
先に結論:腫瘤と臓器の「接し方」と「栄養血管」を見て、由来臓器を決める
| サイン | 見え方 | 意味 |
|---|---|---|
| claw sign | 臓器の実質が、腫瘤の両側で爪のように鋭角に腫瘤をつかむ | 腫瘤はその臓器から出ている |
| beak sign | 腫瘤と臓器の接する部分で、臓器の縁が嘴(くちばし)のように尖る | 臓器から外へ張り出した腫瘤(exophytic) |
| embedded organ sign | 臓器の一部が腫瘤の中に埋め込まれたように見える | 腫瘤はその臓器から出ている |
| phantom organ sign | あるはずの小さな臓器が見当たらない | 腫瘤がその臓器を置き換えている |
| 栄養血管 | 腫瘤へ向かう太い動脈が、ある臓器の血管につながる | その臓器の血管が栄養している |
なぜ「どの臓器から出たか」を見分けるのか
腫瘤の診断は、由来する臓器が決まると、鑑別の候補が大きく絞られます。たとえば同じ大きな腫瘤でも、腎臓から出たのか、副腎から出たのか、腎臓の外の後腹膜から出たのかで、考える病気は変わります。婦人科でも、子宮から出たのか卵巣などの付属器から出たのかは、手術の方法に影響するため重要です(Kandur 2025)。
後腹膜の腫瘍についての総説では、まず腫瘤が後腹膜にあるかを確かめ、次に由来臓器を探す手順が示されています。由来臓器を示すサインとして、beak sign、embedded organ sign、phantom(invisible) organ signが挙げられ、どのサインも見つからないときは、臓器ではなく後腹膜の組織から出た原発性後腹膜腫瘍の可能性が高くなります(Nishino 2003)。のちの総説では、これに「prominent feeding artery sign(目立つ栄養血管のサイン)」が加えられています(Shaaban 2016)。
claw sign(爪のサイン)
臓器の実質(正常の組織)が、腫瘤の両側で鋭い角(爪のような形)をつくり、腫瘤を部分的に抱え込むように見える所見です。腫瘤が臓器の中から生じていて、単に隣り合って臓器を押しているだけではないことを示します。
代表的な使い方は、小児の腫瘍の鑑別です。腎臓から出るWilms腫瘍では腎実質が腫瘤を抱え込むclaw signが見られ、実質臓器の組織から出ない神経芽腫では見られません(Radiopaedia症例解説)。腎の腫瘍を報告した症例報告でも、claw signは「腎由来」を示す所見として使われています(Pedun 2026)。逆に、claw signがなく、腫瘤と胃・肝臓の間の脂肪の層が保たれていることが、腫瘍が臓器の外(小網)から出ていることの根拠になった報告もあります(Oljira 2026)。
症例 3歳男児 Wilms腫瘍(claw sign)

引用:Radiopaedia(Wilms tumour: claw sign)
注釈つきの画像で、点線が右の腹部を占める巨大な腫瘤、矢印が腫瘤のふちに接する腎臓の部分を示しています。症例ページでは、右側の大きな均一な腫瘤が正中を越えて腸管を押し下げ、変位した右腎が腫瘤を取り巻くclaw signがあり、腎由来であることを確かめていると記載されています。
beak sign(嘴のサイン)
腫瘤と臓器の接する面で、臓器の縁が嘴のように薄く尖って腫瘤へのびる所見です。腫瘤が臓器の表面から外へ張り出して育ったときに見られます。肝臓から外へ張り出した腫瘍(exophytic hepatic tumor)の総説では、beak signと目立つ栄養血管が由来の判断に役立ち、2次元・3次元の再構成画像(冠状断・矢状断など)も診断を助けるとされています(Kim 2008)。
この総説では、肝臓から張り出した嚢胞が、膵臓の嚢胞性腫瘍(粘液性嚢胞腫瘍)や大網の嚢胞と誤診された例が示されています(Kim 2008)。横断像だけでは膵臓の腫瘤に見えても、矢状断で尾状葉との接点にbeak signがあれば、肝臓由来と気づけます。
症例 64歳女性 肝臓から張り出した嚢胞(beak sign)

引用:Kim HJ et al. Korean J Radiol 2008(Figure 1)(CC BY-NC 3.0)
A:造影CTで、膵臓の部位に境界明瞭な嚢胞性の腫瘤(矢印)があり、初めは膵臓の粘液性嚢胞腫瘍と解釈されました。B:手術中の写真で、嚢胞(矢印)は尾状葉から生じていました。C:矢状断では、尾状葉との接点にbeak sign(矢印)があり、膵臓との接点は鈍い縁(矢じり)でした。(出典:Kim HJ et al. Korean J Radiol 2008, Figure 1, CC BY-NC 3.0)
embedded organ signとphantom organ sign
