
先に結論:心アミロイドーシスは「疑う→種類を決める」の2段階。骨シンチの陽性だけでATTRと決めてはいけない
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| どんな病気か | アミロイドが心筋にたまり、壁が厚く硬くなる。大半はAL型かATTR型 |
| 心エコー | 壁の肥厚が手がかり。ほかの心臓病と似るため、これだけでは決めにくい |
| 心臓MRI | 遅延造影(LGE)の広がり、native T1・ECVの上昇で「アミロイドらしさ」と進行度を見る |
| 骨シンチ系(PYPなど) | ATTRで心臓に強く集まる。グレード2〜3で、血液・尿に異常たんぱく(M蛋白)がなければATTRと診断できる |
| 落とし穴 | ALでも集まることがある。血液・尿の検査でALの除外が必須 |
心アミロイドーシスとは
アミロイドは、本来は水に溶けているたんぱく質が、線維の形に変わって臓器にたまったものです。心臓にたまると、心筋が厚く硬くなって血液を十分にためられなくなり、心不全や不整脈の原因になります。現在診断される心アミロイドーシスの98%超は、免疫グロブリン軽鎖(AL)かトランスサイレチン(ATTR)が原因です(Garcia-Pavia 2021)。
| 型 | 原因たんぱく | 特徴 |
|---|---|---|
| AL | 免疫グロブリン軽鎖(血液の異常なたんぱく) | 血液の病気に由来する。心臓以外に腎臓、舌の肥大、皮下出血などを伴うことがある。診断の遅れが予後に響く |
| ATTRwt(野生型) | トランスサイレチン(遺伝子変異なし) | 高齢の男性に多い。手根管症候群、腰部脊柱管狭窄、上腕二頭筋腱断裂を伴うことがある |
| ATTRv(遺伝性) | トランスサイレチン(遺伝子変異あり) | 家族歴、末梢神経障害、自律神経障害などを伴うことがある |
(Garcia-Pavia 2021)
型によって治療がまったく違うため、「心アミロイドーシス」と分かった後にどの型かを決める作業が欠かせません。ALは血液の病気としての治療、ATTRは別の治療が中心になります。ここでは画像の役割を整理します。
どんなときに疑うか
心エコーやMRIで左室の壁が厚いのに、左室の内腔が大きくないとき、特に高齢で心不全や大動脈弁狭窄症がある場合に疑います。ESC作業部会の声明では、壁の厚い心不全・大動脈弁狭窄・肥大型心筋症に見える患者の中に、ATTRが最大で7〜19%含まれるとされています(Garcia-Pavia 2021)。
心臓以外の「赤旗(レッドフラッグ)」も手がかりです。両側の手根管症候群、腰部脊柱管狭窄、上腕二頭筋腱断裂、末梢神経障害、軽度でも持続する蛋白尿、舌の肥大、皮下出血、心電図の低電位などが挙げられています(Garcia-Pavia 2021)。肥大型心筋症と似た見え方をするため、肥大型心筋症との区別も重要です。
心エコーでの見え方
心エコーは最初に行う検査です。声明では、原因の説明できない左室壁厚12mm以上に、拡張障害の程度、組織ドプラの速度低下、グローバルストレイン(縦方向のひずみ)の低下などが組み合わさると、心アミロイドーシスを示唆する所見とされています(Garcia-Pavia 2021)。
ストレインのマップでは、心尖部が保たれ、基部・中部が強く低下する(相対的な心尖部温存、RELAPS)パターンが知られています。41研究のメタ解析では、感度65.9%、特異度83.1%で、「あれば疑いが強まるが、なくても否定できない」という中等度の精度でした(Ahmad 2026)。エコーは「疑うための検査」と考えるのが安全です。
心臓MRI:LGE・native T1・ECV
心臓MRIは、心筋の「質」を見られる点が強みです。声明のMRI所見は、びまん性の心内膜下〜貫壁性のLGEと、造影剤の異常な動態(心筋が血液より先に信号が抜ける)が基本で、ECV(細胞外容積分画)が0.40以上なら強く支持する所見とされています(Garcia-Pavia 2021)。遅延造影の基本は心臓MRIの遅延造影(LGE)で整理しています。
| MRIの指標 | 心アミロイドーシスでの意味 |
|---|---|
| LGE | びまん性の心内膜下から貫壁性へ広がる。貫壁性は進行を示す。貫壁性LGEは死亡の予測因子(ハザード比5.4)(Fontana 2015) |
| native T1 | 造影剤なしで測れる。ATTRで1,097ms、肥大型心筋症で1,026ms、正常で967ms(Fontana 2014) |
| ECV | アミロイドの量を反映する。ATTRの診断能はAUC 0.91で、予後との関連はnative T1より頑健(Martinez-Naharro 2019) |
native T1の値は装置や撮像法で変わるため、各施設の基準値と比べて読みます。native T1は造影剤を使わずに測れる点が利点です(Fontana 2014)。
AL型とATTR型の見分けにMRIは参考になりますが、決め手にはなりません。ATTRの90%で貫壁性LGEがあったのに対し、ALでは37%でした。重なる部分が大きく、ALとATTRの区別をMRIだけで確定することはできません(Dungu 2014)。
