肝切除後に見られる術後変化
- 残肝に代償性肥大を認めるようになる。
- 特に肝拡大切除後では、術後早期(3週間程度)で急速に残肝の肥大が起こり、術後7日目で60%程度の残肝容積が増加したという報告もある。
- 肝切除後に切除縁に液体貯留を認めることがあり、切除後2週間程度はよく見られる所見でSeroma、リンパ嚢胞、血腫、Bilomaを反映した所見。通常は均一な低濃度な液貯留。
- 造影CTで術後一過性に肝切除縁に沿った帯状低吸収域を認めることもあるが徐々に不明瞭化するのが通常。
- 切除区域の門脈分岐は起始部で結紮・切離され、術後早期に門脈断端に血栓を認めることがある。
肝切除後に見られる術後合併症
術後合併症としては、
がある。
胆汁瘻
- 肝切離面・胆道再建後の縫合不全が原因で、胆汁が正常胆管外に漏出する状態で頻度は8.0%と報告されている。
- 胆管下流とは交通が保たれていることが多く、保たれていない場合は難治性となる。
- CT画像では、肝切離面・胆道再建後の消化管吻合部周囲の低吸収域として認めるが、術後変化の液体貯留との鑑別は困難で、ドレーン性状も踏まえて総合的に判断する必要がある。
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肝膿瘍・腹腔内膿瘍
- 上記の胆汁瘻を契機として、あるいは肝切除後の虚血合併部に膿瘍を形成する場合がある。
- CT画像では、内部に液体貯留腔として同定され、内部にairを含む場合がある。膿瘍なので辺縁に造影効果を伴う被膜構造を認める。単房性〜多房性の形態。
- 腹腔内に広がると腹腔内膿瘍となる。
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術後出血
- 肝切除は大量出血を起こしやすい手術で術後出血の頻度は6.85%と報告されている。
- 出血部位は、肝切離面、右副腎、横隔膜吻合部、胸骨後面に認めたという報告がある。
- CT画像では、新しい血腫の場合は高吸収となり、活動性の出血はダイナミックCTの早期相で造影剤の血管外漏出(extravasation)として捉えられることがある。
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参考文献:
- 臨床画像 Vol.38 No.7 増刊号2022 P43-44