腹部救急画像診断 症例5

症例5

【症例】60歳代 女性
【主訴】右季肋部痛
【現病歴】2日前の夜から心窩部に違和感あり。昨日朝から心窩部痛出現あり。市販の胃薬で様子を見ていた。今朝より症状増悪したため、当院受診。
【身体所見】BT 37℃、眼球結膜黄染なし、腹部:Murphy sign(±)、右季肋部圧痛あり、他圧痛なし。
【データ】WBC 11500、CRP 0.41、AST/ALT=22/14、ALP 211、LAP 47、γ-GTP 26

画像はこちら

胆嚢は腫大し、壁肥厚を認めています。

壁肥厚は特に漿膜下でやや目立ちます。

胆嚢が接する肝臓(胆嚢床)にはまだらな早期濃染を認めており、炎症の波及を示唆する所見です。

胆石を複数認めており、胆嚢は腫大し、緊満感があります。

この緊満感というのが急性胆嚢炎のポイントです。

胆嚢壁肥厚が目立たず緊満感のみ目立つ急性胆嚢炎もありますので、「パンパンだなあ(腫れてるなあ)」という印象が大事です。冠状断ですとそこまでパンパンというわけではないですが、くびれがないというのが重要です。

早期相で認めた胆嚢床のまだらな濃染は平衡相では確認できず、周囲肝実質と同程度になっています。

 

これらから疑うべきは、急性胆嚢炎となります。

 

診断:急性胆嚢炎

 

