急性小脳炎のMRI 小脳の腫脹と後頭蓋窩の圧迫を見る

子どもが急にふらついて歩けなくなり、頭痛と嘔吐もあります。MRIで「小脳に異常」と言われ、急性小脳炎の疑いと説明されました。どんな病気で、画像では何を見ているのですか?
急性小脳炎は、小脳に炎症や浮腫が起こり、ふらつき(失調)や頭痛・嘔吐で始まる病気です。MRIでは小脳の腫れと信号変化を見ます。多くは経過がよい一方で、小脳が腫れて周囲を圧迫する場合があるため、画像で『腫れの程度』と『水頭症・ヘルニア』をまず確認します。研修医の方向けに、見る順番を整理します。

先に結論:急性小脳炎のMRIは「両側びまん性のT2高信号・腫脹」と「後頭蓋窩の圧迫」を見る

項目 ポイント
どんな病気 感染症や免疫の異常に関連して起こる小脳の炎症。ふらつき・頭痛・嘔吐が典型
典型的な画像 小脳半球の両側びまん性のT2/FLAIR高信号と腫脹。皮質中心のことが多い
注意する合併症 扁桃ヘルニアや閉塞性水頭症(15例の報告で、それぞれ73%と27%)
分け方 脳幹・大脳にも病変があれば免疫関連(MOG抗体など)を考える
落とし穴 初回MRIが正常のこともある。のちに小脳萎縮が出ることもあり、画像は予後を決めない

急性小脳炎とは

急性小脳炎は、感染症の最中や直後、ワクチン接種後、薬の服用後などに、MRIで小脳の浮腫を伴って起こる急性の神経症状です(Orman 2021)。ウイルスや細菌の感染だけでなく、自己免疫が関係する場合もあります(Quack 2023)。まれな病気で、重症度は幅広く、軽い経過で自然に治まることもあれば、まれに急速に悪化して小脳が強く傷む、あるいは突然死に至ることもあります(Kornreich 2016)。

小児の急性小脳機能障害には、急性小脳炎のほかに、画像で異常のない急性小脳失調症(感染後の失調症)があります。イタリアの12施設・124例の検討では、最終診断は失調症が118例、小脳炎が6例で、失調症のほうがはるかに多く、後遺症は5%でした(Lancella 2017)。トルコの15例の報告では、失調に頭痛や嘔吐が加わるときは、急性小脳炎を考えるべきだとされています(Yildirim 2020)。

症状と年齢

36例の多施設研究(年齢中央値5.5歳)では、失調が83%(30/36)で最も多く、構音障害や測定障害もありました。21/36に傾眠やけいれんなど脳炎を思わせる症状を伴っていました(Quack 2023)。ほかの報告でも、最初の症状は失調、嘔吐、頭痛が多く、小脳炎の診断時の年齢は3〜15歳(中央値9.5歳)でした(Yildirim 2020)。

用語を補足します。失調は、歩行や体のバランスがうまく取れない状態です。測定障害(dysmetria)は、手足を目標に正確に動かせない状態、構音障害は、ろれつが回りにくい状態を指します。小脳の症状は、本人や家族からは「ふらつく」「物をうまくつかめない」「話し方が変わった」と表現されることが多く、画像を依頼するときの臨床情報として大切です。

MRIで何を見るか

所見 内容
小脳の信号 両側びまん性に半球のT2/FLAIR高信号。対称性で、小脳皮質の腫脹を伴うことが多い(Yildirim 2020、Kornreich 2016)
広がり 半球と虫部の同時の病変もある。画像の見え方は多様(De Bruecker 2004)
圧迫所見 扁桃ヘルニア、閉塞性水頭症(Yildirim 2020)
経過 急性期に正常でものちに萎縮することがある。回復期に皮質の信号上昇、最終的に萎縮(De Bruecker 2004、Takanashi 2023)

15例の報告では、MRIで両側対称性のT2高信号と小脳皮質の中等度の腫脹がみられ、扁桃ヘルニアが73.3%、閉塞性水頭症が26.6%に認められました。追跡MRI(12例)では、11例で小脳皮質のT2高信号が続き、9例で小脳萎縮がありました(Yildirim 2020)。画像の読影では、小脳の信号だけでなく、後頭蓋窩全体が圧迫されていないか(第4脳室の狭小化、水頭症、扁桃の下垂)を同時に確認します。

