
先に結論:片側が白いときは、撮影条件を確かめたうえで「縦隔がどちらへ動いたか」で原因を絞る
| 縦隔(気管・心臓)の位置 | 白い側の肺の容積 | 考える原因 |
|---|---|---|
| 白い側へ引き寄せられる | 縮んでいる | 無気肺(気管支の閉塞など)、肺や肺葉の切除後、荒蕪肺、肺の低形成 |
| 反対側へ押される | 広がっている | 大量の胸水、大きな腫瘤(胸膜腫瘍など) |
| ほとんど動かない | 変わらない | 肺炎・肺水腫などで空気が残る浸潤影、胸水と無気肺の合併 |
撮影の条件(回旋や臥位)でも片側が白く見えるので、まず確認します。迷うときはCTや超音波で確認します(次の一手は後半で説明します)。
最初に確認すること:本当に片側が白いのか
胸部レントゲンで片側が白く見えるとき、最初に確認するのは、写真の撮り方によって白く見えていないかです。体が斜めを向いた写真(回旋)では、片側の肺が白く見え、容積が小さく見えます。ベッドの上で仰向けに撮った写真では、胸水が背中側に薄く広がり、肺全体がうっすら白くなります。仰臥位の写真での胸水の見え方を調べた研究では、立位の正面像で肋骨横隔膜角が鈍くなる量の胸水(175〜525 mL)でも、仰臥位では下肺野の濃度が上がる程度で、肺野全体が白く見える所見は大量の胸水で見られる遅い所見だったと報告されています(Woodring 1984)。
回旋・吸気・体位の確認を済ませておくことが前提です。見落としやすい場所は胸部レントゲンで見落としやすい場所で整理しています。この記事では、条件が適切な写真でもはっきり片側が白い場合を扱います。
縦隔の位置を見る:4つの目印
片側の肺が白いとき、白い側の肺の容積が「減った」のか「増えた」のか「変わらない」のかが、原因を絞る最初の手がかりです。容積の変化は、次の4つの目印で確認します。
| 目印 | 容積が減ったとき(無気肺・切除後) | 容積が増えたとき(大量胸水・腫瘤) |
|---|---|---|
| 気管・心臓 | 白い側へ寄る | 反対側へ押される |
| 横隔膜 | 白い側が高くなる | 白い側が下がり、平らになる |
| 肋間の幅 | 狭くなる | 広くなる |
| 反対側の肺 | 代わりに膨らんで(過膨張)黒く見える | 押されて縮む |
気管の偏位の見方は胸部レントゲンでの気管・気管分岐部(カリーナ)の高さと気管偏位の見方で詳しく説明しています。心臓の位置は、心臓の影が背骨と胸骨を結ぶ正中線のどちら側にずれているかで確認します。
縦隔が白い側へ寄るとき:無気肺・切除後
無気肺(肺が縮んで空気がなくなった状態)
肺の空気の通り道(気管支)が詰まると、その先の肺から空気が吸収されて縮みます(閉塞性無気肺)。片側の肺全体が白くなるのは、左右どちらかの主気管支が詰まった場合や、気管挿管のチューブが片側の気管支に入り込んだ場合などです。原因としては、肺癌などの腫瘍、痰や粘液の栓、異物が代表的です。
肺葉の無気肺の読み方を解説した総説では、胸部レントゲンは通常、最初に行う画像検査で、無気肺のサインは微妙で紛らわしいことがあると述べられています。濃度とシルエットサインの基本を押さえたうえで、無気肺に共通するサインと肺葉ごとの特徴的なサインを読み、CTで確認する流れが説明されています(Mullett 2012)。肺葉ごとの見え方は肺葉性無気肺の胸部レントゲン所見、無気肺の種類は無気肺とは?受動性無気肺・閉塞性無気肺・板状無気肺の違いを参照してください。
症例 左肺全体の無気肺

引用:Radiopaedia(Complete atelectasis left lung)
左の胸全体が白く、気管と縦隔が白い側(左)へ寄っています。症例ページでは、左の肺全体が白い(opacification)ことと縦隔・気管が左へ寄っていることから左肺の無気肺とされ、左の主気管支に陰影の欠損が記載されています。
肺や肺葉を切除したあと
肺癌などで手術を受けた方は、手術側が白く見えるのが「正常な経過」であることがあります。肺全体を切除(全摘)したあとは、切除した側の胸腔に液体が溜まり、胸郭が少しずつ縮み、縦隔が手術側へ寄り、同じ側の横隔膜が持ち上がっていきます。肺葉を切除したあとは、残った肺が膨らみ(過膨張)、縦隔の偏位や肋間の狭まりが起こります。変化の程度は手術からの期間で変わります(Padovani 2009)。
肺葉切除後の写真を調べた報告では、切除された肺葉の種類によって、肺の内外の変化が異なることが示されています。また、気管支の断端にはステープル(縫合器の金属)が残ることがあり、どの肺葉を切除したかを推測する手がかりになります。合併症のない肺葉切除後は、写真がほぼ正常に見えることもあります(Ko 2021)。手術の種類は肺切除術後のCT画像所見も参考になります。
