先に結論:脳MRAで覚えたい主な血管
- 前方循環は内頸動脈(ICA)→前大脳動脈(ACA)・中大脳動脈(MCA)、後方循環は椎骨動脈(VA)→脳底動脈(BA)→後大脳動脈(PCA)で、両者を前交通動脈(Acom)・後交通動脈(Pcom)がつなぎWillis動脈輪を作ります
- 小脳を養う後下小脳動脈(PICA)・前下小脳動脈(AICA)・上小脳動脈(SCA)や、前脈絡叢動脈(AChA)・眼動脈も報告書でよく使う名称です。下の表で日本語・英語・略語を確認できます。Willis動脈輪の前半部と後半部は別々に欠けやすさが違い、3D TOF-MRAで健常者150人を調べた研究では前半部が完全なのは74%、後半部が完全なのは52%でした。1,864人の住民研究では欠損・低形成の区間は年齢が上がるほど増える傾向があり、Pcomが細い・見えないことは異常ではなく、側副血行の評価で意識しておく変異です。なお、Willis動脈輪が左右とも完全な形でそろう人は多くなく、MRAの検討では完全型の割合は報告により大きく異なり(約12〜42%)、両側の後交通動脈の欠損・低形成が最も多い変異として報告されています。
- 内頸動脈はC1〜C5に区分し(サイフォン部=C2〜C4)、中大脳動脈はM1〜M4、前大脳動脈はA1・A2、後大脳動脈はP1・P2と区分して呼びます。前交通動脈は動脈瘤の好発部位です。各区分の範囲は下の「主な脳動脈の区分」で一覧にしました
MRAで細い・見えない血管があっても、A1・P1・Acom・Pcomの低形成などの正常変異なら狭窄ではありません。詳しくは脳血管の解剖、脳の血管支配領域もどうぞ。
脳MRAの血管名称と略語一覧
| 日本語 | 英語 | 略語 |
| 内頸動脈 | Internal Carotid Artery | ICA |
| 外頸動脈 | External Carotid Artery | ECA |
| 眼動脈 | Ophthalmic Artery | OphA |
| 前脈絡叢動脈 | Anterior Choroidal Artery | AChA |
| 前大脳動脈 | Anterior Cerebral Artery | ACA |
| 中大脳動脈 | Middle Cerebral Artery | MCA |
| 後大脳動脈 | Posterior Cerebral Artery | PCA |
| 前交通動脈 | Anterior Communicating Artery | Acom |
| 後交通動脈 | Posterior Communicating Artery | Pcom |
| 椎骨動脈 | Vertebral Artery | VA |
| 脳底動脈 | Basilar Artery | BA |
| 上小脳動脈 | Superior Cerebellar Artery | SCA |
| 前下小脳動脈 | Anterior Inferior Cerebellar Artery | AICA |
| 後下小脳動脈 | Posterior Inferior Cerebellar Artery | PICA |
| 浅側頭動脈 | Superficial Temporal Artery | STA |
そのほかによく使う血管の略語(頸部・分枝・静脈)
| 日本語 | 英語 | 略語 |
|---|---|---|
| 総頸動脈 | Common Carotid Artery | CCA |
| 腕頭動脈 | Brachiocephalic Artery(Trunk) | BCA |
| 鎖骨下動脈 | Subclavian Artery | SCA(上小脳動脈と同じ略語になるため、文脈で区別する) |
| レンズ核線条体動脈 | Lenticulostriate Artery | LSA |
| 脳梁縁動脈 | Callosomarginal Artery | CMA |
| 後頭動脈 | Occipital Artery | OA |
| 上矢状静脈洞 | Superior Sagittal Sinus | SSS |
略語には表記のゆれがあります。前交通動脈はAcomのほかACoA・AComA、後交通動脈はPcomのほかPCoA・PComAと書かれます。眼動脈(OphA)と後頭動脈(OA)のように似た略語もあるため、報告書では初出で日本語名を添えると誤解を防げます。
脳外科・脳神経でよく使う略語(動脈瘤の部位・治療)
| 略語 | 意味 |
|---|---|
| IC-PC | 内頸動脈-後交通動脈分岐部(動脈瘤の部位) |
| Acom AN | 前交通動脈瘤(ANはaneurysm) |
| BA tip | 脳底動脈先端部 |
| STA-MCA吻合 | 浅側頭動脈と中大脳動脈をつなぐバイパス手術 |
| DSA | デジタルサブトラクション血管造影(カテーテルによる脳血管造影) |
Willis動脈輪と前方・後方循環
頭部MRAの画像を見るときに、解剖が頭に入っていないと当然読めません。
MIP像を見ても、何が何だかわからないとならないために、まずは自分で主要な血管を紙に書けるようにしましょう。

といわれてもどうやってどこから描けばいいのか分からない人のために動画解説しました。
動画で学ぶWillis動脈輪
脳の血管のさらに詳しい解剖についてはこちらで動画付きで詳しく解説しました。→【動画解説】脳血管(動脈)の解剖を図と画像でわかりやすく!
