心不全
・まず心不全は急性と慢性に分けられる。
急性心不全とは?
・急性心不全とは、
- 心臓に器質的あるいは機能的な異常
- →急速に心臓のポンプ機能異常
- →それによる症状、兆候の出現したもの。
つまり、急に心機能障害に陥るもの。
・左心室ポンプ機能が急激に低下
→体循環系の心拍出量の減少(心拍出量の低下)
→肺循環系への過剰な血液のうっ滞(体循環系の手前の左室充満圧上昇→左房圧上昇)
→肺うっ血(肺血管性静水圧の上昇)
→肺の間質に水が溜まる(間質性肺水腫)
→肺の実質に水が溜まる(肺胞性肺水腫)
・原因としては、急性冠症候群、急性不整脈、高血圧、急性弁機能不全、慢性心不全の急性増悪、大動脈解離、心タンポナーデ、重度の急性心筋炎など。心臓以外では、感染症や、貧血、水分摂取量過剰の原因となる。
・重篤な状態であることが多く、治療は、心エコーを中心に、重症度を同定し、速やかな治療を行う。参考)心不全の治療薬は?
急性心不全の画像所見
胸部X線所見
・心筋梗塞の急性期などを除いては、一般的に心拡大を伴い、左室および左房の拡大を主体に認める。ただし拡大しないこともあるので注意。
・また、大きく2つの機序による変化が起こる。
- 肺静脈圧亢進による所見。
- 肺水腫による所見。
・肺静脈圧亢進による所見:肺血流の再分布が起こり、本来下肺野の血管陰影が目立つのが正常だが、それが上肺野の血管陰影(動脈、静脈ともに)が目立ってくる。
肺水腫による所見①(間質性肺水腫):
肺毛細血管圧の上昇→血管内から間質に水が漏れる(間質性肺水腫)。
- 小葉間隔壁に漏出するとKerley A line、
- 胸膜下間質に漏出するとKerley B line、
- 胸膜下水腫=葉間裂の鮮明化
- 気管支血管束へ漏出するとperi-bronchial cuffing、
- 肺門部は不明瞭になり、ぼけ像(perihilar haze)が顕在化してくる。
肺水腫による所見②(肺胞性肺水腫):
- 間質から肺胞への水が漏出すると、肺胞性肺炎に至り、肺門部に蝶形陰影を認めるようになる。
- さらに胸水が貯留するようになる。
胸部CT
・間質性肺水腫→気管支血管束の肥厚、小葉間隔壁の肥厚、スリガラス陰影〜浸潤影。
・肺胞性肺炎に至ると肺門部側優位に浸潤影を認める。
症例 70歳代 男性 左心不全
慢性心不全とは?
・一方、慢性心不全とは、
- 慢性的に心臓のポンプ機能障害があり、血液を体の隅々まで運べない状態。
- →血液を送りたくても送れないので、心臓の手前の肺循環、その前の体循環にはうっ血があり、日常生活に支障を常に来す。
・慢性心不全には、大きく右心不全と左心不全がある。
・原因は、虚血性心疾患、高血圧、弁膜症、心筋症など。
・治療は、体重管理、塩分制限、適度な運動のほか、重症度や原因に応じた内服薬にてコントロールする。
慢性心不全の画像所見
・左心不全の画像所見は、基本的に急性心不全と同様。
・右心不全の画像所見は、肝腫大、下大静脈の拡張、下肢の浮腫、腹水などを認める。他、下の例のように、periportal collarや胆嚢の漿膜下浮腫を来すことがある。
症例 右心不全