先に結論:biloma(胆汁性嚢胞)
- bilomaは胆管が傷ついて漏れた胆汁が肝臓の中や周りにたまって袋状になったもので、肝胆道系の手術・外傷・TACEなどのIVRの後に起こります
- CT・MRIでは水と同じような嚢胞に見えるため、手術・治療の後に新しく出てきた液体貯留ならbilomaを疑い、肝胆道シンチで胆汁の漏れを確認できます
- 大きい・感染している(壁の造影・ガス)場合は経皮的ドレナージを行い、漏れが続けば内視鏡的な胆道ステントなども考えます
肝臓の治療などに携わると、bilomaという言葉を聞いたり見たりすることがあります。
bilomaは日本語では
- 胆汁腫(たんじゅうしゅ)
- 胆汁瘤(たんじゅうりゅう)
- 胆汁性嚢胞(たんじゅうせいのうほう)
などと呼ばれ、読み方は「バイローマ」と読みます。
今回はこのbilomaについて、そもそもbilomaとは何なのか?、原因、診断、治療について実際のCT画像やイラストを交えながらわかりやすく解説します。
bilomaとは?

肝臓の中には胆管があり、この胆管が何らかの原因により損傷を受けることにより、胆汁が漏れ出ます。
これを胆汁漏といいます。
bilomaとは、その漏れ出た胆汁が被包化して嚢胞(腫瘤)を形成したものです。
嚢胞を形成する場所は、肝臓内の他に、肝臓外(腹腔内)でもあります。
ちなみにbileは胆汁という意味です。ですので、bilomaは胆汁+腫=胆汁腫などと日本語訳されます。
bilomaという言葉は1979年にGouldとPatelが使い始めたもので、現在は「胆道の外にある、境界のはっきりした胆汁のたまり」を広く指します。厚い被膜で囲まれていなくてもbilomaと呼んでよいとされます(Balfour 2025)。
| biloma | 胆汁漏・胆汁性腹水 | |
|---|---|---|
| 状態 | 漏れた胆汁が一か所にまとまってたまったもの | 胆汁が漏れ続けている状態、または腹腔内に広がった胆汁 |
| CTでの見え方 | 境界のはっきりした水と同じ濃さのたまり | 境界のはっきりしない液体(腹水) |
bilomaは感染、胆汁の漏れの持続、周りの臓器の圧迫を起こすことがあり、診断と治療が遅れると重い経過をとることがあります(Balfour 2025)。
肝臓の嚢胞を見たときに考えるべき鑑別は?
肝臓の嚢胞を見たときには、以下の疾患を考える必要があります。先天性(原発性)肝嚢胞
- peribiliary cyst
- von Meyenburg complex
- カロリ病(Caroli病)
- 前腸性肝嚢胞(ciliated hepatic foregut cyst)
- 続発性嚢胞(bilomaなど)
ただし、ほとんどは原発性の肝嚢胞で、フォローの必要もないものです。
腹部に生じうる液体貯留は?
- 膿瘍
- biloma:胆汁が漏れ出て嚢胞を作ったもの
- urinoma(尿嚢腫):尿が漏れ出て嚢胞を作ったもの
- lymphocele(リンパ嚢腫):リンパ液が漏れ出て嚢胞を作ったもの
- 膵仮性嚢胞:膵液が漏れ出て嚢胞を作ったもの
これらは吸収されることもありますが、皮膚から針を刺して液貯留を外に排泄するドレナージ術が必要になることがあります。
特に膿瘍を始め、これらの液体貯留に感染を伴っている場合は、ドレナージ術の適応となります。
bilomaの原因は?
胆管が損傷することで胆汁が漏れ出ます。
ですので、bilomaの原因としては、
- 肝梗塞:肝移植後の肝動脈血栓症では、肝梗塞とbilomaが同時にみられた例が報告されています(Fontanilla 2013)
- 肝外傷
- 肝胆道系手術:腹腔鏡下胆嚢摘出後、肝部分切除後など
- Interventional radiology(IVR):TACE、PTCD、PEIT、ラジオ波焼灼療法(RFA)など。RFAの多施設調査(1,139人)ではbilomaは0.20%でした(Rhim 2003)
- 胆管炎(まれ。胆管炎とERCPのあとに生じた症例報告があります(Hernandez Perez 2024))
- その他、胆管障害を来しうる病態。なお総説では、bilomaの原因として外傷と医原性の損傷が多く、なかでも胆嚢摘出術後が最も多いとされています。症状や血液検査の値は非特異的なことが多いため、超音波・CT・MRI・肝胆道シンチグラフィなどの画像検査が診断の鍵になります。
が挙げられます。
TACE後の合併症としてbilomaが多い理由は?
bilomaは、肝臓癌(肝細胞癌)のカテーテルによる治療であるTACEに起こる合併症として多いとされます。972例の検討ではTACE後の肝内bilomaは3.6%にみられ、転移性肝腫瘍(9.6%)では肝細胞癌(3.3%)より多く、肝細胞癌では腫瘍径5cm未満、肝内胆管拡張、近位からの薬剤注入、3か月未満の反復TACEなどが危険因子でした。
その理由として、肝臓は主に門脈>動脈から二重の栄養を得ているのに対して、胆管は胆管周囲動脈叢(PCP:peribiliary capillary plexus)からのみ栄養を受けているため、動脈を詰めるTACE後に起こりやすいのです。
bilomaの診断は?
