SLAP損傷(SLAP lesion)とは?
- superior labrum anterior and posterior lesionの略。(Superior Labrum:関節唇上部の Anterior and posterior:前後方向に進展する損傷)
- 上腕二頭筋長頭腱が引っ張られ、付着部を含む関節唇上部の前方から後方にかけての損傷。
- 投球障害や外転外旋位(腕を伸展した状態)での転倒、重たいものを持ったときなどの上腕二頭筋長頭腱への負荷(牽引)により受傷する。
- 上腕二頭筋長頭腱や腱板の損傷を伴うことがある。
- 症状としては肩痛、脱臼感など。
SLAP損傷(SLAP lesion)の分類(Snyderらの4分類)
- type Ⅰ:関節唇上部の変性、毛羽立ち→MRIではわからない。
- type Ⅱ:関節唇上部の剥離を伴う断裂→MRIでは関節唇の基部から外に広がる異常信号
- type Ⅲ:バケツ柄様断裂→MRIでは関節唇上部の三日月状の垂直断裂、断裂部分の屈曲偏位
- type Ⅳ:長頭腱近位部にまで及ぶバケツ柄様断裂→MRIでは関節唇の中から上腕二頭筋長頭腱およぶ異常信号。
SLAP損傷(SLAP lesion)のMRI所見
- 関節唇上部の信号上昇・不整、上腕二頭筋長頭腱付着部での関節窩からの関節唇剥離。
- MR関節造影で明瞭となる。
- しばしば関節唇嚢胞を伴い、肩甲上神経絞扼の原因となる。
- 前上方には正常変異が多いため、関節唇の後上部に着目する。
- typeⅠは診断は難しいことが多い。また正常でも関節唇に高信号を認めることが多く、読影に苦慮することが少なくない。
SLAP lesion診断のピットフォール
- 上部関節唇と肩甲骨の間には硝子軟骨が介在しており、正常でも高信号となることがある。
- また、関節唇下間隙(superior sublabral recess)と呼ばれる正常変異も同様に高信号となる。
- 関節唇下間隙や硝子軟骨の介在の場合は線状で平滑だが、SLAP lesionは不整な形態であったり、関節窩に対して平行以外の方向にも認める点が鑑別点となる。
関連記事:関節唇および肩甲上腕靱帯の正常変異とMRI画像所見のポイント
症例 50歳代男性
引用:radiopedia
TypeⅡのSLAP lesionを認めています。
症例 50歳代男性
引用:radiopedia
TypeⅢのSLAP lesionを認めています。