※同日緊急手術となりました。

~~~~手術記録より抜粋~~~~

胆嚢は腫大しており、壁は浮腫状に変化していた。20Gエラスター針で胆嚢から胆汁を吸い出した。胆嚢が把持できてから定型通り、胆嚢摘出術施行した。

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関連:急性胆嚢炎の画像診断、症状、治療、手術、ガイドライン

その他所見:

  • 脾臓に石灰化散見(old Tb疑い)
  • 子宮筋腫疑い。(ただし粘膜下に高吸収があるようにみえ、r/o 子宮体癌として念のため婦人科コンサルトとする。)
  • 少量腹水あり。
  • 動脈硬化あり。
  • 右股関節にOA変化あり。
症例5の解説動画

 

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

過去のコメント
  1. 追加症例ありがとうございました。胆嚢壁の肥厚、特に漿膜下の肥厚が目立つとのことでしたが、胆嚢周囲の浮腫、液体貯留と読むことはできませんか。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >胆嚢周囲の浮腫、液体貯留と読むことはできませんか。

      少しはこれらの要素もあるかもしれませんが、それにしては胆嚢の壁と同じ形をしているので、壁肥厚の要素が強いと考えます。

  2. 十二指腸が追うのが難しく胃切後かと思いましたが、よく見ると胆嚢炎に押されて虚脱しているのですね。

    画像67の順序がおかしくなってます。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >よく見ると胆嚢炎に押されて虚脱しているのですね。

      そうですね。かなり押されていますね。

      >画像67の順序がおかしくなってます。

      おっしゃるように画像の順序が一部おかしいところがありましたので修正しました。
      ご指摘いただきありがとうございます。

  3. 追加症例ありがとうございました。
    症例5のQ&Aとも関連するのですが、
    今回、壁肥厚を「漿膜下層で目立つ」と表現されていますが、
    漿膜下浮腫の場合と同じ肥厚の仕方という事で宜しかったでしょうか。

    「壁の外側に目立つ」の「壁」が最も造影されている粘膜層を指している(つまり漿膜下)という理解で良いでしょうか。

    正直、自分は今まで他の所見で鑑別していた(緊満感etc)ので、
    壁のどこが腫れているかまでは気にしていませんでした。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >今回、壁肥厚を「漿膜下層で目立つ」と表現されていますが、
      漿膜下浮腫の場合と同じ肥厚の仕方という事で宜しかったでしょうか。

      同じ肥厚の仕方です。

      >「壁の外側に目立つ」の「壁」が最も造影されている粘膜層を指している(つまり漿膜下)という理解で良いでしょうか。

      おっしゃるとおりです。漿膜下が胆嚢炎で腫大することは頻度としてはそれほど多くないですが今回は漿膜下での肥厚が目立ちます。

  4. 追加症例の提示ありがとうございました。胆嚢炎関連で質問なのですが、ときにレポートで慢性胆嚢炎を指摘されることがあります。急性と慢性の違いはどのうよに判断するのでしょうか。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >急性と慢性の違いはどのうよに判断するのでしょうか。

      慢性胆嚢炎が急性増悪することもあるので、この場合は急性胆嚢炎と診断します。
      慢性胆嚢炎の場合は壁が線維化しており、緊満感はないのに壁が肥厚していたり、胆石や胆のう腺筋腫を合併していることが多いです。
      MRIではT2WIで壁が線維化を示唆する低信号で認めることもあります。

      一方で急性の場合は、壁肥厚(ないこともありますが)に加えて、緊満感があり、ときに周囲に脂肪織濃度上昇を認めることがあります。
      ただ、画像だけでは、胆嚢炎とは言えない、また否定できないこともしばしばありますので注意が必要です。

      関連
      https://xn--o1qq22cjlllou16giuj.jp/archives/5064

  5. 解説動画内では、先生は「肝門部の中枢側肝内胆管は軽度拡張はあるかもしれないが、目立つ所見ではない」旨をおっしゃっていました。また、末梢側の門脈に伴奏する肝内胆管もそれほど目立たないように見えました。

    先生の急性胆管炎の画像診断まとめも拝見しましたが、
    肝内胆管拡張とはおおよそ、伴奏する門脈径と同じくらいの胆管拡張があれば有意ととるのでしょうか?

    1. アウトプットありがとうございます。

      >肝内胆管拡張とはおおよそ、伴奏する門脈径と同じくらいの胆管拡張があれば有意ととるのでしょうか?

      これくらいあれば有意ですね。
      今回も肝門部では軽度肝内胆管の拡張はありそうですが、末梢部は全く拡張しておらず、どこが肝内胆管なのかわからないくらいです。
      末梢部では肝内胆管が見えること自体が拡張を示唆する所見といえます。

  6. 追加症例ありがとうございました。

    質問です。虫垂は冠状断の20のsliceの上行結腸の左下に見えている細いairを含む管腔構造物で合っていますでしょうか?

    1. アウトプットありがとうございます。

      虫垂は、横断像で、138 / 164で盲腸の左側に前後に走行する細い管腔構造ですね。
      冠状断像ですと20−27あたりで見えますね。ちょっとわかりにくいかもしれませんが。

  7. 胆嚢炎として肝実質の所見は取れたんですが、中枢側の胆管が目立つのに目が行ってしまいました。mirizzi症候群のような状態ではないのでしょうか?

    1. アウトプットありがとうございます。

      >mirizzi症候群のような状態ではないのでしょうか?

      mirizzi症候群は、大きな胆石が胆嚢頚部あるりは胆嚢管に嵌頓し、「総胆管を壁外性に圧排して胆道の通過障害を来すもの」です。
      今回この「総胆管を壁外性に圧排して」という所見が横断像でも冠状断像でも確認できません。
      肝内胆管の拡張も本当に中枢側だけですし、肝胆道系酵素も上がっていない点からも、その可能性は低いのではないかと考えます。

  8. 追加症例ありがとうございました。自分は今までこのような症例は胆嚢周囲の液体貯留と考えていたのですが漿膜下組織の肥厚(浮腫性変化)だったのですね。
    2点質問させてください。
    ・造影効果を伴っている層が粘膜層、周囲の低吸収域が漿膜下として、固有筋層はどこに含まれるのでしょうか?
    ・胆嚢周囲に液体貯留が出現した場合には、漿膜下とどのような違いとして見えるのでしょうか?

    1. アウトプットありがとうございます。

      >造影効果を伴っている層が粘膜層、周囲の低吸収域が漿膜下として、固有筋層はどこに含まれるのでしょうか?

      これは厳密にはCTでは区別できないのでわかりませんが、造影されている壁肥厚側に認めているのだと思います。

      関連する重要なこととして、胆嚢は、粘膜筋板や粘膜下層を持たないため、癌が漿膜側に進展しやすいという特徴がありますね。

      >胆嚢周囲に液体貯留が出現した場合には、漿膜下とどのような違いとして見えるのでしょうか?

      これも厳密には区別できないことが多く、今回も浮腫を起こした壁の周りに脂肪織濃度上昇や液貯留もわずかにあるのかもしれません。
      ただし、胆嚢周囲の液貯留は胆嚢の周りに認めるとは言え、胆嚢の形とは無関係に存在しますので、胆嚢壁沿いだけでないところにも存在します。

  9. いつも有り難うございます。
    心不全での漿膜下浮腫と、胆嚢炎で起こる漿膜下層の浮腫は、見分けるコツなどはありますでしょうか?
    肥厚する部分はおおよそ同じでしょうか。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >心不全での漿膜下浮腫と、胆嚢炎で起こる漿膜下層の浮腫は、見分けるコツなどはありますでしょうか?肥厚する部分はおおよそ同じでしょうか。

      胆嚢炎で漿膜下層の肥厚はしばしば見られるわけではありませんが、おおよそ肥厚する場所は同じです。

      心不全の場合は、右心系の拡張、下大静脈の拡張、胸腹水などを伴うことがありますのでそれらも参考にします。

  10. 追加症例ありがとうございました。講座受講前は全く知らなかった動脈相での区域性濃染について指摘でき、成長を感じています。

    そこで質問ですが、今までの症例も踏まえて、肝胆膵系を疑うときは平衡相のほか、上腹部だけでも動脈相を撮影すべきか思ったのですがどうでしょう?
    毎度同じようなことを聞いて申し訳ありません。
    (当院では当直中造影するとき、およそ技師の判断で単純や動脈相を追加しています。被曝を増やすこと・注入速度を上げること・救外診療であることを鑑み、判断に迷います。あとあまり余計な画像を撮っていると後日先輩に怒られます(;^ω^) )

    1. アウトプットありがとうございます。

      >そこで質問ですが、今までの症例も踏まえて、肝胆膵系を疑うときは平衡相のほか、上腹部だけでも動脈相を撮影すべきか思ったのですがどうでしょう?
      >当院では当直中造影するとき、およそ技師の判断で単純や動脈相を追加しています。

      これは難しいですね(^_^;)
      施設などにもよると思います。

      CTの場合は被曝の問題があるので、「追加しておきました」というのがMRIとは異なる部分がありますね。

      >あとあまり余計な画像を撮っていると後日先輩に怒られます(;^ω^)

      ならば、あまり追加しない方がいいような気もします。

      個人的には造影のみでなく単純も欲しいと思うことがしばしばありますが・・・。