全摘後では、まれに縦隔が過度に偏位して回転し、気道が圧迫されて息苦しさが出る「肺切除後症候群(postpneumonectomy syndrome)」があります。5例の報告では、全例で息苦しさが最初の症状で、4例が右肺全摘後でした(Valji 1998)。手術歴のある方では、写真の白さだけでなく、症状の変化も確認します。
その他:荒蕪肺と肺の低形成
結核や慢性の感染症のあとに肺が壊れて縮んだ状態(荒蕪肺)でも、縦隔は縮んだ側へ寄ります(荒蕪肺と呼ばれます)。生まれつき片側の肺が小さい(無形成・低形成)場合も、縦隔が小さい側へ寄って見えます。これらは、過去の写真や既往歴が手がかりになります。
縦隔が反対へ押されるとき:大量胸水・大きな腫瘤
片側の胸全体が白く、気管や心臓が反対側へ大きく押されているときは、大量の胸水を最初に考えます。胸水が増えると、その側の肺は押されて縮み、横隔膜は平らになり、縦隔が反対へ寄ります。
症例 大量の胸水と縦隔の偏位

引用:Radiopaedia(Massive pleural effusion with mediastinal shift)
左の胸全体が白く(white out)、心臓と気管が右へ大きく寄っています。右の肺は透明です。症例ページでは、巨大な胸水によって縦隔が大きく偏位した極端な例とされています。
胸水の原因は多岐にわたります。胸膜疾患を整理した総説では、心不全、肝硬変、アスベスト関連疾患、感染症、乳び胸、悪性腫瘍などが挙げられ、超音波では少量の胸水を検出でき、液体の内部の輝度や隔壁も評価できると説明されています(Yamada 2024)。胸水の分類と原因は胸水とは?原因(心不全など)と漏出性・滲出性の違いを参照してください。
反対側へ押す原因は胸水だけではない
胸膜中皮腫の症例報告では、レントゲンで反対側への縦隔偏位があり、3リットルを超える胸水を排液して症状が軽くなったものの、数か月後に再び偏位が見られ、超音波では少量の被包化した胸水と大きな腫瘍組織が見つかりました。著者は、中皮腫で反対側への縦隔偏位を起こす通常の原因は胸水だが、腫瘍組織そのものが押して偏位させることもあると述べています(Myerson 2008)。大きな胸膜の腫瘍や、横隔膜ヘルニアで腹部の臓器が胸に入り込んだ場合などでも、縦隔は反対へ押されます。
縦隔があまり動かないとき:肺炎・胸水と無気肺の合併
白い側の容積がほぼ変わらなければ、縦隔はあまり動きません。肺炎(浸潤影)では、肺胞の中の空気が液体や炎症の細胞に置き換わって白くなりますが、肺の大きさは大きくは変わりません。白い影の中に、気管支の黒い管が透けて見えるair bronchogram(気管支透亮像)があれば、気管支は開いたままで、肺胞が液体や炎症で満たされていることを示します。
注意が必要なのは、胸水と無気肺が同時にある場合です。胸水が反対へ押す力と、無気肺が引き寄せる力が打ち消し合い、縦隔がほとんど動かず、胸水の量に比べて押される所見が乏しくなることがあります。胸水の排液後に肺が十分に膨らまない状態(non-expandable lung)は、胸腔鏡検査を受けた滲出性胸水518件の検討で、良性胸水の24.9%、悪性胸水の19.0%にみられました。肺が膨らまない原因は、胸膜の病気か気管支の閉塞とされ、悪性胸水では、膨らまない例で診断時の合併症が多く(19.2%対3.2%)、生存期間の中央値も短くなっていました(8.5か月対16か月、Rozman 2025)。胸水の量が多いのに縦隔があまり反対へ押されていないときは、肺が膨らめない原因(気管支閉塞、胸膜の病気)を考えます。
| 白い片側肺の鑑別 | 縦隔 | 横隔膜・肋間 | その他の手がかり |
|---|---|---|---|
| 無気肺 | 白い側へ | 挙上・狭小 | 反対側の肺が過膨張。air bronchogramが見えないときは中枢の気管支の閉塞を疑う |
| 肺切除後 | 手術側へ | 挙上・狭小、手術側の胸腔に液体 | 手術歴、気管支断端のステープル |
| 大量胸水 | 反対側へ | 平低化・拡大 | 上縁がなだらかに上がるメニスカス。air bronchogramは通常ない |
| 胸膜の腫瘤 | 反対側へ(胸水がなくても) | 平低化 | 胸膜の凹凸や肥厚 |
| 肺炎・肺水腫 | ほぼ動かない | 変化が乏しい | air bronchogram、症状と発熱 |
| 胸水と無気肺の合併 | 動かない(または軽い偏位) | さまざま | 胸水が多いのに押される所見が乏しい |
次の一手:CT・超音波で確かめる
片側が白い写真が見つかったら、次のように進めます。
- 臨床の情報を確認する(発熱、咳・痰、胸痛、息切れ、手術歴、がんの既往、挿管の有無)
- 以前の写真と比較する(いつから白いか。急に白くなったのか、ゆっくりか)
- 胸水の疑いが強いときは超音波で、液体か充実性の塊かを区別する(Yamada 2024)
- 気管支の閉塞、胸膜の腫瘤、肺炎、胸水の量は造影CTで確認する(Mullett 2012)