ロタウイルス胃腸炎に伴う小脳炎の例

ロタウイルス胃腸炎に続いてMERSの脳梁膨大部病変を起こした小児が、のちに小脳炎を発症する経過が報告されています。臨床では意識障害が最初の神経症状で、そのあと発語がなくなり、軽い小脳症状が残りました。MRIでは、急性期に可逆性の脳梁膨大部病変、急性期〜亜急性期に小脳白質・小脳核の異常信号、続いて小脳皮質の信号上昇、最終的に小脳萎縮という順に変化しました(Takanashi 2023)。

症例 3歳女児 ロタウイルス関連の小脳炎

ロタウイルス関連小脳炎 拡散強調像 脳梁膨大部と中小脳脚(3歳女児)
引用:Takanashi JI, Uetani H. Front Neurosci. 2023;17:1235364 (Figure 4) PMC(CC BY 4.0)

4日目のDWI(A)では脳梁膨大部に高信号があり、6日目(B)には消えています。6日目のDWI(C)では両側の中小脳脚と小脳核に拡散低下があり、T2強調像(D)では小脳皮質にも軽い高信号があります。65日目(E)はほぼ正常で、軽い萎縮のみです。

ASL(灌流画像)の報告

造影剤を使わない灌流画像(ASL)では、MOG抗体関連疾患またはインフルエンザB型に伴う小脳炎の2例で、急性期の小脳病変が高灌流を示しました。インフルエンザB型の4歳男児では、2日目に両側の小脳半球で拡散低下と高灌流、脳梁に細胞毒性病変が見られたと報告されています。まだ経験の少ない所見で、診断に使えるかは今後の検討が必要です(Takanashi 2023)。

撮像と読影の進め方

一般的には、軸位断のT2強調像・FLAIR・DWIで小脳の信号を見て、矢状断や冠状断で小脳扁桃の位置と第4脳室、脳幹の圧迫を確認します。ふらつきの原因探しでは、まず腫瘤と出血を除き、次に小脳の腫れ、その次に血管支配に一致する病変かどうかを見ると整理しやすくなります。小脳の血管支配は脳の血管支配領域まとめで確認できます。

感染性か、免疫関連か

MRIで原因を絞れるかを調べた研究があります。43例(感染性35例、免疫関連8例)の検討では、脳幹のT2/FLAIR高信号が免疫関連で37.5%、感染性で2.9%、テント上(大脳)のT2/FLAIR高信号が免疫関連で37.5%、感染性で0%でした。一方、下方へのヘルニアは感染性で42.9%、免疫関連で0%でした(Orman 2021)。

抗体の検索も重要です。36例の多施設研究では、約3割(10/36)で自己抗体が見つかり、MOG抗体が5例で最多でした。MOG抗体陽性の5例は全例で小脳以外にも病変がありました(Quack 2023)。MOG抗体関連疾患の画像はMOGADの記事が参考になります。

鑑別すべき病気

病気 区別のポイント
小脳梗塞 血管支配域に一致する局在病変で、DWIで拡散が低下する。小脳梗塞の記事
小脳腫瘍 腫瘤が存在し、周囲の浮腫を伴う。びまん性の対称性腫脹とは見え方が異なる
ADEMなど脱髄性疾患 大脳・脳幹・脊髄の多巣性病変を伴うことが多い
薬剤・代謝性 メトロニダゾール脳症は歯状核の左右対称性病変。メトロニダゾール脳症の記事
急性小脳失調症 画像は正常のことが多い。経過は一般に良好(Lancella 2017)

小脳の信号の位置を確認するときは、小脳脚のMRI解剖が役立ちます。上の症例のように、中小脳脚や小脳核に病変が出ることもあります。

読影のチェックリスト

確認すること 見る理由
小脳半球は両側びまん性に腫れているか 小脳炎で最も多い画像の型(De Bruecker 2004、Kornreich 2016)
第4脳室・水頭症・扁桃の位置 圧迫が強いと緊急の対応が必要になる(Yildirim 2020)
脳幹・大脳・脳梁に別の病変はあるか 免疫関連やMERSの合併を考える手がかり
DWIで拡散低下はあるか ロタウイルス関連の小脳炎などで中小脳脚・小脳核に見られた(Takanashi 2023)
経過観察で萎縮が出ていないか 初回正常でもあとで萎縮することがある(De Bruecker 2004)

