
神経障害性関節症(Charcot関節・シャルコー関節)とは、痛みや位置の感覚が弱くなった関節に、骨折・脱臼・骨の破壊が進んでいく病気です。腫れて熱いのに痛みが少ない糖尿病の足を、蜂窩織炎や骨髄炎と迷ったことはありませんか。研修医のハジメくんと一緒に、X線の「5D」、萎縮型と増殖型、MRIで骨髄炎と分ける考え方を整理します。
先に結論
- Charcot関節とは、感覚の神経障害を土台に骨と関節の破壊・脱臼・骨片が進む病気。足は糖尿病、肩は脊髄空洞症が代表的な原因。
- X線は最初の検査だが、初期は正常のことがある。進むと破壊・脱臼・骨片・骨硬化・関節の崩れ(5D)が出る。早い変化はMRIでとらえる。
- 骨髄炎との区別は場所・分布・潰瘍とのつながり。潰瘍に接する骨(前足部に多い)なら骨髄炎、潰瘍と離れた中足部の関節周囲・多関節ならCharcot関節を考える。両方が重なることもある。
目的から読む: Charcot関節とは / 原因(糖尿病・脊髄空洞症) / X線所見(5D) / 萎縮型・増殖型 / MRI所見 / 骨髄炎との違い / 感染の合併
神経障害性関節症(Charcot関節)とは? 痛みの少ない関節の破壊
神経障害性関節症は、関節の痛みや位置の感覚が弱くなった状態で、骨と関節が少しずつ壊れていく病気です。壊れ方の割に痛みが少ないのが特徴です。
痛みを感じにくい関節が壊れていく
梅毒(脊髄癆)の患者の関節の変化を報告したCharcotの名前から、シャルコー関節とも呼ばれます。
米国糖尿病学会と米国足病医学会が2011年に招集した国際的な作業部会は、糖尿病のCharcot足を炎症性の症候群と位置づけ、神経障害・外傷・骨代謝の乱れを背景に、骨と関節がさまざまな程度にくずれる病気としています(Rogers 2011)。神経障害のない例は報告されておらず、痛みを感じにくくする末梢の感覚神経障害が発症に欠かせない土台です。
同じ声明では、炎症が続いている時期を「活動期(active)」、落ち着いた時期を「非活動期(inactive)」と呼ぶことをすすめています。足は強く腫れて熱をもち、左右の足の皮膚温に数度の差があることが多いとされます(Rogers 2011)。活動期の免荷(足に体重をかけないこと)が、変形への進行を止めうるいちばん大事な治療とされており(Rogers 2011)、早い時期に見つけることが画像検査の大きな役割です。
Charcot関節の原因: 糖尿病の足と脊髄空洞症の肩
足のCharcot関節は糖尿病の末梢神経障害、上肢(肩・肘・手)のCharcot関節は脊髄空洞症が代表的な原因です。どの関節が壊れているかで、探す神経の病気が変わります。
| 原因 | よく起こる場所 |
|---|---|
| 糖尿病の末梢神経障害 | 足(中足部のリスフラン関節・ショパール関節など)・足関節 |
| 脊髄空洞症 | 肩・肘・手など上肢。上肢のCharcot関節の大半を占める(Rickert 2019) |
| 梅毒(脊髄癆) | 膝・股関節・脊椎など |
| その他 | 慢性のアルコール多飲、ハンセン病など(Rickert 2019) |
糖尿病の足:中足部が崩れる
糖尿病のCharcot足では中足部の関節が壊れやすく、進むと足の裏が舟の底のように丸く出っ張る「ロッカーボトム変形」になります。中足部の崩れはCharcot足の代表的な変形で、この変形の足底には潰瘍ができることがあります(Rogers 2011)。中足部のリスフラン関節の骨折・脱臼の画像はリスフラン関節脱臼骨折とは?で解説しています。
脊髄空洞症の肩
肩のCharcot関節は、上肢のCharcot関節の中でもまれです。1924〜2016年の症例報告32本・56人59肩をまとめた系統的レビューでは、平均年齢は49±11歳で、男性が63%でした(Rickert 2019)。症状は可動域の低下90%、しびれや感覚低下76%、腫れ75%、筋力低下68%、痛み53%、腱反射の低下37%で、76%の肩でMRI・脊髄造影・臨床診断により脊髄空洞が見つかっています。
キアリ奇形に伴う脊髄空洞症についてはキアリ奇形(Ⅰ型)とは?で解説しています。空洞が脊髄のどの通り道を傷めると痛みや温度の感覚が落ちるのかは、脊髄伝導路の解剖で脊髄視床路・後索の位置と合わせて確かめられます。
Charcot関節のX線所見: 初期は正常、進むと「5D」
X線は最初に撮る画像検査ですが、初期は正常のことがあり、変化は遅れて現れます。進むと、破壊・脱臼・骨片・骨硬化・関節の崩れの「5D」がそろってきます。
初期は正常のことがある
