CAPNON 神経軸の石灰化偽腫瘍のCT・MRI

頭痛で撮ったCTで、後頭蓋窩の脳の外側に強く石灰化した腫瘤がありました。MRIではT1強調像・T2強調像ともに低信号で、造影は不均一です。石灰化した髄膜腫と思っていたら、手術の病理は「CAPNON」でした。どんな病変で、画像で疑うことはできるのでしょうか?
CAPNON(calcifying pseudoneoplasm of the neuraxis:神経軸の石灰化偽腫瘍)は、脳や脊髄のどこにでもできる、腫瘍ではない石灰化の塊です。CTで強い石灰化、MRIでT1・T2ともに低信号という見え方がよく報告されますが、特異的ではなく、手術前には髄膜腫や海綿状血管腫、低悪性度の神経膠腫と考えられていることが多い病変です。報告の数字と、鑑別に入れるための見方を整理します。

先に結論:CAPNONは中枢神経系のどこにでもできる非腫瘍性の石灰化病変。CTで粗い石灰化、MRIでT1・T2低信号、造影はさまざま。術前には髄膜腫と考えられることが多く、診断は病理で行う。切除後の経過はおおむね良好

項目 ポイント
どこにできるか 頭蓋内と脊椎の両方。頭蓋内77例では脳内57.1%・テント上61.0%(Riviere-Cazaux 2023)。脊椎は腰椎51.9%、硬膜外が多い(Chatrath 2024)
画像の典型 CTで目立つ石灰化、MRIでT1・T2ともに均一な低信号、造影はさまざま、周囲の浮腫は通常目立たない(Safaee 2018)
術前の診断 髄膜腫30%、海綿状血管腫20%、低悪性度星細胞腫20%と考えられていた(Riviere-Cazaux 2023)
経過 全摘した5例は再発なし(中央値6.8年)。残った5例のうち4例は増大なし(Riviere-Cazaux 2023)

CAPNONとは

CAPNONは、1978年にRhodesとDavisが初めて病理学的に記載した、中枢神経系にできる良性の石灰化病変です(Chatrath 2024)。組織では、軟骨粘液様の線維状の基質、その周りに柵状に並ぶ紡錘形・類上皮様の細胞、線維性の間質があり、石灰化や骨化を伴います(Greco 2022、Riviere-Cazaux 2023)。名前に「偽腫瘍(pseudoneoplasm)」とあるとおり、腫瘍ではなく反応性の増殖と考えられています。成り立ちはまだはっきりしませんが、ニューロフィラメント軽鎖の蓄積と免疫細胞の浸潤がかかわる反応性・免疫介在性の過程を支持する所見が報告されています(Yang 2021)。

非常にまれで、2013年の文献のまとめでは、1978年以来の報告は39例にとどまっていました(Stienen 2013)。その後報告は増え、2023年の文献レビューでは頭蓋内だけで77例(Riviere-Cazaux 2023)、2024年のレビューでは脊椎の79例が集められています(Chatrath 2024)。画像所見が特異的でなく、ほかの病気に紛れて見過ごされるため、実際の頻度は報告より多い可能性があると指摘されています(Yang 2021)。

どこに、どんな人にできるか

年齢・性別・頭蓋内の部位に偏りはないとされ(Greco 2022)、幅広い年齢で報告されています。

報告 対象 主な数字
Riviere-Cazaux 2023(自施設) 頭蓋内10例 女性60%、年齢中央値44歳(8〜67歳)。頭痛60%、けいれん50%。テント上70%、テント下の3例はすべて脳の外。大きさ2.8cm(1.2〜6.7cm)
Riviere-Cazaux 2023(文献) 頭蓋内77例 女性45.5%、年齢中央値48歳(6〜72歳)。頭痛33.8%、けいれん29.9%、偶然の発見9.1%。脳内57.1%、脳室内3.9%。テント上61.0%(側頭葉25.5%、前頭葉23.4%)
Chatrath 2024(文献) 脊椎79例 1〜90歳、70.1%が49歳より上。女性55.7%。腰椎51.9%、頸椎20.2%、胸椎21.5%。硬膜内は80例中9例のみ。平均18.68mm

症状は場所によって決まり、頭蓋内ではけいれんや頭痛、頭蓋底では脳神経の症状、脊椎では痛みが多くみられます(Riviere-Cazaux 2023、Chatrath 2024)。後床突起から動眼神経を圧迫した38歳男性の報告もあります(Huang 2020)。

