
先に結論:関節炎のレントゲンは「見る順番」と「どこに出ているか(分布)」で絞れる
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 見る順番 | ABCDS=配列(Alignment)・骨(Bone)・軟骨/関節裂隙(Cartilage)・分布(Distribution)・軟部(Soft tissue) |
| 決め手 | 分布。手ならDIP・PIP・MCP・手関節のどこが主役かで、関節リウマチ・変形性関節症・乾癬性関節炎・痛風の候補が分かれる |
| 骨の変化 | びらん(骨が削れる)か、骨の増殖(骨が増える)か、その両方か |
| 限界 | 早期はレントゲンで正常のことがある。診断は症状・血液検査とあわせて行う |
関節炎のレントゲンは「パターン認識」
手のX線は、リウマチ科で最も有用な画像検査と位置づけられています。関節裂隙の狭小化、びらん、新しい骨の形成、亜脱臼、変形といった個々の所見が、診断の手がかりになります(Kassimos 2004)。ただ、1つの所見だけで病名が決まることは少なく、所見の組み合わせと分布で考えるのが基本です。
骨のレントゲン全体の見方は骨のレントゲンの見方にまとめています。ここでは関節炎に絞って、初心者が順番に確認できる形に整理します。
見る順番:ABCDS
覚えやすいように、次の5つの頭文字(ABCDS)に分けて見ていきます。これはこの記事で使う覚え方で、ほかにも似た語呂があります。
| 頭文字 | 見るもの | 具体的に |
|---|---|---|
| A 配列(Alignment) | 関節のずれ・変形 | 亜脱臼、尺側偏位、指の変形、関節の強直(動かなくなる) |
| B 骨(Bone) | 骨の濃さと形 | 骨のびらん、関節近くの骨粗鬆化、骨の増殖(骨棘・骨膜反応)、骨嚢胞 |
| C 軟骨(Cartilage) | 関節裂隙 | 均等に狭いか、一部だけ狭いか、広がっていないか |
| D 分布(Distribution) | どの関節か・左右差 | DIP・PIP・MCP・手関節・第1CMC、左右対称か、1関節だけか |
| S 軟部(Soft tissue) | 関節周囲の腫れ・石灰化 | 関節周囲の腫脹、結節(痛風結節など)、びまん性の指の腫れ |
初心者がつまずきやすいところ
- 「骨が白い・黒い」ではなく「削れているのか、増えているのか」を先に決める
- 関節の隙間(関節裂隙)の狭さは「全体が均一に狭い」のか「荷重のかかる所だけ」なのかで意味が変わる
- 分布を見るときは、手全体を引いて眺めてから1つずつの関節に近づく
- 軟部の腫れは骨より先に出ることがあり、早期の唯一の所見になることもある
分布で絞る:手のX線の早見表
| 疾患 | よくある分布 | 骨の変化 | 目印 |
|---|---|---|---|
| 関節リウマチ | MCP・PIP・手関節。左右対称 | びらん(関節の辺縁)、関節近くの骨粗鬆化 | DIPは通常目立たない |
| 変形性関節症 | DIP・PIP・第1CMC | 骨棘、軟骨下の硬化。びらん性の型では関節中央のびらん | 骨が増える所見が主体 |
| 乾癬性関節炎 | DIPを含む | びらんと関節近くの骨増殖(juxta-articular bony proliferation)が同居 | 骨増殖が鑑別の鍵 |
| 痛風 | 手足の関節 | 骨皮質が途切れ、縁が硬化した「打ち抜き」型のびらん、張り出した縁(overhanging edge) | 痛風結節・年単位の経過 |
関節リウマチ
関節リウマチでは、関節の滑膜(関節を包む膜)の炎症が骨を削り、びらんができます。典型的にはMCP関節・PIP関節・手関節に、左右対称に出ます。DIP関節は通常あまり目立ちません。日本の関節リウマチ患者10,038人のデータベースでは、症状のあるDIP関節の関与は206人(2.1%)でした。DIPが侵されていた人は、ほかのPIP・MCP関節などにも症状を伴っていました(Mizuuchi 2022)。つまりDIPだけが痛む場合、まず変形性関節症や乾癬性関節炎を考えますが、リウマチでもまれにDIPが関与します。
