先に結論:脳幹網様体と上行性網様体賦活系とは
- 脳幹網様体(のうかんもうようたい)は、脳幹(中脳・橋・延髄)の中央〜背側に広がる、神経細胞が網の目のように散らばった領域です。呼吸・循環などの生命維持や、意識(目覚めた状態)の維持にかかわります
- 網様体はどこ?:脳幹の断面の後ろ半分(被蓋)の中央部です。目印は、中脳では中脳水道の前、橋・延髄では第四脳室の底の前。前側を走る太い運動の線維(大脳脚・錐体)よりも後ろにあります
- 上行性網様体賦活系(「毛様体」は誤記)は、脳幹網様体から視床・視床下部を経て大脳皮質全体を目覚めさせる経路です。中心となる場所は脳幹(中脳〜橋の被蓋)で、大脳にあるのではありません
- そのため、脳幹・視床の障害(脳幹出血・脳幹梗塞・脳ヘルニアなど)や、大脳全体の広い障害で意識障害が起こります
脳幹網様体(brainstem reticular formation)
- 脳幹(中脳から延髄)の正中付近で、背側に存在する。(脳幹は主に線維束、神経核、網様体の3つに分けられる。)
- 発生学的に古い構造で、神経細胞が散在性で核を形成していない構造を言う。
- 多シナプス性のニューロン連絡路を形成し、下行性網様体系と上行性網様体系(脳幹賦活系)に大別される。
- 灰白質と白質の中間的な組織構築を有する領域。
- 他の中枢神経との間に様々な入出力路を有し、意識レベル(覚醒レベル)の調節や生命維持などの機能を持っている。
網様体の役割(中脳・橋・延髄の違い)
| 部位 | 主なはたらき |
|---|---|
| 中脳網様体 | 覚醒の維持(上行性網様体賦活系の一部) |
| 橋網様体 | 覚醒の維持、水平方向の眼球運動(傍正中橋網様体:PPRF)、睡眠の調節 |
| 延髄網様体 | 呼吸・心拍・血圧の調節(呼吸中枢・循環中枢)、嘔吐・せき・嚥下などの反射 |
| 下行性の経路 | 網様体脊髄路を通じた姿勢・筋緊張の調節 |
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脳幹網様体のMRI画像における大まかな場所、位置

脳幹網様体のMRI画像における大まかな場所、位置は上のようになります。
連続画像で見る場合はこちら。
網様体はどこ?中脳・橋・延髄での位置の目印
脳幹を輪切りにすると、前側(腹側)には大脳から脊髄へ下る太い線維の束(大脳脚・橋の縦束・延髄の錐体)が、後ろ側(背側)の「被蓋(ひがい)」には脳神経の核や網様体があります。網様体は被蓋の中央部に、核の間を埋めるように広がっています。
| 高さ | 網様体の位置の目印 |
|---|---|
| 中脳 | 中脳水道(とそのまわりの中心灰白質)の前、赤核の外側〜後ろの被蓋 |
| 橋 | 第四脳室の底の前、内側毛帯より後ろの橋被蓋。前側の橋底部(橋核と縦走線維)には含まれない |
| 延髄 | 第四脳室の下部(さらに下では中心管)の前、オリーブ核の後ろ内側 |
通常のMRIでは網様体だけを境界線で見分けることはできません。中脳水道・第四脳室・赤核・オリーブ核などを目印に、「被蓋の中央部」としておおよその場所を推定します。
上行性網様体賦活系とは?
- 上行性網様体賦活系は脳幹網様体から視床の非特殊核、視床下部までを含めた経路。
- 上行性覚醒系は中脳橋被蓋に位置する。
- 末梢からの感覚刺激などの入力を受けて、大脳皮質を覚醒状態にする役割がある。ヒトの脳を高角度分解能拡散MRI(HARDI)のトラクトグラフィで調べた研究では、脳幹から視床・視床下部・前脳基底部へ向かう上行性覚醒系の経路が描出されている。この経路の障害が、昏睡など重い意識障害の原因になると考えられている(Edlow 2012)。
- 昏睡を起こした脳幹病変12例と、起こさなかった脳幹病変24例を比べた研究では、橋の上部(吻側)の背外側の被蓋の小さな領域の障害が昏睡と有意に関連していました(Fischer DB, et al. 2016)。上行性網様体賦活系の中心が「どこか」を示す結果です。この場所は、健康な人の安静時の脳活動で前島皮質や前帯状皮質(膝前部)と連動しており、意識障害の患者さんではこの2つの皮質の間のつながりが弱まっていました(Fischer DB, et al. 2016)。
- そのため、脳幹、間脳(視床)、大脳皮質のいずれかが障害された場合、意識障害が起こる。
実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの頭部MRIの正常解剖ツールで、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。全体の見方は頭部MRIの解剖にまとめています。
脳幹網様体でよくある疑問(Q&A)
Q. 上行性網様体賦活系はどこにありますか?
A. 出発点は脳幹の被蓋、とくに中脳から橋の上部です。そこから視床・視床下部・前脳基底部を経て大脳皮質へ広がります(Edlow 2012)。昏睡と関連した場所は、橋の上部の背外側の被蓋でした(Fischer DB, et al. 2016)。
Q. 網様体が障害されるとどうなりますか?
A. 中脳〜橋の被蓋の障害では、意識が保てなくなる(昏睡など)ことがあります。延髄の網様体には呼吸や循環の調節にかかわる部分があるため、脳幹出血・脳幹梗塞や脳ヘルニアで脳幹が圧迫されると、意識障害に加えて呼吸の異常が起こることがあります。急に呼びかけへの反応が悪くなった、呼吸の様子がおかしいといった場合は、すぐに救急車を呼ぶなど医療機関を受診してください。
参考文献:
- 病気がみえるVol.7(第2版)
- 脳MRI 1.正常解剖P173-174,182
- Parvizi J, Damasio A. Consciousness and the brainstem. Cognition. 2001;79(1-2):135-160. PubMed
- Edlow BL, Takahashi E, Wu O, et al. Neuroanatomic connectivity of the human ascending arousal system critical to consciousness and its disorders. J Neuropathol Exp Neurol. 2012;71(6):531-546. PubMed
- Fischer DB, Boes AD, Demertzi A, et al. A human brain network derived from coma-causing brainstem lesions. Neurology. 2016;87(23):2427-2434. PubMed
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