VRFA 3D-FSE法とは?
- Variable Refocusing Flip Angle 3D-Fast Spin Echoの略。
- Spin Echo法の一種で、MRI技術の一つ。
- 高解像度かつ高コントラストの画像を効率的に取得するための技術。
- この手法は特に長い撮像時間を短縮し、撮像時のアーチファクトを減少させるために開発された。
- 動脈や静脈内の血液信号を低く抑え、血管壁や周囲の組織の詳細な観察を可能にするため、頭部領域では頭部Black blood法として活用されている。これにより、脳動脈の解離、血管内血栓、動脈硬化性プラーク、血管炎(例えば、巨細胞性動脈炎や高安動脈炎)などの検出に有用とされる。
Black blood法とは?
脳内の血管やその周辺の構造をより詳細に見るための方法です。特に、血管内の血液を「黒く」見せることで、血管壁やその周囲の構造がよく見えるようになります。
Spin Echo法は通常のカメラで写真を撮るようなものだとしましょう。VRFA 3D-FSE法は、特別なカメラで、写真をもっと速く、もっときれいに撮る方法です。この特別なカメラは、角度を変えながら写真を撮り、一度にたくさんの写真を集めることで、立体的で細かい写真を作ります。
VRFA 3D-FSE 法の概要
- 可変再フォーカスフリップ角度(Variable Refocusing Flip Angle):
- 通常のFast Spin Echo (FSE) シーケンスでは、エコートレイン内の全ての反転パルスが一定のフリップ角度を持ちます。
- VRFA では、エコートレインの各パルスのフリップ角度を変化させることで、信号減衰を最小限に抑え、より効率的なエネルギー使用を実現します 。
- 3次元撮像(3D Imaging):
- 3D 撮像により、スライス間のギャップがなく、高い空間分解能を持つ画像を取得できます。
- 3D-FSE シーケンスは、3次元でデータを収集するため、ボリュームデータを後処理で任意の断面で表示できます 。
VRFA 3D-FSE 法の利点
VRFA 3D-FSE 法には、従来のFSE法と比較していくつかの利点があります:
- 撮像時間の短縮:
- 可変フリップ角度により、必要なエコートレインの長さを減少させることができ、全体の撮像時間を短縮します 。
- アーチファクトの減少:
- 信号減衰を抑えることで、画像のコントラストが向上し、特に動きによるアーチファクトが減少します 。
- 高い空間分解能:
- 3D 撮像により、高い空間分解能の画像を取得でき、詳細な解剖学的構造の観察が可能です 。
Black Blood技術としてのVRFA 3D-FSE法
1. 血管内信号の低減
- VRFA 3D-FSE法では、エコートレインの長さと可変フリップ角度によって、動いている血液の信号が減衰しやすくなります。これにより、血管内の血液が「ブラックアウト」し、血管壁や周囲の組織が明瞭に描出されます 。つまり血管内信号が低くなる。
2. 動脈および静脈の抑制
- この技術は、血液の高速流動により信号減衰を促進するため、動脈および静脈内の信号を効果的に抑制します。これにより、血管壁の病変やプラーク、壁の肥厚などの病理学的変化を詳細に観察することができます 。
3. 高い空間分解能
- VRFA 3D-FSE法は3次元撮像を利用しているため、高い空間分解能で血管構造と周囲の組織を描出できます。これにより、微小な病変や異常の検出が容易になります 。
実際の応用
頭部MRIにおける応用
- 頭部の動脈硬化、動脈瘤、血管壁の肥厚などの診断において、Black Blood技術は非常に有用です。
- 血管内の血液信号を低減することで、血管壁や周囲の解剖学的構造を詳細に描出し、診断精度を向上させます 。
- そのため、頭部のBlack blood法の中心的な撮影法となっている。
関連:頸動脈プラークのMRI画像診断、狭窄率、治療法(Black-blood法:BB法)
MRIメーカーにより名称が異なるのでオーダーする際には注意
このVRFA法はMRIのメーカーにより呼称が異なるので注意。
オーダーする場合は、メーカーごとの以下の呼称を記載するか、「VRFAの3D-FSE/TSE-T1WI」などと記載しないと撮影してもらえない。
GE Healthcare(ジェネラル・エレクトリック・ヘルスケア)
- Cube または FLEX: GEの3D-FSE技術の名称で、可変フリップ角度技術を用いて撮像時間を短縮し、動きによるアーチファクトを低減します。
Siemens Healthineers(シーメンス・ヘルスケア)
- SPACE(Sampling Perfection with Application-optimized Contrasts using different flip angle Evolutions): シーメンスの3D-FSE技術で、可変フリップ角度を利用して高い空間分解能とコントラストを提供します。
Philips Healthcare(フィリップス・ヘルスケア)
- VISTA(Volume ISotropic Turbo spin echo Acquisition): フィリップスの3D-FSE技術で、可変フリップ角度を使用して、高い空間分解能と撮像効率を実現します。
Canon Medical Systems(キヤノンメディカルシステムズ)
- Aquilion Precision: キヤノンの3D-FSE技術の一部として、可変フリップ角度を利用することで、高解像度の画像を提供しますが、具体的な名称は異なる場合があります。
Hitachi Medical Systems(日立メディコ)
- RAPID(Rapid Acquisition with Refocused Echoes): 日立の3D-FSE技術で、可変フリップ角度を用いて迅速な撮像と高品質な画像を提供します。
参考文献
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