診断の基準としては、2010年のACR/EULAR分類基準が、症状のある関節の数と部位、血液検査(自己抗体・炎症反応)、症状の続く期間で点数をつける方式を採用しています(Aletaha 2010)。つまりX線のびらんがなくても、早期のリウマチを分類できるように作られています。レントゲンは「診断の入口」というより、骨の破壊の程度や進み具合を見る役割が大きい検査です。
症例 55歳女性 関節リウマチ(進行例)

引用:Radiopaedia(Advanced rheumatoid arthritis)
両手の正面像です。症例ページでは、MCP・PIP関節と手根骨に目立つ対称性のびらん性変化があり、いくつかの関節が亜脱臼を起こしていて、DIP関節は保たれていると記載されています。
変形性関節症
変形性関節症は、軟骨のすり減りと骨の増殖(骨棘)が主体です。手ではDIP関節(ヘバーデン結節)・PIP関節(ブシャール結節)・親指の付け根(第1CMC関節)に多くみられます。このうちびらん性変形性関節症という型では、関節中央のびらんが加わるため、関節リウマチや乾癬性関節炎と紛らわしくなります。診断はACRの基準を満たす手の変形性関節症で、X線で関節面のびらんがある場合に限られ、鑑別には結節性の全身性変形性関節症、乾癬性関節炎、関節リウマチが挙がります(Punzi 2004)。
見分けのコツは、骨が「削れるだけ」か「増える」かです。変形性関節症は骨の増殖が前面に出ます。一方、関節リウマチは関節近くの骨粗鬆化とびらんが主体です。
乾癬性関節炎
乾癬(皮膚の病気)に伴う関節炎で、手ではDIPを含み、指の骨に骨の増殖と骨の溶けが同居することがあります。日本人の乾癬性関節炎85人と関節リウマチ135人を比べた研究では、関節近くの骨増殖(juxta-articular bony proliferation)が、乾癬性関節炎をリウマチ(リウマチ因子陽性・陰性とも)から区別する最も重要なX線所見でした(Ichikawa 2012)。乾癬性関節炎の分類基準(CASPAR)にも「関節近くの新しい骨形成」が項目に入っています(Taylor 2006)。
鉛筆がカップに入ったような「pencil-in-cup」変形は有名ですが、乾癬性関節炎だけの所見ではありません。皮膚や爪の症状(乾癬・爪の変化)の確認が欠かせません。
症例 乾癬の既往のある女性 乾癬性関節炎(進行例)

引用:Radiopaedia(Psoriatic arthritis of the hands and feet)
手の正面像です。症例ページでは、手足の遠位の関節を中心に対称性のびらん性関節症があり、ところどころにpencil-in-cup変形と複数関節の強直があると記載されています。
痛風
痛風のX線は、尿酸の結晶が関節や周囲に沈着して骨が変化したあとの所見を見ます。典型例では、境界のはっきりした関節近くのびらんで、縁が硬化し、張り出した縁(overhanging edge)を伴うのが特徴です。ただしこの変化が出るまでに何年もかかることがあり、早期は関節周囲の軟部の腫れだけのこともあります。診断の補助としてのレントゲンの感度は31%と低く、特異度は93%と高いと報告されています(Wali 2025)。
2015年のACR/EULAR痛風分類基準でも、画像の項目に「X線での痛風に関連するびらん」が含まれます(Neogi 2015)。痛風の画像診断の詳細は痛風性関節炎・痛風結節の画像診断をご覧ください。
X線で決めきれないとき
| 状況 | 考えること |
|---|---|
| 早期で骨に変化がない | X線は正常でも関節炎は否定できない。症状・血液検査・エコーやMRIで滑膜炎を確認する(MRIは関節リウマチのMRI画像診断) |
| 1つの関節だけ強く腫れて発熱もある | 感染(化膿性関節炎・結核性関節炎)を念頭に置く(結核性関節炎) |
| 背骨・仙腸関節の症状が中心 | 脊椎関節炎を考え、仙腸関節と脊椎を見る(強直性脊椎炎の画像診断) |
| 手のDIPだけが痛い | 変形性関節症・乾癬性関節炎が先。爪や皮膚の所見を確認 |
読影のチェックリスト
- 左右の手を並べて眺め、対称か非対称かを決める
- DIP・PIP・MCP・手関節・第1CMCの順に、侵されている関節に印をつける
- 骨の変化を「削れる」「増える」「両方」に分ける
- 関節裂隙が均等に狭いか、軟骨下の硬化や骨棘があるかを見る
- 軟部の腫れ、結節、石灰化を確認する
- 最後に配列(亜脱臼・強直)を確認し、臨床情報(皮膚・爪・尿酸・自己抗体)と合わせる
よくある疑問(Q&A)