embedded organ sign(臓器が埋め込まれたサイン)は、臓器の一部が腫瘤に埋もれたように見える所見で、腫瘤がその臓器から出ていることを示します。腎臓の周囲にできる小児の腫瘍42例の検討では、腎臓から出た腫瘍(16例)にcrescent sign(三日月のサイン)、beak sign、embedded organ sign、腎動脈からの栄養血管が有意に多く、腎臓以外から出た腫瘍(26例)と区別できました(Wu 2010)。
| 所見(腎由来を示す) | オッズ比 |
|---|---|
| crescent sign | 52 |
| beak sign | 84 |
| embedded organ sign | 84 |
| prominent feeding artery sign(腎動脈からの栄養血管) | 36 |
(Wu 2010。腎臓の周囲にできた小児の腫瘍42例、腎腫瘍16例と非腎腫瘍26例)
逆に腎臓以外から出た腫瘍では、腎臓が押されて向きが変わる所見(腎の偏位と軸の回転)が88.5%(26例中23例)にあり、腎腫瘍では31.3%(16例中5例)でした(Wu 2010)。腫瘤が腎臓を押しのけているのか、腎臓から生じているのかを、腎臓の位置・向きからも考えます。
phantom(invisible) organ sign(幻の臓器のサイン)は、腫瘤が小さな臓器を置き換えて、その臓器が画像上で見えなくなる所見です。本来あるはずの臓器が見当たらないときに、その臓器を由来と考えます(Nishino 2003)。そのため、まず正常の臓器の位置と形を知っておくことが前提になります。たとえば副腎の見つけ方は腹部CTにおける正常副腎の見つけ方にまとめています。
embedded organ signは、原発性副腎リンパ腫の特徴としても挙げられ、28例中3例(10.7%)で、腫瘍が副腎に浸潤して埋め込まれた所見が見られました(Yang 2019)。
栄養血管をたどる
腫瘤の血流は、由来臓器の血管から来ることが多いため、腫瘤に入る動脈をさかのぼると出どころが分かります。肝臓から張り出した血管腫では、腫瘤と肝臓をつなぐ細い茎(柄)の中に栄養動脈と流出静脈が見られることがあります(Kim 2008)。腎臓周囲の腫瘍でも、腎動脈からの栄養血管は腎由来を示す特異的な所見でした(Wu 2010)。
子宮と付属器の鑑別でも、血管の位置と造影のされ方が手がかりになります。大きな腫瘤では、周囲の臓器の位置関係が崩れて超音波では由来が分かりにくく、MRIで血管のずれや栄養血管、造影のパターンを調べることが助けになります(Kandur 2025)。血管をたどるときは、動脈相の薄いスライスや冠状断・MIPなどの再構成画像が役立ちます。再構成の種類はMPR・MIP・MinIP・VRとはで解説しています。
サインを組み合わせて由来臓器を決める
1つのサインだけで決めるのではなく、複数のサインを組み合わせて考えます。腫瘤が大きいほど、臓器との接点が押しつぶされて迷いやすくなるためです。
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| claw sign・beak signがある | その臓器由来を第一に考える。冠状断・矢状断で接点を確かめる |
| 臓器が腫瘤に押されて向きを変えている | 押された臓器の外から出た腫瘤を考える(Wu 2010) |
| 臓器が見当たらない | phantom organ sign。腫瘤がその臓器を置き換えた可能性 |
| 栄養血管が臓器につながる | その臓器の腫瘍を考える |
| どのサインも見つからない | 臓器由来でない、原発性の後腹膜腫瘍などを考える(Nishino 2003) |
後腹膜に脂肪を含む腫瘤の鑑別でも、腫瘤が臓器から出ているのか、後腹膜の軟部組織から出ているのかは、病変と周囲の構造との関係を調べて決めるとされています(Shaaban 2016)。後腹膜の嚢胞性病変については後腹膜の嚢胞性病変の鑑別診断も参考になります。
由来臓器を見分ける読影チェックリスト
| 順番 | 確認すること |
|---|---|
| 1 | 腫瘤は腹腔内か、後腹膜か。周囲の臓器の位置のずれを見る(Nishino 2003) |
| 2 | 冠状断・矢状断で、腫瘤と接する臓器の縁をすべて追う |
| 3 | 臓器の縁が鋭角に腫瘤を抱えるか(claw sign)、嘴状に尖るか(beak sign) |
| 4 | 臓器が腫瘤に埋まって見えるか(embedded organ sign)。逆に臓器が見えないか(phantom organ sign) |
| 5 | 動脈相で、腫瘤に入る血管をさかのぼる。どの臓器の血管につながるか |
| 6 | 臓器が腫瘤に押されて偏位・回転していないか(押された側は、その臓器由来でない可能性) |
| 7 | サインが食い違うときは、MRIや造影の追加を考える |
全体の読み方の順番は腹部CTの読み方|見る順番と見落としチェックリストも参照してください。画像の結果が気になる方は、結果を受けた医療機関でご相談ください。
よくある疑問(Q&A)