作業部会の声明では、X線は正常のこともあれば、わずかな骨折や脱臼だけが見えることもあり、のちに明らかな骨折と亜脱臼が現れるとされます(Rogers 2011)。進んだ時期には踵骨の傾斜角が小さくなり、距骨と第1中足骨の軸の線が折れ曲がります。動脈の中膜の石灰化もCharcot足の多くにみられます。X線の変化は遅れて現れ、感度は低いとされます(Konarzewska 2018、Rogers 2011)。
X線の「5D」を文献の所見で確かめる
| 覚え方(5D) | 意味 | 文献にある所見 |
|---|---|---|
| Destruction(破壊) | 関節面と骨の破壊 | 骨の破壊(Konarzewska 2018)、破壊性の関節症・骨頭の圧潰(Haj Shehadeh 2026) |
| Dislocation(脱臼) | 亜脱臼・脱臼 | 亜脱臼と脱臼(Konarzewska 2018)、足根中足関節の脱臼(Rogers 2011) |
| Debris(骨片) | 骨折による骨のかけら | 病的骨折による骨片(Konarzewska 2018)、骨の断片化と骨片(Haj Shehadeh 2026) |
| Density(骨硬化) | 骨の濃度の上昇 | 後期の骨硬化(Konarzewska 2018)、硬化(Haj Shehadeh 2026) |
| Disorganization(関節の崩れ) | 関節の形の崩れ | 骨と関節の崩れ(Rogers 2011)、進むと「骨の袋」のような変形(Konarzewska 2018) |
このほか、関節裂隙の狭小化、骨膜反応、巨大な骨棘、骨性の強直(Konarzewska 2018)、異所性骨化や関節周囲の軟部組織の腫れ(Haj Shehadeh 2026)も挙げられています。腫れや関節液の貯留を「Distension(関節の膨張)」としてDに加える覚え方もあります。
萎縮型と増殖型: 骨が消えるか、骨が増えるか
Charcot関節のX線像は、骨が溶けるように吸収されて消えていく「萎縮型」と、骨硬化・骨棘・骨片が目立つ「増殖型」に分けて説明されます。肩では萎縮型が典型とされます(Haj Shehadeh 2026)。
肩のCharcot関節については、萎縮型と増殖型のどちらも見られるものの、強い骨の吸収と関節の崩壊という萎縮型の反応が典型とされます(Haj Shehadeh 2026)。肩では上腕骨頭の圧潰・断片化と関節周囲の骨の吸収が急速に進むことがあります。
| 型 | X線の特徴 | 区別が必要な病気 |
|---|---|---|
| 萎縮型 | 骨端が削り取られたように消える。骨片は少ない。肩で典型(Haj Shehadeh 2026) | 化膿性関節炎、骨溶解をきたす病気、骨腫瘍(Haj Shehadeh 2026) |
| 増殖型 | 骨硬化・巨大な骨棘・多数の骨片・関節の崩れ | 進んだ変形性関節症、結晶沈着による関節症(ミルウォーキー肩など)(Haj Shehadeh 2026) |
変形性関節症・関節リウマチ・痛風などのX線の見分け方は、関節炎のレントゲンの見方(ABCDS)で、分布と骨の変化から整理できます。
実例: 脊髄空洞症による手と肩の神経障害性関節症
引用元の図 脊髄空洞症による手と肩の神経障害性関節症

引用:Dharmshaktu GS. Syringomyelia presenting as neuropathic arthropathy of basal and shoulder joints. Eur J Rheumatol. 2021 (Figure 2)。PMC10176231(CC BY-NC 4.0)
45歳男性。
- a 手のX線:母指の付け根(第1手根中手関節)に関節症と変形があります(矢印)。
- b 肩関節のX線:肩甲上腕関節の骨の形が崩れ、関節裂隙が狭く、広い範囲に骨棘があります(星印)。
- 肩鎖関節:強い骨の吸収で、ほとんど見えなくなっています(Dharmshaktu 2021 Figure 2)。
引用元の図 同じ患者の頸髄MRI(脊髄空洞)

引用:Dharmshaktu GS. Syringomyelia presenting as neuropathic arthropathy of basal and shoulder joints. Eur J Rheumatol. 2021 (Figure 3)。PMC10176231(CC BY-NC 4.0)
- a T1強調像・b T2強調像(矢状断):頸髄から上部胸髄に脊髄空洞があります(星印)。
- 頭蓋頸椎移行部:環軸椎の脱臼と、大後頭孔より下への小脳扁桃の下垂(矢印)もあります(Dharmshaktu 2021 Figure 3)。
