
先に結論:sinus pericranii は頭皮の静脈と頭蓋内の静脈洞の交通。治療の可否は、頭蓋内の静脈が血液を流す道として、その静脈にどれだけ頼っているか(dominant か accessory か)で決まる
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| どんな病気か | 頭蓋骨を貫く静脈を介して、頭皮の静脈と硬膜静脈洞がつながった静脈の異常。まれで、多くは正中部(頭の真ん中の線上)にできる |
| 見た目と症状 | 柔らかく拍動しないこぶ。圧迫で縮み、泣く・いきむ・頭を下げるなど静脈の圧が上がる状況で膨らむ。多くは痛みがなく、気になる見た目が受診のきっかけ |
| 画像 | 超音波、CTで骨の欠損(静脈の通り道)、MRI・MR静脈撮影(MRV)・CT静脈撮影(CTV)で交通と合併する静脈の異常を調べる |
| 治療判断の鍵 | 血管造影で静脈の流れを評価。頭蓋内の血液の多くを流している(dominant)なら治療しない。ほんの一部だけ(accessory)なら、塞栓などが可能 |
| 受診の目安 | 頭のこぶに気づいたら受診。急に大きくなる、赤み・痛み・出血、頭を打ったあと、嘔吐・けいれん・ぐったりを伴うときは急いで受診 |
sinus pericranii(頭蓋骨膜洞)とは
sinus pericranii(SP)は、頭蓋内の硬膜静脈洞と、頭皮の下(頭蓋骨の外側)の静脈とが、異常につながる稀な静脈の異常です(Pavanello 2015)。大きな交通があり、血液が両方向に流れうることが特徴です(Gandolfo 2007)。名前は、頭蓋骨の周り(pericranium)にある静脈の洞(sinus)という意味です。
頭蓋骨の外と内の静脈は、通常でも「導出静脈(emissary vein)」という細い静脈で、ごく小さくつながっています。SPでは、この静脈が太くなり、拡張した静脈のこぶとして皮膚の下に現れます。先天的なものと、外傷や手術のあとに生じる後天的なものがあります。先天性の原因として、胎児期の後半に一時的に静脈の圧が高くなったことや、骨膜と硬膜の間の静脈叢が、縫合が閉じるときに退縮しなかったことが推測されています(Paiva 2023)。
年齢と場所
古典的には、学童期の子どもに見つかる、拍動のない柔らかいこぶです(Paiva 2023)。65研究・82人の系統的レビューでは、年齢の中央値は8歳(4か月〜72歳)、男性が61%でした。誘因は多くの人で不明(67.1%)でしたが、頭蓋縫合早期癒合症が7.3%、最近の外傷が18.3%でした。部位は前頭部(37.8%)、頭頂部(32.9%)、後頭部(13.4%)の順でした(Azzazi 2026)。15人の検討でも、14人が正中部で、12人が前頭部でした(Gandolfo 2007)。
| 項目 | 報告されている内容 |
|---|---|
| 年齢 | 中央値8歳(4か月〜72歳)。学童期が古典的(Azzazi 2026、Paiva 2023) |
| 部位 | 正中部または傍正中部が大半。前頭部が最多(Pavanello 2015、Gandolfo 2007、Azzazi 2026) |
| 合併 | 頭蓋内の静脈の異常を伴うことが多い(15人中13人、うち8人が発達性静脈奇形)(Gandolfo 2007)。頭蓋縫合早期癒合症との合併も(Azzazi 2026) |
| 治療の指針 | 確立した管理指針はない(Pavanello 2015、Azzazi 2026) |
どんなこぶか:泣くと膨らむ、押すとへこむ
SPは、柔らかく拍動のないこぶとして気づかれます。圧迫するとへこみ、静脈の圧が上がる状況(泣く・いきむ・頭を下げる・横になる)で大きくなります(Paiva 2023)。超音波でも、大きさや形が変わる例が報告されています(Kim 2011)。多くは無症状で、見た目が受診の理由になります。症状がある場合は、頭痛、頭が重い感じ、めまい、局所の痛みなどです(Paiva 2023)。
SPは、他の頭皮の病変と間違えられることがあります。頭皮の動静脈奇形とも、臨床像が重なります(Azzazi 2026)。
画像診断:どの検査で何が分かるか
子どもの表在性のこぶの最初の検査として、超音波が広く用いられます。放射線を使わず、造影剤や鎮静も不要で、場所・大きさ・内容・血流が分かります。血流の多い病変を疑うときは、断層撮影を追加します(Bansal 2018)。
| 検査 | 分かること | 注意点 |
|---|---|---|
| 超音波(ドプラ) | 頭皮の下の、形の不整な無エコーの静脈の腔。頭蓋骨の欠損を通る頭蓋内との交通。双方向性の乱れた血流(Kim 2011) | 頭蓋内の静脈の状態は分からない |
| CT | 静脈が通る頭蓋骨の欠損(骨の穴)。縫合早期癒合症などの骨の形(Pavanello 2015) | 放射線を使う。静脈の流れは分からない |
| MRI・MRV・CTV | こぶの全体と、硬膜静脈洞との交通、合併する静脈の異常(発達性静脈奇形など)(Pavanello 2015、Gandolfo 2007) | 幼児では鎮静が必要なことがある。頭蓋内の静脈への依存の程度は、血管造影での評価が基本 |
