先に結論:神経核内封入体病(NIID)とは
- 神経核内封入体病(しんけいかくないふうにゅうたいびょう、NIID)は、神経や全身の細胞の核の中に封入体(異常なたんぱくのかたまり)がたまる神経変性疾患です。NOTCH2NLC遺伝子のGGCリピートの延長が原因とわかり、成人では物忘れ(認知症)などで見つかることが多い病気です
- 症状は物忘れ・ふらつき・自律神経障害(瞳が小さい・排尿障害)のほか、意識障害やけいれん、脳炎のような発作をくり返すなど多彩で、段階的に悪化することがあります
- MRIでは拡散強調像(DWI)で皮質と白質の境目(皮髄境界)に沿った高信号が長く続くのが最大の特徴で、広い白質病変や中小脳脚の高信号、小脳虫部のわきの高信号(paravermal sign)も見られます。MRIで疑い、皮膚生検や遺伝子検査で診断します
- 「NIID」は国立感染症研究所(National Institute of Infectious Diseases)の英語略称としても使われますが、この記事は神経の病気のNIIDです
神経核内封入体病(NIID:neuronal intranuclear inclusion disease)とは?
- 2011年に皮膚生検による生前診断が報告されて以来、成人発症例を中心に診断例が増え、白質脳症の重要な鑑別疾患となった。
- HE染色においてエオジン好性に染色される核内封入体が中枢・末梢神経の神経細胞や一般臓器の細胞の核内に広く認められる神経変性疾患。
- NOTCH2NLC遺伝子上にGGCリピート配列の延長が原因。
- 発症は幼児期から高齢者まで広範。成人発症57例の検討では、孤発例(発症51〜76歳)の94.7%で認知症が初発症状だった一方、40歳未満で発症した家族例では全例に筋力低下がみられ、発症年齢によって臨床像が異なる。
- 孤立性、家族性の報告あり。
- 症状は物忘れ、運動失調、自律神経障害(縮瞳や膀胱機能障害)が典型的だが、意識障害や全身性痙攣など多彩。中国の223例では認知機能障害78.5%、自律神経障害70.9%、発作的な症状(脳炎様エピソードなど)51.1%、運動障害50.7%、筋力低下25.6%だった(Tai 2023)。物忘れが進む、急に意識がおかしくなるなど気になる症状があれば、神経内科などの医療機関を受診してください。
- 経過中に、階段状悪化を生じる。
- 特徴的なMRI所見からピックアップして皮膚生検が有用。核内封入体(細胞の核の中にできる異常なたんぱく質のかたまり)は皮膚の脂肪細胞・線維芽細胞・汗腺の細胞にもみられ、ユビキチン抗体で染まる(Sone 2011)。
- ただし、脆弱X関連振戦/運動失調症(fragile X-associated tremor/ataxia syndrome:FXTAS(読み方はエフエックス タス))が臨床、画像、病理学的所見が類似して鑑別に苦慮することがある。最終的には遺伝子検査が必要。
神経核内封入体病(NIID)の画像所見
- DWIで皮髄境界の高信号が遷延する。(認めない症例もある。)223例では96.6%にみられ(Tai 2023)、原因不明の白質脳症との比較では感度88.2%・特異度98.4%だった(Liu 2022)。
- T2WI、FLAIRで癒合傾向のあるびまん性の白質異常信号を認める。
- 脳幹、小脳歯状核周囲、中小脳脚にもT2WI,FLAIRで高信号を認めることがある。
- 小脳虫部辺縁の高信号はparavermal signと呼ばれる。223例の55.0%にみられた(Tai 2023)。
皮髄境界にDWIで異常高信号を認める疾患
- 神経核内封入体病(NIID)
- 脆弱X関連振戦/運動失調症(fragile X-associated tremor/ataxia syndrome:FXTAS)
関連記事:脳MRIでDWI(拡散強調像)で高信号を見たときの鑑別診断は?
症例
臨床神経 2021;61:727-732
DWIで皮髄境界に異常高信号を認め、脳梁膨大部 と両側中小脳脚にも高信号像を認めている。
またこれらの所見が経時的に増大しており、神経核内封入体病(NIID:neuronal intranuclear inclusion disease)の経過を見ていると考えられます。
神経核内封入体病でよくある疑問(Q&A)
Q. 遺伝しますか?
A. 家族に複数の患者がいる家族例と、家族歴のない孤発例の両方があります(Sone 2016)。心配な場合は遺伝カウンセリングで相談できます。
Q. 難病の医療費助成は受けられますか?
A. 対象の病気や条件は制度の見直しで変わるため、難病情報センターや主治医に確認してください。
参考文献:
- 頭部 画像診断の勘ドコロNEO P317-319
- 画像診断 Vol.41 No.14 2021 P1502-3
- 物忘れ発症前からMRIの経時的変化が観察された神経核内封入体病の1例
- Sone J, Tanaka F, Koike H, et al. Skin biopsy is useful for the antemortem diagnosis of neuronal intranuclear inclusion disease. Neurology. 2011;76(16):1372-6. PubMed
- Sone J, Mori K, Inagaki T, et al. Clinicopathological features of adult-onset neuronal intranuclear inclusion disease. Brain. 2016;139(Pt 12):3170-3186. PubMed
- Sone J, Mitsuhashi S, Fujita A, et al. Long-read sequencing identifies GGC repeat expansions in NOTCH2NLC associated with neuronal intranuclear inclusion disease. Nat Genet. 2019;51(8):1215-1221. PubMed
- Tai H, Wang A, Zhang Y, et al. Clinical Features and Classification of Neuronal Intranuclear Inclusion Disease. Neurol Genet. 2023;9(2):e200057. PubMed
- Liu YH, Chou YT, Chang FP, et al. Neuronal intranuclear inclusion disease in patients with adult-onset non-vascular leukoencephalopathy. Brain. 2022;145(9):3010-3021. PubMed
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最近MELAS様の発作が初発症状となる症例が報告されており、ちょっとしたトピックになってます。
この前の神経放射線ワークショップでも類似症例が出題されてました。
https://ng.neurology.org/content/6/6/e531
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fneur.2022.837844/full
補足いただきありがとうございますm(_ _)m