Q. レントゲンが正常ならリウマチではありませんか?
いいえ。早期は骨に変化が出ないことがあります。リウマチの分類基準は、関節の症状・血液検査・症状の期間で点数をつける方式で、X線のびらんは必須ではありません(Aletaha 2010)。気になる症状があれば医療機関を受診してください。
Q. DIP関節が腫れていたら、リウマチではないのですか?
リウマチでDIPが関与するのはまれで、日本のデータベースでは2.1%でした(Mizuuchi 2022)。まず変形性関節症や乾癬性関節炎を考えますが、決めるのは診察と検査の結果です。
Q. 乾癬性関節炎とリウマチをX線で見分けられますか?
関節近くの骨増殖が鍵になります(Ichikawa 2012)。ただし皮膚・爪の症状や血液検査も含めて総合的に判断します。
Q. 痛風の発作中にレントゲンを撮る意味は?
痛風のびらんは年単位で出てくるため、急性期のレントゲンの役割は限られるとされています(Wali 2025)。慢性の変化を見るのに向いた検査です。
あわせて読みたい:脂肪血関節症(FBI sign)とは、有鉤骨鉤骨折とは
あわせて読みたい:乾癬性関節炎のレントゲン・MRI
参考文献
- Kassimos D, Creamer P. The hand X-ray in rheumatology. Hosp Med. 2004;65(1):13-7. PubMed
- Aletaha D, Neogi T, Silman AJ, et al. 2010 Rheumatoid arthritis classification criteria: an American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism collaborative initiative. Arthritis Rheum. 2010;62(9):2569-81. PubMed
- Taylor W, Gladman D, Helliwell P, et al. Classification criteria for psoriatic arthritis: development of new criteria from a large international study. Arthritis Rheum. 2006;54(8):2665-73. PubMed
- Ichikawa N, Taniguchi A, Kobayashi S, et al. Performance of hands and feet radiographs in differentiation of psoriatic arthritis from rheumatoid arthritis. Int J Rheum Dis. 2012;15(5):462-7. PubMed
- Mizuuchi T, Sawada T, Nishiyama S, et al. Distal Interphalangeal Joint Involvement May Be Associated with Disease Activity and Affected Joint Distribution in Rheumatoid Arthritis. J Clin Med. 2022;11(5):1405. PubMed
- Punzi L, Ramonda R, Sfriso P. Erosive osteoarthritis. Best Pract Res Clin Rheumatol. 2004;18(5):739-58. PubMed
- Neogi T, Jansen TL, Dalbeth N, et al. 2015 Gout Classification Criteria: an American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism collaborative initiative. Arthritis Rheumatol. 2015;67(10):2557-68. PubMed
- Wali L, Rowbotham E. Imaging of gout: an atlas. Rheumatol Adv Pract. 2025;9(2):rkaf051. PubMed
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