Charcot関節のMRI所見: X線に写る前の変化を見る
MRIは、X線がまだ正常な活動期の初期に、わずかな変化をとらえることができます(Rogers 2011)。合併症のある糖尿病の足では、骨髄炎との区別にも使う中心の検査です。
X線で写る前の変化を見る
X線ではっきりCharcot関節と分かる場合には、MRIは診断に必須ではありませんが、発症のごく早い時期の診断には役立ちます。MRIは骨髄炎に対する感度・特異度が高く、合併症のある糖尿病の足を調べる中心の検査になっています(Rogers 2011)。
糖尿病の足で骨髄に信号の変化があるとき、MRIで区別したいのは主に3つです。骨髄炎か反応性の骨髄浮腫か、Charcot関節か骨髄炎か、そしてCharcot関節に感染が重なっていないかです(Toledano 2011)。骨髄炎と反応性の骨髄浮腫はどちらもT2強調像で高信号ですが、骨髄炎はT1強調像で骨髄が低信号になり、反応性浮腫はT2高信号だけにとどまります(Toledano 2011)。骨髄炎のMRIの基本は骨髄炎のMRI画像診断で解説しています。
Charcot関節と骨髄炎の違い: 部位・分布・潰瘍とのつながり
潰瘍に接する前足部の限局した病変は骨髄炎、潰瘍と離れた中足部の軟骨下・関節周囲・多関節の病変はCharcot関節を支持します(Toledano 2011)。骨髄炎は前足部に限らず、踵骨や果部など潰瘍に接する骨に起こります。中足部でも、ロッカーボトム変形の足底潰瘍や瘻孔が骨へ続いていれば、Charcot関節に感染が重なっていないかを疑います。
| 比べる点 | 骨髄炎を支持 | Charcot関節を支持 |
|---|---|---|
| 部位 | 潰瘍に接する骨(趾・中足骨頭・踵骨・果部など)。中足部でも潰瘍・瘻孔が骨へ続けば感染の合併を疑う | 中足部(リスフラン関節・ショパール関節あたり) |
| 分布 | 1か所に限局するか、つながって広がる。軟骨下の面から離れた骨髄 | 軟骨下・関節周囲が中心。複数の関節にまたがる |
| 皮膚とのつながり | 皮膚潰瘍・蜂窩織炎・膿瘍・瘻孔に接する | 連続する皮膚の破綻がない |
| T1強調像 | 骨髄の低信号(反応性浮腫はT2高信号だけ) | 急性期は骨髄炎に似ることがある(Marcus 1996) |
表は主にToledano 2011の要点をまとめたものです。
急性期のCharcot関節は骨髄炎に似る
糖尿病の患者26人のMRIを調べた研究では、骨髄炎の13人全員に骨髄の信号の異常があり、12人でT1強調像の低信号とT2強調像の高信号がありました(Marcus 1996)。
- 慢性期のCharcot関節(7人):どの撮像法でも骨髄の信号が低いという特徴があり、骨髄炎と区別しやすい結果でした。
- 急性に進行中のCharcot関節(2人):骨髄の信号変化が骨髄炎に似ており、診断の落とし穴になります。
Charcot関節に感染が重なったとき: 疑う所見と核医学検査
Charcot関節に感染が重なると、診断はさらに難しくなります。骨髄のびまん性の信号異常、関節面の下の造影効果が進んでいくこと、軟骨下の嚢胞が消えること、ghost sign が手がかりです(Toledano 2011)。
| 感染の合併を疑う所見(Toledano 2011) |
|---|
| 骨髄のびまん性の信号異常 |
| 関節面の下の造影効果が進んでいく |
| 軟骨下の嚢胞が消える |
| ghost sign |
核医学検査
99mTcによる3相骨シンチグラフィは活動性の骨病変に感度が高い一方、Charcot関節に特異的ではありません(Rogers 2011)。標識白血球シンチグラフィ(111Inまたは99mTc)は、神経障害性の骨変化がある中で感染に対する特異度を高めますが、軟部組織と骨の区別が難しいことがあり、骨シンチや骨髄シンチと組み合わせることがあります。MRIで判断がつかないときに標識白血球シンチグラフィを追加する流れが示されています(Rogers 2011)。検査の仕組みは白血球シンチ(標識白血球シンチグラフィ)とはで解説しています。
根拠(もう少し詳しく): 要点と出典
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 土台になる病気 | 足は糖尿病の末梢神経障害。神経障害のないCharcot足の報告はない(Rogers 2011)。上肢は脊髄空洞症が大半(Rickert 2019) |