心サルコイドーシスなど他の心筋疾患でもLGEは出ます。心サルコイドーシスのMRIとあわせて、LGEの分布を意識すると鑑別が進みます。
症例 75歳男性 ATTR型(野生型)心アミロイドーシス

引用:Radiopaedia(Cardiac amyloidosis – ATTR wild-type)
症例ページでは、息切れと両側の手根管症候群の既往がある男性で、心臓MRIで中隔の肥厚、native T1の上昇、ECVの著明な上昇がありました。LGEは心内膜下で冠動脈の支配域に一致しない分布を示し、基部では貫壁性でした。約6か月後の心内膜心筋生検でATTRが確認され、遺伝子検査で野生型と判定されています。
骨シンチ系トレーサー(PYPなど)での診断
骨に集まる放射性医薬品(PYP、DPD、HMDPなど)は、ATTRのアミロイドが沈着した心筋にも集まります。骨シンチ系の検査は、もともとDPDを用いた小規模な検討で、ATTRとALの区別に役立つことが示されたのが始まりです。
その後の1,217例の検討で、診断能が整理されました。心筋への集積はATTRに対して感度99%超、特異度86%で、偽陽性はほとんどがAL型の患者でした。一方で、グレード2または3の集積があり、血液・尿にM蛋白がない場合、ATTRに対する特異度と陽性的中率は100%でした(Gillmore 2016)。
Perugini grade と H/CL比の意味
| 指標 | 見方 |
|---|---|
| Perugini grade(視覚評価) | 心臓への集積を肋骨の集積と比べて0〜3で評価する。0は集積なし、1は肋骨より弱い、2は肋骨と同程度、3は肋骨より強い。グレード2〜3が陽性の目安 |
| H/CL比(定量評価) | 心臓に置いた関心領域のカウントを、反対側の胸部の同じ大きさの領域と比べた比。PYPの小規模な研究では1.5超でATTRを高い精度で識別(感度97%、特異度100%、45例、Bokhari 2013) |
PYPの視覚評価では、ATTR群は平均2.9、AL群は0.8、H/CL比は1.80対1.21でした(Bokhari 2013)。ただし、この研究は45例と少数です。実際の判断は、この数字だけでなくSPECTで「心筋に」集まっているかを確認し、血液・尿の検査とあわせて行います。
グレード1は「弱い集積」で、ESC作業部会の声明ではグレード1では非侵襲的には診断できず、組織での確認が必要とされています(Garcia-Pavia 2021)。また、心腔内の血液にたまった放射性物質(血液プール)や、肋骨骨折・弁輪の石灰化、最近の心筋梗塞による集積が、心筋の集積に紛れることがあり、これらの区別にSPECTが使われます(Garcia-Pavia 2021)。
症例 80歳代男性 骨シンチで心臓にびまん性集積(心アミロイドーシスの疑い)

引用:Radiopaedia(Cardiac amyloidosis)
前立腺癌で骨転移の評価のために行われたHDP骨シンチグラフィで、心臓にびまん性の強い集積があり、心アミロイドーシスが疑われました。症例ページでは、DPDやHMDPが心アミロイドーシスの診断で感度・特異度が高く、集積をPerugini分類で評価できると記載されています。
PYPが陽性でも「AL除外」が必要な理由
骨シンチ系の検査は「ATTRらしさ」を見るもので、ALを否定する検査ではありません。声明は、シンチグラフィと血清・尿の免疫固定を伴うたんぱく電気泳動、血清遊離軽鎖(FLC)の測定を組み合わせる診断の流れを示しています(Garcia-Pavia 2021)。
| シンチの集積 | 血液・尿のM蛋白など | 次の対応(Garcia-Pavia 2021) |
|---|---|---|
| なし | 陰性 | 心アミロイドーシスは考えにくい |
| グレード2〜3 | 陰性 | ATTRと診断できる。遺伝子検査でATTRwtかATTRvかを区別する |
| グレード1 | 陰性 | 非侵襲的には診断できない。組織での確認が必要 |
| なし | どれか異常 | ALを急いで除外する。MRIで心臓の関与を評価し、組織での確認が必要になる |
| あり | どれか異常 | MGUS(意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症)を伴うATTR、AL、両者の併存がありうる。アミロイドの型を決める組織診断が必要 |
この流れで「ATTR」と診断された後は、遺伝子検査で野生型か遺伝性かを区別します。声明では、高齢でも遺伝子変異を持つ人が少なくないため、高齢でも遺伝子検査を行うことが勧められています(Garcia-Pavia 2021)。遺伝性であれば家族への影響も考える必要があります。
検査を受ける前に知っておきたいこと
骨シンチや心臓MRIの前に控えるべき薬や食事、検査の流れは施設ごとに異なります。造影剤や放射性医薬品に関する注意も含め、主治医・検査施設の指示に従ってください。心臓MRIは体内に金属などがある場合に撮れないことがあるため、手術歴やペースメーカーなどは事前に伝えておきます。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 骨シンチで心臓に集積があれば、ATTRと決まりますか?