- 気管支の閉塞が疑われるときは、気管支鏡検査を検討する
読影のチェックリスト
- 撮影条件(回旋・吸気・体位)で白く見えていないか
- 気管・心臓は、白い側へ寄っているか、反対側へ押されているか、動いていないか
- 横隔膜の高さ、肋間の幅は、左右で違うか
- 反対側の肺は、過膨張(黒い)になっていないか
- 白い影の中に、air bronchogramはあるか
- 手術歴、がんの既往、感染の症状はないか
- 気管チューブが、片側の気管支に入っていないか(挿管中の場合)
よくある疑問(Q&A)
Q1. 片側が真っ白だと、重い病気ですか?
原因はさまざまです。大量の胸水や肺の全体の無気肺では、息苦しさが強くなることがあります。一方、肺切除後の白さのように、病気ではなく手術後の経過であることもあります。症状や既往を確認し、原因を調べる必要があるので、指摘された場合は医療機関で相談してください。
Q2. 縦隔が動かなければ、胸水ではないのですか?
胸水があっても、無気肺の合併や、胸膜の病気で縦隔が動かないことがあります。縦隔の位置は手がかりのひとつにすぎず、超音波やCTで確認します(Rozman 2025)。
Q3. 肺炎の治療で白さは消えますか?
肺炎の浸潤影は、治療を始めてもすぐには消えないことが多く、写真の改善は臨床の経過より遅れることがあります。白さがなかなか改善しない場合は、背景に無気肺や腫瘍がないか、CTなどで確かめることがあります。担当の医師の指示に従ってください。
Q4. 手術のあとの写真で、白い側が小さくなっています。心配ですか?
全摘後は、手術側の胸郭が縮み、縦隔が手術側へ寄り、白く見えるのが一般的な経過です(Padovani 2009)。ただし、息苦しさが出てきた、急に変化したという場合は、早めに主治医に伝えてください(Valji 1998)。
あわせて読みたい:胸部レントゲンで片側の肺が黒い(一側性透過性亢進)、胸部レントゲンの撮影条件の確認
参考文献
- Mullett R, Jain A, Kotugodella S, et al. Lobar collapse demystified: the chest radiograph with CT correlation. Postgrad Med J. 2012;88(1040):335-47 PubMed
- Padovani B, Ducreux D, Macario S, et al. [Postoperative chest: normal imaging features]. J Radiol. 2009;90(7-8 Pt 2):991-1000 PubMed
- Ko JM, Jung MK, Park HJ. How to Review Postlobectomy Posteroanterior Chest Radiographs. Chest. 2021;159(1):294-301 PubMed
- Valji AM, Maziak DE, Shamji FM, et al. Postpneumonectomy syndrome: recognition and management. Chest. 1998;114(6):1766-9 PubMed
- Myerson JS, Nicum S, Sharma B, et al. Malignant mesothelioma with unexpected contralateral mediastinal shift: a case report. J Med Case Rep. 2008;2:125 PubMed
- Rozman A, Velepec T, Cestnik B, et al. Clinical Significance and Prognosis of Non-Expandable Lungs in Patients with Unilateral Pleural Effusion. Respiration. 2025;104(10):750-760 PubMed
- Yamada A, Taiji R, Nishimoto Y, et al. Pictorial Review of Pleural Disease: Multimodality Imaging and Differential Diagnosis. Radiographics. 2024;44(4):e230079 PubMed
- Woodring JH. Recognition of pleural effusion on supine radiographs: how much fluid is required? AJR Am J Roentgenol. 1984;142(1):59-64 PubMed
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