

小さな尿瘤は自然吸収されることが多く、保存的治療が第一選択となります。
しかし、サイズが大きい場合や感染・敗血症を伴う場合は、以下の対応が必要になります。

  • 経皮的ドレナージ(percutaneous drainage)
  • 尿路通過障害があればステント留置や腎瘻造設
  • 抗菌薬投与(感染時)

    まとめ

    尿瘤(urinoma)は、尿路損傷によって発生する後腹膜腔内の液体貯留であり、CTを用いた適切な診断が極めて重要です。

    特に外傷後や尿路結石症例では、その存在を常に念頭に置く必要があります。

    参考文献・出典

    • Gayer G, Zissin R, Apter S, et al. Urinomas caused by ureteral injuries: CT appearance. Abdom Imaging. 2002;27:88–92.
    • 画像診断2021年特集:泌尿器領域 p.493、p.1465-1468、p.253
    • Feinstein KA, Fembach SK. Septated urinomas in the neonate. AJR. 1987;149:997–1000.

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