決まりません。集積はALでも出ることがあります。グレード2〜3の集積があり、血液・尿でM蛋白が見つからない場合に、組織検査なしでATTRと診断できます(Gillmore 2016)。M蛋白などに異常があれば、組織での確認が必要です。
Q2. 心臓MRIだけでALとATTRは見分けられますか?
MRIだけでは確定できません。貫壁性LGEはATTRで多いものの、ALにも見られ、重なりがあります(Dungu 2014)。型を決めるには骨シンチ系検査と血液・尿の検査を組み合わせます。
Q3. 心エコーで壁が厚いと言われました。アミロイドーシスなのでしょうか?
いいえ。壁の肥厚は高血圧、大動脈弁狭窄症、肥大型心筋症など多くの病気で見られます。手根管症候群や末梢神経障害などの赤旗があるときに、アミロイドーシスの検査へ進みます。気になる症状があれば、医療機関で相談してください。
Q4. ATTRwtとATTRvの違いは何ですか?
ATTRwtは遺伝子変異のない野生型、ATTRvは遺伝子変異による遺伝性です。ATTRと診断された後に遺伝子検査で区別します(Garcia-Pavia 2021)。
※この記事は一般的な情報です。診断や治療は、担当の医師と相談してください。
あわせて読みたい:負荷心筋血流シンチ(SPECT)の見方、BMIPP心筋シンチとは、核医学検査(シンチ・PET)の種類と読み方まとめ
参考文献
- Garcia-Pavia P, Rapezzi C, Adler Y, et al. Diagnosis and treatment of cardiac amyloidosis: a position statement of the ESC Working Group on Myocardial and Pericardial Diseases. Eur Heart J. 2021;42(16):1554-1568. PubMed
- Gillmore JD, Maurer MS, Falk RH, et al. Nonbiopsy Diagnosis of Cardiac Transthyretin Amyloidosis. Circulation. 2016;133(24):2404-12. PubMed
- Bokhari S, Castaño A, Pozniakoff T, et al. (99m)Tc-pyrophosphate scintigraphy for differentiating light-chain cardiac amyloidosis from the transthyretin-related familial and senile cardiac amyloidoses. Circ Cardiovasc Imaging. 2013;6(2):195-201. PubMed
- Fontana M, Pica S, Reant P, et al. Prognostic Value of Late Gadolinium Enhancement Cardiovascular Magnetic Resonance in Cardiac Amyloidosis. Circulation. 2015;132(16):1570-9. PubMed
- Fontana M, Banypersad SM, Treibel TA, et al. Native T1 mapping in transthyretin amyloidosis. JACC Cardiovasc Imaging. 2014;7(2):157-65. PubMed
- Martinez-Naharro A, Kotecha T, Norrington K, et al. Native T1 and Extracellular Volume in Transthyretin Amyloidosis. JACC Cardiovasc Imaging. 2019;12(5):810-819. PubMed
- Dungu JN, Valencia O, Pinney JH, et al. CMR-based differentiation of AL and ATTR cardiac amyloidosis. JACC Cardiovasc Imaging. 2014;7(2):133-42. PubMed
- Ahmad O, Khan MI, Omer MH, et al. Relative apical sparing of left ventricular longitudinal strain for the diagnosis of cardiac amyloidosis: a systematic review and meta-analysis. Open Heart. 2026;13(1). PubMed
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