| X線 | 骨の破壊・亜脱臼や脱臼・骨折による骨片・骨硬化・巨大な骨棘など。初期は正常のことがあり感度は低い(Konarzewska 2018、Rogers 2011) |
| 萎縮型・増殖型 | 骨の吸収が目立つ萎縮型と、硬化・骨棘が目立つ増殖型がある。肩では萎縮型が典型(Haj Shehadeh 2026) |
| MRIで骨髄炎と区別 | 潰瘍に接する前足部の限局した病変は骨髄炎、潰瘍と離れた中足部の軟骨下・関節周囲・多関節の病変はCharcot関節を支持(Toledano 2011) |
よくある勘違い
Q. レントゲンで異常がなければ、Charcot関節は否定できる?
いいえ。初期にはX線が正常のことがあり、変化は遅れて現れます(Rogers 2011)。腫れや熱感が続くときは、MRIで早期の変化を見ます。
Q. T1強調像で骨髄が低信号なら、骨髄炎と決めてよい?
決められません。急性に進んでいるCharcot関節は骨髄炎に似た信号になります(Marcus 1996)。場所・分布・潰瘍とのつながりを合わせて見ます(Toledano 2011)。
Q. 肩のCharcot関節は、肩の画像だけ見れば十分?
いいえ。上肢のCharcot関節の原因の大半は脊髄空洞症です(Rickert 2019)。頸髄のMRIで空洞を探すことが、診断と治療方針につながります。
今日のまとめ
- 腫れて熱いのに痛みが少ない関節は、感覚の神経障害とCharcot関節を考える。足なら糖尿病、肩なら頸髄の空洞を探す。
- X線は初期は正常のことがある。進むと5D(破壊・脱臼・骨片・骨硬化・関節の崩れ)、肩は萎縮型が典型。
- 骨髄炎との区別は信号より先に場所・分布・潰瘍とのつながり。急性期のCharcot関節と感染の合併は迷いやすい。
参考文献
- Rogers LC, Frykberg RG, Armstrong DG, et al. The Charcot foot in diabetes. Diabetes Care. 2011;34(9):2123-9. PubMed
- Konarzewska A, Korzon-Burakowska A, Rzepecka-Wejs L, et al. Diabetic foot syndrome: Charcot arthropathy or osteomyelitis? Part I: Clinical picture and radiography. J Ultrason. 2018;18(72):42-49. PubMed
- Toledano TR, Fatone EA, Weis A, et al. MRI evaluation of bone marrow changes in the diabetic foot: a practical approach. Semin Musculoskelet Radiol. 2011;15(3):257-68. PubMed
- Marcus CD, Ladam-Marcus VJ, Leone J, et al. MR imaging of osteomyelitis and neuropathic osteoarthropathy in the feet of diabetics. Radiographics. 1996;16(6):1337-48. PubMed
- Rickert MM, Cannon JG, Kirkpatrick JS. Neuropathic Arthropathy of the Shoulder: A Systematic Review of Classifications and Treatments. JBJS Rev. 2019;7(10):e1. PubMed
- Haj Shehadeh T, Lohre R, Elhassan B. Evaluation and management of neuropathic arthropathy of the shoulder: narrative review. JSES Rev Rep Tech. 2026;6(4):100869. PubMed
- Dharmshaktu GS. Syringomyelia presenting as neuropathic arthropathy of basal and shoulder joints. Eur J Rheumatol. 2021;8(4):235-236. PubMed
症例画像は各図の引用元のとおりです。
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