| 血管造影(DSA) | 静脈の流れを評価し、dominant か accessory かを分類(Pavanello 2015) | 侵襲があり、治療を考えるときに行う |
21人の小児の検討では、全員にMRI、MRV、頭部CTを行い、19人でDSAを行っていました。診断・分類・治療の選択で、血管造影が重要な役割を果たすと著者らは述べています(Pavanello 2015)。
症例 幼児 頭蓋縫合早期癒合症に伴うsinus pericranii(MRI)

引用:Sharma A, Sharma M. Cureus 2022;14(2):e21891(Figure 4)(CC BY 4.0)
引用した図は、頭蓋縫合早期癒合症(尖頭)のある幼児の造影T1強調像です。矢状断(a)・横断(b)で、頭頂部と後頭部の骨の欠損を通る太い導出静脈(矢印)が、深部の上矢状静脈洞・静脈洞交会と、頭皮の下の静脈のこぶをつないでいます。左の横静脈洞は低形成(矢頭)と説明されています。この症例では、泣いたときや横になったときにこぶが大きくなったと報告されています(Sharma 2022)。
症例 同じ症例のMR静脈撮影(MRV)

引用:Sharma A, Sharma M. Cureus 2022;14(2):e21891(Figure 6)(CC BY 4.0)
同じ症例の3D TOF法のMRVです。側面像(a)・横断像(b)で、頭蓋内の静脈系と、頭皮の下の静脈のこぶをつなぐ頭蓋骨を貫く静脈が示されています(矢印)。血栓はなく、MRAは正常でした。
治療判断のカギ:dominant か accessory か
SPで最も大切な判断は、頭蓋内の静脈血を流す道として、SPにどれだけ頼っているかです。血管造影で、頭蓋内の静脈血の大部分がSPを通って流れ出ていればdominant(主要)型、一部だけならaccessory(副)型と分類します(Pavanello 2015、Gandolfo 2007)。
| 型 | 意味 | 方針 |
|---|---|---|
| dominant(主要)型 | 頭蓋内の静脈血の大部分を、SPを通じて排出している | 治療しない(閉じると頭蓋内の静脈のうっ滞の危険) |
| accessory(副)型 | SPを通る静脈血はわずか。通常の出口が別に十分ある | 症状や見た目などで治療の適応を検討。塞栓や結紮が行われる |
21人では、dominantが5人、accessoryが14人でした。dominantの人は治療せず、accessoryのうち4人は経過観察、2人が外科的な結紮、8人が血管内治療(経静脈または経皮的な塞栓)を受け、合併症はなく、治療した人の症状はすべて消えました。著者らは、治療できるのは accessory 型だけで、dominant 型は温存すべきとしています(Pavanello 2015)。15人の検討でも、治療を考えるなら静脈の流れの解析が必要で、dominantの場合や、accessoryでも他の静脈の異常の唯一の側副路になっているときは治療を避けるべきとされました(Gandolfo 2007)。
dominant か accessory かの判定は、通常の静脈相の血管造影での主観的な評価に頼ります。そこで、こぶを外から圧迫して一時的につぶしながら血管造影を行い、閉じたときの頭蓋内の静脈の流れの変化を、事前に確かめる方法も報告されています(Ellis 2016)。
こぶを見た目のために単純に切除したり、穿刺したりすると、dominant型では重要な静脈の出口をふさぐ危険があります。疑った時点で、まず画像で静脈の流れを調べることが大切です。外傷時に出血・感染・空気塞栓の危険があるとして、予防的な治療を勧める著者もいます(Paiva 2023)が、確立した指針はありません(Azzazi 2026)。治療を選ぶ判断は、主治医と相談して決めてください。
他の頭皮のこぶとの区別
| 病気 | 特徴 | SPとの見分け方 |
|---|---|---|
| 類皮嚢胞(皮様嚢胞)・類表皮嚢胞 | 生まれつきの嚢胞。縫合部などに多い。超音波の所見は Bansal 2018 に解説がある | 圧迫しても縮まず、大きさが体位や泣くことで変わらない。血流がなく、骨に圧痕を作ることがある |
| 血管腫・血管奇形 | 皮膚や皮下の血管の腫瘍・奇形(体表の血管腫と血管奇形、ISSVA分類) | SPは頭蓋骨の欠損を通る頭蓋内との交通がある。静脈奇形は、骨を貫く交通を持たないことが多い |
| 帽状腱膜下血腫・頭血腫 | 外傷や分娩のあとの、血液の貯留(帽状腱膜下血腫とは) | 外傷や分娩の経過がある。体位や泣くことで大きさが変わるものではない |
| 頭皮の動静脈奇形 | 血流が速く、拍動する(Azzazi 2026 でSPと間違えやすい病変として指摘) | SPは拍動がなく柔らかい。ドプラで動脈性の速い流れがあれば動静脈奇形 |
| ランゲルハンス細胞組織球症 | 頭蓋骨の溶骨性病変を伴う、骨に付いたこぶ(Bansal 2018 の超音波の総説で扱う疾患の1つ) | CTで溶骨性の骨欠損を示すが、静脈洞との交通はない |
