tram line(トラムライン)とは、気管支の壁が肥厚することで、胸部CTや胸部X線(胸部レントゲン)上で平行に走る2本の線状陰影として認められる画像所見です。
特に気管支拡張症の診断や、慢性気道炎の指標として広く使われる基本所見のひとつです。
tram lineの定義と意味
- 平行に走る2本の線状陰影として気管支壁が描出される所見
- 通常は気管支壁が薄いため線として見えないが、炎症や線維化により肥厚すると見えるようになる
- Fleischner Society(2008)では、「平行な壁の肥厚として線状に現れるものを tram-line appearance と呼ぶ」と記載
tram lineの画像的特徴(CT・X線)
- 高分解能CT(HRCT)では、横断面上に平行な2本線として出現
- 単純X線写真でも、肺野にtram lineが認められることがある
- 小葉中心性粒状影(tree-in-bud)や粘液栓を伴うこともあり
症例 20歳代女性 左下葉に気管支拡張症
引用:radiopedia
左下葉に気管支壁が肥厚しtram lineを形成している様子がわかります。
関連疾患と出現しやすい病態
tram lineは多くの慢性気道疾患で出現し得ますが、特に以下の疾患では代表的所見です:
- 気管支拡張症(bronchiectasis):
- cylindrical型で最も典型的に出現
- signet ring sign や air bronchogram sign などと併存することが多い
- 非結核性抗酸菌症(MAC症):
- 中葉〜舌区に気管支拡張像+小葉中心性粒状影とともにtram lineが頻出【図:p.205〜206】
- 慢性副鼻腔気管支症候群(SBS):
- 線毛機能不全症候群などで繰り返す感染により形成
読影のポイントとPitfall
- 平行に走る陰影だからといって必ずしも気管支拡張とは限らない
- 血管との鑑別が重要 → 血管は分岐や方向変化で明瞭に区別される
- tram lineだけで診断を確定せず、air bronchogram、signet ring、tree-in-budなど他の所見も併せて判断
まとめ
- tram lineは気管支壁肥厚の基本所見であり、CTとX線どちらでも確認可能
- 慢性気道炎・気管支拡張症・MAC症などに出現
- 他所見との併存・分布・経過で総合判断が必要
参考文献
- Fleischner Society. Glossary of terms for thoracic imaging. Radiology. 2008; 246: 697–722.
- Cartier Y, et al. Bronchiectasis: accuracy of HRCT in differentiating specific diseases. AJR. 1999;173:47–52.
- 画像診断 Vol.34 No.8(2014)、Vol.35 No.3(2015)
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