肩関節の解剖

肩関節ではまず下記の解剖はスラスラ言えるようにしましょう。

また肩関節のMRIの正常解剖はこちらのツールでもご確認いただけます→肩関節MRI正常解剖アプリ

 

腱板(rotator cuff)を構成する筋

  • 腱板(rotator cuff)→4つの腱から構成される。
腱板の名前 上腕骨頭のどの部分を被うか。 最終的にどこに付着するか。
肩甲下筋腱 前面 小結節
棘上筋腱(最重要) 上面(前面も後面も) 大結節
棘下筋腱 後面 大結節
小円筋腱 後面 大結節
肩甲下筋腱(subscapularis tendon)
  • 上腕骨頭の前面を被い、上腕骨の小結節に付着し、主な機能は肩関節の内旋である。
棘上筋腱(supraspinatus tendon)
  • 肩甲骨の棘上窩から上面を被い、上腕骨の大結節(superior facet)に付着する。肩甲上神経が支配し、主な機能は、肩関節の外転(手を上に上げる)である。腱板で最も負担が大きく、損傷を受けやすい。
棘下筋腱(infraspinatus tendon)
  • 肩甲骨の棘上窩から後ろ面を覆い、上腕骨の大結節(middle facet)に付着する。これも肩甲上神経が支配し、主な機能は肩関節の外旋である。

※棘上・下筋はともに肩甲上神経支配で、これらの筋が萎縮しているときは、この神経が圧迫されていることが多い。その代表が傍関節唇嚢胞。もし何も障害物がない場合は、走行する肩甲横靭帯を手術により切除する。

小円筋腱(teres minor tendon)
  • 肩甲骨の外側縁・下角から後ろ面を覆い、上腕骨の大結節(inferior facet)に付着する。腋窩神経が支配し、主な機能は肩関節の外旋である。小円筋は棘下筋を補助し、ほぼ同じ機能である。

4つの腱から構成される。

その他、三角筋、上腕二頭筋が肩関節に関与している。

腱の付着部位について
  • 肩甲下筋:上腕骨頭の小結節に停止
  • 棘上筋:大結節のsuperior facetに停止
  • 棘下筋:大結節のmiddle facetに停止
  • 小円筋:大結節のinferior facetに停止

とされてきたが、棘下筋腱も棘上筋腱の外側を回り、大結節のsuperior facetにも停止し(かなり前方まで付着し)、棘上筋腱も21%で小結節にも停止していることが分かった。

つまり、「これまで棘上筋腱断裂と診断されてきたものの中には実際は棘下筋腱断裂であったものがある」ということになる。

大結節前方では、棘上筋腱と棘下筋腱を画像上区別することは困難なので、まとめて「上方腱板」と呼称することもある。

J Bone Joint Surg Am.2009 Mar 1;91 Suppl 2 Pt 1:1-7

関連記事:腱板断裂のMRI画像診断のポイントは?

腱板上の関節様構造

※肩のなめらかな挙上に重要=第2肩関節と言われる。

  • 肩峰下・三角筋下滑液包
  • 肩峰
  • 烏口突起
  • 烏口肩峰靭帯(肩峰、烏口突起を結ぶ)
烏口肩峰アーチ(coracoacromial arch)
  • 腱板の上方には烏口突起、烏口肩峰靭帯、肩峰で形成されるというアーチ様の構造がある。このアーチと上腕骨頭の間に肩峰下-三角筋下滑液包と腱板がある

関節唇(glenoid labrum)

  • 線維軟骨で、前後に突出する楔型の構造。
  • MRIでは正常で低~無信号。

肩峰下三角筋下滑液包(subacromial-subdeltoid bursa)

  • 腱板の上面を被う大きな滑液包で、正常ではほとんど同定できないが、少量の液体貯留を認めることがある。滑液包は骨・軟骨と腱の付着部、皮下などにあり、摩擦を軽減する役割がある。

関連記事:肩関節周囲の滑液包(Bursae)の種類と部位

上腕二頭筋長頭腱(long head of biceps tendon)

  • 上腕骨の大結節と小結節の結節間溝を走行し、関節腔内を通って、関節唇の上部に付着する。

関節唇・関節上腕靭帯の解剖

  • 関節窩の周りに関節唇あり。その上方に上腕二頭筋長頭腱が付着する。
  • 関節唇の前上方から後下方にかけて関節上腕靭帯がある。
  • 関節上腕靭帯=上関節上腕靭帯(SGHL)+中関節上腕靭帯(MGHL)+下関節上腕靭帯(IGHL)と3つからなる。
  • 中でも下関節上腕靭帯(IGHL)=anterior band+posterior bandからなり、特にanterior band(AIGHL)が重要。

肩関節の安定性を高めるもの

  • 関節唇(glenoidal  labrum):関節窩を深めることにより、肩関節を安定化させる。
  • 関節包(articular capsule):骨の可動性連結である関節を包む膜。上腕骨側は解剖頸、肩甲骨側は関節窩の辺縁に付着する形で肩甲上腕関節を覆っている。滑液を分布する滑膜と外層の線維膜からなる。
  • 靭帯:関節上腕靭帯、烏口上腕靭帯、烏口肩峰靭帯など。

  • 筋:回旋筋腱板(rotator cuff)∋棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋、大胸筋、三角筋、烏口腕筋、上腕二頭筋、上腕三頭筋、広背筋、大円筋 の計11種類。
  • 滑液包(bursa) 潤滑剤の役割。

MRIのシークエンスと観察できる構造、疾患の関係

  • T1WI:腫瘍、骨浮腫
  • T2WI:筋萎縮、腱板断裂、関節唇損傷
  • 脂肪抑制T2WI:上腕二頭筋長頭腱、筋内腱、烏口肩峰靱帯、烏口上腕靱帯、骨浮腫、肉離れ、神経原性浮腫、腱板断裂、関節唇損傷、(※一方、脂肪抑制T2WIで評価できないもの:筋萎縮)
  • T2*WI:石灰沈着、骨梁、骨輪部、腫瘍

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肩関節略語

  • RC:Rotator cuff=腱板
  • RCT:Rotator cuff tear=腱板断裂
  • RCR:Rotator cuff repair=腱板修復術
  • SAB:sub acromial bursa=肩峰下滑液包
  • ARCR:Arthroscopic Rotator cuff repair=鏡視下腱板修復術
  • ASD:Arthroscopic Subacromial Decompressionr=鏡視下肩峰除圧術
  • RIL:Rotator Interval lesion=腱板疎部病変

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