頭蓋縫合早期癒合症とは、SPが合併することがあります(Azzazi 2026)。頭の形の見方は頭蓋縫合早期癒合症(狭頭症)と頭の形に、頭蓋内の静脈洞の解剖は脳静脈・静脈洞の解剖をMRI・MRVで解説にまとめています。
こぶに気づいたときの受診の目安
この記事は画像診断の解説で、診断や治療を読者が自分で決めるものではありません。頭のこぶに気づいたら、まず小児科や脳神経外科(または脳神経の診察ができる医療機関)を受診してください。
次のときは急いで受診してください。
- こぶが急に大きくなった、赤く腫れて熱をもった、痛がる、出血した
- 頭を強く打ったあとにこぶが出た、または大きくなった
- 嘔吐、けいれん、ぐったりして反応が悪い、頭痛が続く、視力の変化がある
こぶを強く押したり、針で刺したり、自分で切ったりしないでください。静脈の出口にあたる病気の可能性があるためです。
よくある疑問(Q&A)
Q. 泣くと大きくなるこぶは、すべてsinus pericraniiですか?
A. いいえ。静脈の圧が上がって大きくなるのは静脈系のこぶの特徴ですが、他の病変との区別が必要です。超音波で、頭蓋骨の欠損と頭蓋内との交通、血流の様子を見ます(Kim 2011、Bansal 2018)。
Q. 治療は必要ですか?
A. 多くは無症状で、治療しないで経過を見ることもあります。治療を考えるのは、症状や見た目の問題があるときで、血管造影で accessory 型と確認されたあとです。dominant 型は治療しません(Pavanello 2015)。
Q. 頭を打ったあとに生じることはありますか?
A. あります。後天性のもので、系統的レビューでは、誘因として最近の外傷が18.3%でした(Azzazi 2026)。
Q. 切除したり、針を刺して中身を調べたりできませんか?
A. 静脈の出口を失う危険があるため、まず画像で静脈の流れを調べます。疑われる場合は、外来での侵襲的な処置は慎重に行うべきと述べられています(Paiva 2023)。
参考文献
- Pavanello M, Melloni I, Antichi E, et al. Sinus pericranii: diagnosis and management in 21 pediatric patients. J Neurosurg Pediatr. 2015;15(1):60-70. PubMed
- Gandolfo C, Krings T, Alvarez H, et al. Sinus pericranii: diagnostic and therapeutic considerations in 15 patients. Neuroradiology. 2007;49(6):505-14. PubMed
- E L Azzazi H, Dokponou YCH, Boutarbouch M. Sinus Pericranii: Systematic Review with a Case Illustration. Asian J Neurosurg. 2026;21(2):205-224. PubMed
- Kim YJ, Kim IO, Cheon JE, et al. Sonographic features of sinus pericranii in 4 pediatric patients. J Ultrasound Med. 2011;30(3):411-7. PubMed
- Paiva ARA, Monteiro EMR, Nogueira TS, et al. Sinus pericranii: a case report and literature review. Braz J Otorhinolaryngol. 2023;89(5):101305. PubMed
- Sharma A Sr, Sharma M. Sinus Pericranii (Parietal and Occipital) With Epicranial Varicosities in a Case of Craniosynostosis. Cureus. 2022;14(2):e21891. PubMed
- Bansal AG, Oudsema R, Masseaux JA, et al. US of Pediatric Superficial Masses of the Head and Neck. Radiographics. 2018;38(4):1239-1263. PubMed
- Ellis JA, Mejia Munne JC, Feldstein NA, et al. Determination of sinus pericranii resectability by external compression during angiography: technical note. J Neurosurg Pediatr. 2016;17(2):129-133. PubMed
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