低形成が起こりうる部位(正常変異)
正常解剖がわかったあとに、知っておくべきことは、正常でも低形成が起こりうる場所を知っておくことです。
低形成が起こりうる場所
- 前交通動脈
- 前大脳動脈のA1の部分
- 後交通動脈(両側の場合もあり)
- 後大脳動脈のP1の部分
下の図の部位に低形成(=血管の描出がない!)を認めても、安易に狭窄あり!としないように注意しましょう。

実際に欠損している症例を見てみましょう。
症例 50歳代男性

MRAのMIP画像です。
左の前大脳動脈(ACA)のA1が欠損していますが、正常変異です。
主な脳動脈の区分(M1〜M4・A1・A2・P1〜P4)
| 血管 | 区分 | 範囲 |
|---|---|---|
| 中大脳動脈(MCA) | M1(水平部) | 内頸動脈の分岐部から、外側へ走り主な分岐をするまで |
| M2(島部) | 島の表面を走る部分 | |
| M3(弁蓋部) | 島から弁蓋の内側を回って外へ出る部分 | |
| M4(皮質部) | 脳表に出て大脳皮質に広がる枝 | |
| 前大脳動脈(ACA) | A1 | 内頸動脈の分岐部から前交通動脈まで |
| A2 | 前交通動脈より先(脳梁の前方へ上る部分)。さらに先をA3〜とする分け方もある | |
| 後大脳動脈(PCA) | P1 | 脳底動脈の先端から後交通動脈との合流部まで |
| P2〜P4 | 後交通動脈より先。中脳のまわりを回り(P2・P3)、後頭葉の皮質へ分かれる(P4) |
A1とP1は低形成が起こりうる部分で、P1が細く後交通動脈が太い場合は、後で述べる胎児型PCAです。
内頸動脈(ICA)の解剖
また、内頚動脈は他の主要血管と異なり、細かいところまで解剖を記載する必要があります。
C1-5の他に右にあるように、床上部、海綿静脈洞部、海綿静脈洞前部、錐体部、頸部といった表現をすることもありますので、その対応関係を以下でチェックしておきましょう。

- C1:Pcom、前脈絡動脈の分岐部から前・中大脳動脈への最終分岐部までの部分。
- C2:前床突起上で硬膜を貫通後、Pcom分岐部近位までのくも膜下腔内を走行する部分。C2近位部より眼動脈が起始する。
- C3:頚動脈サイフォン部のうち前床突起内側で後上方に屈曲する硬膜外の部分。
- C4:海綿静脈洞の内側部を前走する部分。
- C5:頚動脈管を通って頭蓋内に入り、頚動脈溝に沿ってMeckel腔の内側を海綿静脈洞に向かう部分。ここでのC1〜C5はFischer(1938)の区分で、血流と逆向きに番号が付いています。1996年にBouthillierらは血流の向きにC1頸部・C2錐体部・C3破裂孔部・C4海綿静脈洞部・C5床突起部・C6眼動脈部・C7交通部の7区分を提案しており、文献によって「C1」が指す場所が正反対になるので注意しましょう。
脳MRI 1.正常解剖P267の図10-5を引用改変
ICAの全体像を動画で見てみる
頭部MRAで見るべきポイント
- 主幹動脈のstenosisの有無、aneurysmの有無を記載する。
- MRA上見えなくてもよい血管を知っておく。Willis動脈輪に関しては、個人差が多く、すべて描出されていなくてもnormal variationである。(特にA1、Pcom)健常ボランティア150人の3D TOF MRAでは、Willis動脈輪が前後とも完全に描出されたのは42%だけでした。
- 椎骨動脈も一方が描出されてなくてもnormal variation(低形成)。ただし、解離や閉塞でないことを確認する必要あり。
- PCAがPcomを介して内頸動脈から栄養を受けているタイプをPCA胎児型という。これも正常変異。
- aneurysmの検索には元画像を利用し、好発部位を中心に追っていく。見つけた動脈瘤は場所と大きさを記載する(日本の前向き研究UCAS Japanは直径3mm以上の動脈瘤を追跡の対象とした)。なお破裂の危険は大きさとともに上がり、日本の前向き研究(UCAS Japan)では3〜4mmに比べ7mm以上で明らかに高くなる。
MRAで動脈瘤を見落とさないために
- MIP像のみではなく、元画像もチェックする。
- MIP像では、縦方向の回転と横方向の回転がそれぞれ強い(発見しやすい)動脈瘤があることを知る。
