LEGH(Lobular Endocervical Glandular Hyperplasia)は、子宮頚部に生じる分葉状の腺過形成病変であり、画像診断において嚢胞性腫瘤と腺癌の鑑別でしばしば問題となります。MRI上ではcosmos pattern(コスモスパターン)という特徴的な所見を呈し、LEGHの鑑別において重要な鍵となります。
■ LEGHとは?
- 1999年、Nucciらにより提唱された頚管の良性腺性過形成。
- 基本的には良性だが、一部は腺癌(特にgastric type adenocarcinoma, GAS)との連続性が示唆されており、前癌病変の可能性もある。
- 20代後半〜中高年の女性まで幅広い年齢で発見され、無症候のスクリーニングMRIや婦人科超音波で偶然指摘されることが多い。
■ MRI画像での所見
- T2WI:中心部に小嚢胞、周囲にやや大きな嚢胞が分葉状に広がる「cosmos pattern」
- T1WI:基本的に低信号、内部出血があれば高信号を呈する
- 造影T1WI:腺間質に軽度〜中等度の造影効果あり(solid componentは乏しい)
- DWI:ADC値は中間〜やや高値。悪性腫瘍よりは高めであるが、GASとのoverlapに注意が必要
■ cosmos pattern(コスモスパターン)とは?
「cosmos」とは、中心に花芯、周囲に放射状に並ぶ花びらを持つ花(秋桜)のことです。LEGHのMRIでは、
- 中心に小さな嚢胞が密集
- その周囲を取り囲むように中等大の嚢胞が円形に配列
この構造が、まるでコスモスの花を真上から見たときの構造に似ていることから「cosmos pattern」と呼ばれています。
この所見はLEGHに特異的ではありませんが、GASやMDAでは通常見られないとされており、良性所見として重要です。ただし、LEGHの一部が腺癌の前段階に位置する可能性があるため、cosmos patternの存在だけで良性と断定しないよう注意が必要です。
LEGHのコスモスパターンのMRI画像所見については信州大学医学部附属病院のページが懇切丁寧でめちゃくちゃわかりやすいのでそちらを参考にして下さい。
■ 鑑別が必要な疾患
- Naboth嚢胞:単純な保持嚢胞。造影なし・mass effectなし
- 頚部腺癌(gastric type):cosmos patternを示さず、不整形・浸潤性・造影強く、ADC値低下が特徴
- 子宮内膜症性嚢胞の頚管進展:T1WI高信号、T2WIでshading
■ まとめ
- LEGHは良性腺性過形成だが、前癌病変の可能性もある
- MRIでcosmos patternが見られればLEGHの可能性が高いが、腺癌とのoverlapに注意
- DWI、造影効果、形状、mass effectなどを総合的に評価して診断
参考文献:
- Nucci MR, et al. Lobular endocervical glandular hyperplasia: a benign mimic of minimal deviation adenocarcinoma. AJSP. 1999;23(1):81–88.
- Okamoto Y, et al. Imaging of cervical glandular lesions: LEGH and beyond. J Gynecol Oncol. 2015;26(3):161–169.
- 臨床放射線 Vol.64 No.7(2019)
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