CT・MRIの所見

画像の特徴は、CTで目立つ石灰化、MRIでT1強調像・T2強調像ともにほぼ均一な低信号、造影効果はさまざま、そして周りの浮腫が目立たないことです(Safaee 2018)。石灰化は粗く不定形で、わずかなものから病変全体に及ぶものまであります(Riviere-Cazaux 2023)。脊椎の79例のまとめでも、T1・T2とも低信号の例が等信号・高信号より有意に多く、境界は明瞭でした(Chatrath 2024)。

  • CT:粗い石灰化を含む腫瘤。骨条件で骨とのつながりや骨の変化を確かめる
  • T1・T2強調像:石灰化を反映して低信号。辺縁に低信号の縁取りが見えることもある
  • T2*強調像・SWI:石灰化による信号の欠損(ブルーミング)
  • 造影:なし〜辺縁・不均一な造影までさまざま

浮腫が目立たないのが原則ですが、例外もあります。8歳男児の右前頭葉の2.5cmの病変は、T2強調像で低信号、造影は不均一で、周りに広い浮腫を伴っていたため、慢性感染症や腫瘍が疑われました(Safaee 2018)。後頭蓋窩の53歳女性の例でも、延髄に浮腫を伴っていました(Dallimore 2022)。浮腫があることでCAPNONを外すことはできません。

症例 50歳代女性 後頭蓋窩のCAPNON

後頭蓋窩のCAPNON T1・T2低信号でGREでブルーミング、CTで石灰化した脳外の腫瘤
引用:Dallimore CA, Quelle M, Désir LL, et al. Calcifying Pseudoneoplasm of the Neuraxis in the Posterior Fossa: A Case Report and Literature Review. Cureus 2022;14(1):e21562(Figure 1)(CC BY 3.0)

右の小脳延髄槽の外側を中心とする脳の外の腫瘤で、T2強調像(A)・T1強調像(B)では主に低信号です。延髄にはT2高信号の浮腫があります(矢印、A)。GRE(C)では石灰化によるブルーミングがあり、造影T1強調像(D、E)では不均一に造影されます。単純CT(F)では主に石灰化した腫瘤として見えます。

髄膜腫などとの区別

CAPNONは画像で独自の特徴をもつものの、髄膜腫・脊索腫・神経膠腫などの腫瘍と誤って診断されやすい病変です(Greco 2022)。頭蓋内の自施設10例では、術前の第一の鑑別は髄膜腫30%、海綿状血管腫20%、低悪性度星細胞腫20%で、CAPNONが最も考えられていた例はまれでした(Riviere-Cazaux 2023)。脊椎でも髄膜腫・転移・血腫・血管奇形・神経嚢虫症などと誤診されることがあります(Chatrath 2024)。

鑑別 CAPNONとの違いの手がかり
石灰化した髄膜腫 硬膜に広く接し、石灰化していない部分は均一に強く造影されることが多い(髄膜腫のCT・MRI所見)。CAPNONは大部分が石灰化した塊で、造影は乏しいか不均一
海綿状血管腫 T2強調像で中心が混在した信号、周りにヘモジデリンの低信号の縁(海綿状血管腫のMRI)。CTで粗い石灰化が主体ならCAPNONも考える
石灰化した神経膠腫(乏突起膠腫など) 脳内で皮質を巻き込み、T2高信号の腫瘍部分が石灰化の外に広がる
頭蓋底の脊索腫・軟骨性腫瘍 T2強調像で高信号の基質が目立つ。CAPNONは石灰化が主体でT2低信号

手術中や病理でも紛らわしいことがあります。胸椎の硬膜内の例では、10年前の画像から少しずつ大きくなっていたため術前に髄膜腫と考えられ、術中の迅速診断も「高度に石灰化した髄膜腫」でしたが、最終診断はCAPNONでした(Chatrath 2024)。動眼神経の例では、病変の辺縁にEMA陽性の髄膜皮細胞がみられています(Huang 2020)。また、髄膜腫・多形黄色星細胞腫・胚芽異形成性神経上皮腫瘍とCAPNONが同じ場所に併存した例もあり(Riviere-Cazaux 2023)、石灰化の外に腫瘍らしい成分があるときは別の病変の併存も考えます。髄膜腫に似た硬膜の病変の全体像は髄膜腫様病変(硬膜病変)の鑑別診断にまとめています。

症例 30歳代男性 後床突起のCAPNON

後床突起のCAPNON CT骨条件の不定形石灰化とSWI・T2強調像の低信号
引用:Huang J, Ghent F, Rodriguez M, et al. Calcifying pseudoneoplasm of the neuraxis: A rare case involving the oculomotor nerve. Surg Neurol Int 2020;11:249(Figure 1)(CC BY-NC-SA 4.0)

