先に結論:敗血症性肺塞栓症とは

  • 体のどこかの感染巣(感染性心内膜炎・カテーテル感染・化膿性の血栓性静脈炎・歯の感染など)から、細菌を含んだ血栓が血流に乗って肺に飛び、多発する感染巣をつくる病気です。発熱・せき・胸痛・息苦しさが出ます
  • CTでは両肺の末梢(胸膜の近く)に多発する結節やくさび形の影が典型で、短期間に増えたり、空洞になったりするのが特徴です。結節に血管が入り込むfeeding vessel signや、周りのすりガラス影(halo sign)を伴うこともあります
  • septic emboli(セプティックエンボリ)・septic embolismは同じ病態を指す英語です。治療は抗菌薬の点滴と感染源の処置が中心です
  • 若い人で扁桃炎・咽頭炎のあとに起こり、首の内頸静脈に血栓性静脈炎を伴うものをレミエール(Lemierre)症候群と呼びます。感染源の検索(心エコー・血液培養)と抗菌薬治療が重要です

敗血症性肺塞栓症(septic pulmonary embolization:SPE、SE)とは?

  • 感染性心内膜炎や敗血症により細菌などが血行性に散布され、肺に病原体を含む血栓を生じる。
  • 右心系や静脈側の感染では塞栓は肺に、左心系の感染性心内膜炎では脳・脾臓・腎臓など全身に飛ぶ(全身性の敗血症性塞栓症)。
  • 原因は感染性心内膜炎、静脈血栓症(深在性血栓性静脈炎)、静脈留置カテーテル、歯科治療など。化膿性肝膿瘍も感染源となる。台湾で肝膿瘍に敗血症性肺塞栓症を合併した9例では、全例からKlebsiella pneumoniaeが検出され、7例が糖尿病を有し、CTでは全例に一部空洞を伴う両肺の結節を認めた。
  • Lemierre 症候群はSEの主な発生源の1つで1936年にはじめて発表され、転移性感染を伴った内頚静脈の嫌気性静脈炎と記載されている。
  • Lemierre症候群では胸膜・肺病変が最も多い転移性病変で、肺膿瘍、胸水、膿胸、気胸を伴ったSEを引き起こす。
  • 結節は胸膜と接し、サイズは直径0.5~3.5cm程度で、辺縁は不明瞭で、経過中に空洞を伴うことが多い。短期間でこのような病変が多発、増大した場合は疑う。
  • 抜歯後であるとか、心臓疾患を合併してないかなどが鑑別のポイントとなる。

敗血症性肺塞栓症の画像所見

▶CT所見:

  • 両側びまん性の結節影や実質の浸潤影(83%)である。
  • 胸膜に接する末梢の楔形陰影(50%)。
  • 周囲に出血を反映したすりガラス影(halo sign)を伴う。
  • 早期に空洞化する。空洞はKuhlmanらの報告では50%にみられる。
  • 空洞の壁は厚く、辺縁は不整。
  • 多くの症例で上葉が侵されるとしているが、上葉と同様に下葉を侵すという報告もある。「栄養血管(feeding vessel sign)」(末梢の病変に導かれている血管)が特徴的な所見であるとされているが、これについては議論の分かれるところ。MDCTの多断面再構成で検討した報告では、結節に入り込むように見える血管の多くは実際には結節の周囲を通過しており、中心に入る血管は肺静脈の枝でした。(Dodd JD, et al. AJR 2006;187:623-629)

症状・CT所見はどのくらいの頻度で見られる?

成人の報告168例をまとめた系統的レビューでは、次のような結果でした(Ye 2014)。

項目 内訳(168例中の例数)
主な危険因子 静注薬物の使用44例、血管内留置カテーテル21例、皮膚・軟部組織の化膿性感染10例
症状 発熱144例、胸痛82例、呼吸困難81例、咳69例
胸部CT 両肺末梢の多発結節89例、空洞75例、限局性・くさび形の浸潤影48例、胸水40例
検査 心エコーで疣贅52例、血液培養は黄色ブドウ球菌(MSSA 48例・MRSA 27例)が多い
転帰 治癒101例、死亡17例

関連記事)【胸部CT】多発肺結節・腫瘤影の鑑別診断は? 

症例 60歳代男性 発熱・呼吸困難

septic embolization CT findings

右上下葉末梢に結節影を2箇所認めています。

上葉のものは空洞形成あり。

敗血症性肺塞栓症と診断され、加療されました。

動画で学ぶ敗血症性塞栓症

▶キー画像
septicemboli1

septicemboli2

septicemboli3

septicemboli4

敗血症性肺塞栓症の治療

  • 治療の中心は原因菌に合わせた抗菌薬の点滴治療と感染源のコントロール(カテーテルの抜去、膿瘍のドレナージ、必要な場合の心臓手術)である。
  • 韓国の21例では、全例に点滴の抗菌薬治療が行われ18例が回復した(Lee 2007)。

Lemierre症候群

  • 健常若年成人が急性扁桃炎、扁桃膿瘍あるいは扁桃周囲膿瘍発症後数日で急激に増悪し、頚静脈の化膿性血栓性静脈炎から、敗血症、多発性転移性感染(肺胸膜、肝、腎、関節)を呈する病態。
  • 本症候群の病原体は嫌気性菌でFusobacterium necrophorumが最多である。
  • 若年者で咽頭痛や開口障害が先行し、激しい炎症所見を認め、播種性血管内凝固(DIC)、敗血症、敗血症性肺塞栓などの多彩な臨床経過をたどる。

関連:Lemierre’s syndrome(レミエル症候群)とは?画像診断のポイントは?

敗血症性肺塞栓症でよくある疑問(Q&A)

Q. 普通の肺塞栓症(血栓による肺塞栓)と何が違いますか?
A. 普通の肺塞栓症は血栓が肺動脈に詰まる病気で、造影CTでは肺動脈の中の血栓(造影欠損)が主な所見です。敗血症性肺塞栓症は細菌を含む小さな塞栓が肺の末梢に飛ぶため、両肺末梢の多発結節や空洞が目立ちます。

参考:
画像診断 Vol.31 No.1,2011 P28
画像診断 Vol.38 No.8,2018 P810

参考文献

  1. Kuhlman JE, Fishman EK, Teigen C. Pulmonary septic emboli: diagnosis with CT. Radiology. 1990;174(1):211-213. PubMed
  2. Dodd JD, Souza CA, Müller NL. High-resolution MDCT of pulmonary septic embolism: evaluation of the feeding vessel sign. AJR Am J Roentgenol. 2006;187(3):623-629. PubMed
  3. Riordan T. Human infection with Fusobacterium necrophorum (Necrobacillosis), with a focus on Lemierre’s syndrome. Clin Microbiol Rev. 2007;20(4):622-659. PubMed
  4. Han D, Lee KS, Franquet T, et al. Thrombotic and nonthrombotic pulmonary arterial embolism: spectrum of imaging findings. Radiographics. 2003;23(6):1521-39. PubMed
  5. Yang PW, Lin HD, Wang LM. Pyogenic liver abscess associated with septic pulmonary embolism. J Chin Med Assoc. 2008;71(9):442-7. PubMed
  6. Ye R, Zhao L, Wang C, et al. Clinical characteristics of septic pulmonary embolism in adults: a systematic review. Respir Med. 2014;108(1):1-8. PubMed
  7. Lee SJ, Cha SI, Kim CH, et al. Septic pulmonary embolism in Korea: Microbiology, clinicoradiologic features, and treatment outcome. J Infect. 2007;54(3):230-4. PubMed

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