先に結論:高血糖性舞踏病(糖尿病性舞踏病)
- 高血糖性舞踏病は、血糖コントロールの悪い糖尿病の人(特に高齢の女性)に、片側の手足が勝手に踊るように・振り回すように動く(舞踏運動・バリスム)症状が急に出る病気です
- 症状と反対側の被殻(ときに尾状核)が、CTで白く(高吸収)、MRIのT1強調像で白く(高信号)見えるのが特徴で、脳出血と間違えないことが大切です(T2強調像では目立たないことが多い)
- 血糖を下げる治療で多くは改善し、画像の変化も数か月かけて薄れていきます
- 「糖尿病性線条体症(diabetic striatopathy)」と呼ばれることもあり、「舞踏病」はぶとうびょうと読みます
※糖尿病の方で、手足が勝手に動く症状が出たときは、早めに受診してください。
高血糖性舞踏病(hemichorea-hemiballism with non-ketotic hyperglycemia)とは?
- コントロール不良の糖尿病患者の非ケトン性高血糖時に起こる舞踏運動やバリスムを伴う高血糖脳症。(バリスムとは上肢または下肢を振り回すような粗大な不随意運動)。
- 原因ははっきりしておらず、病理学的検討では出血を示唆する報告が多い(Chua 2020)。多くは血糖値の正常化とともに不随意運動は改善する(数か月持続する例もある)。
- 高齢の女性に多く、急性に発症し片側性と両側性がある。176例を集めた系統的レビューでは、88.1%が片側の舞踏運動・バリスムで、両側性は9.7%であった。病変は被殻単独または被殻+尾状核が多く、約6分の1の例でCTとMRIの所見が食い違っていた。血糖コントロールのみで改善したのは25.7%で、抗舞踏薬の追加を含めると76.2%が改善し、再発は18.2%であった。
- 通常は被殻から尾状核の病変により、対側のバリスムが発生する。
糖尿病性舞踏病(Diabetic chorea:DC)の診断基準
- 1)突然発症の一側または両側の舞踏運動・バリスムであること
- 2)1)の発現時またはその前に、高血糖状態か急激な血糖変化を認めること
- 3)MRI T1強調画像で被殻に高信号を認めること
- 4)糖尿病以外の舞踏運動を生じる原因(薬剤性、炎症性疾患、血管障害、腫瘍、血管奇形、一般的な脳症など)を否定できること
補足:(診断)
1)~3)が揃えば確実。1)+2)では疑い例
2)+3)ではDCとは呼べないが、不随意運動発現を考慮した経過観察が必要
(画像)
a) 被殻以外に淡蒼球・尾状核にも異常信号がみられる場合がある
b) T2強調画像では低〜等信号を呈する
c) CTでは高〜等吸収域を呈する
(永井知代子. 日内会誌 2004;93:1545-50)
高血糖性舞踏病の画像所見
- 症状と反対側の被殻、ときに尾状核にT1WIで高信号を認める。T1WIでの高信号の原因は、出血や小さな梗塞と反応性アストロサイトなど様々な説があり、結論は出ていない(永井 2004)。
- CTでも高吸収を認めることがある。
- 多くは片側性だが両側性の場合もある。
- T1WIの高信号は数か月〜1年あまりで消えていく(永井 2004)。
舞踏病・ヘミバリスムとは(読み方)
| 用語 | 読み方・意味 |
|---|---|
| 舞踏運動(chorea) | ぶとううんどう。手足や顔が不規則に、踊るように勝手に動く不随意運動 |
| ヘミコレア(hemichorea) | 体の片側だけに出る舞踏運動 |
| バリスム(ballism) | 腕や脚を投げ出す・振り回すような大きな不随意運動。片側ならヘミバリスム |
脳出血と見分けるポイント
- 文献例53例の検討では、病変は全例で被殻を含み、尾状核や淡蒼球だけの病変はなく、1例を除いて内包前脚は保たれていた(Oh 2002)。
- 発症時の著しい高血糖(同検討で発症後の血糖は平均481.5mg/dL、HbA1cは平均14.4%)と、症状と反対側の被殻病変の組み合わせが手がかりになる(Oh 2002)。
症例 60歳代女性 興奮と意識低下

引用:Radiopaedia
右の被殻・尾状核にCTで高吸収、T1WIで高信号を示している。
高血糖性舞踏病と診断されました。
高血糖性舞踏病でよくある疑問(Q&A)
Q. 「高血糖脳症」「糖尿病性脳症」と同じものですか?
A. 高血糖に伴って線条体(被殻・尾状核)に異常が出る病態は、高血糖性舞踏病・糖尿病性舞踏病・糖尿病性線条体症など呼び名が統一されていません(Chua 2020)。検索語の「糖尿病性脳症」は、より広い意味で使われることもあります。
関連記事:淡蒼球を中心とした基底核にMRI検査T1強調像で高信号を呈する鑑別疾患
参考文献:
- 新 頭部画像診断の勘ドコロ P232-3
- 新版 所見からせまる脳MRI P162
- 永井知代子. 舞踏運動とバリズム. 日本内科学会雑誌. 2004;93(8):1545-1550. J-STAGE(PDF)
- Oh SH, Lee KY, Im JH, et al. Chorea associated with non-ketotic hyperglycemia and hyperintensity basal ganglia lesion on T1-weighted brain MRI study: a meta-analysis of 53 cases including four present cases. J Neurol Sci. 2002;200(1-2):57-62. PubMed
- Chua CB, Sun CK, Hsu CW, et al. “Diabetic striatopathy”: clinical presentations, controversy, pathogenesis, treatments, and outcomes. Sci Rep. 2020;10(1):1594. PubMed
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