CTの骨条件(a)で右後床突起に不定形の石灰化があり、SWI(b)では病変の中が低信号です。T2強調像(c)でも病変は低信号で、動眼神経が後ろから入っていく様子が見えます。

治療と経過

治療は症状が中心で、主に場所と圧迫の程度で決まります。最大限の切除で経過は良好で、再発はまれとされ、けいれんで見つかった例では特にそうだとされています(Yang 2021)。2013年のまとめでは、全例が手術を受け、CAPNONが直接の原因の死亡はなく、全摘と部分切除で再発に有意差はありませんでした(Stienen 2013)。

頭蓋内の自施設10例では、手術後に新たな恒久的な神経脱落はなく、経過観察の中央値6.8年で全摘した5例に再発はなく、残った・切除できなかった5例のうち4例は画像で増大しませんでした。切除でけいれんは80%、頭痛は83.3%が改善した一方、頭痛や顔の痛みが残る例もありました(Riviere-Cazaux 2023)。症状のない小さな病変は画像で経過を見ることもあり、方針は主治医の判断によります。

よくある疑問(Q&A)

Q1. CAPNONは腫瘍ですか?

腫瘍ではない反応性の病変と考えられています。ニューロフィラメント軽鎖の蓄積と免疫細胞の浸潤が成り立ちにかかわるとする報告があります(Yang 2021)。ただ、大きくなって周りを圧迫すれば症状が出るため、治療が必要になることがあります。

Q2. 画像だけでCAPNONと診断できますか?

できません。CTの強い石灰化とMRIのT1・T2低信号は手がかりですが、特異的ではなく(Riviere-Cazaux 2023)、術前に髄膜腫などと考えられることが多い病変です。最終的な診断は病理で行います。

Q3. 周りに浮腫があればCAPNONは否定できますか?

否定できません。浮腫は通常目立たないとされますが、広い浮腫を伴った小児例や、延髄に浮腫を伴った後頭蓋窩の例が報告されています(Safaee 2018、Dallimore 2022)。

Q4. 手術後に再発しますか?

再発はまれです。全摘した例の長期の経過で再発がなかった報告があり(Riviere-Cazaux 2023)、全摘と部分切除で再発に差がなかったとするまとめもあります(Stienen 2013)。ただし部分切除のあと2か月で進行した例は、別の腫瘍が併存していました(Riviere-Cazaux 2023)。

参考文献

  1. Riviere-Cazaux C, Carlstrom LP, Eschbacher KL, et al. Calcifying Pseudoneoplasm of the Neuraxis: An Institutional Series of Ten Cases and Review of the Literature to Date. World Neurosurg. 2023;180:e653-e666. PubMed
  2. Chatrath A, Lemieux M, Patel RP, et al. Spinal calcifying pseudoneoplasms of the neuraxis: A case report and review of the literature. World Neurosurg X. 2024;23:100312. PubMed
  3. Stienen MN, Abdulazim A, Gautschi OP, et al. Calcifying pseudoneoplasms of the neuraxis (CAPNON): clinical features and therapeutic options. Acta Neurochir (Wien). 2013;155(1):9-17. PubMed
  4. Yang K, Reddy K, Chebib I, et al. Calcifying Pseudoneoplasm of the Neuraxis: From Pathogenesis to Diagnostic and Therapeutic Considerations. World Neurosurg. 2021;148:165-176. PubMed
  5. Safaee MM, Jonzzon S, López GY, et al. Perilesional edema associated with an intracranial calcifying pseudoneoplasm of the neuraxis in a child: case report and review of imaging features. J Neurosurg Pediatr. 2018;22(5):528-531. PubMed
  6. Greco E, Elmandouh O, Desai A, et al. Calcifying pseudoneoplasms of the neuraxis (CAPNON): The great tumor mimicker. Radiol Case Rep. 2022;17(9):3157-3161. PubMed
  7. Dallimore CA, Quelle M, Désir LL, et al. Calcifying Pseudoneoplasm of the Neuraxis in the Posterior Fossa: A Case Report and Literature Review. Cureus. 2022;14(1):e21562. PubMed
  8. Huang J, Ghent F, Rodriguez M, et al. Calcifying pseudoneoplasm of the neuraxis: A rare case involving the oculomotor nerve. Surg Neurol Int. 2020;11:249. PubMed

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