bilomaの診断には、画像診断が必要となります。
- 腹部超音波検査(腹部エコー)
- 腹部CT、MRI
- 肝胆道シンチグラフィ
といった検査で診断されます。
腹部エコー
円形または卵形の嚢胞状構造として描出され、手術部位や損傷部位の付近に認めます。
腹部CT、MRI
エコーと同様に、胆管の損傷を伴う部位に嚢胞性病変として描出されます。
内部は胆汁ですので、腹部CTでは肝嚢胞と同じような低吸収嚢胞として、MRIではT2強調像で水と同程度の高信号となります。
ただし、膿瘍を形成している場合、造影CTやMRIで辺縁の被膜に造影効果を伴ったり、MRIの拡散強調像(DWI)で異常な高信号を示すこともあります。
症例 60歳代男性 膵癌、多発肝転移のフォロー。総胆管にステント留置あり。

肝内に多数の嚢胞性病変の出現あり(過去画像非提示)
多発bilomaを疑う所見です。壁に造影効果を認めており、嚢胞内部にairを認めるものもあり、感染が示唆される所見です。
肝胆道シンチグラフィ
核医学検査の一つであり、胆汁漏やbilomaを疑う場合に行われることがあります。
胆汁の動態を経時的に観察することができますので、胆汁が腹腔内に漏れ出る様子や肝臓内に貯留される様子を見ることができ、診断に結びつけます。
bilomaの治療は?
感染の合併がなければ保存的に治療が可能ですが、感染を合併すれば抗生剤投与をするとともにドレナージ術が必要となります。
基本的にはエコーガイド下に経皮的にbilomaに到達してドレナージチューブを留置します。
最後に
胆管損傷によって、生じることがあるbilomaについてまとめました。
胆汁は、通常エコーやCTやMRIで特別な信号を示すわけではないので、漿液性の液体貯留と鑑別がつかないことが多いのですが、経過をフォローしていても、消えない液体貯留を見たときには胆汁漏とともにbilomaを疑う必要があります。
まずは疑うことが、診断につながる病態です。
参考になれば幸いです。
bilomaの診断と治療のポイント(Q&A)
Q. bilomaの原因となる胆汁の漏れは、MRIで確かめられますか?
A. 肝細胞に取り込まれて胆汁に出る造影剤(Gd-EOB-DTPA)を使ったMR胆道造影では、胆嚢摘出後の胆汁漏疑い16例で感度100%・特異度98%(Ratcliffe 2014)、術後の胆汁漏疑い28例で感度90.5%・特異度100%と報告されています(Kul 2017)。漏れが遅れて写ることがあり、時間をおいた撮像が必要な場合もあります(Kul 2017)。
Q. CT・エコーと肝胆道シンチでは、どちらが胆汁漏の診断に強いですか?
A. 胆嚢摘出後の合併症をまとめた総説では、肝胆道シンチはCTやエコーより胆汁漏の感度・特異度が高く、ERCPを省けることもあるとされています(Maddu 2023)。
Q. bilomaの治療はドレナージだけですか?
A. 胆管損傷の程度によって、経皮的なbiloma・膿瘍ドレナージ、経皮経肝胆道ドレナージ、内視鏡的治療、手術による胆道再建を使い分けます。大きな胆管損傷では、経験ある肝胆道外科医による再建が多くの場合で最善とされます(Thompson 2013)。
参考文献
- Sakamoto I, Iwanaga S, Nagaoki K, et al. Intrahepatic biloma formation (bile duct necrosis) after transcatheter arterial chemoembolization. AJR Am J Roentgenol. 2003;181(1):79-87. PubMed
- Kobayashi S, Nakanuma Y, Terada T, et al. Postmortem survey of bile duct necrosis and biloma in hepatocellular carcinoma after transcatheter arterial chemoembolization therapy: relevance to microvascular damages of peribiliary capillary plexus. Am J Gastroenterol. 1993;88(9):1410-1415. PubMed
- Zhang B, Guo Y, Wu K, et al. Intrahepatic biloma following transcatheter arterial chemoembolization for hepatocellular carcinoma: Incidence, imaging features and management. Mol Clin Oncol. 2017;6(6):937-943. PubMed
- Copelan A, Bahoura L, Tardy F, et al. Etiology, Diagnosis, and Management of Bilomas: A Current Update. Tech Vasc Interv Radiol. 2015;18(4):236-43. PubMed
- Thompson CM, Saad NE, Quazi RR, et al. Management of iatrogenic bile duct injuries: role of the interventional radiologist. Radiographics. 2013;33(1):117-34. PubMed
- Ratcliffe GE, Kirkpatrick ID, Anik Sahni V, et al. Detection and localization of bile duct leaks after cholecystectomy using Gd-EOB-DTPA-enhanced MR cholangiography: retrospective study of 16 patients. J Comput Assist Tomogr. 2014;38(4):518-525. PubMed
- Kul M, Erden A, Düşünceli Atman E. Diagnostic value of Gd-EOB-DTPA-enhanced MR cholangiography in non-invasive detection of postoperative bile leakage. Br J Radiol. 2017;90(1072):20160847. PubMed
- Maddu K, Polireddy K, Hsu D, et al. Do not get stumped: multimodality imaging findings of early and late post-cholecystectomy complications. Emerg Radiol. 2023;30(3):351-362. PubMed
- Balfour J, Desai H, Ewing A. Hepatic Biloma. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2025. PubMed
- Fontanilla T, Noblejas A, Cortes C, et al. Contrast-enhanced ultrasound of liver lesions related to arterial thrombosis in adult liver transplantation. J Clin Ultrasound. 2013;41(8):493-500. PubMed
- Rhim H, Yoon KH, Lee JM, et al. Major complications after radio-frequency thermal ablation of hepatic tumors: spectrum of imaging findings. Radiographics. 2003;23(1):123-34. PubMed
- Hernandez Perez L, Chandra A, Ali R, et al. A Rare Case of Biloma after Ascending Cholangitis and Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography. Eur J Case Rep Intern Med. 2024;11(6):004482. PubMed
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