脳の静脈の走行
脳の静脈血の大部分は、静脈洞を経由してS状静脈洞(sigmoid sinus)に向かい、内頸静脈(internal jugular vein)から心臓に還流する。
テント上の脳静脈は
- 表在静脈系
- 深部静脈系
に大きく分けられる。
表在静脈系(浅大脳静脈)
- 表在静脈系は、大脳半球脳表を走行する皮質静脈で、脳表面上半部からの血流(上大脳静脈群)と、下半部からの血流(下大脳静脈群)に分けられる。
- 上大脳静脈群は、上吻合静脈(superior anastomotic vein(Trolard静脈(トロラール静脈)))や上大脳静脈(superior cerebral vein)から上矢状静脈洞(superior sagittal sinus)に還流する。
- 下大脳静脈群は、下吻合静脈(inferior anastomotic vein(Labbe veinラベー静脈))から横静脈洞に注ぐ経路と、浅中大脳静脈(superficial sylvian vein,浅シルビウス裂静脈)から海綿静脈洞、laterocavernous sinusまたはparacavernous sinusなどに還流する経路がある。
- 上吻合静脈(トロラール静脈)、浅中大脳静脈(浅シルビウス裂静脈)、下吻合静脈(ラベー静脈)は、相補的な関係にある。
症例 50歳代女性
- 上吻合静脈(トロラール静脈):浅中大脳静脈と上矢状静脈洞を結ぶ。
- 浅中大脳静脈(浅シルビウス裂静脈):海綿静脈洞や蝶形頭頂静脈洞に合流する。
- 下吻合静脈(ラベー静脈):浅中大脳静脈と横静脈洞を結ぶ。
表在静脈系(浅大脳静脈)の支配領域
表在静脈系(浅大脳静脈)は、上大脳静脈群、浅中大脳静脈、下大脳静脈群からなりその支配域は以下のようになる。
深部静脈系(脳深部静脈)
- 深部静脈系は、主に基底核、間脳、中脳、大脳深部白質の髄質静脈からの還流を受ける静脈に相当する。
- 脳底静脈(basal vein of Rosenthal(ローゼンタール静脈))や内大脳静脈(internal cerebral vein)を経てGalen大静脈(ガレン大静脈)(Galen vein(大大脳静脈great cerebral vein))に還流し、直静脈洞(straight sinus)に注ぐ。なお、直静脈洞には下矢状静脈洞(inferior sagittal sinus)からの血液も注ぎ、静脈洞交会(読み方はジョウミャクドウコウカイ)(cinfluence of sinuses)からの内頚静脈に向かう。
- なお、Galen静脈には前中心小脳静脈(Precentral cerebral vein)なども還流する。
これらの解剖を実際の画像を見ながら動画解説しました。
症例 20歳代女性
引用:radiopedia
脳の静脈がよく見えるMRVの画像でチェックします。
正中部の矢状断像で、内大脳静脈(internal cerebral vein)および前中心小脳静脈(Precentral cerebral vein)がガレン大静脈(Galen vein)に還流している様子がわかります。
そのガレン大静脈は下矢状静脈洞と合流して直静脈洞となっています。
正中部からやや左右にずらすと、脳底静脈(ローゼンタール静脈)もガレン大静脈(Galen vein)に合流していることがわかります。
次に横断像で見てみましょう。左から右に頭側から尾側へスライスした連続画像です。
これらの静脈がガレン大静脈に還流する部位なのですが、合流する部位のみ拡大すると次のようになります。
まず左右の内大脳静脈がガレン大静脈に還流します。
3枚目のスライスで内大脳静脈よりも大きい角度で合流する脳底静脈を同定できます。正中部には真下方向に還流する前中心小脳静脈を同定できます。
その後脳底静脈は中脳を縁取るように走行していることがわかります。
深部静脈系(脳深部静脈)の支配領域
深部静脈系(脳深部静脈)は、深部白質の髄質静脈、内大脳静脈、脳底静脈〜Galen静脈からなりその支配域は以下のようになる。
関連記事:脳静脈洞血栓症のCT、MRI画像診断のポイントは?
参考文献:
- 頭部画像診断徹頭徹尾 P221-227
- 画像診断 Vol.43 No.1 2023 P122-125
- 画像診断 Vol.37 No.13 2017 P1297
- イラスト解剖学 第10版 P596
脳静脈系について、とても親切にご解説くださりありがとうございます。
前中心小脳静脈・ローゼンタール・内大脳が合流し(inferior sagittalも合わさり)ガレンになる様子がとってもよくわかりました。
今まで、この解剖についてこんなにスッキリわかったことがありませんでした。
ありがとうございました!
コメントありがとうございます。
まとめた本人が一番スッキリしているという説もあります。