予後

報告によって差があります。15例の報告では、約1年後に失調・測定障害が残ったのは4例(27%)でした(Yildirim 2020)。36例の研究では、中央値3か月の追跡でmRS 2以下の良好な転帰は24例(67%)で、抗体陽性の小児のほうが転帰が良好でした(Quack 2023)。9例の報告では、6例が回復し3例に神経学的な後遺症が残りました(Kornreich 2016)。小脳炎と失調症をまとめた124例の検討では、後遺症は5%で、画像(MRIまたはCT)に異常のある例で後遺症が多いことが示されました(Lancella 2017)。一方、4例(De Bruecker 2004)や15例(Yildirim 2020)の報告では、MRI所見は予後と関連しないとされています。画像だけで予後を言い切らず、経過を見ることが大切です。

よくある疑問(Q&A)

Q. 急性小脳炎と急性小脳失調症の違いは何ですか?

どちらも小児に起こる急な小脳症状ですが、小脳炎はMRIで小脳の浮腫や信号変化があり、頭痛や嘔吐を伴いやすい点が目立ちます。失調症は画像で明らかな異常を示さないことが多く、頻度は失調症のほうが高いと報告されています(Lancella 2017、Yildirim 2020)。

Q. MRIが正常なら小脳炎は否定できますか?

36例の研究で、小脳の信号変化があったのは83%(30/36)でした(Quack 2023)。MRIが正常なこともあり、のちに萎縮が出た例もあります(De Bruecker 2004)。症状が続く場合は、経過に応じて再評価されます。

Q. CTで分かりますか?

MRIが診断の基本です(Kornreich 2016)。CTでも小脳の腫れや水頭症を確認できる場合があり、イタリアの検討ではMRIまたはCTに異常がある例で後遺症が多いと報告されています(Lancella 2017)。お子さんにふらつきや嘔吐が続くときは、医療機関を受診してください。

Q. 経過中にMRIを撮り直すのはなぜですか?

小脳炎は、急性期の異常が回復期に皮質の信号上昇へ、さらに萎縮へと変わることがあり、初回が正常でものちに萎縮が出た例もあります(De Bruecker 2004、Takanashi 2023)。経過の変化を確認するために撮り直すことがあります。

あわせて読みたい:小児急性脳症のMRI、小児脳梗塞のMRI、新生児・乳児けいれんのMRI

参考文献

  1. De Bruecker Y, Claus F, Demaerel P, et al. MRI findings in acute cerebellitis. Eur Radiol. 2004;14(8):1478-83. PubMed
  2. Orman G, Kralik SF, Desai NK, et al. Can MRI Differentiate between Infectious and Immune-Related Acute Cerebellitis? A Retrospective Imaging Study. AJNR Am J Neuroradiol. 2021;42(12):2231-2237. PubMed
  3. Quack L, Glatter S, Wegener-Panzer A, et al. Autoantibody status, neuroradiological and clinical findings in children with acute cerebellitis. Eur J Paediatr Neurol. 2023;47:118-130. PubMed
  4. Yildirim M, Gocmen R, Konuskan B, et al. Acute Cerebellitis or Postinfectious Cerebellar Ataxia? Clinical and Imaging Features in Acute Cerebellitis. J Child Neurol. 2020;35(6):380-388. PubMed
  5. Lancella L, Esposito S, Galli ML, et al. Acute cerebellitis in children: an eleven year retrospective multicentric study in Italy. Ital J Pediatr. 2017;43(1):54. PubMed
  6. Kornreich L, Shkalim-Zemer V, Levinsky Y, et al. Acute Cerebellitis in Children: A Many-Faceted Disease. J Child Neurol. 2016;31(8):991-7. PubMed
  7. Takanashi JI, Uetani H. Neuroimaging in acute infection-triggered encephalopathy syndromes. Front Neurosci. 2023;17:1235364. PubMed

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