脳のMRAやCTAの画像を読影する際には、
「C1に狭窄があります。」
「C2より内側に突出する嚢状の動脈瘤があります。」
「内頸動脈の海綿静脈洞部に狭窄があります。」
などと、内頸動脈をさらに細かく分類してレポートする必要があります。
単に内頸動脈といってもかなり範囲は広いからですね。
とはいうものの
「C1ってどこの解剖のこと?」
「海綿静脈洞部ってどこ?」
「三叉神経節部って内頸動脈のどの辺の解剖に相当する?」
という疑問が(専門的に見ている場合でも)出てきます。
そこで今回はMRAのMIP画像を側面から捉えた画像を用いてシェーマとともにこれらの解剖について解説します。
内頸動脈の解剖(遠位からの分類)1)
内頸動脈の解剖を考える際には、側面から見た図で考えるのが分かりやすいので、まずはシェーマで確認をしましょう。
上のように内頸動脈の解剖は
- C1:後交通動脈を分岐する手前から中大脳動脈・前大脳動脈に変わるまで。
- C2:眼動脈を分岐する部分から後交通動脈直前まで。
- C3:C2とC4の間。
- C4:海綿静脈洞の内側部を走行する部分。
- C5:頸動脈管から上の部分。
と分けることができます。
これを実際のMRA画像のMIP像の側面から見た画像で該当部位を示すと以下のようになります。
内頸動脈の解剖(近位からの分類)1)
また内頸動脈は遠位からの分類だけでなく近位から分類されることもあります。
- 頸部 (cervical segment): 総頸動脈が分岐する地点から頭蓋底にある頸動脈管の入口に至るまでの区間。
- 錐体部 (petrous segment): 側頭骨の錐体部にある頸動脈管内を通る区間。
- 三叉神経節部 (ganglial segment): Meckel腔の内側で三叉神経節が位置する部分から、トルコ鞍の後下方にある頸動脈溝に沿って内側に屈曲し、海綿静脈洞に入るまでの区間。この部分は「海綿静脈洞前部 (precavernous segment)」と分類されることもある。
- 海綿静脈洞部 (cavernous segment): 両側の海綿静脈洞内を前方へ進み、後上方に屈曲して硬膜を通過するまでの区間。
- 床上部 (supraclinoid segment): 前床突起上で硬膜を越え、くも膜下腔内を進む区間。
これを同様に、実際のMRA画像のMIP像の側面から見た画像で該当部位を示すと以下のようになります。
また 海綿静脈洞部から床上部にかけての部分は、S字状のカーブを描くため「頸動脈サイフォン (carotid siphon)やサイフォン部」と呼ばれることがあります。
近位からの分類、遠位からの分類をコロコロ画像で確認する場合はこちら
→脳MRAにおける内頸動脈の画像解剖を連続画像で確認する。
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参考文献:1)脳MRI 1,正常解剖 第2版 P267