先に結論:脊髄の動脈とアダムキュービッツ動脈
| 動脈 | どこから | 栄養する場所 |
|---|---|---|
| 前脊髄動脈(1本) | 左右の椎骨動脈の枝が合流 | 脊髄の前2/3(運動にかかわる前角など) |
| 後脊髄動脈(左右2本) | 椎骨動脈または後下小脳動脈(PICA) | 脊髄の後1/3(感覚にかかわる後索など) |
| 根動脈・セグメンタル動脈 | 椎骨動脈・肋間動脈・腰動脈など | 各高さで前・後脊髄動脈を補う |
アダムキュービッツ動脈(Adamkiewicz動脈・大根動脈)は、胸髄下部〜腰髄上部(多くはT8〜L1の高さ)で前脊髄動脈に流れ込む最も太い根動脈で、脊髄の下の方の血流を支えています。左側の肋間動脈・腰動脈から出ることが多く、大動脈の手術やステントグラフト治療で血流が途絶えると脊髄梗塞(下半身の麻痺)の原因になるため、術前のCTアンギオで場所を確認することがあります。60研究・5,437例のメタ解析では、アダムキュービッツ動脈は約85%の人で同定され、87%は1本のみ、77%は左側から起こり、89%がT8〜L1の高さから起始していました。
前脊髄動脈(Anterior Spinal Artery)と後脊髄動脈(Posterior Spinal Arteries)は、それぞれ以下のような起源から分枝し、脊髄の異なる領域に血液を供給します。
前脊髄動脈(Anterior Spinal Artery)
- 起源:前脊髄動脈は、左右の椎骨動脈(Vertebral Arteries)の分枝が合流して形成されます。
- 走行:脊髄の前面を縦走し、脊髄の前2/3の領域に血液を供給します。
- 供給領域:
- 頸髄、胸髄、腰髄の前角細胞および前柱の白質。
- 特に運動機能に関与する領域。
後脊髄動脈(Posterior Spinal Arteries)
- 起源:後脊髄動脈は、左右の椎骨動脈または後下小脳動脈(Posterior Inferior Cerebellar Arteries, PICA)から分枝します。
- 走行:脊髄の後面をそれぞれ左右に沿って縦走し、脊髄の後1/3の領域に血液を供給します。
- 供給領域:
- 頸髄、胸髄、腰髄の後角細胞および後柱の白質。
- 特に感覚機能に関与する領域。
脊髄梗塞を起こした際に頸髄と胸髄が同時に侵されない理由は?
前脊髄動脈、後脊髄動脈ともに頸髄、胸髄、腰髄に分布しますが、それぞれにセグメンタル動脈と根動脈が存在しているため、頸髄と胸髄が前脊髄動脈閉塞によって同時に梗塞に陥ることはまれと考えられています。
セグメンタル動脈および根動脈(Segmental and Radicular Arteries)
これらの主要な動脈に加えて、脊髄の全長にわたって多数のセグメンタル動脈と根動脈が存在し、それぞれの脊髄セグメントに血液を供給します。
- 頸髄:椎骨動脈、上行頸動脈・深頸動脈(甲状頸動脈・肋頸動脈の枝)から分枝する頸部セグメンタル動脈。
- 胸髄:肋間動脈(Intercostal Arteries)から分枝する胸部セグメンタル動脈。
- 腰髄:腰動脈(Lumbar Arteries)および腸腰動脈(Iliolumbar Arteries)から分枝する腰部セグメンタル動脈。
特に重要な動脈
- Adamkiewicz動脈(大根動脈、Artery of Adamkiewicz):
- 胸髄下部から腰髄上部(多くはT8からL1の間で起始)に血液を供給する重要なセグメンタル動脈。
- 特に脊髄前動脈を補強し、脊髄下部の血流を支える重要な動脈です。
- 頸髄には影響を与えないため、Adamkiewicz動脈が損傷しても頸髄には直接的な影響が少ないです。
アダムキュービッツ動脈の走行とCTアンギオでの見つけ方
- 大動脈から出た肋間動脈(または腰動脈)の枝が椎間孔から脊柱管に入り、脊髄の前面を上に昇ったあと急に折れ返って下行し、前脊髄動脈に合流します。このヘアピンカーブ(hairpin turn)が、CTアンギオやMRアンギオで見分ける目印です。
- 大動脈瘤の患者110人のCTアンギオの検討では、ヘアピンカーブをもつアダムキュービッツ動脈は全員で描出され、大動脈から前脊髄動脈までのつながりが確認できたのは99人(90.0%)、T8〜L1から起始したのは86.8%、左側起始は71.7%でした(Amako 2011)。
症例 40歳代女性

引用:Radiopaedia(Normal spinal angiogram (DSA))
硬膜動静脈瘻を除外するために行った脊髄血管造影(正常例)で、左第9胸椎の分節動脈(肋間動脈)を造影した画像です。この症例ではアダムキュービッツ動脈が左T9の分節動脈から分岐していました。
前脊髄動脈の血流が途絶えると(前脊髄動脈症候群)
- 前脊髄動脈は脊髄の前2/3を栄養するため、閉塞すると障害された高さより下の運動麻痺、痛みや温度の感覚の低下、排尿・排便の障害が急に起こります。後索が担う振動覚・位置覚は保たれやすいのが特徴です。
- 脊髄梗塞19人の検討では前脊髄動脈症候群が12人と最も多く、MRIでは全員にT2強調像で高信号がみられ、発症2日以内に拡散強調像を撮った8人中5人で早期から高信号でした(Kamata 2026)。
- 急に手足に力が入らない・しびれる、といった症状があれば、すぐに医療機関を受診してください。
アダムキュービッツ動脈でよくある疑問(Q&A)
Q. アダムキュービッツ動脈とは何ですか?
A. 脊髄の下の方(胸髄下部〜腰髄)の血流を支える、最も太い根動脈(大根動脈)です。肋間動脈や腰動脈から出て、脊髄の前面を走る前脊髄動脈に流れ込みます。
Q. アダムキュービッツ動脈はどこにありますか?
A. 多くはT8〜L1の高さで、左側の肋間動脈・腰動脈から出ます(Taterra 2019)。ただし高さや左右には個人差があり、2本以上ある人や同定できない人もいます。
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参考文献:
- The Journal of Comparative Neurology, 110(1), 75-103.
- Journal of Neurosurgery: Spine, 15(3), 238-251.
- Taterra D, Skinningsrud B, Pękala PA, et al. Artery of Adamkiewicz: a meta-analysis of anatomical characteristics. Neuroradiology. 2019;61(8):869-880. PubMed
- Santillan A, Nacarino V, Greenberg E, et al. Vascular anatomy of the spinal cord. J Neurointerv Surg. 2012;4(1):67-74. PubMed
- Yoshioka K, Niinuma H, Ohira A, et al. MR angiography and CT angiography of the artery of Adamkiewicz: noninvasive preoperative assessment of thoracoabdominal aortic aneurysm. Radiographics. 2003;23(5):1215-1225. PubMed
- Amako M, Yamamoto Y, Nakamura K, et al. Preoperative visualization of the artery of Adamkiewicz by dual-phase CT angiography in patients with aortic aneurysm. Kurume Med J. 2011;58(4):117-25. PubMed
- Kamata Y, Nagoshi N, Izawa Y, et al. Imaging Characteristics, Clinical Presentation, and Prognosis of Spinal Cord Infarction. Keio J Med. 2026. PubMed
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