- 縦方向の回転は、前交通動脈部、M1-M2部、脳底動脈頂部の動脈瘤を主にチェックする。
- 横方向の回転では、内頸動脈サイフォン部、前交通動脈部、M1-M2部、脳底動脈頂部、脳底動脈-上小脳動脈部、後下小脳動脈部を主にチェックする。
- 内頸動脈のサイフォン部は重なりが多く、見逃しやすいので、要注意。元画像と合わせて評価する。
脳MRAの血管名称・略語でよくある疑問(Q&A)
Q. 眼動脈はMRAで見える?
A. 眼動脈は内頸動脈が硬膜を貫いた直後(前床突起の近く)から前方へ出て、視神経と一緒に眼窩へ入る細い枝です。MIP像では内頸動脈から前へ伸びる細い血管として見えますが、写りが弱いこともあり元画像で起始部を確認します。
他の主要血管を動画で見てみる!
脳の血管の解剖を実際のMRAのMIP像を回転させながら学べるオンライン教材を開発しました。ぜひ使ってみてください。→脳MRA正常解剖ツールはこちら
参考)脳MRI 1.正常解剖
実際の画像で確かめるには、画像診断cafeの頭部MRAの正常解剖ツールで、スライスを動かしながら構造をタップすると名前が表示されます(無料・登録不要)。
参考文献
- Enyedi M, Scheau C, Baz RO, et al. Circle of Willis: anatomical variations of configuration. A magnetic resonance angiography study. Folia Morphol (Warsz). 2023;82(1):24-29. PubMed
- Diljohn J, Rampersad F, Maharaj P, et al. Anatomical variations in the circle of Willis on magnetic resonance angiography in a south Trinidad population. BJR Open. 2023;6(1):tzad002. PubMed
- Krabbe-Hartkamp MJ, van der Grond J, de Leeuw FE, et al. Circle of Willis: morphologic variation on three-dimensional time-of-flight MR angiograms. Radiology. 1998;207(1):103-11. PubMed
- Hindenes LB, Håberg AK, Johnsen LH, et al. Variations in the Circle of Willis in a large population sample using 3D TOF angiography: The Tromsø Study. PLoS One. 2020;15(11):e0241373. PubMed
- UCAS Japan Investigators; Morita A, Kirino T, Hashi K, et al. The natural course of unruptured cerebral aneurysms in a Japanese cohort. N Engl J Med. 2012;366(26):2474-2482. PubMed
- Bouthillier A, van Loveren HR, Keller JT. Segments of the internal carotid artery: a new classification. Neurosurgery. 1996;38(3):425-32; discussion 432-3. PubMed
- Hindenes LB, Ingebrigtsen T, Isaksen JG, et al. Anatomical variations in the circle of Willis are associated with increased odds of intracranial aneurysms: The Tromsø study. J Neurol Sci. 2023;452:120740. PubMed
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