前脊髄動脈(Anterior Spinal Artery)と後脊髄動脈(Posterior Spinal Arteries)は、それぞれ以下のような起源から分枝し、脊髄の異なる領域に血液を供給します。

前脊髄動脈(Anterior Spinal Artery)

  • 起源:前脊髄動脈は、左右の椎骨動脈(Vertebral Arteries)の分枝が合流して形成されます。
  • 走行:脊髄の前面を縦走し、脊髄の前2/3の領域に血液を供給します。
  • 供給領域
    • 頸髄、胸髄、腰髄の前角細胞および前柱の白質。
    • 特に運動機能に関与する領域。

後脊髄動脈(Posterior Spinal Arteries)

  • 起源:後脊髄動脈は、左右の椎骨動脈または後下小脳動脈(Posterior Inferior Cerebellar Arteries, PICA)から分枝します。
  • 走行:脊髄の後面をそれぞれ左右に沿って縦走し、脊髄の後1/3の領域に血液を供給します。
  • 供給領域
    • 頸髄、胸髄、腰髄の後角細胞および後柱の白質。
    • 特に感覚機能に関与する領域。

脊髄梗塞を起こした際に頸髄と胸髄が同時に侵されない理由は?

前脊髄動脈、後脊髄動脈ともに頸髄、胸髄、腰髄に分布しますが、それぞれにセグメンタル動脈と根動脈が存在しているため、頸髄と胸髄が前脊髄動脈閉塞によって同時に梗塞に陥ることはないと言われています。

セグメンタル動脈および根動脈(Segmental and Radicular Arteries)

これらの主要な動脈に加えて、脊髄の全長にわたって多数のセグメンタル動脈と根動脈が存在し、それぞれの脊髄セグメントに血液を供給します。

  • 頸髄:椎骨動脈および上部肋間動脈から分枝する頸部セグメンタル動脈。
  • 胸髄:肋間動脈(Intercostal Arteries)から分枝する胸部セグメンタル動脈。
  • 腰髄:腰動脈(Lumbar Arteries)および腸腰動脈(Iliolumbar Arteries)から分枝する腰部セグメンタル動脈。

特に重要な動脈

  • Adamkiewicz動脈(大根動脈、Artery of Adamkiewicz)
    • 胸髄下部から腰髄上部(通常T9からL2の間)に血液を供給する重要なセグメンタル動脈。
    • 特に脊髄前動脈を補強し、脊髄下部の血流を支える重要な動脈です。
    • 頸髄には影響を与えないため、Adamkiewicz動脈が損傷しても頸髄には直接的な影響が少ないです。

 

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参考文献:

  • The Journal of Comparative Neurology, 110(1), 75-103.
  • Journal of Neurosurgery: Spine, 15(3), 238-251.

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