Q. claw signがあれば、その臓器の腫瘍と確定できますか?
A. 確定はできません。claw signは「その臓器から出た可能性が高い」ことを示すサインです。大きな腫瘤では接点が分かりにくくなるため、beak sign、栄養血管、臓器の偏位などと組み合わせて判断します。
Q. サインがひとつも見つからないときはどう考えますか?
A. どの臓器からも出ていない可能性を考えます。後腹膜腫瘍の総説では、由来臓器を示す明らかなサインがないとき、原発性後腹膜腫瘍の可能性が高くなるとされています(Nishino 2003)。
Q. 小児と成人でサインの意味は変わりますか?
A. サインの考え方は共通です。ただし、小児では腎臓から出るWilms腫瘍と神経芽腫の鑑別で使われることが多く(Wu 2010)、成人では肝臓・膵臓・腎臓・副腎・子宮と卵巣などの鑑別で使われます。
Q. 造影CTでないと分かりませんか?
A. 臓器の形や接点は単純CTでも見えますが、栄養血管をたどるには造影CTの動脈相が役立ちます。肝臓から張り出した腫瘍でも、栄養血管とbeak signの確認に造影CTが使われています(Kim 2008)。
あわせて読みたい:肝臓の尾状葉とは、sentinel clot signとは
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参考文献
- Nishino M, Hayakawa K, Minami M, et al. Primary retroperitoneal neoplasms: CT and MR imaging findings with anatomic and pathologic diagnostic clues. Radiographics. 2003;23(1):45-57 PubMed
- Kim HJ, Lee DH, Lim JW, et al. Exophytic benign and malignant hepatic tumors: CT imaging features. Korean J Radiol. 2008;9(1):67-75 PubMed
- Wu YH, Song B, Xu J, et al. Retroperitoneal neoplasms within the perirenal space in infants and children: differentiation of renal and non-renal origin in enhanced CT images. Eur J Radiol. 2010;75(3):279-86 PubMed
- Shaaban AM, Rezvani M, Tubay M, et al. Fat-containing Retroperitoneal Lesions: Imaging Characteristics, Localization, and Differential Diagnosis. Radiographics. 2016;36(3):710-34 PubMed
- Yang L, Zhang M, Zhao S, et al. Correlations between MDCT features and clinicopathological findings of primary adrenal lymphoma. Eur J Radiol. 2019;113:110-115 PubMed
- Kandur C, Patle A, Arora A, et al. Imaging Clues to Differentiate Uterine From Adnexal Masses-Value of Vascular Anatomy and Enhancement Patterns-A Pictorial Essay. J Med Imaging Radiat Oncol. 2025;69(5):574-582 PubMed
- Pedun B, Pitua I, Bakenga A, et al. Clear Cell Sarcoma of the Kidney: A Kidney Malignancy in an 8-Year-Old Female Patient. Clin Case Rep. 2026;14(3):e72292 PubMed
- Oljira AM, Fissha AB, Wakesa DG, et al. Computed tomography features of a primary extragastrointestinal stromal tumor of the lesser omentum with spontaneous calcification in a young adult: A case report. Radiol Case Rep. 2026 PubMed
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